Q.E.D. 証明終了

登録日:2011/03/31(木) 06:17:41
更新日:2024/01/12 Fri 11:08:44
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我々は

斯くの如くして先の命題を

そうせよと初めの折に請われし侭に

証明せり


『Q.E.D. 証明終了』は加藤元浩による漫画作品。
1998年に読み切り形式で連載開始し、現在は以前掲載されていたGREATとマガジンZとが統合されたイーノやマガジン+にマガジンRと、掲載誌の休刊が相次いだが今のところは講談社のWeb媒体での掲載に落ち着いた。
イーノまでは以前と変わらず隔月発行だったが+でついに事実上の季刊化をしてしまったが、読者には(作者にも?)支障はあんまり無い。
単行本は50巻まで刊行されたのち、マガジンR連載を期に『Q.E.D. iff -証明終了-』と改題して2023年時点で25巻まで発売されている。

雑誌を講読する人には親切な仕様として、基本的に1話で完結するスタイルをとっている(iffからは月刊誌になったので前後編で完結するように変更、単行本時に1話に直される)。
電子媒体での連載に移ってからも1話当たりのページ数は変わらないがそれをさらに分割して週刊か隔週で少しづつ配信するようになっている。
そのためコミックスも主要人物二人を基本覚えておけば読める。
ただその1話が約100ページにもなるので、しっかり読もうとすると結構疲れる。単行本1巻に僅か2話しか収録されない。
1度だけ3話程を費やして語られた長編エピソードもある。

作者は親雑誌である月刊少年マガジンで同世界観の作品『C.M.B.』を平行して連載していた。
月の執筆量は合わせて約100ページと、総仕事量は何気に週刊漫画作家にも迫るほど。

ちなみに2023年現在では月刊少年マガジンに空のグリフターズ~一兆円の詐欺師たち~に次いで『ないない堂~タヌキ和尚の禍事帖~』という漫画を
連載している。


ちなみに『Q.E.D.』とは、与えられた命題を証明するときの結び文句の一種で、「よって命題は証明された」の略。
作中では必ず何かしらの形でこの言葉が現れ、以降は謎の解明に移る流れになる。

そのまま回答を見るのも良し。
一旦読み返して自分の推理を展開するのもまた楽しいかも知れない。

なお、主人公が理系の天才という性質上、プレミアム懸賞問題やら難解な話題が出てくる。一応噛み砕いて説明してくれるが、無理に理解しなくてもいい。

時折、主要人物2人のキャラクターはそのままで未来など異なる世界線でやったりする。この場合、大体2人は初対面。目線が事件被害者の幽霊だったりしたことも。

【登場人物】

■燈馬想(とうま そう)
主人公の少年。
15歳でMIT(マサチューセッツ工科大学)を主席卒業した後、日本の高校に入学し直した経歴を持つ。
感情の機微に疎いこととその経歴から周囲に避けられていたが、可奈と知り合うことで日々を騒がしく過ごすことに。
知識は広範に渡り、先攻していた理数系だけでなく法、歴史、古典文学や生物、その他雑学にも及ぶ。わけがわからん。
プログラミングなども長け、非公式だがWindowsに当たるOSの開発に携わってさえいる。その他様々な特許も有しており、生活はその特許料で賄っている。
その代わりなのか、どうしようもなく運痴*1で音痴*2。また、整理下手で自分にとって何が大切か否かがわかっていないところがある。
趣味は知識収集と思考実験で、特に珍しい文献には目が無い。実はゲーマーという一面もあり、ネット対戦を通じて意外なところに人脈を築いていたりする。
Q.E.D時代はマンション暮らしであり、家は本で埋まっており、それでも足らずに倉庫丸々一つ貸し切っているという。
Q.E.D. iffでは本の量が多すぎると言われ一軒家を借りて住んでいるが、本は処分したと言っていたが
多い。どの辺が処分したの……? と言った感じである。
事件に出くわす原因は世界中の知り合い絡みが半分、万事に首を突っ込む可奈のせいが半分。
その度に解決役を任される。
解決後は「以上、証明終了です」がお決まりのパターン。
理屈に合わないことの真実を暴く」が目的のため、犯人に強い感情を示すことは稀であり淡々と謎を解くが、
無神経に真実をひけらかすわけではなく、真相を明るみにしない方が良さそうな時に相手の承諾を得たり、裁かれるべきでない犯罪を見逃したりすることもある。
当初は合理性重視の無機質な面が強かったが、感情的になったり負けず嫌いな面を見せたりし始めている。エイプリルフールにアホな悪戯を敢行したことがある。
日本では1人暮らし。年末には可奈の家にお邪魔することも。
なお、彼的には可奈との関係は『水原さんの言う通り』とのこと(ただし、聞かれたら付き合ってないと答えるであろうことを見越しての発言の模様)。少なくとも、無関心ではない。
そして滅多にないが可奈が精神的、肉体的に問わず傷つけられた際には静かな怒りを見せ、犯人達に精神的な屈服をさせる事もある。

