ヨイコノミライ

登録日:2015/06/19 (金) 01:42:42
更新日:2023/10/21 Sat 02:55:37
所要時間:約 10 分で読めます




漫画に、愛されなかった。

人に、愛されたかった。




概要

『ヨイコノミライ』は、きづきあきらとサトウナンキの共同執筆による漫画(サトウナンキは著者としてノンクレジット)。
かつて存在していた出版社「ぺんぎん書房」の、日本初のWeb漫画サービスCOMIC SEED!上で『ヨイコノミライ!』のタイトルで連載されていたが、出版社の倒産によりweb雑誌が休刊、第23話で打ち切りとなり、単行本も3巻で打ち止めとなる。
その後、ファンからの熱い要望で描きおろし120Pを加えた『完全版』が小学館のIKKI COMIXで全4巻で発売され、完結した。


とある平凡な高校の弱小漫画研究部が、一人の女子生徒の介入により馴れ合いの場が乱され、本質を剥き出しにし、崩壊していく物語。
そのため、我々オタクにとっては非常に痛いエピソードがてんこ盛り
登場するキャラクターも「実際にいそうなイタいオタクまたは二次創作家」ばかりで、その筋に少しでも関係のある、あるいは実際にやった過去のある人間には、大変胸に来るストーリーではなかろうか。


ストーリー

平凡な高校、門倉高校漫画研究部の部長、井之上は漫研部員たちの、日々アニメの雑談をするだけで漫画の執筆に取り組まないやる気のなさに困り果てていた。
そんな中、同級生の青木杏の入れ知恵で、彼は毎月、部員の漫画を載せた部誌の発行を提案し、部員たちの創作意欲を上げることに成功する。
杏も興味から入部してくれることになり、ようやく部活が軌道に乗りはじめ張り切る井之上。
だが、彼は知らなかった。杏がひっそりと、部員たちに悪意を振り撒きだしたということに。
そして、「ゴミみたいな消費者」たちにより構成された「馴れ合いの場」が、それぞれが抱えるどす黒い感情の露呈により、崩壊の一途を辿って行った…。


登場人物

○井之上広海(いのうえ ひろみ)
一年生。漫研部長。
小学校時代バリバリのサッカー少年だったところに、友達が貸してくれた『スラムダンク』にドハマりし、漫画の道を進もうとしたが、漫画家になれるほどの創作性が持っていなかったため挫折し、「創作意欲のある集団をまとめ上げ、面白い雑誌を作る」編集者の道を志し、漫研に入部する。
しかし、預かった部員たちは創作意欲の欠片もなくオタク雑談(彼ら曰く「漫画研究」の活動らしい)の日々で、苦悩の連続。
そんな時、杏の加入でようやく部誌の活動が始まるも、今度は水準に達していない原稿、あまりに少ない発行数等といった現実を直視する羽目になる。
さらに、密かに想いを寄せていた杏と、ふとしたことから想いを寄せてきた平松との三角関係問題も浮上。
挙句に漫研が次第にバラバラになっていく中で、天原からは無能扱いされ部長としての地位も天原に奪われ、孤立してしまう。
厳しい現実に打ちひしがれた彼は、すべてを曝け出した杏と向かい合い…。


○青木杏(あおき あんず)
一年生。新入部員。
身体が弱く学校も休みがちで「保健室の姫」と有名な美少女。あとすごい巨乳
井之上とは親しく、彼に部誌のアドバイスをしたことがきっかけで漫研に加入することになった。
漫画には詳しくないという体だったが、実は漫画家の母と編集者の父を持つ漫画家一家に生まれ、小学生の頃から漫画を描いていた、プロ級の漫画の腕を持つ。
アンチの声に押しつぶされノイローゼになった母親の代わりに、父に漫画を描くことを強要され、漫画に対し激しい嫌悪感を持っていた。
そして、惰眠を貪り「消費者」の上に胡坐をかく漫研部員に辟易し、同族嫌悪から彼らの持つ本性を暴きながら漫研の「馴れ合いの場」を崩壊させようと目論む。
その一環として井之上に接近し彼を誘惑するが、彼の実直な漫画への姿勢から、徐々に本気で惹かれ、自身も混乱するようになり…。


