Pauper(MtG)

登録日:2015/02/04 Wed 14:02:18
更新日:2024/04/05 Fri 12:39:09
所要時間:約 9 分で読めます




Pauper(パウパー)とは、Magic:the Gatheringのフォーマットのひとつ。
元はMagic Online上発祥のフォーマットだが、現在は公式フォーマットとして紙媒体でもサポートされている。


概要

その特徴は、コモン、つまり最低レアリティで収録された経験を持つカードのみでデッキを組んで戦うというもの。

そんな貧乏デッキの極致といえるデッキ、弱いのばっかなんじゃないの?と思ったあなた。
まずはPauperの【赤単バーン】(火力でひたすら相手のライフを攻めるデッキ)の主力カードを見てみよう。

  • 稲妻(1マナ3点、しかもインスタント。モダンやレガシーなどでおなじみの言わずと知れた汎用火力の最高峰)
  • 稲妻の連鎖(↑の調整版。1マナ3点ソーサリーで、撃たれた側がRRを支払えばコピーしてもう一発撃ちかえせる効果付き)
  • 批判家刺殺(ソーサリーで3マナ3点だが、同ターン中既に本体にダメージを与えていたらちゃっかり1マナ3点)
  • 溶岩の撃ち込み(本体にしか撃てない上ソーサリーだが、やはり1マナ3点)
  • 裂け目の稲妻(3マナ3点。ただし待機で唱えればタイムラグはあるもののこれまた1マナ3点)
  • 火炎破(山を二つ生贄に捧げれば、0マナ4点。これと上記の3点火力2枚で山2枚から計10点もっていける)
などなど。

……あれ?これレガシーのデッキだっけ?

コモンのみとはいっても一度でもコモンで収録されていればどんなに昔のカードでも使用できるのである。確かに神の怒りのような派手なカードや《悪斬の天使》のような1枚で劣勢を覆せるような露骨なパワーカードこそないものの、この長いMtGの歴史上、コモン故に基本で堅実、そして強力なカードがコモンには数多く存在するのである。
あの《対抗呪文》も《暗黒の儀式》も、《怨恨》もすべてコモンなのだ。


長らく公式ではMagic Online上のみのサポートで紙媒体では非公式フォーマット扱いであったが、2019年7月からは遂に デジタルと紙媒体両方で合併統一し、公式フォーマットに昇格 した。公式フォーマットはモダンやスタンダードと同じであり、店舗イベントやプロの世界大会にも参戦する可能性が大。今後の展開が期待される。

「プレインズウォーカー」というカードタイプが存在せず、《対抗呪文》《渦まく知識》などの往時の名カードが使えることから「古き良きマジック」「昭和のマジック」*1などと言われることも。
また、2020年に入り、「ぶっ壊れたカードに環境を蹂躙される」「禁止カードが突然制定される」というパターンが増えてきた。
この令和マジックにうんざりしたプレイヤーに「Pauperにはそんなことはないぞ」と勧めるプレイヤーが増えているとかなんとか。流浪のドレイク?知らない子ですね

レアカードの暴力に痛めつけられやすい他TCGプレイヤーがたびたび「素朴な縛りプレイ」のように羨むが、実際は小規模なレガシーといえるほどストイックな環境。
レアカードの暴力に甘えることが出来ない分、プレイングと環境理解が極めて高い精度で求められるという、安い資産で始められるという文句の割にはかなり上級者向けの環境。
いわゆる「競技環境」ではないが、テキストが単純なカードだらけゆえに遊び心を持たせにくいということもあって、ある意味もっとも初心者に向かない環境ともいえる。
特に青系のクロックパーミッションはMTG経験者ですら「俺には使いこなせない」と匙を投げることも珍しくない。実際まったく同じデッキリストを使っても、使用者によって強さに残酷なレベルの差が出てくる上、強いプレイヤーの解説がまったく理解できないなんてこともある。数学かよ。
ヴィンテージ、統率者戦と並ぶ第三の魔境でその内情は外部にはあまり知られておらず、多くのプレイヤーは「このカードコモンだったの!?」と驚くところから始まる。



色ごとの特徴

もともと白は良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏……な色である。
Pauperではその悪いほうばかりが目立ち、何かしら尖った強みのある他の色に対しこれといった特徴がない。

