ISIL(イスラム過激派)

登録日:2015/02/20 Fri 23:05:01
更新日:2023/08/24 Thu 20:22:28
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「イスラム国」はイスラム教徒ではない。

奴らはモンスターだ。



※引用 シリア騒乱と修羅の世界情勢


概要

ISIL(Islamic State in Iraq and the Levant/アイシル、イラクとレバントのイスラム国、イスラム国)とは、中東のイラク・シリアにまたがって武力による恐怖政治を敷いて残虐行為を繰り返すイスラム系の過激派テロリスト集団である。
別名「ISIS(イラクとシリアのイスラム国)」。
イラクのフセイン政権崩壊後の軍属や行政経験のあるバアス党*1員などのイラク人や、過激グループ「アルカイダ」から流れてきた一部メンバーなどが主な構成員となっている。
自分たちの担ぎ上げた預言者(と自称する存在)を崇拝し、全世界のほとんどの異文化を全く認めず、
自分たちの教えにわずかでも背いたり背いたと思われる言動は凄惨な手段を用いて非常に厳しく罰する。
殺害したあとの遺体なども、見せしめによる恐怖植え付けと宣伝効果を狙い、あえて路上に放置したり、恣意的に損壊するなど極めて残虐非道であり、
他の過激派テロリストですら非難する場合すらある。
アルカイダと関係する武装集団であるが、アルカイダ指導者の解散命令を無視するなど仲が悪い。というかあまりの残虐さ故に他のほとんどの武装集団と不仲であり、
2014年にはアルカイダ側から無関係だと宣言が出たり、シリアの反政府組織が連合してISILを攻撃したりした。


前史

2000年前後にザルカウィー氏がヨルダンなどで築いた「タウヒードとジハード集団(JTJ)」が前身。
アフガン戦争後にイラクに接近し同国内で様々なテロ活動を行う。2004年にアルカイダと合流し、名前を「イラクの聖戦アル=カーイダ組織」と変更するも、外国人義勇兵が中心であったため、イラク人民兵とはしばしば衝突した。

その後2006年にはイラク人民兵との対立をきっかけに「ムジャーヒディーン諮問評議会(MSC)」に変更。
さらに同年末頃には一旦解散して他組織と統合。「イラクのイスラム国(ISI)」と改称した。
その後もテロ行為を繰り返し、シリア内戦でイラクとシリアの国境管理が疎かになるとシリアに転戦。反アサド*2派として反アサド派のジハーディストを吸収して1万人を超える大組織となった。
2013年にはシリアで活動するヌスラ戦線と合併し、「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」に改称する宣言をした。


思想

自分たちが預言者と定める存在を絶対的指導者として崇め、日々の生活などはユダヤ教の聖典である旧約聖書に基づいて過ごしている。
基本理念(とされているもの)は一応イスラム原理主義の一種であるサラフィー主義に属するとされる。
要するに、「モーセがヤハウェから立法を授かって、それがまだ文字に起こされず口伝のみだった、ユダヤ教の最初期と言える頃に回帰すべき」という考え方である。

元々イスラム原理主義とは、
「植民地化を進めようとする西欧諸国に政治・文明的に対抗する為に、イスラム教徒として意識統一を図ろう」という趣旨のもので、
必ずしも過激な武装闘争を推奨する思想体系という訳ではない。
が、この組織の傾向は特に極端で、ハッド刑(古代に存在した「窃盗犯は見せしめに腕を切り落とす」等のハンムラビ法典以上にシンプルかつ強烈な処罰)をも現代において執行している。
その他、当時存在した奴隷制等も復活させようとする原点回帰ならぬ人権面で退行している思想で行動するため、
イスラーム元来の長所であった、その土地に柔軟にあわせる寛容さを持って普及してきた特性は片鱗も見られない。

現地の多くのムスリム(イスラム教徒)から見ても、好意的に言っても時代錯誤と言うしかなく、極めて凶暴な集団と化している。


指導者

いわゆる「あの方」。バグダディ氏。組織名が「ISIL」になった当時の指導者。
自称イスラム学の博士号修了者。博士号修了自体は本当のようだが、「実は教育学とか別の分野で取得したのにフカシこいてるんじゃね?」といった説もある。
元々は一介の不穏分子であったためか、アメリカ国内でも特に重要視されず経歴の年度等がバラバラ。