彼の両親はそろって世界中を飛び回っており、家に帰ってくることは滅多にない。加えて、独特すぎる思考にため、急に予定を変えることさえある。

兄弟作品であるC.M.Bでは彼のイトコである榊森羅が主役を務める。


■水原可奈(みずはら かな)
想と同級生で、金髪ポニーテールが目印の女の子。
面白いこと好きの活発な性格で、想をあちこち引っ張りまわす。正義感も強く、何か頼まれたら基本断らない。
学校の成績は残念だが身体能力に優れ、とにかく強い丸腰のヒロインが狙撃体勢に入っているスナイパーとタイマンして余裕で勝つ推理漫画は本作ぐらいだろう。
部活は剣道部であり、あまりの強さに女武蔵とも評される。実戦ではもっぱら素手で戦ってるのでこれでも枷がある。
スポーツなども初めてやったのにインストラクターが教えることがないと投げるほどで、時に潜入などにも有効活用される。
事件時には参考人への聞き込みを行い、もっぱら想の助手役として活躍。保険の調査員などになりすましたりもする。あと犯人撃退とか。
調査員として潜入した際の物怖じのなさや武器を持った人間相手に対する立ち回りなど、「何なんだよ、あんたはぁ!」と思えるレベルのスペックを誇る。
Q.E.D. iffでは自前の変装技術で実在する外国人女性に成りすまして一人二役を演じながら犯人グループに接触するなんて芸当までやってのけた。お前はどこのスパイだ。
勉強は苦手で想らの学術的な発言を全く理解できない一方で、上記のように機転はかなり利く。想の策略もあって、一度「エイプリルフールに世界中で最高レベルの嘘をついた」という賞をもらった*3ことも。
ちなみに想よりちょっと背が高い。
初めはムカつく変人としか見ていなかった想に対し、最近は…?
頻繁に一緒にいるので付き合っているとかの噂もあるが、本人の前で言おうものならキレて手が出るので誰も指摘できない。
彼女曰く、想との関係は後述の想のセリフ同様の意味で『花見みたいなもの』とのこと。


以下、準レギュラー

◆水原幸太郎(みずはら こうたろう)
可奈の父で、捜査一課の警部。娘とは似ても似つかぬ強面。
捜査に対しては落ち着いた考えを持ち、また想が居合わせた時にはその助言を受け入れる懐の深さがある。いかにも「探偵の力は借りん!」とか言いそうなキャラだが、全くそんなことはない。
また彼自身もかなりの切れ者であり、想の力を借りずに真相に至ることも多い。
なおフルネームが判明したのはかなり後。ずっと警部警部言われてたお人。
年末年始に家に招いたりなど、プライベートでも想のことは気に入っている様子。


◆笹塚真人(ささづか まさと)
水原警部の部下。イケメンで性格も至って真っ当な良き刑事。
初期からちょくちょくモブとして登場しており、彼が事件の関係者になるエピソードで初めて名前が明かされる。


◆シド・グリーン
MITでの想の親友にして理解者。人をよくからかう陽気な人物で、その性格から周囲には『ロキ』の呼び名の方が通っている。
想と同じく数学を学び、想と出会うまでは自分と議論できるだけの友人に恵まれずにいた。