だが決して弱い色ではなく、《未達への旅》や《忘却の輪》といった優秀な除去に、《虹色の断片》や《心優しきボディガード》のようなクリーチャー保護手段、そしてかの《戦隊の鷹》をはじめとした白お得意の優良ウィニークリーチャーによって、白ウィニーは安定した動きができる。特に新規戦力である《スレイベンの検査官》は1マナのくせに1/2、おまけに手掛かりトークン1つついてくるとちょっとおかしい強さ。

その中で強力なトークン生成呪文である《金切るときの声》を軸にした白単トークンや《ラゴンナ団の先駆者》などの英雄的クリーチャーを強化呪文やオーラで支援する白単英雄的が結果を残している。最近は赤と組んだボロスキティ(ボロス統治者)系が上記のカードを主軸にしている。新システム・統治者になれる《宮殿の歩哨》で毎ターンドローが出来るのは強力。

その他、対単色デッキ最終兵器である各種防御円もコモンであり、白を含むデッキのサイドボードにはよく積まれている。

Pauperのメタゲームの話になると必ず青単が挙がってくるほど、この環境の青は強い。

冒頭でも挙げた《対抗呪文》が現役(なおかつ強力な対抗馬となる《Force of Will》や《Mana Drain》がない)という環境ゆえ、必然的にパーミッションの要素を含んだデッキが多くなる。

それ以外の打ち消しも充実しており、クリーチャー限定かつ3マナながらキャントリップでアドバンテージを取れる《除外》、ややマイナーだがなかなか厄介な時間稼ぎができる《記憶の欠落》などデッキに合わせて様々な打ち消しが使える。

クリーチャーに関しても、あらゆる環境で猛威を振るいまくった青の1マナ最強生物、デルバーこと《秘密を掘り下げる者》を筆頭に、打ち消し能力でアドバンテージを取れる《呪文づまりのスプライト》、その呪文詰まりのスプライトとシナジーを形成する上に2体目以降の着地でアドも取れる《フェアリーの悪党》、これら飛行クリーチャーを種にハンドアドバンテージを稼ぎまくる《深き刻の忍者》、重いが出すだけでハンドアドバンテージを稼げる《熟考漂い》など、コモンながらアドバンテージ面で優れたものを大量に擁している。

さらにモダンで禁止されている《思案》・《定業》といったキャントリップ付きライブラリー操作、レガシーで青絡みなら必須のドロースペル《渦まく知識》まで備えており、アド取りや手札の質の安定化にかけては右に出る色はない。

単色としての弱点はクリーチャー除去に乏しいことだが、アドバンテージを失わないバウンスである《排撃》、タフネス1限定ではあるが貴重な青のマイナスタフネス修整効果を持つ《海賊の魔除け》、そしてアーティファクトであるが、それゆえに青でも使える優秀除去の《鋸刃の矢》など、弱点を補う手段も少なくない。それでも基本的には赤か黒と組んで除去は任せることが多い。

何と言っても除去の色である。特に布告系が充実しており、ライフロス付きの《ゲスの評決》、フラッシュバック付きの《チェイナーの布告》、自軍も巻き添えにするが1マナと軽い《無垢の血》とよりどりみどり。
対象を取る単体除去も黒除去スタンダードな《破滅の刃》、一部の種族には効かないが黒クリーチャーも対処できる《夜の犠牲》、黒単ならば大物をも仕留めるマイナス修正を生み出す《汚涜》と選択肢豊富。
ダブルマスターズでのコモン落ち以降は《喪心》が幅を利かせている。伝説のクリーチャーはほぼアンコモン以上にしか存在しないため、ほぼ1マナ軽くて色拘束も薄い《殺害》として利用できるからである。

それ以外にも相手にも1点撃たせてしまうが2マナと軽いティムである《クォムバッジの魔女》、Pauperでは貴重な、特にタフネス2以上を除去できるものとしてはほとんど唯一の全体除去である《墓所のネズミ》、繰り返し使えフィニッシャーにもなる《エヴィンカーの正義》、そしてフィニッシャーにもなる強力ドレインである《堕落》(と《堕落の触手》)……と、黒単コントロール=クリーチャー絶対殺すデッキとでも言わんばかりの充実ぶりである。
破壊耐性やプロテクション(黒)クリーチャーへは《損ない》や《完全無視》など追放除去まで完備。

