ロケットマン(漫画)

登録日:2011/01/29(土) 08:26:35
更新日:2022/04/03 Sun 06:50:54
所要時間:約 6 分で読めます





「道は前にしかついてない!! 他の道は僕が全部壊した!!」


2001年11月号から2005年1月号まで月刊少年マガジンで連載された、加藤元浩作の漫画。全10巻。
水木しげる貸本漫画デビュー作とは関係ない。
殺人事件や日常の謎を扱うミステリー作『Q.E.D. 証明終了』の推理要素をいくらか残しつつ、ある種冒険活劇的なテイストを交えた作風。
なんていうジャンル名になるんだろう…?


とある男との関わりをきっかけに、巨大情報組織のエージェントとして世界中の人・事件に出会っていく少年のストーリー。

組織の少年エージェント、と書くといかにも中二臭そうなテーマを扱いながらもそれを鼻につかせない。
「『主人公に隠された能力や才能、特殊な武器』といった手法を用いず、それでいてあからさまな程の少年漫画的展開を見せる」
という、正しく「少年漫画」として一つのお手本のような作品になっている。
作中では、過去のカンボジアの内戦を扱ったり、中東の紛争に介入しようとする某正義の国のエージェントとのやり取りも描かれる。

【あらすじ】

父親と東京で二人暮らしをしている中学生、水無葉。
カモとして不良にたかられる毎日を送っていた葉は、ある夜、刃物で刺された謎の男と出会う。
偶然その場に居合わせていた同級生、長月弥生と共に倒れた男を自宅に運んだ葉は、弥生の前で彼の傷を縫合してみせた。
驚く弥生に、葉は祖父に医療技術を教わっていた事、また祖父を手伝っていたはずの頃の記憶を覚えていない事を明かす。

日本人には見えないその男は間もなく目を覚まし、Rと名乗る。
ある組織の任務で日本に来た事情を話したRは、話を聞かせすぎた代償として、葉に自分を手伝わせる。
「約束する。これをやり遂げたとき、オマエは真実を目にする」と言いながら。

【用語】

『トゥルー・アイズ』
特定の国家に所属しない立場でありながら、世界最大の実力を誇る情報組織。
依頼に応じて情報の調査・管理や処分を請け負っている。
某正義の国の情報機関からは嫌われ、時に小競り合いが生じている。
その実態は、冷戦終結時に米・露両国に取り残されて職を失ったスパイを、アイエネスの父がまとめ上げたもの。

【登場人物】

○水無葉(みずなしよう)
本作の主人公。(マンキンとは関係ないよ。)
小さい頃の記憶の欠落が原因で人生に実感が持てず、日々を無気力に過ごしていた。
嘘にしか見えない日々に嫌気が差し、Rの言う「真実」を見極めるため、彼と行動を共にする。
Rを通して未知の世界に触れるなか、いつしかRには信頼と憧れを抱くが…。

年齢的に体が出来ておらず、腕っ節も弱い。
荒事の経験にも欠けるが、土壇場での機転と柔軟な発想に長ける。
そして何より強い精神力を持つ。

失った過去の記憶は、アイエネスの探す「何か」に関わりがあるらしい。
作中一度だけ銃を撃ち、それを最後に二度と持たないと誓う。


○R(アール)
突然葉の前に現れた男で、物語序盤の葉の導き手にして相棒。
「R」はレイ・ブラッドベリのSF小説を基にしたコードネームで、作中で本名が明かされることはない。

陽気な性格で、荒事の中でもそれを崩さない。

情報組織『トゥルー・アイズ』のS級エージェントで、紫霞と並びトップクラスの戦闘技術をもつ。
宇宙に出てやりたい事があり、そのためにロケットの部品を報酬として任務をこなしている。
ロケットの組み立てを自身で行うなど、その方面の知識に長ける。

香辛料が苦手。
「『真実の目』は自分にしかついていない」を信条とし、自らの組織の名を嫌う。
殺しをせず、銃をはじめ武器を持たない主義で、銃を持つのは作中でただ一度。


○長月弥生(ながつきやよい)
葉のクラスメイトで、他の加藤元浩作品とは違い、やたらと冴える勘を除けばごくごく普通の女の子。
葉と真逆で活発な性格。結構学校ではモテている。

葉がなんとなく「普通とは違う」事を感じ、興味津々。
Rが現れてからは、二人によくついていく。
親に嘘をついてまで無理やり海外にまでついて来るほどの行動力を持つが、葉とRが危険と判断する場からは無理やり帰される。

あまりRを信用していない。


○アイエネス
若くして『トゥルー・アイズ』を束ねる女性。
優秀、かつ冷静な人物で、平然と冷酷な判断を下すこともある。
通称「情報の魔女」
関係者からは、「明日世界が滅びるとアイエネスが言うなら、それは間違いなく起こる」と言われている程。

Rとは個人的に知り合いである様子。


○紫霞(ジーハ)
『トゥルー・アイズ』に所属する傭兵。おそらく中国系の人間?
採用試験として、同時に試験を受けたRと刃物で殺し合ったことがある。
そのときの結果(互いに必殺の間合いの斬り合いでRは一歩引き、紫霞はさらに踏み込んだ)から、アイエネス直属の護衛となる。

任務は護衛・暗殺などの荒事に特化している。
Rと違い銃器を用いた狙撃なども行い、特に刀での近接戦闘を得意とする模様。
冷酷な性格でRとは反りが合わないが、Rの実力は評価している。




以下、序盤のネタバレ























手伝いの報酬として、Rは組織のデータバンクから葉の記憶の手がかりとなりそうな、葉の母親に関するデータを手渡す。
しかし、これが何故かアイエネスの逆鱗に触れて組織を敵に回し、Rは紫霞を差し向けられる。
突きつけられたのは、葉を殺さなければロケットの部品の供給をストップするという脅迫だった。

迷いつつも手を下せないRは一度は葉・弥生と共に組織に捕らえられてしまう。
脱出し、無関係な弥生を逃がした上で残った二人は、葉の記憶に隠されたアイエネスとの取引材料を探す旅に出る。

旅先で自身の記憶を取り戻す葉。
しかし、アイエネスの周到な罠にかかり、二人は殺し合いをさせられる羽目に。
葉は銃、Rはハンデとして刀。
勝負は葉が勝ち、滝の上に追い詰めたRに銃を向ける葉。
銃声が鳴り、Rは滝底へ落ちていった。

勝者の葉に、報酬としてアイエネスは母親のことを教えると言う。
それを断り、葉は決意する。
「情報はいらない。そのかわりRのロケットをよこせ!」
そう、Rのかわりに組織のエージェントとなってロケットを完成させることを。


ちなみに項目冒頭の台詞は、新米エージェントとなった後、ある任務のなかで自分の無力を味わった葉が、それでも立ち止まらず進んでいく為に心の中で発したもの。

これ以降も物語は進み、読み出せばなかなか止まらない展開が待っている。
できればもっと長く連載して欲しかったなあ。


未読で、ちょっとでもわくわくした人にはぜひお勧めしたい。




あと以前に読んでいて懐かしくなった人、よかったら追記・修正お願いします。

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最終更新:2022年04月03日 06:50