軍艦

登録日:2015/01/13 Tue 16:19:27
更新日:2024/04/12 Fri 00:49:19
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戦うフネ、漢の浪漫。
浮かべる無敵の、鋼鉄(くろがね)の城。

この項目では世に言う軍艦について解説しよう。
詳細な解説はアニヲタWikiにはそぐわないし、行うべきことでもないので、本家Wikiを見るなり各種文献を当たるなりされたし。
なお軍艦といいながら「艦艇」とか「艦船」なんて言い方が結構あちこちで見られる。
前者はどちらも軍用のフネだが主に大きさが理由で区別され、後者は軍用と民間用(もちろん軍に徴発されることもある)の違いがある。


歴史


黎明期


ガレー船

世界で最初に生まれた本格的軍艦であるガレー船は、古代文明の時代から近世まで数千年にわたって地中海の王者として君臨した。
櫂を用いて高い機動性を実現したガレーは、地形的な問題で凪海になりやすい地中海地域での運用には最適の船であったのだ。
そのために地中海や黒海では、その基本構造を変えぬまま時代によって大型化や兵装のアップデートが行われている。
誕生当初は敵艦に横づけして白兵戦をする戦法しかなかったが、艦首衝角が発明されると青銅製衝角で敵艦の櫂や艦側を破壊する戦法も主流となる。
更に速度や機動性を稼ぐために漕ぎ手数を増加させ、古代ギリシア時代には漕ぎ手座を三層設けた三段櫂船(トリレーム)と呼ばれる大型艦が開発される。
地中海諸国の艦隊の中核をなし古代文明のドラマを彩ったガレー船は中世においても主力艦の座を確保し続け、1571年にカトリック諸国連合艦隊とオスマン帝国艦隊が衝突したレパント海戦では重砲を装備した発展型のガレアスとともにガレー船はそのハイライトを迎えた。
だが17世紀以降は航海術の発展や帆走の発展、羅針盤の発明などにより外洋航行のより容易な大型帆走艦にお株を奪われ各国でガレー船は徐々に姿を消すようになる。
唯一前述したように凪が多く帆走への不安があった内海海軍では蒸気船の登場まで命脈を保っていた。

大航海時代(帆船の黄金期)

地中海で未だガレー船が主力艦の地位を保っていた中世時代、安定して強い風が吹く外洋に面した欧州諸国ではより少人数で航行可能な帆走船の発展が進んでいた。
中世末期に進歩的なコグやカラベル、カラックなどの帆船が開発され、カラックをさらに発展させた大型のガレオン船が開発されるとガレー船を退け、一躍軍艦のスタンダードとなる。
そして大砲の発明と発展、造船技術の進歩によって海戦の様相も古代のそれとは徐々に様相を変えはじめる。
1588年のアルマダ海戦でイングランド艦隊は単縦陣を組んで行動し、その快速と取り回しやすい艦載砲を用いてスペイン艦隊を砲撃。大型ガレオン艦を有しながら旧来の白兵戦に拘ったスペイン艦隊を撃破する。
この海戦は海戦史におけるターニングポイントで、これ以降戦列を組んだ艦隊同士の砲撃戦が海戦における主要戦法となり、ガレオン船は多層の砲甲板を備えた戦列艦や快速なフリゲートへと発展。さらに火器の発展などによって多種多様な帆走軍艦が生まれることとなる。

内海らしい内海もなく大洋に面していたアジア地域ではかなり早い時期からジャンク船やダウ船のような帆走軍艦が主力となっていたが、これらの地域は陸戦が基本かつ比較的平和だったこともあり、近世以降戦争に明け暮れて技術力を蓄積していった欧州と比べて軍艦の配備や発展が遅れることとなる。

太平の眠りを覚ます蒸気船

イギリスで起きた産業革命は、蒸気機関の産声でもあった。
自然の気まぐれに振り回されることなく、人の力で思うがままに動き回る蒸気動力。それが船に転用されるのはごく自然な発想となった。
当初流行ったのは外輪船と呼ばれる、言ってみれば人力オールのかわりに巨大な水車を蒸気で回して進むタイプ。
だがすぐに内輪船が登場した。これが今メジャーなスクリュータイプ。
外輪船は水車の羽根の大部分が海の上で回るため効率が悪いとか、舷側にドンと置かれた外輪は敵の攻撃に弱いよね? てことで廃れていった。

さてハイパワーを与えられた軍艦は、それに見合うだけの攻防力を備えたいもの。
ここから大きな大砲や鉄の装甲などが備えられ、近代軍艦の要件が出揃っていく。
そしてこれよりおよそ1世紀にわたり軍艦はカンブリア爆発的な進化・分化を遂げるのである。