クリーチャーも優秀で、テーロスブロック構築でも大活躍した《アスフォデルの灰色商人》を筆頭に、相手のドローを一回止めつつ手札の枚数を減らせる《騒がしいネズミ》、それとは逆にこちらがカードを引ける《ファイレクシアの憤怒鬼》などCIPでアドバンテージを稼ぎ出せるクリーチャーを多く擁する。

そしてPauper界では最強クリーチャーとも言える《グルマグのアンコウ》。事実上1マナで5/5はもはや壊れの域。火力ではほぼ落とすことができず、黒でゾンビなためそれらを対象に取れない除去にも耐性がある(《喪心》によって価値は薄れたが)。回避能力こそないがそこは黒、相手のクリーチャーをすべて消し去ってしまえば良いのだ。

黒のもう一つの代名詞であるハンデスも《強迫》や《村八分》、Pauper界のトーラックへの賛歌こと《精神ねじ切り》などよりどりみどり。場も手札もズタズタにしてやろう。なお本家《トーラックへの賛歌》はMagic Onlineでコモン収録経験が無い&後述の紙との統合時に真っ先に禁止カード指定されたため使用不可である。
ライフロスがあるとはいえ優秀なドローソースの《血の署名》《夜の囁き》も使える。

なお、《カーノファージ》や《吸血鬼の裂断者》のような優秀なスーサイドウィニーや、かの《暗黒の儀式》もコモンであるため、往年のような黒単スーサイドを組むこともできる。現状では爆発力で赤単に、安定感で白単に見劣りし環境に食い込むには力不足ではあるものの、今後登場するコモンや未発見のシナジーで化けるポテンシャルは十分に秘めており、今後が期待されるアーキタイプである。

なお黒い《忘却の輪》こと《土牢/Oubliette》はダブルマスターズでの再録&日本語名追加までPauperで一番高いカードとして有名であった。
古いカードゆえに処理が複雑で、再録が難しかったのである。

冒頭でも引き合いに出したように、火力の質はエターナルにも見劣りしない。《稲妻》や《稲妻の連鎖》のような1マナ3点火力や、《ケルドの匪賊》のような歩く火力、果ては赤単最強の切り札である《火炎破》まで使え、特化した際の攻撃力は他の追随を許さない。また、《炎の斬りつけ》や《炎の稲妻》、《電謀》のようなコントロール向けの火力もコモンに存在し、多色デッキで力を発揮している。また青いカードへの最高レベルのメタカード《紅蓮破》もある。青は青で《水流破》があるが。

一方、クリーチャーの質は全体的には高くはないものの、部族シナジーの強力なゴブリンの多くがコモンであり、それを軸にした赤単ゴブリンはロードこそいないものの高い爆発力を持つデッキとして知られている。

そしてモダンマスターズ2017でコモン落ちした《炎樹族の使者》によりついにスライやレッドデックウィンズ(RDW)が成立した。緑ストンピィとの違いは火力の存在と速攻。最速3ターンキルを誇るスピードは過去のスライを上回りかねない。

ただ、古くからの赤単の宿命としてピンポイント対策に非常に弱い。ライフゲインやプロテクション、防御円などでいとも簡単に凌がれてしまうという弱点も持ち合わせている。ある意味一番の対策は置かれたり唱えられる前・起動される前に倒してしまうことか。

ドラゴンなどの赤の花形ファッティがアンコモン以上である関係上、大型クリーチャーはパッとしなかった(これは他の色にも多かれ少なかれある傾向である)が、統率者レジェンズでは続唱持ち6マナクリーチャー《乗り込み部隊》が追加。赤緑系のランプデッキ等で用いられている。

言わずと知れたクリーチャーの色。なんとあの甲鱗様がコモン、つまりPauperリーガルである!ウラモグの破壊者?何のことかな?

