統和機構

登録日:2015/07/27 Mon 23:12:47
更新日:2020/09/03 Thu 23:33:57
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【概要】

上遠野浩平の作品群の内『ブギーポップシリーズ』、『ビートのディシプリン』、『ヴァルプルギスの後悔』、『螺旋のエンペロイダー』、『戦車のような彼女たち』等に登場する組織。所謂「上遠野サーガ」に対して大きな存在感を発揮しており、サーガの現代編を描いた『ソウルドロップシリーズ』や『しずるさんシリーズ』『騎士は恋情の血を流す』『酸素は鏡に映らない』、『私と悪魔の100の問答』にも間接的に登場し、その場合は「システム」と呼ばれている。この項目では統和機構の関連組織にも触れる。

作中世界を影から操る「世界の支配者」であり、政治経済のエリートから地域コミュニティの末端に至るまで「端末」と呼ばれる人員を配置し、影響力を及ぼしている組織。経済に至っては、企業を操るどころか経済操作の合成人間、寺月恭一郎を使って大企業MCEを立ち上げさせるレベル。一部描写では「統和機構」という名前を言うのも憚られている。英名は「Instrumentality of Mankind」。おそらく元ネタはコードウェイナー・スミスの作品に登場する「人類補完機構」。

その最大の目的は、人類を超えた能力を持つ存在「MPLS」の駆逐にある。作中で語られた言葉を借りれば「未来に抵抗する現在」。MPLSを「進化した人類」と定義し、彼らから「現在の人間」を守るために活動しているという。しかし、構成員の殆どは機構の権力に従ったり、利用しようとしているだけで、真の理念に気付いている者は少ない。また、機構はMPLSと「世界の敵」の区別が付いておらず、ブギーポップとは目的が交差しても決して交わる事はない。組織の重鎮は、「本当にヤバいのは「誰か」が狩っており、自分達はその残りカスや雑魚を掃除しているに過ぎないのでは?」と考えている。但し、無尽蔵にMPLSを殺しまくってる訳ではなく、機構が制御出来そうなMPLSは片っ端から勧誘してエージェントに仕立て上げている。

他にも、MPLSを狩るための構成員として様々な特殊能力を持つ「合成人間」を大量に生産し、彼らは機構のエージェントとして日夜MPLSを探索している。しかし、合成人間は統和機構への忠誠を尽くすよう精神操作がされており、その心の不安定さが皮肉にもMPLSへの覚醒を促す事もある。その場合、合成人間は機構から逃げるしかない。合成人間以外にも変な植物や兵器などを研究しているが、大抵想像以上の惨事を引き起こす。地球に降りてきた「虚空牙」の捕獲にも成功し、合成人間の研究に応用している。また、莫大な資金を投じて特別製(スーパービルド)なる合成人間も目下製造中。

統和機構の構成員が命令発信源として指す「中枢(アクシズ)」という単語は、実質的に統和機構の最高司令官と同様の意味を持つ。中枢の正体はスーパーコンピューター、権力者達のよる会議、絶対的な個人と様々な予測がされているが、殆どの構成員は実態を知らない。その正体は……?

初出は『ブギーポップは笑わない』だが、この時はマンティコアの製造元である「何処かの研究機関」として触れられただけ。正式名称やその目的は『VSイマジネーター』で語られる。しかし、シリーズ長期化と上遠野サーガの拡大から、統和機構の正体や本当の目的はスピンオフ作品である『ビート』『ヴァルプ』『エンペロ』で語られる事になり、『ブギーポップ』本編は水乃星透子(イマジネーター)路線にシフトした感がある(機構自体は毎作品登場している)。


【構成員】

人数が多過ぎるので、登場頻度の高い人物や、作中で重要ファクターとなった者(それでも充分に多いが)を中心に挙げる。

マンティコア
合成人間。
他者を捕食し、完璧に擬態する事が出来る。後述のエコーズを元に造られた存在で、機構脱走後は深陽学園に潜んでいた。脱走事件を受け、機構は同タイプの合成人間を廃棄処分した(マンティコア・ショック)。

エコーズ
統和機構に捕獲された謎の存在。厳密には構成員ではない。他者が話した言葉のみを話す事から谺(エコーズ)と名付けられた。
その正体は地球に舞い降りた4体の地球外生命体、虚空牙の1人。彼を元にマンティコアが製造され、脱走した彼女を探すために街を彷徨う。物語ラストで光の情報体となり、「本体」に人間の情報を送った。超未来、彼の交信を元に虚空牙は地球への侵攻を開始する。

