パンジャンドラム

作成日:2015/06/20 Sat 22:07:29
更新日:2024/02/14 Wed 14:38:27
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パンジャンドラムとは、第二次大戦中にイギリス陸軍がノルマンディー上陸作戦に向け開発を進めていた自走式爆弾にして、同国が同国たる所以を完璧に表現しきった、言わば「具現化した英国面」の一つ。
また、ネット界隈ではそのイカれた発想などから大人気の兵器でもある。

●目次

開発の経緯

パンジャンドラムの開発の契機となったのは、先述の通りノルマンディー上陸作戦だった。
上陸するのはいいけど、ジャガイモ野郎たち……もといドイツの奴らは海岸線に頑丈なコンクリート防護壁を作っているのでは?と賢明なる英国紳士は想定した。
そこで「遠くから突っ込ませてコンクリート壁を爆破するための兵器」の開発が始まった、というわけ。
……ただ、そんなコンクリート壁なんてそもそも存在していなかったが。

本兵器の発案者はネビル・シュート氏。
航空技術者・兵器開発者でもあるが、それ以上に核戦争終末作品の名著である『渚にて』を著した小説家としての側面が有名な人物である。
どういう発想でこのようなものに至ったのかは不明だが、
「爆薬入りのドラムをロケットエンジンで転がしてドイツの防護壁に突っ込ませよう!」ということになり、本兵器の発案に至った。
なお、パンジャンドラムとはサミュエル・フットの詩「The Great Panjandrum himself(おえらいパンジャンドラム その人)」のタイトルから来ている。

The Great Panjandrum himself(おえらいパンジャンドラム その人)とは

この詩は、サミュエル・フットが、「一度聞いたセリフは全部覚えられるぜ」と自慢したチャールス・マックリンに対して「なら覚えてみろ」と作ってきた詩であり、その性質上、覚えにくい造語、意味の無い単語が多数使われた、脈絡のない文章の塊の詩である。
パンジャンドラムはその詩の中で出てきた頭に小さな丸ボタンを付けて結婚式に出席した人物である。
パンジャンドラムという単語はギリシャ語の接頭語「Pan」とラテン語の接尾語「rum」を使って作った、特に意味は無い造語であり、それ以上解説する中身はない。

この詩は後に挿絵付きの本が出版され、その挿絵から「威張りん坊」や「自慢屋」の代名詞として使われた時代があったらしい。


パンジャンドラムの構造解説

構造そのものは至ってシンプル。まず、1.8tの爆薬を詰めたボビンの両サイドに多数のロケットエンジンがくっつけてある。
で、このロケットエンジンを噴射してその噴射力で「車輪」を回し、目標物に突撃させるのだ。
「車輪」なのは地雷原の突破を想定し、接地面積を下げる為だそうだ。

……確かにシンプルな上に積載に対して速度も向上し、一般的に信頼性が高くなりコストや組み立て時間も抑えられる。
が、根本的な部分でいろいろ間違えている気しかしない。

しかし実際に製作して試験をしてみたところ、「どこに転がるかわからない」だの「砂浜で空回りする」だの「ロケットエンジンが外れた」だのといったトラブルが相次ぎ、9回試験した後に開発は中止された。

ちなみにビッカース社が出した競合案としては、対するドイツ軍の「ゴリアテ」に近い「キャタピラで走行するリモコン式自走爆弾」である「自走爆雷ビートル」という物があったが、こちらはなぜか不採用となっている。
一応技術面・射程や速度・納期・コストなど、問題となる理由は色々と考えられるのでおかしくはない。


で、どこがダメだったのか

素人目に見ても問題だらけのパンジャンドラムだが、具体的に致命的だったのは以下の点だろうと思われる。

  • ロケットエンジンで「車輪を回転させる」という駆動方法
パンジャンドラムはロケットエンジンの推力で本体を回し、走行するという考えの兵器だ。
しかし、ロケットエンジンは短時間での出力は特筆物で使い捨てにも向いているが、単に車輪と組み合わせるだけでは、姿勢制御などあらゆる面で安定性など皆無。
そんなわけで、積載量は落ちてもロケット噴射のみで引っ張る方向を考えた方が良かったと思われる。
(こちらも当時の技術だと命中率に難はあるが、パンジャンドラムよりマシ)
その場合は仮に失敗して不採用に終わっても、ネタ扱いはされなかったはず。
積載量が大前提だったが故の不幸だったのかもしれない。