大艦巨砲の時代

我らが英国紳士はこう思った。「世界最強の海軍は、二位三位をぶっちぎる陣容でなくてはならない」。
いわゆる「二国標準主義」の始まりである。二位のフランスと三位のロシアを合計したよりも強大な海軍を建設しようというマジキチ政策。
この方針に則り、ロイアル=サブリン級戦艦が一挙8隻も建造された。
彼女こそが戦艦の基本的な要素を完成させた傑作艦である。
以後各国は1万数千トン、30cm前後の砲2~4門を備えた、いわゆる前弩級戦艦の建造に邁進する。その中で我らが誇り、日本海海戦の立役者「三笠」も誕生した。

だがちょっと待って欲しい。
「前」? 「弩級」?
そう、百隻以上も建造された彼女らを一挙に旧式化させる、革命的な戦艦が産声を上げようとしていた。
彼女の前に弩級なし、彼女こそが次のスタンダード。
英国戦艦「ドレッドノート」である。

巨大な恐竜が進化を続けた一方で、哺乳類に相当する小型艦もこの時代の技術発展によりに急速に発達・進化した。
内燃機関を組み込み、水中を自走して敵艦の艦底を破壊する魚雷の発明は、一撃必殺の小型高速艇「水雷艇」を生む。
フランスは多数の水雷艇を用いて仮想敵イギリスの鈍重な戦艦や巡洋艦を狩ることを目論んだが、それにイギリスが対策を打たないはずがない。
イギリスは小型高出力の水管式ボイラーを備え、水雷艇より大型重武装かつ高速な水雷艇を駆逐する船「駆逐艦」を発明したのであった。
そして魚雷と電気技術の発展や内燃機関の発展に後押しされ、アメリカで初の本格的な動力駆動潜水艇も開発されるのである。

世界大戦(航空機と潜水艦)

日本海海戦の衝撃的な結末により、大観巨砲こそ正義とばかりに各国が血道を上げて建造しまくった大戦艦たちに、いよいよ出番が来た・・・と思われた1914年。
世界の主要国、そのほとんどが参戦した第一次世界大戦の始まりである。
最大の海軍国であるイギリスは100隻を超える戦艦の一大艦隊を創り上げていたが、ライバルのドイツも負けてはいなかった。
かつての艦隊決戦が、規模を桁一つ増やしたとんでもない大海戦に至る・・・世界は固唾を呑んで見守っていた中、ついにそれは起きた。
1916年、ユトランド沖海戦である。参加した戦艦だけでもイギリス37隻、ドイツ27隻という史上空前のビッグキャンペーンは・・・しかし消化不良に終わった。
詳細はここでは語らないが、艦隊決戦は戦争の帰趨を決めるような影響は持たなかったのだ。戦艦の戦略的価値に疑問符がついた、最初のきっかけだった。

なおやや脇道に逸れた話だが、軍艦と陸上要塞の対決にも一つの回答が示された。ガリポリ上陸作戦である。
オスマン帝国軍の陸上要塞に大艦隊を持って挑戦した英仏海軍は、しかし惨敗を喫した。
旧式の装備しか持たない二線級のオスマン軍相手でさえ攻略できず、かえって大損害を被って敗退したことで、「例え戦艦であっても陸上要塞には勝てない」とのセオリーが確認されたのだ。
後に第二次大戦で日・英・米の戦艦がそれぞれ陸上に強烈な大火力をたたき込んだ戦例がいくつもあるから誤解されがちだが、
彼女らもまた厳重に防御された要塞地帯には近寄っていないのでご注意あれ。

大戦中には戦艦の価値をより一層下げる新兵器も、相次いで登場していた。
後には決定的に戦艦を王者の座から蹴落とす飛行機もその一つだが、一次大戦の時点ではまともに海上で戦闘する能力は持っておらず、まだまだ戦艦の歯牙にもかからないものだった。
しかしもう一方の新兵器は海上権力に痛烈な一撃を持って挑戦者の名乗りをあげた。海面下のハンター・潜水艦である。
戦艦は潜水艦に対抗する術をなんら持ち合わせず、逆に潜水艦の魚雷は戦艦を仕留め得た。海の王者には屈強な親衛隊(=護衛艦)が不可欠となったのだ。
しかも潜水艦は、より弱い相手にはさらに恐るべき脅威となった。ドイツUボートが繰り広げた無制限潜水艦戦がそれである。
わずか300隻ほどのUボートはなんと5000隻を超える商船を葬り去り、絶大な戦略的価値を世界中に知らしめたのである。