真面目な話をするなら、単色デッキとしてはかの《怨恨》をはじめとした優秀なサポート呪文で小型クリーチャーをバックアップするストンピィがメタの一角を占めている。強化先としても緑単ならほとんど無視できるデメリットで1マナ2/2の《イラクサの歩哨》、怨恨と相性抜群で布告対策にも最適な1マナ不死持ちの《若き狼》など優秀なクリーチャーには事欠かない。やはり《炎樹族の使者》の登場でこちらも大幅に強化された。
ストリクスヘイブン以降はクリーチャーを生け贄にすることで2マナ5/4となる《湿地帯のグロフ》を《若き狼》や《巣の侵略者》を利用して高速召喚するタイプが登場した。

また、モダンなどでおなじみZooのエースである《野生のナカティル》や、基本土地が全て揃えば3マナ5/5という他の環境基準で見ても驚異のサイズで出てくる《マトカの暴動者》、そしてそれらを1枚でサポートできる《ナイレアの存在》を擁し、もちろん土地サーチやマナ加速・色基盤補強も充実している緑なので、これらを組み合わせつつ各色のパワーカードを組み込むドメインZooと呼ばれるデッキも成果を上げている。
手札補充用に青をタッチすれば土地以外ほぼレガシーそのまんまの親和エルフ、黒などと組むと感染も組める。

また、Pauperリーガルな軽量呪禁持ちは緑に多く、また強力なオーラである《アルマジロの外套》や《天上の鎧》がコモンであるため、白や青と組んで呪禁オーラもたびたび組まれる。

さらに緑といえばマナ加速。統率者レジェンズで続唱持ち7マナクリーチャー《苛立つアルティサウルス》が登場して以降は赤などと組んだランプデッキも活躍している。《繁茂》や《楽園の拡散》と《東屋のエルフ》でマナ加速して素早く《ムウォンヴーリーの酸苔》に繋げ、土地破壊で相手を妨害しつつさらに加速。《苛立つアルティサウルス》に繋げてアドバンテージとサイズで押し切る。《ラノワールの幻想家》や《サルーフの群友》といったキャントリップクリーチャーがアドバンテージを失わない戦力として採用されており、《苛立つアルティサウルス》→《乗り込み部隊》→キャントリップクリーチャーと続唱がつながって展開しつつ手札が減らないこともザラにある。

さて、実はPauperでは2022年後半あたりから、「テーブルトップとデジタルの環境が異なる」という事件が起きている。
MOで実装されていないジョークエキスパンション「Unfinity」のカードを軸にした「緑単ステッカーストンピィ」なるデッキが登場した。
詳しい説明は省くが、《Finishing Move》《Chicken Troupe》というカードを軸にした「チケット」「ステッカー」というメカニズムが、既存のクリーチャーのP/Tを上書きできてしまう。
これまでストンピィは「回避能力の難は、サイズと格闘除去や《怨恨》」でカバーする」という構築だったのだが、回避能力を持つがサイズの小さい《シラナの岩礁渡り》《ジンジャーブルート》が5/1になって殴りかかってくる。
《Finishing Move》が実際にやっていることは「格闘除去をしながらサイズアップ」程度のことなのであまり物珍しいわけではないのだが、「Unfinity」すら環境を激変させるのはさすがの貫禄と言ったところ。


土地

何と言ってもアーティファクト・土地が全部現役。ウルザの土地も全て揃っている。
そのため親和ウルザトロンなどのやや特殊なデッキも組める。(かつては8postも組めたが、雲上の座が禁止指定され消滅)。

前者は2、3ターン目から0マナ2/2・4/4などがぼんぼこ飛び出してくるし、後者は大量のマナから普通の構築環境では見向きもされなかった《ウラモグの破壊者》が一躍フィニッシャーとして大活躍するなど、他の構築環境ではあまり見られないような光景が見れる。

