仮面ライダー(漫画版)

登録日:2009/11/16 Mon 15:20:30
更新日:2024/01/23 Tue 14:04:37
所要時間:約 11 分で読めます





仮面の下の真実の顔は悲しみに満ちている…

「仮面ライダー」は、石ノ森章太郎氏による萬画
「ぼくらマガジン」で連載スタートし、同誌の休刊に伴い「週刊少年マガジン」に移籍掲載された。

概要


原作版と呼ばれることもあるが、厳密には本作の映像化としてテレビ版『仮面ライダー』が制作されたのではなく、テレビ版の企画を元に執筆されたメディアミックスにあたる。
石ノ森が原作者名義となっているのは本作の執筆だけではなく、企画段階で設定とライダーや怪人などキャラクターデザインを提供したことなどによる。
テレビ版では語られなかった設定や異なる部分が多く、ストーリーも序盤はテレビ版に準ずるものだが、中盤以降は独自の展開となっている。
改造人間の苦悩や、単なる悪の組織ではないショッカー、連載当時深刻な社会問題であった環境破壊、現代にも通じる社会風刺など石ノ森テイスト溢れる内容となっており、今なお人気を誇る作品である。
第6話「仮面の世界(マスカー・ワールド)」で、ショッカーの大規模計画が仮面ライダーに阻止された時点で連載は終了し、ショッカーとの決着や本郷と一文字の行く末は語られないまま、物語は終了している。


登場人物


仮面ライダー陣営

城北大学生物学研究室の学生で本郷財団の御曹司。両親を既に亡くしている。
ショッカーによってバッタの改造人間に改造されるが、緑川博士によって脳改造前に逃亡する。
感情が高ぶると醜く手術の傷跡が浮かび上がるため、仮面で隠している。
11人のショッカーライダーとの戦いの中で命を落とすが、脳死には至っておらず、脳髄のみで生き残ることとなった。
隼人とはテレパシーを交わすことができる(2人で1人の仮面ライダーWの原型になったとも言われている)。
TV版以上にストイックな性格かつ常に冷静沈着で、お調子者で迂闊な面のある一文字をテレパシーを通じてたしなめることもしばしば。
終盤では機械の身体に脳髄を移して復活し、隼人や滝と共に戦った。
変身後のデザインは、アンテナが先端にいくほど太くなっているなど細かい差異はあるが、基本的にTV版の旧1号と同様のもの。
復活後の外見は、ボディ側面に一本ラインが入る2号と同じものとなり、ベルトの両側面(エナージコンバーター部分)にロケットのような装備を持ち、これによって飛行が可能となっているほか、光線銃(おそらくショッカーライダーが装備していたものと同様のもの)も使用している。
2号と同じコマに描かれている場面では、差異化のためかボディ側面にラインがないように見えることも。

第4話『13人の仮面ライダー』で本郷の前に現れた青年。
本郷と初対面のときには毎朝新聞記者を名乗っていたが、それは本郷に近づくための詐称で、その正体はショッカーライダーの一員であった。
本郷抹殺の命を受けていたが、彼の腕にある改造手術の傷跡で本郷に気づかれる。
戦いの最中、頭部に銃撃を受けた際に洗脳が解けて、他のショッカーライダーと戦いこれらを全滅させた。
その後は本郷の遺志を継いで自身が第二の「仮面ライダー」となり、ショッカーと戦う。
TV版と同様にフリーのカメラマン及びジャーナリストを生業としており、原爆被害を題材にした『黒い雨を追って』という著作をものしたことが語られている。
性格はTV版よりも攻撃的で好戦的、そのうえ軽い無鉄砲な熱血漢として描かれている。
「イエース仮面ライダーだ!」「てんぷらそばにでもはいってろ!」「こりゃあ馬カにはできねぇ代物だぜ」とか一々うまいことをいう。
水底村という小さな漁村の出身で、第5話ではその故郷が戦いの舞台になる。
ショッカーライダー時代に使っていた光線銃をショッカーライダー戦後は使わなくなったのは、本郷の命を奪った忌まわしい武器でもあるので、敢えて廃したと思われる。
なお外見は、TV版旧2号のように肩から腕、及び胴体から足の側面に一本のラインが入っている(他のショッカーライダーも同様)ことを除けば1号(つまり旧1号)と特に変わらない。