第一次世界大戦、それは軍艦史の視点から語るなら「戦艦が戦争を決着させる時代の終わり」を告げるものだったのだ。
だが世界がその事実を否応なしに悟るまでには、もう少し時間を要した。

海軍休日

死者だけで一千万人を超える大惨禍となった世界大戦がようやく終結。世界は深い傷を負い、癒す時間を必要としていた。
そんな中で過剰となった軍備をお互い適切に減らしましょう、と提唱されたのがワシントン海軍軍縮会議である。
特に戦争の被害を直接受けずに欧州諸国からの注文で工業が急成長した日本とアメリカは超勝ち組であり、さらに巨大な戦艦の建造を推し進めようとしていたが、
他の国は「そんなの付き合ってられないから勘弁してくれ」の本音を隠そうともしなかったのだ。
そして勝ち組の日米にとっても、戦艦の建造コストはとてつもない負担になりつつあったため、この提案はまさに渡りに船だった。

軍縮条約の詳細は他に譲るが、軍艦史の観点で見ると、端的に言えるのは「戦艦の超・高価値化」と「本格空母の誕生」の2点に集約される。
イギリスでは100隻を超え、日本でさえも20隻以上を持っていた戦艦群は、しかしその数の故に1隻あたりの価値は決して高くはなかった。
「1隻、2隻くらい沈んでも大勢に影響はない」ということだったのだ。
しかし軍縮条約によって最大保有国の米英でさえわずか15隻に抑えられた結果、1隻失うことの戦略的不利が非常に大きなものと認識されたのだ。
またユトランド海戦の結果は「戦艦の低速度・巡洋戦艦の弱防御力」と従来型の戦艦群は全てどこかが足りないフネである点を露呈したため、それを補うべく戦艦と巡洋戦艦が融合した「高速戦艦」の概念が誕生し、更にどちらにも足りないとされた水平装甲の強化も加わったことで、1隻あたりの実際のコストも跳ね上がる結果となった。戦艦は列強国ですら数隻維持するのが精いっぱいという、超高額ユニットになってしまった。
この傾向は後の第二次大戦において、特に持たざる国であった日独伊の戦艦の行動を非常に掣肘した。
1隻でも失えばパワーバランスが激変するため、おいそれと戦場に投入できなくなったのである。
また、空母については、ワシントン条約こそがその価値を戦艦並かそれ以上に高める結果となった。
それまでの空母は、いいとこ1万トン程度の巡洋艦級でしかなかったが、条約は建造中の戦艦をそのまま廃棄するのはもったいないということで、
戦艦に匹敵する3万トン超の巨大空母に作り替えることを認めた。
つまりここで大型空母が誕生したことが、後の空母機動部隊への発展の道筋をつけたのだ。
ワシントン条約がなかったらもしかしたら空母は、現代に至るまで補助的任務しかこなせない小型艦であり続けたかもしれない。
なお後に全ての軍艦を蹂躙する航空機だが、この時点では発展途上の段階であり、前述のとおりまさにここから始まった海軍戦力であった。有り余る将来性は有望とは見られつつも、洋上で大型艦艇を独力で撃沈する能力はまだ無かったことは留意すべきである。

軍縮条約の有効期間は平和裏に終始した時代を称えて「海軍休日」の名で歴史に記されている。
この間、各国はのんびり平和を享受していた・・・かというとやはりそうではなく、条約に許された範囲で軍艦の整備を続けていた。
海軍休日は高額になり過ぎた戦艦の建造にストップをかけた一方、あまりに戦艦に偏り過ぎた各国の海軍バランスを調整する役割も果たしており、
建造を許された空母や巡洋艦・駆逐艦などが着々と強大化していったために、強制的に進化を止められた戦艦は静かに、しかし確実にその価値を落としつつあった・・・