土地サーチのフェッチランドは《広漠なる変幻地》《進化する未開地》の二枚が使える。
どちらも同じ効果で、基本土地をタップインで出す。

多色土地はタップインのものだけ で、主なラインナップは以下のもの。
  • 普通のタップインデュアルランド
  • 門サイクル(ラヴニカの回帰・ラヴニカ三部作。土地が門指定)
  • 氷雪タップインデュアルランド(カルドハイム。氷雪土地)基本土地タイプを参照するカードと氷雪を参照するカードの恩恵orメタを受ける
  • 基本土地タイプ持ちタップインデュアルランド(団結のドミナリア)カルドハイムのものと異なり氷雪を参照するカードの恩恵orメタは受けない
  • バウンスランド(ラヴニカ:ギルドの都)場の土地一つをバウンスしないと出せない代わりに2色のマナが1つづつ出せるバウンスランドのサイクル。
  • 隠れ家サイクル(ゼンディカー・タルキールブロック)出すと1点ライフを回復出来るので実質門サイクルの上位互換。
  • 興隆サイクル(Jumpstart)土地固有の1色に加えて戦場に出るときに選んだ色のマナを出せるタップインデュアルランドの上位互換。2色デッキでは相互互換だがタッチ色に対応するなど柔軟に使える。
  • 橋サイクル(モダンホライゾン2) 破壊不能を持つ2色のアーティファクト土地。全色に存在する。親和の隆盛に力を貸したほか、破壊不能を利用して《浄化の野火》を赤い《不屈の自然》のように使うことができる。

早めのデッキではタップインデュアルランドのいずれか、遅めのデッキではバウンスランドが用いられる事が多いが、ぶっちゃけほぼ好み。

その他

コモンというレアリティ(あまり複雑な効果は収録されにくい)の特性上、他の広いカードプールのような瞬殺コンボデッキは組まれにくい(かつては【ストーム】が猛威を振るっていたが、キーカードのほとんどを禁止され消滅)。

だが皆無というわけではなく、【Familiar】と呼ばれる無限マナコンボを軸にしたデッキが結果を残している。
がその後《フェアリーの大群》が禁止されて消滅。その後エターナルマスターズで何故かコモン落ちした《流浪のドレイク》を中心とした【ドレイク・フリッカー】に移行した。
が、そちらも2度の禁止改訂を乗り切った結果環境占有率が20パーセントを超え、流石にまずいと思ったのか緊急制限改定で《流浪のドレイクが》禁止になり消滅した。
今では【Damned Combo】や【The Spy】などの瞬殺も可能なコンボがごく一部に存在している程度である。



この環境の最大の特徴はなんといっても参入費用が(比較的)安いことである。

MOのコモンは一部の希少かつ高需要なものを除けば非常に安価で(ほとんど1tix=約100円を切っており、高いものでも2~3tixで済む)、(相対的に)高額なカードをガン積みにしたガチデッキを組んでも、オフラインでイベントデッキ買うのとそう変わらない値段で済んでしまう。

MtGでいろんなデッキで遊んでみたいけど、お金が……って人や、広いカードプールでデッキ考えたいけど、モダンやエターナルは高くつくし……って人には是非ともお勧めしたいフォーマット。
……と紹介されやすいが、「雑なアド取りができないデッキ」というのは逆にプレイングの精度や環境の理解が直接勝敗に絡むということでもあるため、むしろ初心者が参戦すると一回も勝てない上に派手さがなくてつまんなくてやめるというパターンに陥りやすい。
もちろん初心者同士で示し合わせて始めるなどなら別なのだが、悪い言い方をすると「意識高い系」のフォーマットであり、資産の安さに惹かれて始めると逆に「安物買いの銭失い」で終わる。実際にPauper一本で長年プレイしている人はMTGのみならず勝負ゲーム全般が上手い上に、ゲームへの接し方がかなりストイック。
「カードプールがレガシー級のパワーカード」「なのになんととっても安い!」という点ばかりが取りざたされるが、この環境はカードパワーよりむしろプレイスキルが求められる上に、資産差や今引きで強引に勝利することもできない。
つまり「こんなカードがあります!」と紹介するのではなく「このカードはこうやって使います」と紹介することが重要視される。本当に昭和のMTGの空気をかなり色濃く残した魔境であり、それは「イニシアチブ」「ステッカー」などの比較的新しいメカニズムが環境を激変させても変わらない。

もし始めるにあたってのハードルが「値段」なのであればMTGAの方がおすすめ。
もちろんMTGAでもパウパー構築イベントがあり、カジュアルな空気で楽しめる。たまに「嘆願者バベル」のように頭の悪いデッキが登場して話題になる。