元はアルカイダの分派組織であるムジャーヒディーン諮問評議会でアルカイダとの連絡係を務めていたが、2010年に前任の指導者が死亡したことで指導者に就任した。
その後は、組織としても好き勝手にやらかし放題。
勝手に他所の組織と合併して、上記の通り懲罰も兼ねてアルカイダ解散命令を出されても余裕で無視し、無断で虐殺行為も繰り返す有様。
制御不能と看做したアルカイダは「こんな奴ら知りません。無関係です。」と放逐宣言を出した。

その後も、自分が周辺諸国の偉大な指導者たるカリフであり、自分が指導する国々をまとめて「イスラム国」を建立する。
…などと意味不明な供述をしており……状態の主張を始めて、全世界から当然の如く無視されている。
こうした経緯で興った組織なため、外部には「『自称』イスラム国」とばかり呼称され、国家扱いは当然受けていない。
この宣言を出した時の演説は「私が間違ってると思うなら私に従う必要無い」等の殊勝なことを言いながら、
その一方で自分に従わない人間の虐殺を目論んでいるのだから、実に始末の悪い人物と言えるだろう。
そして2019年10月26日、大正義アメリカ合衆国率いる特殊部隊に強襲され、追い詰められた末、トンネル内で自分の子供二人を道連れに自爆して死亡した。
その死骸はどことも知らぬ海域へ葬られた。彼の死を殉教として扱われぬように、彼の死地を聖地として扱われぬように。

その後アブイブラヒム・ハシミという人物が指導者になったが、2022年2月3日に米軍の特殊部隊による強襲を受け、家族を巻き添えに自爆し果てた。
現在の指導者はアブハッサン・ハシミなる人物である。


構成

ただでさえ凶悪なテロ集団である上に、彼らが同調する様々な人間が中東内外から参加するため、詳しいことはあまり分かっていない。
各国の調査では2~4万人程度の戦闘員がいると考えられているが、空爆などですでに数千人規模で戦死しているという情報もある。

まだ10代の子供であろうと戦えそうなら武器を持たせ無理やり戦闘員に仕立て上げるため、その中には少年兵も少なくない。とはいえここまでは紛争やテロ組織に残念ながら散見される事。
そのため有名なのはむしろ、ビデオなどで処刑シーンなどに映っている黒づくめの男の方。
ジハーディジョンと称されるこの男の手によって、多数の人質が殺害されたと思われる。
その眼光は極めて凶悪で鋭く、見るものを戦慄させずにはおかない。
一刻も早い逮捕が望まれつつも、警察であっても迂闊に手出しはおろか接近することさえ困難を極めている状態であったが、2015年11月にUCAV(無人攻撃機)での空爆で死亡した模様。

イスラム国と戦ったクルド人義勇兵は「イスラム国戦闘員の能力は大したことはないが、指揮系統がしっかりしている」と評している。
これは軍事部門や政策部門の上層部がサダム・フセイン時代のイラク軍幹部で構成されているためであり、
イラク軍の准将や特殊部隊および情報部の指揮官、化学兵器の製造に関わった者まで参加しているという。

彼らが運営するラジオ局があり、ここで彼らの行ったことや主張を放送している。


資金源

中東ということもあり原油を生産して販売して莫大な利益をあげるほか、人質を拉致してきてその身代金を対象国の政府や家族などに要求する「人質ビジネス」も行う。
また、近隣の支配地域の住民などからの献金(強奪?)や麻薬、覚せい剤や武器などの密輸などによっても資金を得ている。これらを利用して戦線を拡大する。
これ以外に、海外の富豪のスポンサーを複数抱えているという説もあるが、今のところ推測の域を出ていない。


勧誘

ISILは途上国の過激テロリスト集団だが、決して野蛮なだけなく、非常に狡猾で老獪と言えるだろう。

例えば、「規則で使用禁止にしている携帯を無許可で使用した構成員に対し、その腕を容赦なく切り落とす等の罰を与える」
という行為を行っていると報告が入っているが、これは単なる原理主義に則ったものではなく、
敵対国の空爆を警戒し、電波を拾われて居場所を特定されないように、という配慮もあってのこととヨルダンの軍事アドバイザーの間でも推測されている。
実際「SNSに司令部前で撮った自撮り画像をアップしたら、アメリカ空軍の諜報部が見つけて場所情報から場所を特定。1日経たずにすっ飛んできた爆撃機に司令部ごと吹き飛ばされた」ことがあったらしい。