  • 緑川博士
本郷の恩師。ショッカーに協力させられていたが、本郷と共に脱出した。
TV版と役どころは変わらないが、より意志の強い人物に描かれている。
脱出計画の一環として本郷を改造人間に推薦しており、本郷が改造される前に脱出する予定だったがそれを果たせなかったことを後悔していた。
本郷と共にショッカーと戦う決意をしていたが、くも男に裏切り者として抹殺された。

  • 立花藤兵衛
TV版とは違い、本郷の父の代から本郷家に仕える禿頭の老執事。
本郷が死んだ後は一文字のサポートをする。

石ノ森版『仮面ライダーアマゾン』や、すがやみつる版・山田ゴロ版・仮面ライダーSD 疾風伝説等各種コミカライズ、更には『シージェッター海斗』にも同様の外見で登場する。
また、実写映画『仮面ライダー3号』でも本作をモデルにした姿で登場している。

  • 緑川 ルリ子
緑川博士の娘。当初は本郷が緑川博士を殺したと誤解して憎んでいたが、真相を知ってからは本郷に協力するようになった。
本郷の死を境に登場しなくなる。

  • 浩二
第6話『仮面の世界』で登場する少年。両親の被爆のために白血病を被っている。
そのため、余命は短いが一文字のことを慕っており、一文字が見舞いに訪れるたびに体を張って元気な姿を気取っていた。
一文字は「改造人間の技術を応用して血を全部入れ替えれば治療できる」と考え、ショッカーのアジトから医者をさらってくることを約束した。
だがそのことを忘れてたためビッグマシンとの激戦で基地が大爆発したためやむなく断念。本編の最後で息を引き取った。

  • 順子
浩二の姉で、一文字が想いを寄せる女性。
一文字が浩二を救えなかったことを責めなかったが、「人類は科学という武器で戦う相手を間違えている」と嘆いた。

  • 滝二郎
密かにショッカーを探っていたFBI捜査官。テレビ版での滝和也に相当。
独自の情報網で日本におけるショッカーの暗躍と「10月計画」を探っていたが、仮面ライダーの存在は把握していなかった。
日ノ下電子に忍び込んでいた際に一文字と遭遇し、当初こそ互いの勘違いから敵対するも、間もなく共闘するようになる。
ショッカー怪人をも倒す光線銃などを保有しており、単身でも怪人とある程度渡り合えるほか、ジャガーマンとの初戦では一文字の窮地を救った。
サングラスに大きめの鼻が特徴でやはりすがや版『新・仮面ライダー』の滝和也の外見に流用されている。


敵対者

【本郷篇】
ショッカーの改造人間で、仮面ライダーが初めて戦った怪人。TV版と違い、腕が4本もある。
口から糸を吐き、小型のクモロボットを操り、本郷と緑川博士を発見し、博士を殺害した。
仮面ライダーとの戦いで全ての腕を失いアジトに逃亡し、さらなる改造を受けてリベンジを挑む。
だが、二度目の敗北を恐れて自決した。

  • うつぼ男
死にかけていたくも男をアジトまで連れ帰ってあげた怪人。
仮面ライダーオーズ』でちょろっとだけ登場する。

TV版よりコウモリそのものの姿になっている。
翼で空を飛び、噛みつくことで人を狂わせるB(バット)ビールスをばらまき、ルリ子と藤兵衛を狂わせた。このビールスに対抗できるワクチンはこうもり男の翼にある。手の爪には痺れ毒が仕込まれている。
最期は翼をもぎ取られワクチンを奪われた後、お墓にあった十字架で串刺しにされた。