なお、使用できるカードは正確には「MOでコモンでリリースされている」カードである。
たとえば《トーラックへの賛歌》はコモンとして印刷されているがMOではMasters EditionおよびVintage Mastersでのアンコモンでの収録しかされていないため使用できない。というかこんなもん使えたらメタゲームの関係で落ち込んでいる黒コンが再隆盛するだろう
逆に《尊大なワーム》や《堂々巡り》はコモンとして印刷されたことはないが、Vintage Mastersにおいてコモンで収録されたためPauperで使用可能である。おかげでPauperでも往年と同じような【マッドネス】が組めるよ!
公式フォーマット採用後は「MOか紙かどっちかでコモン収録されていれば使用OK」となったため、意外なカードが使用OKになったりした。
もちろんヒムは正式採用と同時に禁止リスト入りしました(下記参照)。

ここ最近は、1年で「大型エキスパンション×4」、下環境ではさらに「モダンホライゾンや統率者戦用セット、ユニバースビヨンドやアン・セットのような特殊カード」のように環境がまたたくまに激変していく。
Pauperはその頻度が他のフォーマットに比べても高い。カードの再録を主眼に置いた「マスターズ」と呼ばれるセットが発売されるたびに、レアリティが変更されて使用可能になるカードが増えるから(コモン落ち)。
これによって「スタンダードでは他カードの陰に隠れて空気だったがPauperでは定番カードになった」という出世組(《流浪のドレイク》《ディンローヴァの恐怖》など)、「他環境の名カードがついにPauperデビュー」、中には「レアからコモンに落ちたが鳴かず飛ばずだった」なんてのもある。
プレイヤー曰く「アンコモンのコモン落ちは期待できるが、レアのコモン落ちは全く期待できない」とのこと。《皇帝クロコダイル》《野生の末裔》あたりはさっぱり活躍しませんでしたね……。


愛好家が多いフォーマットであり、その大半がMTGをストイックにプレイするのが大好きというプレイヤー。Pauper一本でプレイしている人もいるが、決して貧乏なのではなくスタンダードやレガシーよりこっちの方が面白いからという筋金入り。
《騒鳴の嵐》が収録された「モダンホライゾン2」では環境のバランスが完全に崩壊してしまい、しかもWotCがいつまで経っても動こうとしないので業を煮やしたプレイヤーが「示し合わせて基本土地60枚のデッキで参加し、全勝リストを基本土地60枚のみで埋め尽くす」という抗議活動に出た。
この抗議活動によってようやく重い腰が上がり、禁止リストが更新された。
また、最近では「Pauperに対する理解が足りていないので専用のチームを発足した」というアナウンスの他、
「イニシアチブデッキが強すぎたので規制した」ということをスタンの終末エムラのポエム説明と違ってゲームの細部に踏み込んだ理由をつけて説明したり、
「《暗黒の儀式》がそろそろやばいと思うのでみんなのお気持ちを聞かせてほしい」とむしろプレイヤー側に意見を募るなど、一般フォーマットではヴィンテージですらまず起こらない事件が起きている。
そういう意味でも他の環境と比して相当な魔境である。

なお、MTGアリーナでのみコモンのカードが何枚かあるが、それらについては公式で使用不可になっている。
該当カードにはかの《剣を鍬に》も含まれており、もし公式に解禁されたら相当な環境変革が起こりうる。
アリーナではプレイ中にデッキにカードを加えるメカニズムが存在し、このように加えられるカードのうちアリーナ以外ではコモンでないカードがデータ上コモンとして扱われてしまうことがある。色々と議論があったようだが、これが問題視され、アリーナは数えないことになった模様。PauperはMO由来というのもあって同じオンラインのMTGAだけ区別する点で議論はあったようだが。


その他、上でも軽く触れたがコモンとはいえ環境に対する悪影響から、禁止カードもそれなりの数が存在する。
詳しくは個別項目で。
フリースペルとストーム関連が複数枚しかも繰り返された過ちであるという陣容はMtGの負の歴史の象徴…かもしれない。


wikiの外には出られないが、追記と修正は外から飛び込んで来る。

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最終更新:2024年04月05日 12:39

*1 MtGは平成5年生まれのカードゲームである