  • 両輪に多数のロケットエンジン
求められた仕様を満たすためには仕方なかったのかもしれないが、
まず間違いなく推力のかかり具合が左右で異なる&各ロケットの推力のベクトルもころころ変わるので、尚更安定して直進できるわけがない。
しかもパンジャンドラムの構造と相まって、横転する可能性も高くなる。
シンプルな駆動方式であることは間違いないが、この形のまま安定させるとなるとかえって物凄く高度な技術が必要になる。

  • 誘導機能が無い
パンジャンドラムには誘導機能も制御機能も何も無い。
よって発進させたらそのまま転がっていくことしかできない。
それだけならいいが、「発進したらもう手の施しようがない」ために、何かの拍子にバランスを崩して横転するならまだしも、ヘタしたら自分たちの方に戻ってくるかもしれない
一応、試験中には制御用のロープを結わえ付けるなどはしているが……。
ただこれらは想定している使い方と当時の技術力の問題などから、無くて当然の機能だった。

  • 海岸を想定しているのに車輪を採用
整地での使用が前提だったなら、運用や設計の工夫でもう少しは実用できた可能性はある。
が、足場がかなり不安定な海岸では、ただでさえ非現実的なこの兵器の実用化が上手くいかないのは言うまでもない。
前述の要素により元々不安定な挙動だったことと相まって、最も致命的な欠点とも言える。

これらに加えて実際の試作においてはロケットが外れるなど、些細な(?)問題も発生している。
一応補足すると、第二次大戦中ということは近代戦車が普通に存在する時代である。


海外の親戚たち

実はパンジャンドラムのような「自走爆弾」はイギリス以外も考案していた。
ただいずれもペーパープランで終わったり、想定した使い方などがまともだったりしたために、「パンジャンドラム」が ネタ的な意味で 代表的なものである事実は揺るがない。

対独戦向けに計画された、アメリカンパンジャンドラム。
直径3mのトゲ玉の中にレシプロエンジンと爆薬が入っており、
飛行機から投下すると内部のエンジンで転がって自走し、敵兵士はそのまま踏み潰して、戦車に当たると爆発する(トゲは信管)という代物。
実機の製作にこそ至っていないものの、パンジャンドラムと同じく「誘導機能なんて無いからどこに転がってくるかわからない」ということに気が付いたので、ペーパープランで終わる。
パンジャンドラムよりは発想は惜しい。

  • タイヤ爆弾(日本:関東軍)
関東軍が独自開発した、ジャパニーズパンジャンドラム。
爆薬を詰めたタイヤに圧縮空気を詰め込み、空気の噴射で転がすというモノ。
おそらくペーパープランで終わった理由も、パンジャンドラムやローリングボムとほぼ同じで「どこに転がるかわからない」というのが理由だろう。

  • ゴリアテ(ドイツ)
ジャーマンパンジャンドラム。ドイツ軍が誇る変態兵器の一つ。
小型の戦車のような車体に大量の爆薬を詰め、リモコン操作で敵戦車や地雷原に突撃させて爆発させるリモコン爆弾。
「自走する爆弾」という点ではパンジャンドラムなどに近いが、「キャタピラで走行する」「リモコン操作できる」という決定的なアドバンテージがある。とにかく安定性がパンジャンドラムとは桁違い。
……だが、コストの高さなどの問題や何よりもリモコンが有線式なのが災いし、「あれ?こいつ線切れば止まるぞ?」と気づかれてからは、晴れて珍兵器扱いされることに。
ちなみに大日本帝国軍も機銃などへの対策として似た様な兵器を独自に作っていたが、諸々の事情が重なって実戦投入はされなかった模様。
漫画『パンプキンシザーズ』では、ほぼゴリアテ試作品まんまの新兵器を出してあっさり敵に看破されたが、敵兵の考えを読むことで有効活用する意外な活躍場面が描かれている。

なお同じドイツ軍製でより見た目の似たクーゲルパンツァーという謎兵器があるが、おそらく有人の戦車である。


本当に失敗作なのか?