○平松かの子(ひらまつ かのこ)
一年生。ダサくてイケてない、いかにも喪女な眼鏡っ娘。一応、メイクしたら美人。
現実が直視できないオカルト少女」であり、常に脳内で中二ファンタジーBL妄想を繰り広げている、この漫画最大のイタいオタク。
提出する漫画も、無駄に長いキャラクターの設定集や、漫画も独り善がりで話の筋もわからないものばかり。
その癖「創作しているのは自分だけ」という自意識だけが肥大化している為タチが悪い。
さらに、中学時代、コミケで同人誌をサービスしてくれた作家を「友達」と思い込み、自宅に不法侵入、無断で訪問を繰り返す、悪質で無自覚なストーカーとなる。
イケてて常識人の姉がいたにも関わらず、どうしてこうなった…。
杏からオカルト関連の話題で褒められ彼女を信頼し、そこへ井之上に恋心を抱き、彼と交際関係になるが、あまりに一方的に話を振るので、次第に距離が生じ、杏との関係への疑念が生じる。
さらに、親友の萌絵の画力が格段に上昇していき、嫉妬と孤立に苦しめられ…。
最期は、井之上との破局と萌絵と自分の画力の決定的差により完全に現実から目を背け、自身の生み出した妄想の中で溺れる道を選んだ。ある意味、この漫画の象徴的結末である。


○有栖川萌絵(ありすがわ もえ)
一年生。超がつくほどのデブぽっちゃり女子。
口ばっかりプロの半可通」。
部内のムードメーカー的存在で、やや図々しい性格。
その一方で大の少女趣味で、私服や寝間着は自作のゴスロリ服を着用している。
自分の体形に深くコンプレックスを抱いており、周囲からの好奇の視線に苦しんでいる。
平松とは幼馴染で、中学の頃からコミケに行ったりオタク談義で盛り上がる仲。
漫画にはそこまで乗り気ではなかったが、ビジュアルタッチの絵を自分で描けるほどには絵が上手い。
そこを杏の弟の和馬が接近し、彼に絵を褒められたことから創作意欲が湧き、漫画家への道を志し、画力を向上させていく。
しかし、日に日に心のバランスを崩していく平松の身を案じ、彼女に忠告するが、心を閉ざした彼女には聞き入れて貰えず、友情が破綻してしまい、最終的には漫研に見切りを付け、一人で漫画家の夢を追うことを決めた。

○天原強(あまはら つよし)
一年生。出っ歯で不細工、しかも独特な口調をするいかにもなキモオタ。
感想と批評の区別もついていない自称評論家」。
評論家「残酷な撃墜王」を自称し部員の漫画に独り善がりな「酷評」をぶつける。そのため、できる限り漫画を褒めようとする井之上とは意見が衝突することが多い。
またネットの掲示板ではアニメの批評としてアンチそのものなコメントをぶつけ、しまいにはアク禁もされたらネットカフェでIPを変えながら荒らす、典型的なタチの悪い荒らし。おまけに「自分だけがこの作品を理解している」と本気で思い込んでいるためなおさらである。
家では親と会話をすることもなかったようであり、家族とのコミュニケーション不足が彼を増長させてしまった。
杏に言い寄られいい気になり、部誌作りで一層「批評」に取り組んで次第に傲慢さを肥大化させ、しまいには井之上を「才能もない口先だけの部長」と断じ、部活から追い出そうとした。
しかし杏は彼を利用していたにすぎず、調子に乗ってアニメ雑談や好きなアニメのDVDを押しつけてくる天原を軽蔑しきっていた。
そして、部誌販売後、用が済んだとばかりに、本性を出した杏から「他人を理解しようともしない馬鹿」、「批評って言うのは感想文でも作者への意見書でもない、あなたの批評はただの自己顕示欲」と公然で罵られ、自尊心を完全に破壊された。


○桂坂詩織(かつらざか しおり)
二年生。スタイルのいい、ボーイッシュなボクっ娘(ただし、フィクション性が薄いため萌えというよりイタい)。
文芸部からはみ出したボーイズ作家」。
文芸部に所属していたが、執筆する作品がサブカル性の高いBL小説ばかりだったため煙たがられ、クラスメイトの大門に誘われる形で漫研に入部。
漫画でも、描く作品はサブカルチックで電波度の高いものが主流。そのため、商業漫画気質の瞬とは仲が悪く、いつも意見が合わない。
厭世的なメンヘラ気質で、しょっちゅうリストカットを繰り返していた。
そして、実は大門に恋心を抱いており、彼女の奔放さ、傲慢さに憧れ、自分に懐いてくることを利用していた。
そんな中、杏に秘密がバレて、恋心も打ち明けてしまい、その恋の進展を唆される。
そして、大門が瞬にアプローチをしかけることに勝手に危機感を覚え、さらに瞬が自分に惚れていることも知ってしまい、自分の身体を彼に売ってしまう。
だが、そのせいで大門は逆上、関係が完全に破綻し、杏にも自身の独善性を突きつけられ、自殺未遂で入院することに。
その後は見舞いに来るうちに素直になった瞬といい関係になった。