スプーキー・エレクトリック
ファンからの愛称はEさん。電流で人の心を操る合成人間。かなり性格が悪いが、『戦車のような彼女たち』収録の「オルガンのバランス」では綺麗なEさんを見る事が出来る。泣いた。

織機綺/カミール
合成人間の失敗作。生殖機能のない合成人間が妊娠出来るかを試すために人間との交配実験をさせられていた。その空っぽの心を飛鳥井仁に利用される。
初期は綾波系ヒロインだったのだが、『VSイマジネーター』が終わって『夜明けのブギーポップ』で再登場した途端、キャラが激変して明るくなり多くの読者を驚かせた。きっと大体正樹のせい。末永く爆発しろ
『ヴァルプ』である能力に覚醒する。

タルカス
マンティコア駆逐のために製造された特別製。しかし登場しない。忘れた頃に名前が触れられるがそれでも登場しない。かどちんが忘れていない事を祈ろう。

天色優/ユージン
MPLSを持つ少年少女達と行動を共にする謎の美少年。本人もMPLSである事を装うが、実は彼らを監視するための合成人間。最終的に彼らを守るために暴徒の中に消えていった。後発作品でも時たま触れられ、あの最強さんに戦ってみたかったと言わしめるなど、マジで強かったらしい。西尾維新は彼の生死を気にしている。

寺月恭一郎
大企業MCEの創業者。経済担当合成人間だったが、企業の規模がデカくなり過ぎたため、ユージンに消される。死ぬ間際にMPLS達へ機構の存在を警告した。合成人間のため子供は居ないが、近年の作品に『寺月恭一郎の子供たち』なる存在が現れている。

黒田慎平/スケアクロウ
私立探偵だが、実は統和機構の合成人間。ある事件を追う内に霧間凪と出会い、彼女に正義の味方の概念を教えた。死の間際、ブギーポップの誕生を垣間見る。アニメ版でもメイン級で登場し、小説最終巻予定の「ブギーポップ・ストレインジ」にも主人公の1人として登場予定。かどちんはよ書け。

佐々木政則/モ・マーダー
暗殺者。霧間誠一、スケアクロウ、キョウ兄ちゃんといった作中重要人物を消している。ピート・ビートの戸籍上の叔父貴で彼の師匠だった。

軌川十助/ノトーリアスI.C.E.
合成人間の失敗作。身体がペパーミント色をしている。
アイス作りに対する異様な才能を持ち、特に彼のペパーミントアイスは大流行を引き起こす。 彼が主役の『ペパーミントの魔術師』はシリーズの中でも評価が高い。

リィ舞阪/フォルテッシモ
我らが「最強」。ffくん。紫ジャージ。クレープ大好きだが、最近は鮭定食もお気に入り。空間の裂け目を操作する〈ザ・スライダー〉の能力を持ち、事実上統和機構最強の存在として君臨するMPLS。自分より強い者と戦う事を欲する好戦的なエージェントだが、最近では彼の登場だけで笑いが堪えられない読者も多い。本編、外伝、何故か『100の問答』などにも節操なく登場する。未来の物語である『ナイト・ウオッチシリーズ』のマイロー・スタースクレイパーと邂逅する運命にある。しかし、それは本編では断片的にしか語られず、詳細が載ってるのは単行本未収録の『竹泡会談』。これだからかどちんは……。

九連内朱巳/レイ・オン・フライディ
統和機構最高幹部。
傲岸不遜な少女で霧間凪の親友。人の心を操るMPLSと認識されているが、それはただの心理操作技術であり、実は何の能力も持っていない。中枢から後継者候補の一人として指名されている。しかし後に、機構と敵対する凪を庇ったり、組織に反旗を翻した行動をとるようになる。

雨宮世津子/リセット
統和機構最高幹部。
フォルテッシモと並び称される機構最強の存在。表向きは警察官僚内で警視総監ですら恐れるほどの地位を持つ人物(それって1人しかいないじゃん……)。発射した弾の威力を巡航ミサイルクラスまでに変えられるMPLSで、あまりの威力の強さから「制御のために」身体を合成人間化されている。


統和機構の命令をエージェントに伝える伝達役。ゲゲゲの鬼太郎のような風貌で、影が薄く、空気のような話し方をする。ジンクスショップなる店を手伝いおまじないを売るが……?

