特二式内火艇

登録日:2015/02/12 (木) 15:04:20
更新日:2023/04/13 Thu 22:13:32
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特二式内火艇とは、大日本帝国海軍が開発・運用した水陸両用戦車である。
本項では後継車両である特三~五式内火艇についても記載する。単体だと項目薄っぺらいんよね
なお、どっからどう見ても戦車だが、名簿登録上はれっきとした艦船であり、計数単位も“隻”。
ちなみに“内火艇”とはモーターボートのことである。サイズ的にはあながち間違っちゃいない。


概要

建軍当時の帝国海軍では海兵隊を配置していた。と言っても、別にセンパーファイでガンホーガンホーな某精鋭部隊は関係なく、
接舷時の強行制圧を主眼とする即応部隊である。
強行接舷なんざ時代遅れだっつーことで、帝国海軍のそれに関しては発足から10年経たずに廃止されたのだが、
それ以後も状況に応じて水兵に陸戦をやらせることがあり、その規定として定められたのが海軍陸戦隊である。
この海軍陸戦隊、上海事変や義和団の乱などでも活躍しており、海軍としても独自の陸戦部隊を有する意義というのはわかっていたわけだ。

そして、対米戦待ったなしな雰囲気が極東を覆いつつあった頃。上陸作戦用の機甲車両を欲した陸戦隊が、
陸軍技術本部に渋々協力を仰ぎ、九五式軽戦車を母体に開発したのがこの特二式を筆頭とする特式内火艇である。
試験完了後の1942年に制式採用された。そのため皇紀の下二桁をとって二式。

戦車開発では少々後進国じみたところのある帝国軍だけあり、こいつも火力・装甲ともにお世辞にも強力とは言い難い。
とはいえ、そもそも地形が急峻に過ぎ、まともに戦車を運用できない当時の日本本土にとって、
戦車は歩兵直掩として最低限の性能があればよかった、というのもまた事実ではある。
慌てて後継車開発に走ったのが遅すぎたきらいもままあるが……

閑話休題。潜水艦での輸送も考慮に入れて軽量化も重点考慮対象となっており、リベット留めの代わりに溶接を採用、
ハッチなどの開口部にはゴムシーリングが施されるなど、上陸作戦用の水密化も(帝国軍基準で)バッチリ。
車体も前後にフロートを装着することで、水上航行が可能になっている。フロートつけた見た目はキャタピラ付きの小型艇。
ちなみに舵は後部フロートに接続され、ワイヤー越しに操舵する。
なお、フロートの取り付けに時間がかかるため、基本的に再装着は不可能。

開発時期によって多少装備に差異はあるが、四式を除いて37-47mm砲を装備しており、火力的には上陸直掩車の域を出ない。
まあ、それでも海軍にとっちゃ初めての水陸両用機甲戦力なんだけどね。
大発動艇と戦車の組み合わせでおk?……陸軍のやることに一々反発するから帝国海軍なんだよ(偏見
逆もまた真に近いのがまた、何と言うか……


特式内火艇一覧

特二式内火艇

秘匿名称カミ車(設計主務である、陸軍技術本部の上西甚蔵技師にちなむ)。自称不幸な上やんは関係ない。
九五式軽戦車とできる限りコンポーネントを共通化させることで、開発期間短縮を図っている。
主砲は一式37mm戦車砲、サブウェポンは九七式車載重機関銃2挺。
水上航行時の浮力と安定性を確保するために横幅を目一杯広げたため、九五式とは比べ物にならないほど居住性がいい(帝国軍基準)。
潜水艦搭載も可能だが、当然のように艦外係留である。ついでに輸送艦で運ぶことのが多かったりもする。
機動力に関しては、元が軽かったためか、フロート込みで重量が倍近くなってる割には落ちていない。
ただまあ、あくまで最高速度の話ではある。旋回性やらは盛大に落ちてることだろう。