英国面の結晶の一つのように言われるパンジャンドラムだが、「対地ミサイル」「対戦車ミサイル」の原型の兵器と見ることもできる。
また、発想に対して当時の周辺技術が追い付いていなかったためにこんなものになってしまった、とも言える。

実際に似た兵器を先述の通り各国とも考えてはいた。
ただ、想定した使い方と車輪の組み合わせに穴があり、その上で何度も試作・試験していたことはフォローしようがない……。
「各国が考えた似たような兵器」も、各国では企画段階で「無理」と悟って取りやめているのだ。
ゴリアテのみ採用されたが、至らぬ点こそあれど完成度や工夫の具合ではパンジャンドラムよりはるかに高い。

また、ミサイルについては最新兵器としてドイツなど一部の国で既に実戦配備が開始され始めている頃だった。
上記ではかなり誇張して「ミサイルの原型」と称しているがロケット弾とミサイルの違いは主に誘導の有無であるため、ミサイルの原型と言うのは流石に苦しい。
……ミサイルの原型というより、火力重視の劣化ロケット弾と見なすべきか。
そして銃や大砲の進歩によって当時は目立たなかっただけで、ロケット弾そのものは別段珍しいものではなかった。

イギリス軍全体で見れば凄い兵器を色々と開発したり、驚異の生産力を誇ったりしているため、この兵器を無理やりフォローするぐらいならそちらの線でフォローした方が良いだろう。


創作物では

イギリス(国を擬人化したキャラクター)がパンジャンドラムを作ろうとして失敗する描写がある。
また、彼のキャラソンの歌詞にもしっかりちゃっかり登場。君もパンジャンドラムで戦場にレッツゴーだ!

  • 『ファンタシースターオンライン2』
「アンジャドゥリリ」という敵キャラが登場する。
直接のモチーフは輪入道だろうが、語感や形状などから、プレイヤーの間では「パンジャンドラムが元ネタなのでは?」と言われることがある。
バージョン違いのエネミーに「パジャドゥリン」が存在するため、意識したとは考えられる。

宇宙人の兵器として登場。
敵戦艦から射出され、米軍基地や高速道路に突っ込んで破壊の限りを尽くす。
なお、無力な子供を目の前にするとすごすごと引き下がるという紳士的?な一面もある。

  • 『ロックマンDASH2』
「さびた地雷」と「ボーリングの玉」から開発できる「アースクリーパー」が該当する。
少しの段差程度ならバウンドして空中の敵すら攻撃できるなど、パンジャンドラムとしては破格の性能を誇る。

知る人ぞ知るマイナーカーアクションゲーム。
バスとかバギーとかトラックとかに、ランチャーやらミサイルやらを搭載して相手をぶっ壊すというシンプルなゲーム。UFOとかいるけどな
日本のタイヤ爆弾そのものを専用武器として有するキャラがいる。ちなみに、舞台はアメリカ。
パーフェクトパンジャンドラムというべき代物で、坂道だろうが水辺だろうが容赦なく踏破し、鋭角ターンも駆使して狙った敵を追尾する。何このローテクなハイテク兵器。
「ゴロゴロゴロゴロ」という音が聞こえたら、あいつが射出された合図。追尾性能は若干雑だが、数分は追いかけてくるので結構怖い。

映画版で「大学選抜チームに包囲された味方を助けるために、観覧車の軸を砲撃で破壊して敵陣に突っ込ませる」という戦法が登場した。
爆発も自律推進もしないものの、その外見と運用法はほぼ薄くて巨大なパンジャンドラムである。
また終盤のみほまほ愛里寿との決戦では超特大サイズのパンジャンドラム型の回転ブランコが登場。
戦闘の余波で台座が破壊され、正に巨大パンジャンドラムの如く戦場を転がったのだった。

本作に登場するビックリドッキリメカサブ・フライト・システム(MS用の飛行補助機器)である「アインラッド」が、時たま「宇宙世紀のパンジャンドラム」とか呼ばれることがある。
もっともパンジャンドラムと違い、MSを輸送するためのシステム+頑丈なだが。
見た目はアレだが陸海空宇宙問わず活動できる超高性能を誇り、あらゆる戦場でこれが跋扈した。
ただ敵に奪われることは想定していなかったため、奪われると敵もその場で存分に活用してしまうという意味では珍兵器。
何かロックをかけようよ、と言わざるを得ない。

SCP日本支部で生まれた「SCP-066-JP」の画像に、横転したパンジャンドラムの画像が用いられている。
大まかな設定としては「台風の影響?で発生したミニブラックホール内で発生し射出される金属塊『SCP-066-JP-2』」というものである。
どういうわけか日本を狙って発射されており、度々被害を出しているらしい。