第二次世界大戦

一人の独裁者の手で引き起こされてしまった二度目の世界大戦。
軍艦史の観点でこれを語るなら、言うまでもなくそれは戦艦の落日である。最初の戦場となった欧州では、各国の海軍は新型艦が大幅な高速化を果たした以外、第一次大戦期の構成とそれほど変わらないものだった。
ドイツは再建を始めたばかりでまともな海軍力を持っておらず、イタリアは地中海という特殊な戦略条件から洋上航空兵力を重視せず、イギリスとフランスにはまともな艦載機が存在しなかった。どの国も主力は戦艦だったのだ。
だがそんな中でも進化を続けてきた航空機は、伝説的な活躍を示した戦艦ビスマルクに決定打を与え、イタリアの要衝タラントを少数の攻撃機が奇襲し3隻もの戦艦を大破させる等、次々と戦艦に痛打を与え始めた。
決定的な衝撃はもう一つの戦場、太平洋でもたらされた。航空母艦の集中運用という画期的な戦術を見いだした日本海軍は、圧倒的な航空攻撃力により真珠湾で在泊する8戦艦全てを撃破し、内5隻を撃沈する驚異的な戦果を挙げた。
続いて生起したマレー沖海戦で、今度は戦闘行動中の最新鋭戦艦が航空攻撃のみで撃沈され、もはや戦艦といえども航空機の脅威を前に、主役の座にあり続けることは不可能と誰の目にも明らかになった。以後戦艦は脇役に転じ、新たな主役となった空母の護衛や地上砲撃等に活躍の場を移していく。無価値になったわけではなかったが、高コストな脇役を新造する余裕などどこの国にも無く、海の王者、戦艦の命脈は絶たれることが決定づけられた。

そしてもう一つ、戦場を左右する決定的な要素となったのが、急速に発達した電子の目、レーダーだった。開戦直後、世界をリードしていたのはドイツであったがイギリスがすぐに追い抜き、そのノウハウを受け継ぎ膨大な国力で発展させたアメリカが圧倒的な優位を確立した。
もはやレーダーの前に夜の闇は意味をなさず、大戦中盤以降、恐るべき練度を誇っていた日本海軍夜戦部隊はその活躍を封じ込められていく。
再び猛威を振るった潜水艦もまた、浮上すればたちまち発見されるため一気に劣勢になっていった。事態を打開するためドイツは新技術ワルター・タービンを搭載した水中高速潜水艦を実用化したが、十分な活躍を果たす前に戦争に敗北してしまった。

なお戦艦、ひいては大艦巨砲主義の敗北に隠れがちだが、航空機とレーダーの恐るべき進歩の前に絶滅を決定づけられた洋上戦力がもう一つあった。
水上戦闘において魚雷で敵艦を攻撃する事を主任務とする、水雷戦艦艇である。
条約時代、各国は規制された主力艦(=戦艦)を補うべく巡洋艦、駆逐艦等の水雷戦力の充実にも血道をあげたが、大戦中にいくつかの決定的な役割を果たした場面もあったものの、当時の誘導能力を持たない魚雷で水上戦闘に勝利することは難しく、こちらもその任務を魚雷艇等の限定された戦力に引き継いだ以外は各国の主力からは消えていった。

原子力船の登場

そんなWW2も終わり、しばらくたった1955年、一隻の潜水艦がまた一つ、軍艦史上のエポックメーキングをもたらした。
「本艦、原子力にて航行中(Underway on nuclear power)」
核反応が、ついに動力機関として実用化された瞬間である。
燃料という莫大な重量リソースとその補充を気にすることなく、理論上無限の航続力をもたらす原子力。
その画期的性能は、特に空母と潜水艦に革命をもたらした。
「燃焼」という過程が存在しないために空気が汚染されることなく、膨大なエネルギーは海水の電気分解で酸素まで創り出すため、無限に潜っていられる潜水艦。
何千トンもの燃料スペースが不要となるため大量の武器弾薬を搭載し、通常の空母に比べて倍の攻撃力を艦載機に与える空母。
軍艦としての性能は、通常動力型の同種艦と比べてほぼ同じ程度でも倍近いコストを要するとんでもない金食い虫ではあるが、それを差し置いても捨てがたいメリットがもたらされる原子力は、大洋海軍にとってはなくてはならないものとなっている。

現代

戦後の軍艦は、レーダーとミサイルによって成立していると言って過言ではない。
エイラート・ショックとも言われる対艦ミサイルの鮮烈なデビュー、
往事のKAMIKAXE対策からスタートした対空ミサイル、
そして対潜ミサイルや対地ミサイルといった様々なミサイルが現代軍艦の主力武器となった。
かつてのメイン武器だった火砲はもはや補助的な役割しか果たさず(とは言ってもミサイルでは高価過ぎて割に合わない目標や、威嚇目的には重宝するため一定数は残されている)、
また魚雷は潜水艦にとっては相変わらず主役の座にあり続けるも、その敵は専ら潜水艦となった(特に水上艦用の魚雷はほぼ対潜オンリー)。

現代軍艦の姿は1門かそこらの砲、近接戦闘用の機銃をいくらか、それに対潜用の魚雷を少し。
後はひたすらミサイルとレーダーを山盛り積み込まれた。
よく見るとあちこちに丸いボールのようなものが取り付けられているが、あれも中にはレーダーが収まっている。
そして近年特に発達してきたステルス技術により、姿は突起の少ないのっぺりしたシルエットに収斂しつつある。