180隻ほど生産されたが、どんな状況で運用されたかはイマイチはっきりしない。
しかし、元が元である。そう活躍できたとは思えない。

特三式内火艇

秘匿名称カチ車、一式中戦車をバ改造した特式内火艇。さすがに元が中戦車だけあり、最大速度は3割ほど落ちている。
しかし装甲に関しては先代よりも上であり、最大なんと50mm!紙ですね、はい。
砲塔上部に投棄可能な吸気兼用展望塔を備えるところも先代と一緒。
主砲は47mm砲にグレードアップしており、上陸作戦時の支援能力がさらに高まった。ちなみに新型チハたんとお揃いである。
潜行安全深度も100mまで確保されており、このへんも先代からはるかに進化している。
……のだが、採用が43年、もうやべぇよやべぇよ……な時期だけあり、他にもっと造るもんあるだろ、ということでほとんど生産されなかった。

特四式内火艇

秘匿名称カツ車。これまでの特式内火艇とは少々毛色が違い、兵員輸送車兼用の簡易輸送艇。
大発が揚陸中にボコボコにされる、という戦訓のもと、潜水艦に積載してのモグラ輸送が可能な運貨艇として開発された。
そのため主要コンポーネント以外の水密化を省略するなど、さらなる軽量化と生産性向上を企図している。
また米軍のLVTの情報を元に作ったため、フロートなしで車体に浮力が持たされている。
地味に潜水艦の貨物室に積載可能になった。でもサイズは特式最大級。
で、積載に余裕があったことから、魚雷を側面にポン付けして隠密至近雷撃&特攻に使おう、という案が出た。
しかし使用している空冷ディーゼルは恐ろしく煩く、試験に参加した人曰く走行性能も「ヒキガエルの王様」。
というか、コンセプトが水陸両用甲標的な時点で誰か察してやれよ……

特五式内火艇

秘匿名称トク車。三式の発展型として、敵揚陸隊の水際防御や逆侵攻を目的に設計された。
工程の簡易化と生産性を高めるべく、可能な限り直線的なシルエットになっている。
その他、資材も徹底的に前型からの流用で設計されたと思われる。絵図面引かれたの末期も末期だし。
主砲をそのままブチ込んだ突撃砲じみた車体に、25mm単装機関砲塔が据え付けられているのが特徴。
主砲は三式と同じものだが、車体に直接接続しているため全周砲撃は不可能。突撃しながらぶっぱしろ、ということらしい。
ちなみにフロートを避けるように配置しているので、水上航行中でも砲撃が可能。九割九分理論上だろうけどな!
砲塔の25mm機関砲はこれが初の車載となる。対人用としちゃ強力すぎるし、対舟艇/輸送車用の武装なのだろう。
火力、生産性共に戦時急造車両としては悪くないものではあっただろうが、生憎試作車製作途中で終戦となった。


その他

ホビーとしては1/72スケールの完成品と1/35スケールのキット(両方二式)が販売されている。
まあ、マイナーすぎて他に優先すべき車種はいくらでもあるしねぇ……

ゲームでは艦隊これくしょん -艦これ-に登場。
特定の艦娘のみが装備可能となっている。
陸上型の深海棲艦に対して大きな攻撃力を発揮する対陸上用装備。
とくに装甲を施したハードスキンタイプに対しての効果が大きく、無防備な飛行場襲撃よりガチガチに固められた港湾要塞への突撃用としての性格が強い。
遠征時に入手できる資源補正に関しては+1%されるという微々たるもので輸送量も大発動艇に比べると小さいが、海域で拾得できる資源量補正に関しては大発等と一緒なので、潜水艦娘に載せると資源回復に役立つ場面もある。
アーケード版では上陸後フロート部分がスライドしてパージされるシーンを見る事ができる。

ガールズ&パンツァー最終章第2話では、知波単学園の保有戦車として2輌が登場。
川の中に潜み大洗チームを背後から奇襲する、被弾してもフロート部分が装甲板代わりになるため意外としぶといなど、
知波単の練度の高さと相俟って大洗を複数度に渡って翻弄する活躍を見せた。





追記・修正は特四式で隠密至近雷撃を成功させ、なおかつ無事五体満足で帰還してからお願いします。

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最終更新:2023年04月13日 22:13