こうもり男との会話相手として登場。そんだけ。

TV版よりコブラそのものの姿になっている。人間を溶かす猛毒とが武器。ブーツには改造人間探知機であるOシグナルが装備されている。頸が伸びる。
コブラになっている手は左腕(TV版では右腕)。ライダーとの戦いで左腕を破壊されてからは左腕を機械のコブラ(火炎放射器内蔵)に交換して復活する。
「よみがえるコブラ男」ではメドゥサ(美代子)と共に本郷に襲いかかるが、暗闇の中でメドゥサの誤射を受けて死亡。
かつては晴彦という名前だった。

  • へび姫メドゥサ
晴彦の恋人、美代子が改造された姿。ギリシャ神話に出てくるゴーゴン三姉妹の一人と同じ名前を持つ。
その姿は人間とほぼ同じ姿だが、頭は機械のヘビがたくさん隠されておりヘビの口から出る光線や生物を石に変える毒針で攻撃する。
仮面ライダーと見誤ってコブラ男(晴彦)を殺害し、彼の後を追い自ら頭を自分のヘビで攻撃し自殺する。

本郷猛を抹殺するために送り込まれた12人の仮面ライダー。本郷と合わせて死を表す十三人。
脳改造が行われているため怪人バッタ男とでも呼ぶべき存在であり、サイクロン号に乗り強力な光線銃とサーベルで武装している。
仮面ライダー1号の反撃に遭いつつも殺害に成功したが、メンバーの一人である一文字隼人の裏切りによって全滅した。


【一文字篇】
  • ゴッドショッカー
ショッカーの首領らしき存在。水底村の基地でカニ男に自爆を指示する声のみの登場。
本作の範疇ではその正体や最終目的については一切語られない。

  • カニ男(クラブマン)
TV版のカニバブラーとはデザインが全く違い、両手ともハサミ状になっている。エビ男の部下として登場。「ギエン」としか喋れない。
口から目潰し泡を噴く。腹の両側に噴射装置が付いていて空を飛ぶことができる。
仮面ライダー2号に両腕をへし折られた挙句、最後は基地ごと自爆。

  • エビ男(仮称)
水底村で兵器開発を行っていた怪人。空飛ぶシビレエイや、鯨や鮫を爆弾化する実験を行っていた。
海底基地に乗り込んだ仮面ライダー2号をワーム(虫けら野郎)と罵るが、お前こそ天ぷらそばにでも入ってろと言い返された上カニ男の泡攻撃をライダーの楯にされて全身に浴び、苦悶しながら機械の中に倒れ込んでショート……本当に天ぷらと化した。

  • イソギンチャク男(仮称)
TV版のイソギンチャックとはデザインが全く違い、顔と両手がイソギンチャクになっている怪人。
海底基地で仮面ライダー2号に襲い掛かるが、股間を蹴られ触手をむしり取られて死亡。

  • 蛾男(仮称)
TV版のドクガンダーとはデザインが全く違い、全身が黒く細身で巨大な口吻が目立つ。
10月計画を追っていた一文字の下に送り込まれた怪人その1。日の下電子社長の女性秘書に化けて行動していた。
翅から一振りでゾウをも眠らせる「ねむり粉」を放つ。飛べないらしく、高所から下りる際には縄梯子を使っていた。武器は鋭い口吻。
眠らせた一文字を殺そうとするも、改造人間化の素材として連れて帰ろうという欲をかいたために取り逃がす。
(言うまでもなく一文字はもともと改造人間なので完全に無意味、あるいは脳改造だけで済むと思ったのかもしれないが)
ちなみに女に化けていた下はハゲたおっさんであったが、その下から蛾として出現したため本当に男という確証はない。言葉遣いは男っぽいが
女性秘書への変装を見抜いて自慢げな一文字に本人がそう指摘してから正体を現している。

日ノ下電子で待ち伏せしていた。
ブラックジャガーそのものの姿で、ライダーの人工筋肉をも噛み千切る電磁牙を持つ。
仮面ライダー2号と交戦中、滝の光線銃で射殺された。