カレイドスコープ
柊と行動を共にするサングラスを掛けた男。カレイドスコープとは万華鏡を意味する。

雨宮美津子/リミット
統和機構最高幹部。極東支部長。
雨宮世津子の双子の姉。あらゆる攻撃を遮断するMPLS。妹と同じく能力制御のために合成人間化されている。実は、特別製と呼ばれる合成人間は全て雨宮姉妹に辿り着く事を目的としている。
地球に降りた虚空牙の1人、ブリックを拾い、統和機構から離脱。妹と対立する道を選ぶ。

長谷部京輔/イディオディック
統和機構の中でも不思議なポジションにいる人物。霧間凪の叔父を名乗る。異次元に身を隠す能力を持つが、現実とは時間が違うため、数百年の時を生きているらしい。実は現中枢とその座を争い破れた過去を持つ。

古猟琥依/ブリッドヘッド
『戦車のような彼女たち』の主人公。ロリ妻。実は統和機構の特別製合成人間。だが、能力を全然扱えていない。夫の古猟邦夫は監視対象であるMPLSらしいが、その正体は……?

久嵐舞惟/ホルニッセ
古猟琥依の妹という設定の合成人間。常に姉にイライラしているが、『私と悪魔の100の問答』では主人公の良き親友として振舞っている。

世良稔/ピート・ビート
『ビートのディシプリン』の主人公。合成人間のエージェントとして活動するが、ひょんなことからフォルテッシモに任務を押し付けられた挙句にその身を追われ、統和機構の激変に巻き込まれる事になる。

バーゲン・ワーゲン
5人1組の合成人間たち。特にシュバルツは死んで以降もチラホラ話に登場し、過去編でわざわざ死亡フラグを匂わしている。

フェイ・リスキィ
統和機構の科学者。ロリ体型だが飲酒は出来る年齢。リスキィという苗字は上遠野サーガでは重要なウェイトを占めており、彼女にも何かあると思ったらまさかのMPLSを超える存在、「奇蹟使い」になってしまった。

釘斗博士
『ソウルドロップシリーズ』に登場する科学者。読者にはお馴染みの例の病院所属。まさかの『ヴァルプ』に登場し、統和機構の激変に飛び込む。

マキシム・ゴーリキー
統和機構最高幹部。
合成人間の特別製。ロボット将軍。見た目はショタだが冷酷な性格。空気の塊を巨人として操る。中枢への食い込みを狙っている。


【白い病院】

釘斗博士が所属する病院。作中でも様々な人物が入院している。統和機構と関係があるらしいが、『ソウルドロップ』に登場する「サーカム財団」とも関係がある。みんな大好きしずるさんとよーちゃんの愛の巣でもある。しずるさんが機構の関係者かどうかは不明。


【ダイヤモンズ】

反統和機構組織。世界各地で統和機構と戦いを繰り広げている。

ダイヤモンズ
組織の首領。老人だと思ったら正体は彼が抱いていた犬であり、しかも機構に造られた合成人間である。喋れる。パールからはモンズと呼ばれる。

パール
マンティコアタイプの合成人間。初登場時は大人の女性。マンティコア・ショックを経て機構を離脱し、ダイヤモンズに所属。上遠野が書く電撃MAGAGINE連載版の影の主役と言っても良いほど出番が多い。『エンペロ』では姿を見ないと思っていたがまさかの……?

ジィド
金で雇われた破壊工作員。霧間凪の天敵。パールに好意を抱き、いつの間にかずっとつるんでいる。パールと同じく電撃連載の影の主人公。生身の人間でありMPLSの類でもないが、幾度となく戦闘用合成人間を撃滅している凄腕。特定の武器などは使わず、膨大な経験に裏打ちされる卓越した観察力と判断力を駆使し、周辺に存在する日常品を組み合わせた即席トラップで敵をハメるスタイルを好む。


【オカリナ】

統和機構の下部組織。既に解決した事件を捜査する組織。

巳鑑巳花車
<オカリナ>の調査員である合成人間。
指パッチンで相手の精神や神経に作用を与える<モビール・ムーバブル>の能力を持つ。
あまり常識を重要視していない。

進藤酉子
巳鑑巳の助手。眼鏡っ娘
統和機構やMPLS、世界の裏側ことは全く知らない。
巳鑑巳の能力の影響を受けないという特異体質であるため雇われている。
家族に関してある秘密の過去がある。