  • 『Besiege』
パーツを組み合わせて自分だけの攻城兵器を作り、様々なミッションをクリアするというシミュレーションゲーム。
上手く組み合わせれば投石器、戦車、飛行機など様々な兵器を作り上げる事ができ、当然パンジャンドラムも作れてしまう。
そして自作パンジャンドラムを駆って障害物レースに挑む「P1グランプリ」なる大会が有志たちにより行われている。Pは勿論パンジャンドラムのPだ!
一応はレースという体であるにも関わらず機体に爆弾を組み込むことが義務付けられており、ゴールした暁には大爆発するのがルール。
第一回はBesiegeがオンラインプレイ未対応だった時期のため、応募パンジャンを並べて同時にスタートさせてゴールしたものが優勝(コースアウトした場合は爆発)という純粋な速度レースだったが、
第二回以降はオンラインプレイ対応になり、参加者がパンジャンを操作してコースをクリアする障害物競走の形式になり、ゴールできずに爆発した場合再スタートするというルールに。
速度と操作性を高めて純粋にレースの最速を目指す者、自爆時の殺傷能力を高めてレース展開を何度でもリセットする者、分厚い装甲で生存性を高めてしぶとくゴールを目指す者、そして性能度外視で見た目のインパクトに全てを賭ける者……。
大会で結果を出す機体が現れると、次の大会では発展機や逆にメタを張った機体が出現するなど、その進化は実際の兵器開発競争そのもの。
2023年3月現在で大会の開催は6回を数えるが、どのレースも視聴者に興奮と感動と腹筋崩壊をもたらしてくれる。

公募企画「ぼくの考えた最強偉人募集」にて、応募作品の一つとしてネビル・シュートが登場。
……したのはいいが、その姿は胴体部分がミキサーからパンジャンになったミキサー大帝という、ただでさえ古今東西イロモノ博覧会状態の最強偉人募集でも屈指のイロモノofイロモノ。
更に『Fate Project 大晦日 TVスペシャル 2017』で公開された同作を原作としたショートアニメにも、バーサーカーのサーヴァントとしてパンジャン大帝な姿はそのままにカッコよくリデザインされて再登場という暴挙に走った。
まあ、この程度のカオスは『ひむてん』的には通常営業の範疇だが

  • アッシュアームズ
戦闘機、戦車の擬人化されたキャラが登場するスマホアプリゲーム。パンジャンドラムを擬人化したキャラが登場している。
ユニオンジャックの様な模様の上着を着たピンクの髪の女の子で、固有スキル名も「ぱんころ」と、P1グランプリのパロディ的なある意味完璧すぎるデザインとなっている。
ユーザーアンケートの「実装希望のキャラ」で最も要望が多かったのがパンジャンだったために実装されたのだが、よりによって情報公開がエイプリルフールだったため手の込んだエイプリルフールのネタだと勘違いされまくった模様。
後に人気投票で1位を取った。

第4部シーズン4に賞金首ニンジャ「パンヤンドラム」が登場。
英国系企業「カタナ社」系列の先端技術研究所より闇提供された鋼鉄可変装甲で全身を覆ったビッグニンジャ。回転突進する際は全身がコイルとなり驚異的な電磁力効果であらゆる銃弾やスリケンを無効化し、本人の弁によれば高速回転の最中にはエメツクラフトの斥力すらも生じ完全無敵状態となり、更に、微細なカラテ爆発推進力で急加速する。
その性能で短絡的破壊行為を繰り返して賞金額が高騰した非道強盗殺戮犯罪者と死亡フラグを絵に描いたような姿だが性能自体は意外な程高くニンジャスレイヤーを梃子摺らせる程。

古代遺物「ゾナウギア」等を使用したクラフト要素も売りとしている本作であるが、当然というかパンジャンドラムを作り始める厄災リンクも続々誕生している。
爆弾樽の両サイドに車輪を付けただけの無動力の「車輪型爆弾」として構成したものに始まり、扇風機(推進器兼送風機)やロケットを使って「推力でタイヤを回す」を再現したもの、「自走可能かつ爆発する」まで再現したものまで。

渡河作戦時にATを走らせるロケットで転がりながらレールを敷設する装置が使用された。


そして時を越え、東洋の島国で……

そんなパンジャンドラムだが、ついに実用化に成功した奴らが現れた。
そう、我らが日本である。
とはいっても「自走式爆弾」ではなく、「LEV」つまりロケットという形でだったが。