◆エバ・スークタ
インド生まれの情報工学者。
同じくMITに所属し、シドの相棒として過ごす。
穏やかで心優しい性格で、シドを普段から気遣っている。


◆燈馬優(とうま ゆう)
想の妹。兄と違い、ごく普通に年齢相応の女の子。
両親が世界中を巡って仕事をしている都合で、現在アメリカに1人暮らし。
兄妹仲は良好ながらも想の人間性を理解できず、可奈の仲介でようやくそれが氷解することになる。想のことは名前で呼ぶ。
言葉を聞き取る能力に優れ、多くの言語を使いこなす。
その為かふと聴こえた言葉から次の言葉を連想し続け、ボーっとする癖もあったり。下手をすると記憶がすっ飛ぶほど没頭するため、事故が発生する危険性もある。


◆アラン・ブレード
世界NO.1のシェアを誇るOSの開発元・アランソフト社の社長。
想とは古い馴染み。優秀な人材として彼を引き抜くべく、嫌がらせじみた強引な手段で迫ってくる。
総じて性格には難があるトラブルメーカーだが、いいところもそれなりにある。


<探偵同好会>
以下3名で構成され、名称通り(?)の行動を日々行う。
事件を『自分達で起こして』解決しようとするなどで問題を起こし、なぜか想と可奈はそれに巻き込まれる。
後にミステリ同好会へと名前を変え、メンバーに1名ドMが追加される。

◆江成姫子(えなり ひめこ)
探偵同好会の創設者にして部長。
女王様っぽいので仲間内で「クイーン」と呼ばれる。つまり江成ークイーン。


◆長家幸六(ながいえ こうろく)
探偵同(ryの会員にして、長家(長屋)だから通称「ホームズ」。
自称理論派ではあるが論理には穴だらけ。
眼鏡。カブトムシ。


◆森田織理(もりた おりさと)
探(ryの会員で通称「モルダー」。
他と同じく推理マニアだが、何につけても宇宙人や幽霊を話に持ち出す。
ある人物との問答ではちょっといい台詞を残したり。尤も、相手には不格好な理屈とか言われたが。
「人類がまだちゃんと宇宙人と会えないのは仕方ないんです」
「ほォ……、なぜ?」
「オレが一番最初に会うからですよ」


【エピソード一覧】
※現在個別記事があるもののみ記載。


【関連項目】


ジャンルとしてミステリーを謳いつつ、本作では殺人事件に出くわすのはせいぜい半分くらいの割合。
かつその殺人事件にしても本作では「結論として自殺だった」というオチである事も比較的多い。
一部には犯人、もしくは登場人物達による「心の問題」で起こされる、「事実の捻じ曲げ」によって事件が難解化する場面も見られる。
(例1:初恋の人が人を殺したのを見てしまった。→(いや、今回の事は別の人間がやったんだ)と見なかった事にし、犯人をかばう。【ただし、あくまで別人が行ったと思っているので、証拠隠滅は行っていない。】)
(例2:俺の占いは絶対に当たる!間違った事がないからだ!→間違った際のクレームを聞かず、忘れていたため。都合の良い事しか覚えていない。)
etc…。
しかし、そのいずれもが理路整然としたロジックで解決される様はお見事。

そして、人命に関わらない程度の犯罪や事件と呼べないような小さな謎を扱ったりするのが残りの半分(参考→日常の謎)。コンゲーム(騙し合い)なども割とあり、こちらも面白い。
扱う事件も多岐にわたり、場合によっては詐欺師と戦ったり、バイト先のトラブルを解決したりする。

また、犯人の動機は名探偵コナンに近く、殺人が少ない事もあってか復讐より、名声や金による物が多め。

様々な理系知識の紹介とそれを絡めた事件も多く、そういった面でも楽しめる。
(ちなみに兄弟作品の『C.M.B.』では逆に歴史や地学等の話が多い)

主人公を筆頭に変人が多いものの、折々深い言葉が飛び出すことも本作を印象付ける要因なのかも。
以下に1例として想の言葉を挙げておく。


「君はなぜMITを出た後…日本の高校に入ったのかね?」

「お花見で見る、桜みたいなものです」

「形のない全体があって、そしてそれ全部があるだけで楽しくなるような…」

「今は形のない、そういう物に触れていたいんです」




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最終更新:2024年01月12日 11:08

*1 ただ、言うほど身体能力の低さが目立つ場面は多くはない。これを言ったのは可奈という点も加味すべきかもしれない。

*2 「周囲を石化させる」と喩えられるほどの破壊力。

*3 実は前年度に想も貰っているのだが、基本的に参加は自由なのだが前年度受賞者だけは受賞者の責任として翌年も出なければならない