蕁麻疹ではない。
ショッカー地下要塞の主で、実質的にこの萬画のラスボス
巨大(ジャンボ)な電子頭脳(コンピューター)から発せられる電波で全人類をロボットの如く操ろうとする十月計画(オクトーバー・プロジェクト)を企てる。
電磁波を操る能力を持ち、あらゆる機械を狂わせることができる(曰く「機械に催眠術をかけている」)。
それはライダーの生命を維持するメカニズムさえも例外ではない。まさに改造人間にとって天敵である。
その力で2号を苦しめるも、救援に来た新1号の策略で電子頭脳まで狂わせてしまい、その自爆に巻き込まれ消息を絶つ。
後の『EVE』では生きていたということにされた。

  • 狼男(仮称)
TV版の狼男とはデザインが全く違い、狼そのものの姿で、台詞も無いので言わて見れば手や下半身が人間っぽい程度。
地下要塞のカモフラージュとして作られた牧場の警備を担当。滝を襲うが1号ライダーの光線銃で倒された。

  • ケンタウルス(仮称)
狼男と共に警備を担当。光線銃が武器。こちらも光線銃で倒された。

地下要塞で2号ライダーと戦った。

モニター越しにビッグマシンの指示を受けていた。

十月計画

日の下電子から新発売の、特殊な装置を埋め込んだ腕時計とテレビを世間に流通させ、地下の電子頭脳から誘導電波を発して人類の思考を操るというもの。
この腕時計とテレビは従来の10分の1の価格で10倍のスペックというとんでもない代物。
当然不当廉売だという抗議は来るが、それはショッカーが関係筋に手を回し握り潰していたとのこと。


余談


石ノ森の弟子であるすがやみつるは『テレビマガジン』『冒険王』などで同作のコミカライズを手掛けていたが、こちらもキャラクターデザインなどはこのマガジン版を踏襲している(怪人やライダーの外見はTV版に統一している)。
これ以降もすがやみつるは非常にグロい仮面ライダーシリーズのコミカライズを『ストロンガー』まで手掛けているが、このノウハウが後に稀代の怪作『ゲームセンターあらし』につながることになる。

ちなみにこの漫画版の設定を多く再現し、映画化されたのが『仮面ライダー THE FIRST』である。
本作をそのまま実写化したわけではないが、本郷と一文字は本作とかなりイメージの近い役者が演じている他、コブラ男晴彦と美代子の恋人設定も強調されている。
こちらはあの江川達也によってコミカライズされたが、落書きレベルの最低な作画で、何を血迷ったか改造シーンに原作にない卑猥な要素まで盛り込みあまりにも悲惨な出来になった。
遂には熱血漫画家で大の石ノ森ファンかつ『仮面ライダーZO』のコミカライズも手掛けた島本和彦は、
自身がパーソナリティを務めるラジオで「書きたくないなら書くなって感じですよ!!」とキレた。
あの実写版デビルマンにすら褒めるところを探そうとした島本氏が、である。

また、『特撮エース』誌で連載された小説作品『仮面ライダーEVE』は、この萬画版の続編であり、時系列的にはTVシリーズで言う『ZX』の後日談であるものの(同作には『BLACK』並びに『RX』は存在してない)、本郷猛の状態やショッカーの内情については萬画の設定を踏襲したものとなっている。

仮面ライダーSPIRITS』はTVシリーズ準拠の作品だが、本郷と一文字が感情が高ぶって手術痕が浮かび上がる場面があったり、
旧1号&旧2号篇では旧1号時代の本郷がショッカーライダーと交戦し、その中の一人になるはずだった一文字が2号として本郷に助太刀したりと萬画版の設定や展開を彷彿させる場面が散見されている。

映画『シン・仮面ライダー』はTVシリーズ旧1号編をベースとしつつも、一文字隼人など本作から取り入れられたと思しき要素も散見できる。


ただ、残念なのは…
あたしたちwiki籠りが「追記・修正」という文明の武器で…
戦う相手を間違えていたことが、分かったことです…。

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最終更新:2024年01月23日 14:04

*1 尤も、1949年には既にテレビを用いた大規模洗脳を描いた有名作品『1984年』が存在しているし、この1971年にはチリでコンピューターと通信を用いた経済管理『サイバーシン計画』が検討されているが