○大門夕子(だいもん ゆうこ)
二年生。アホ毛のついた萌え系美少女。
自己愛の強烈なナルシスト」。
声優志望で、常に可愛い自分を演出し、作り声で周囲に媚を売るぶりっ子。そのため、周りの女子からはいかにもな作ったキャラとして馬鹿にされている。
本性はエゴイズムの塊で、高飛車なビッチ。
常に周囲の人間を内面で小馬鹿にしているが、それだけ自信も強くちょっとしたことでも凹まない。
また、他の漫研部員に比べるとリアリストな方で、内心辟易していた。
桂坂に常にくっつき、彼女に依存しているように見えるが、実際は意中の瞬のことで彼女を挑発している。
最終的に、桂坂が瞬と関係を持ったことで彼女を突放し、「ぬるま湯の金魚鉢で足を引っ張り合う場所」と言い放ち一方的に漫研を退部。
以降はキャラを作るのはやめてアパズレっぷりを隠さなくなった。
桂坂のことは「ババァになるまで生きてたら許してやる」と、最後まで軽蔑したままだった。


○内田直(うちだ なお)
一年生。小太りで鈍臭い少年。
何の取り柄もない、オタクに居場所を感じている無能オタク」。
画力も編集力もなく、ただ漫画が好きなだけで漫研に居場所を置き、目立たないように過ごしていた。
ただ、無能感を感じないためにも衣笠兄弟の同人誌即売会は手伝うなど、部のために働いてはいた。
実家でも存在感がなく、空虚な日々を送り続けている。
キャラを「作っている」大門に歪んだ愛情と憎しみを抱き、彼女のアイコラ写真をオカズにしたり、脅迫文を送りつけるストーカーと化している。
しかし、最終的には彼女に正体はバレており、一方的に拒絶の言葉を吐き捨てられ、虚無的に笑い、部を去る。


○衣笠瞬(きぬかさ しゅん)
二年生。同人作家兄弟の双子の弟。
漫画は金儲けの一環とみなしており、商業的な漫画を好む。
性格は軽薄かつ皮肉屋で、女をヤリ捨てたり働かない人間に駄賃はやらないなど、他人には酷く冷淡だが、編集という仕事に甘い考えを持っていた井之上に対して同人経験者として意見するなど、創作への態度は部の中では一番真っ当な人物である。
また上記の性格、好みから芸術嗜好の桂坂とは意見が衝突するが、実は桂坂に密かに惚れている。
桂坂から誘われ彼女と関係を持ち、彼女が自殺未遂を図った時には誰よりも早く駆けつけ、彼女のことを思いやった。卒業後も関係は続いている様子。


○衣笠一輝(きぬかさ いっき)
二年生。同人作家兄弟の双子の兄。
弟に比べ芸術嗜好。奔放な弟とは対照的に落ち着いた性格で、瞬のストッパーになることが多い。
部の騒動に関しては、プライベートの同人サークルが忙しいといって何もしていなかったため、杏の被害を受けることは無かった。


○青木和馬(あおき かずま)
杏の弟。中学生。でもタバコを普通に吸ってる不良。
父の代理として、杏の漫画描きを監視している。
シニカルな性格で、杏の漫研への破壊も見物気分で楽しんでおり正直言って嫌な性格である。
杏に頼まれ、自尊心をくすぐる目的で萌絵に近づき、彼女の漫画を手伝うが、最終的に彼女は折れることなく創作の道に進み、なあなあのままいい関係になってしまった。


○羅☆ガッシュ
平松の「お友達」の同人作家。
平松が中学時代にサービスとして自分の同人誌をプレゼントしたことがきっかけで、彼女にあらぬ期待をかけてしまい、彼女から執拗なストーカー被害を被る。
何度も自宅を訪問され、すっかりノイローゼになってしまった。
しかも平松は彼女の姿をした「王子」を妄想し続ける始末…。









Wiki籠りは、相変わらずです。何も、変わってません。

でも、外に出る前の、力を貯えるための場所。助走するための場所として、ああいう所は必要だと思うんです。

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最終更新:2023年10月21日 02:55