端末の交流サイトなどに、ISILがどれ程魅力的であるかを積極的にPRする動画を流したり、対話による勧誘や組織で運営するサイトでのパンフレットの公開も行っている。
これらに関しては、まるで西欧諸国の合法的な軍隊や民間軍事会社等と同種の組織であるかのような綺麗な出来栄えと派手な効果音やクリーンなイメージを与える視覚効果を与える演出や構成がなされている、と指摘されており、コンピュータや人間心理・視覚効果に専門知識を有することが窺える。

処刑時の動画ですら、口上だけでなく、捕虜を拷問で徹底的に追い詰めて処刑に救いを見出す程に諦観させて、「自分達の崇高な聖戦の過程で捕虜が処刑に合意している」といった誘導を視聴者に対して仕掛ける、徹底した印象工作を用いている。

言う間でも無いが、これらの行為は極めて悪質な、現代社会において根絶すべき犯罪である。

勧誘マニュアルのようなものも周到に用意されているとみられ、社会に不満を持ったり、軍隊や武装組織といった者に憧れを持つ者や
もともとオカルトに興味があったりする人、とくに若者が興味本位や、一見のつもりで応じてしまい、
戦闘員にされてしまうケースが後をたたない。

ネット上等で上記のようなやりとりを見た場合もすみやかな情報の提供がお互いに求められる。

「銃が撃てるぞ、どんな武器でも使わせてやる」
「我々は君の同志だ。君のような英雄を待っていた」
「ここに来れば、女も金もよりどりみどりだ、毎日ヤリまくれる」
「君も聖なる戦士として、尊き使命を全うしてみないか」
「我々と共に君を苦しめる堕落した社会に復讐をしないか」
…などと、非常に誘惑的な甘言を弄して勧誘を行うこともあるが、倫理観云々を敢えて置いておくとしても、はっきり言ってそんなことはまず無い。
既に人員は万単位で大量に確保され、各方面の専門知識を持つ者すら足りているという見解があり、「何かカッコイイ軍事活動や戦闘」なんてものは、確実に存在しない。
仮に運動神経が高い等で軍人に向いてたり、連中が求める分野に優れる物があったなら少しは重用されるかもしれないが、そうでなければ市街地などでテロ行為の駒か金にも女にも縁の無い何処とも知れぬ地で残虐行為用の鉄砲玉か運が良くても、敵対する勢力との戦闘で「囮や少しでも敵の戦力削げたらラッキー」程度の陽動兼戦死前提の突兵として使い捨てられたり、薄汚れた施設内で機関銃を突きつけられながら奴隷(女性の場合は性奴隷)として死ぬまで使い潰さるのが関の山であることだけは、当Wikiでも保障出来る。


Wiki篭りの中に嬉々として人権を脅かす暴力に加担する人間は居ないと信じたいところではあるが、
そいつの意思で加担したが最後、自分の人生まで失ってしまうことになるだろう。


他国への影響

世界各国のイスラム過激派の中にはISILの過激な思想や先鋭性に同調し、ISILの指揮下に入るグループが続出した。
彼らは中東の国境が欧米によって無理やり敷かれたものだとして侵略を宣言。
同じイスラム教国においても容赦なくテロを繰り返し、同胞たる多数のイスラム教徒を殺している。
もはや「ISIL VS 欧米諸国」というより「ISIL VS その他のイスラム教国含む全世界」という体をなしているのだ。

また、ヨーロッパのイスラム過激派の中にはISILの思想に同調するがイラク・シリアに入らず、母国で武器の調達などを済ませてテロを起こすケースも多発している。
フランスにおいてISIL支持派のテロリストがユダヤ教徒向け商店を襲撃しAK47を乱射する事件や、デンマークのコペンハーゲンで表現の自由に関する集会にISIL支持派がAK47を乱射する事件などがそれである。


対策

現在、ヨルダンなど各国の対ISILの有志連合が空爆を連日のように行っている。
それによって彼らの運営する製油所などはすでに相当数が破壊されており、上記の資金源の一つである「原油の輸出」に障害が出ている。
また空爆によって多数の戦闘員も駆逐されているが、こうした空爆による無力化の試みにはおのずと限界が生じてくる。
同時に、人質などの犠牲者も増加しているため、地上部隊を投入して白兵戦の実施も検討されている。

