大怪獣ガメラ

登録日:2015/07/12 Sun 13:30:18
更新日:2023/04/07 Fri 17:36:56
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大怪獣ガメラ』とは、1965年に公開された大映の特撮怪獣映画である。ガメラシリーズの記念すべき第一作。



【概要】

大映は東宝の特撮映画に対抗すべく、人間大に巨大化したネズミが暴れまわる『大群獣ネズラ』を企画したものの、撮影に使うネズミから伝染病が発生したという衛生面でのトラブルで制作中止となる。
しかし、着ぐるみの出来が良かったため一匹の怪獣が活躍する怪獣映画を制作する事となった。
営業部では「所詮はゴジラの二番煎じ」と期待されていなかったが、劇場で予告が流れると前売り券の売り上げは急上昇。
これ以降ガメラ映画は大映の人気シリーズとなった。


【ガメラ誕生までの経緯】

企画始動時点では亀が空を飛ぶという構想しか無かったが、脚本家の高橋二三はネズミ花火をヒントに
「回転しながら飛ぶ、ジェット噴射で進む、火をエネルギーとする」というアイデアを出したという。

その後、監督は湯浅憲明、特撮監督に築地米三郎、ガメラのデザイン・美術には八木正夫と井上章が起用され、制作がスタートした。
特撮に不慣れな者も多かったが、工夫と努力でなんとか完成に至る。
しかし、大映社長・永田雅一らを伴った完成試写では、撮影所長が永田社長の怒りを恐れて逃げ出してしまったという。
だが、試写を終えた後永田が「おもろいやないか!」と絶賛し、その他の重役も同意したためスタッフは胸を撫で下ろした。
ちなみに次回作の敵怪獣「バルゴン」のモデルは、この時逃げ出した撮影所長らしい。

怪獣のモデルを亀にした経緯には諸説あり、
  1. 永田社長が飛行機から見た亀形の島から
  2. 永田社長が見た空飛ぶ亀の幻影から
  3. 大映東京撮影所の近くの神社にいた、女性が参拝すると姿を現す「スケベガメ」と呼ばれる亀から
  4. ピー・プロダクションが企画した特撮テレビシリーズ『STOPシリーズ』のデモフィルムに登場する巨大な亀(スッポン)から
  5. 永田社長の息子、永田秀雅専務のアイデア
  6. プロデューサーの斉藤米二郎がホステスから聞いた「海水浴をしていると、クルクル回りながら寄って来るスケベな亀がいる」という逸話を基にした
と証言がバラバラである。

名付け親は永田社長で、「向こうがゴジラなら、こっちはガメラや!」と独断で命名。
担当重役は「ゴジラと似過ぎでは?」と反対したが、結局永田社長が意見を通し決定となった。

湯浅によると、ゴジラとの差別化のためガメラは「動物らしさ」を強調し、四足歩行とアップの多用を心がけたという。

ガメラの声は「セメントがこびり付いた鉄板の上を高下駄で滑り込む音+ガラスを引っ掻く音+色々な動物の声」を合成したもの。

井上によるデザイン画は50点ほど描かれ、中には手脚の無いムカデのようなものや、テントウムシのような模様が入ったものもあった。
最終的に粘土の1尺雛形モデルでOKがとれたが、検証後半井上はノイローゼ気味だったらしい。

当時1965年はカラー映画が制作されており大映本社側もカラーでの製作をしつこく現場に迫ったという。
しかし、築地が白黒での製作を主張したため、結局は白黒作品となった。
この理由について築地は「まず予算的な問題と人員不足。それと設備的な問題として高速度撮影用のカメラが無かったこと」を挙げており、「技術的に無理である」として会社を説得したという。


【あらすじ】

エスキモーの間で伝わる巨大亀の調査のため北極を訪れていた日高教授らは、国籍不明機がアメリカ空軍によって撃墜されるのを目撃する。
しかし、不明機が搭載していた核弾頭が墜落時に爆発、氷の下で8000年以上眠り続けていたアトランティスの怪獣が目覚めてしまう。
その怪獣こそ、日高教授が村長から渡された石板に描かれている「ガメラ」だった。ガメラは調査船「ちどり丸」を撃沈し、海へ姿を消す。
その後、世界各地で未確認飛行物体が目撃されるようになり、ガメラの報道は途絶えるが……。


【登場人物】

◆日高教授(演:船越英二)
東京大学の動物学者で数少ないガメラの目撃者。自衛隊の対策本部の依頼でガメラ討伐の作戦を立てる事になる。
しかし、動物学の常識がまったく通用しないガメラに翻弄される場面が多い。