蒼衣秋良/コールドメディシン
機構から離脱した織機綺と同じ料理学校に通う少年。
実は統和機構とは別の組織に造られた合成人間。色々あってリミットの部下となるが、リミットが逃亡したためリセットの管轄に置かれる。登場時はキレ気味の少年だったが、最近は丸くなった。


【NPスクール】

『螺旋のエンペロイダー』に登場する統和機構傘下の塾。学校の進度を超えた高等なカリキュラムが組まれているが、重要なのは通常授業の後に行われるMPLSの訓練。MPLSの子供たちで構成されているが、最近は統和機構よりヤバい奴らが潜入し始めている。

才牙虚宇介
眼鏡を掛けた影の薄い少年。何を考えているのか分からないが、一部の生徒から一目置かれている。能力名は〈ヴィオランツァ・ドメスティカ〉だが、その詳細は不明。
「そら」という名前の、何故か兄に対してだけ厳しい(ツンデレではない)妹が居たり、名前がDQNネームってレベルじゃねーぞ!だったり、「寺月恭一郎の子供」だったり、フォルテッシモが鮭定食を食いに来たりと、上遠野サーガの中でも極めて特異な存在。彼こそが残る4体目なのだろうか……?

日高迅八郎
タレ目の少年。ダメージを受け流す〈サルタン・オブ・スイング〉の能力を持つ。ひょんなことから少女二人に囲まれて、陰謀に巻き込まれることになる。物語的に一般人目線の主人公格。

御堂璃央
『ヴァルプルギスの後悔』から登場するMPLSの少女。人間の「真剣さ」を視る〈ホワイター・シェイド〉の持ち主。クラスメイトからは「上」と繋がっていると噂される。

流刃昴夕
NPスクールの実習に巻き込まれ、スクールからMPLSの才能を見出された少年。虚宇介の異彩さに気づいており、彼への接近を図る。かなり社交的な性格。
だが、本当の性格は現代のあらゆる人間を原始人と見下す「人間の底辺」。その正体は、虚空牙の襲来すら過去となった超未来、枢機軍の頂点に立ちながら、それと敵対する奇蹟使いの能力を扱う「枢機王」となる人物である。





以下ネタバレ













「……人は……世界の……すべてを知っているわけではない……」「……認識は…… それのない人間はいないが……正しく使っている者もまた、いない……」
















【真実】


柊/オキシジェン
統和機構中枢。
つまりは世界の支配者。地球に生命を誕生させた劇薬(酸素)をコードネームとする。本来の肉体は既に死亡し、MPLSの能力で肉体を動かしている。運命の糸を見る能力を持ち、その力で「統和機構は世界を操っている」という幻想を生み出している。ブギーポップの存在を知らないが、彼のように「本当に強力なMPLSを倒す存在」を感知しているようである。『ビートのディシプリン』中盤、その正体をビートに明かし、『魔女』へと対抗すべく行動を開始する。『酸素は鏡に映らない』ではついに……。

カレイドスコープ
両目の色が異なる合成人間。オキシジェンの側近であり〈副王〉。空気を操作し、他者に視認されない能力を持つ。

アルケスティス
氷の魔女。
『ビートのディシプリン』中盤で登場。パールとジィド、モンズと行動を共にする謎の女性。人知を超えた能力を持ち、オキシジェンを坊や、フォルテッシモをffくん呼ばわりしている。
その正体は統和機構の創設者。
炎の魔女ヴァルプルギスと対になる宇宙の一部であり、ヴァルプ同様全てのMPLSの祖。概念の存在で、ブギーポップからは「世界の敵」認定されない。統和機構とは元々ヴァルプルギスに対抗すべく、アルケスティスが作り上げた組織である。
『ヴァルプルギスの後悔』では遂に表舞台に姿を現し、統和機構上層部を翻弄。幹部の内紛は巨大な政変を生み、多くの人間が魔女戦争に巻き込まれていった。

末真和子
『ブギーポップシリーズ』に登場する女子高生。友人達からは「博士」と呼ばれている。物知りな事以外は普通の少女だったが、とある一件から酸素と出会い、中枢候補に見込まれる。魔女戦争に巻き込まれる中、自身や対象の姿を隠す〈ムーン・リヴァー〉という能力に目覚める。
『酸素は鏡に映らない』ラストの描写を見るに、遂に中枢になったようだ。側にはカレイドが控えている。


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最終更新:2020年09月03日 23:33