また動画サイトなどネットでも削除や規制なども行われているがイタチごっこのような状態が続いている。
国際ハッカー集団の「アノニマス」がISILに対してインターネット上であるが宣戦を布告し、ハッキングによって多数の
ISIL関係者のサイトなどを無力化したとされている。
しかし、このアノニマスという集団は度々ターゲットを変えて攻撃を散発的に繰り返す集団であるため、この集団をどれほどアテにして良いものかは怪しいものがある。
ネットでの活動が今後根絶される保障も無いので、怪しげなものに出くわしたら油断しないに越したことはないだろう。

ちなみに日本での一部の2ch住人がクソコラグランプリや萌え絵化で対抗したのはいつもの通りだった。


2020年時点での状況

イラク・シリアにおけるイスラム国の領土はもはや存在すら危ういほどの面積となっており、世界で彼らの居場所はもう無く、もはや虫の息である。
更に先述した通り指導者は自爆して死亡、戦闘員の大半は殺害・逮捕されており、もう力は無きに等しい。
敗残した戦闘員達は今までの恨みとばかりに地域住民からリンチされて殺害される事例も相次いでいる。
世界中に喧嘩を叩き売り、自己中心極まりない思想の下に残虐行為を正当化してきた身の程知らず達はその代償を己の血と肉で払う羽目になった。
 しかし、イラク、シリアでの勢力が弱くなっただけで、{ISILの残党やボコ・ハラムなどのイスラム国に忠誠を誓った組織、そして「ローンウルフ」と呼ばれる一人でテロを行う奴らはまだまだたくさんいるからまだ安心はできない。

名称

イスラム国(ISIS)と称されていたが、これでは中東のイスラム諸国と紛らわしい。
あたかもテロリストがイスラームの代表のような誤解を招く恐れがあるためISILと称するように中東諸国から推奨されている。
ほかに「IS」「ISIL」などといったものもあり、テレビ番組の評論家は「自称イスラム国」と呼ぶと宣言している者もいる。

日本のテレビにおいては、NHKはいち早く「イスラム国」の名称を使うことをやめ、「IS=イスラミックステート」という呼称を(語義的に違和感こそあるが)用いている。
その他民放では「過激派組織『イスラム国』」と、鍵括弧を付けることで「いわゆる国と呼ばれる連中」という意味にしている。

巷でよく「アメリカではISILと呼ばれているのだから、イスラム国と呼ぶ輩は配慮が足りない。」という意見もあるが、
一つ注意点がある。

このアメリカ等でよく用いられるISIL(Islamic State in Iraq and the Levant)ですら、
「イラクとレバント(トルコからシリア、エジプト、パレスチナやヨルダン、レバノンを含むめた広い地域を指す名称)におけるイスラム国」
という意味である。そのため、
「トルコやエジプト等の多数の国々を具体的に例示し、それらが『イスラム国』というテロ組織を支持しているかのような誤解を招く。甚だしく不適切だ」
と英語の時点でも多数指摘がなされている。

ぶっちゃけた話、このテロ組織が厚かましい名前を掲げている以上、どう呼ぼうがその呼称は問題を孕む。


ただし、日本においても「ISIL」の略称で通じる上に、この略称で通す場合は『国』の部分は隠れている。
それに対して「イスラム国」の場合は『国』と分かりやすく見えるようにわざわざ修正して表記している風に見えるため、
「イスラム国」表記が「ISIL」以上に微妙であることは否定しようがない。


余談

全盛期のISILが主張した「ISILの領土」の地図というものがあるが、それが「歴代のイスラム王朝が支配した地域全て+アルファ」みたいな感じだったため、世界史クラスタを中心にツッコミの嵐が起こった。
しかも遠かったためか、はたまた存在すら知らなかったのかは不明だが、インドなどの南アジアは含まれておず、
マレーシアやインドネシアなどの東南アジアに至っては画像内に入ってすらいなかった*3
まあ南アジアや東南アジアまで「ISILの領土」とまではさすがに言えなかっただけかもしれないが。めっちゃ飛び地になるし。




追記・修正はイスラム国を壊滅させてからお願いします。

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最終更新:2023年08月24日 20:22

*1 アラブ諸国で活動する汎アラブ主義政党。イラク・バアス党はフセイン政権当時は一党独裁制を敷いていたが、政権崩壊後は公職追放などの措置を受けた

*2 シリア大統領であるバッシャール・アル=アサド氏のこと

*3 インドはムガル帝国などのイスラム王朝が存在したし、マレーシアやインドネシアはイスラム協力機構(OIC)へ加盟しているなど、現在もイスラム諸国に数えられる国々である