◆山本京子(演:霧立はるみ)
日高の助手。青柳によると、同行したカメラマン達の目的は巨大亀ではなく彼女だったらしい。

◆青柳(演:山下洵一郎)
日高達に同行したおかげで命拾いしたカメラマン。飄々とした性格だが、終盤で熱い一面を見せる。(放火的な意味で)

◆桜井俊夫(演:内田喜郎)
亀が大好きな少年。自分を助けてくれたガメラを悪者扱いする大人たちに反発する。そもそも灯台壊したのガメラだけどね
終盤は明らかにZプランの施設に心を奪われていた。

◆村瀬教授(演:浜村純)
日高の依頼でガメラ討伐に参加する事になった古生物学者。


【登場怪獣】

◆ガメラ
アトランティス大陸に生息していた巨大な亀の怪獣。頑丈な上に生命力が高く、人類の武器ではほとんどダメージを与えられないばかりか、火砲や爆弾にはむしろ喜んで誘われてしまう始末。
東京タワーを押し倒すほどの怪力と口から吐く高温の火炎が武器。
エネルギー源は火や熱、電気の他、石炭や石油など燃えやすい物を好んで食す。弱点は低温。

推定年齢:8000歳以上
身長:60メートル
体重:80トン
武器:火炎放射
飛行速度:マッハ3

エスキモーの伝承では悪魔の巨大亀と恐れられており、子供たちからは名前を口にするのも恐れられていた。
寝起きで機嫌が悪かったのか、空腹で気が立っていたのか、ちどり丸を沈没させ乗組員を全滅させている。
しかし、北海道に現れた際は灯台から落下した俊夫を助け、子供に優しい一面を見せた。
自衛隊の冷凍爆弾と発破でひっくり返ってしまうものの、頭と脚を引っ込め、その穴からジェットを噴射し
円盤のように回転しながら飛行する「回転ジェット」で脱出。

村瀬教授「カメが……空を飛ぶとはのう……」

世界各地で目撃されていた未確認飛行物体の正体はガメラだったのだ!


【Zプラン】

劇中ではZ計画とも。これを利用した対ガメラ作戦がZ作戦。
元々は世界中の技術を結集し、伊豆大島にて開発していた火星探査ロケット打ち上げ計画だった。
そのロケットの先端にガメラを閉じ込めるためのカプセルを増設。ガソリンと炎を餌にガメラを誘導し、そのまま火星へと追放する手はずだったが……。


【余談】

企画始動時の仮題は『火喰い亀 東京襲撃』だった。

ガメラが吐く炎は合成ではなく本物で、水中から現れてから炎を吐くシーンではガソリンが暴発。怪我人は出なかったが、ガメラの着ぐるみが壊れ一週間撮影がストップした。

回転ジェットのシーンは長時間の場合アニメーションで描かれているが、飛び立つ瞬間などはミニチュアの穴に花火を詰め、ピアノ線で吊って撮影している。
このピアノ線が熱で頻繁に切れミニチュアが落下してしまった。

動くときに甲羅が変形しては様にならないので鉄の骨組みが入れられ頑丈に作られたためスーツは異常に重く、
最初のバージョンは中の人がマジで動けずジュラルミンに代えて軽量化されたとか……。

ガメラ対宇宙怪獣バイラス』におけるバイラス星人に操られたガメラの場面は本作のシーンを流用しているため、カラー映画なのに東京襲撃シーンだけ急に白黒になる。
宇宙怪獣ガメラ』におけるガメラ登場シーンも、劇中ではテレビの報道映像として使用されているため、そのシーンだけ白黒である。

1994年には『ガメラ 大怪獣空中決戦』の公開に併せ、作画:破李拳竜、原作:寺沢健一郎のタッグによる
本映画と同じタイトルの漫画作品『大怪獣ガメラ』が徳間書店の「MANGA BØYS」誌にて連載されていた。
ただし内容は本作とは直接関係なく、むしろ『宇宙怪獣ガメラ』から地続きの外伝である。

上述した、『大怪獣ガメラ』製作の切っ掛けになったとも言える没企画『大群獣ネズラ』は、
本作公開から37年後の2002年に『最強獣誕生 ネズラ -NEZULLA-』のタイトルで田川幹太氏による監督・脚本で映画化されたが、その出来は……お察しください
また、2021年には横川寛人氏の企画・監督・脚本で、同企画の立ち上げから頓挫までを題材とした映画『ネズラ1964』もクラウドファンディングによって製作された。


追記・修正は石板の謎を解いてからお願いします。

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最終更新:2023年04月07日 17:36