そいつの名前は「L-4Sロケット」。
1966年から70年に掛けて運用され、日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げた実績を持つロケットである。
こいつは宇宙ロケットのくせに誘導機能を持っていない。
なんでこんなイカレた仕様になったのかといえば、開発当時はまだ兵器開発に対する風当たりが強く(戦後20年ちょっとなので戦争の記憶もまだ生生しかったから無理もないが)……まあ、要するに「どー考えても兵器じゃないじゃん」ってものまで「これ兵器に転用できそうだ」とか見做されれば猛烈に叩かれるという時代だった。
当然、ロケットなんて言ったらほぼICBMとイコールなので、
「また兵器を作ろうとしている!」と(特に一部の偏った思考を持つ皆様から)大ブーイングが来るのは目に見えている。
てな訳で「誘導機能を持っていないものをどうやって他国にぶち込むのだ?言ってみろ」と反論するために、「誘導機能の無いロケット」として本機が開発された。

で、誘導無しでどうやって衛星を軌道上に放り投げるか。
  • 一段目:尾翼による空力効果で機体を安定させる。これはまだ常識レベルだが……
  • 二段目(前半戦):尾翼による(ry
  • 二段目(後半戦):機体をスピンさせてジャイロ効果で安定させる
  • 三段目:引き続き機体のスピンによるジャイロ効果で安定
  • 最終段:一旦「逆噴射」でスピンを止めて姿勢制御で機体を水平にした後、放物線の頂点で再度機体をスピンさせて安定させる
という頭が痛くなるような回りくどいプロセスで「誘導なしでの軌道投入」を実現している。
とどのつまりが「タイマー動作で姿勢を変えるパンジャンドラム」とも言えるロケットである。

なお、イギリス本国でも2009年にノルマンディー上陸作戦65周年を記念したイベントにて、
ちゃんと直進するパンジャンドラムを披露している。
これはロケットの推進力と方向をマイコンで予測制御しているため、不整地の海岸でも走行できる様子。
当時の技術の限界を易々と突破している現代だからこその光景だろう。


その真実

珍兵器として有名になったパンジャンドラム。
だがこの兵器、実験して失敗するまでを前提とした、印象操作の目的の兵器だった可能性が示唆されている
実験に失敗する映像記録が残っているばかりか、一応は軍事機密であるはずの兵器の実験なのに一般人がいるところで実施する、あまり改良していないのに9回も行うなど不可解な点が多いからだ。

また前述のノルマンディー上陸作戦についてだが、イギリスはその作戦がドイツに悟られないように、前段階から様々な情報操作を行うフォーティテュード作戦を展開していた。
当時、イギリスから最も近いフランスの海岸はパ・ド・カレーという地点であり、ドイツもそこを攻められることを危惧し、大西洋の壁と呼ばれる防衛線が最も強固な地であった。
一方、ノルマンディーは距離はあったが防衛線がやや手薄であった。

イギリスとしては攻撃目標をノルマンディーではなく、パ・ド・カレーだとドイツに誤認させ、ノルマンディーの防御が厚くならない様にする必要があった。
そしてパ・ド・カレーには強固なコンクリート壁が作られていた。

このことから、パンジャンドラムの実験とその失敗記録はフォーティテュード作戦の一環として、ドイツにパ・ド・カレーが攻撃目標だと思わせることだった、とも言われている。

が、そもそもこの試験地は他の色々な兵器(普通の兵器含む)の試験なども行っていたようなので、試験地については「わざわざ一般人がいるところで実施した」ではなく、製作会社などの都合で「プライベートビーチではなく単に民間人も入れるような試験場」だっただけの可能性が高い。



最後に。
and they all fell to playing the game of catch-as-catch-can, till the gunpowder ran out at the heels of their boots.
(そこで みんなは 手つなぎ鬼して 遊びに 遊び ブーツの かかとがすりへって 爆竹が破裂するまで)

サミュエル・フットの詩は、この文で締めくくられている。
「catch‐as‐catch‐can」はofの後ろなので名詞の「フリースタイルレスリング」ということになるが、
この言葉には「手当たり次第の、無計画の、ほんの思いつきの」という形容詞の意味もある。
変なところに出て来る「火薬」やパンジャンドラムの語が「偉い人」を意味していたことも考えると、意味深長な符合ではないか?




追記・修正はドイツのコンクリート壁をパンジャンドラムで爆破してからお願いします。


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最終更新:2024年02月14日 14:38