その任務は冷戦終結後は強大な敵がいなくなって、一旦その目は地上に向かった。
必要とされる性能は重武装より長期的な行動力や、海岸近くで作戦するために警戒するべき破壊工作を想定するものだったが
中国海軍の急速な成長という新たな要素により世界は再び不安定化し始め、強大な競争相手の出現を受けて重武装化に再び舵を切りつつある。

設計・構成


攻撃力

  • 黎明期
 軍船登場時からしばらくは、攻撃手段といえばまず弓矢。さらに大威力の投石器もよく使われた。
 元寇で使われた「てつはう」も投石器の類で飛ばされたのではないか、とされる(火尖=ロケットを使用した、
 とも伝えられるが、軍船から発射したかも定かでないので言及するに留める)。
 これら飛び道具にはしばしば火が用いられ、木造の敵船を焼き払うことを併せて目論んでいた。
 飛び道具で相手の抵抗力をある程度奪ったら横付けて白兵。ここからは戦士の戦い。

  • 体当たり
 船は水に浮くもの。よって穴を空ければ沈む、これ当然。
 ギリシャ・ローマ時代の古から、船の船首を強化し、衝角として体当たりに用いることは行われてきた。
 実のところ大砲のみで船を沈めるのはなかなか大変で、体当たりはかなり最近まで一般的な攻撃手段だったのだ。
 特に船の装甲に対して艦載砲や砲弾の性能が低すぎた装甲艦時代の初期には、衝角をつけた鋼製艦の体当たりが装甲艦を撃沈する唯一の手段だった。
 その時代の名残で戦艦時代前期の戦艦三笠などでも体当たり用の衝角は据え付けられているくらい。
 だが砲の性能向上で戦闘距離が伸びると体当たりのチャンスはほとんどなくなり、むしろ事故の際に味方を沈めてしまうケースが目立つようになり、最終的に廃された。

 ……と思っただろ? 実は艦体が脆弱な潜水艦相手の体当たりはつい最近まで当たり前に行われており、
 なんと自衛隊の護衛艦でさえ、70年代頃に建造されたものは艦首を強化して体当たり可能にしていた。

  • 艦砲
 中世頃からの主力攻撃手段。
 最初は鉄の塊を飛ばすだけだったが、やがてその中に火薬を詰め炸裂弾とし、いわゆる砲弾型にした近代砲に発展する。
 以降、大口径化と長射程化、それに速射化が進み、20世紀半ば頃に絶頂を迎える。
 その後は航空機やミサイルの登場で主力の座を明け渡すことになるが、ミサイルほど高価ではなく、威嚇に使えるなど汎用性の高さから今でも現役。
 近年では対地攻撃力が見直され、誘導砲弾なども登場している。

  • 機関銃(砲)
 いわゆるマシンガン。口径によって機関砲と呼ばれたり、はたまた機銃と呼ばれたりもするが原理的には同じ。
 速射性が高く、強力な弾幕を張れることから近接防御の主役となる。これが発展してCIWSが登場した。
 近年、非正規戦の重視により機関銃のニーズも高まっており、重機関銃を一定数搭載するのが当たり前になってきている。

  • 魚雷
 大物食いは俺にまかせろ。
 正確には魚形水雷。水中を突進し敵艦の柔らかい横腹を食い破る必殺兵器。
 日本海軍が酸素魚雷の成功で魚雷一辺倒になったのはよく知られるところ。
 現代でも対艦攻撃の一翼を担うが、発射プラットフォームはもっぱら潜水艦。
 水上の軍艦から発射される魚雷は主に対潜用の短魚雷と呼ばれるものになっている。

  • ロケット
 モノ自体はかなり古く、19世紀初頭には軍艦から実戦運用された記録が残る。
 基本的に無誘導なため、水上の「点」である敵艦を狙うのは難しく、大砲の精度向上に伴い廃れていった。
 しかし第二次大戦の頃、逆に「面」制圧兵器としての有効性が再評価され、軍艦からは対地並びに対潜兵器として復活する。
 現代でもロシア・中国海軍では対潜ロケットが現役。

  • ミサイル
 要は誘導装置つきのロケット。対空用、対艦用、対地用、対潜用と今やあらゆる目標に対してミサイルが打ち込まれる時代。
 構造的には一定時間ロケット噴射して後は慣性で飛び、翼は姿勢制御や安定に使う通常のミサイル(弾道弾もこのタイプ)と
 ジェットエンジンによって最初から最後まで飛翔し、翼に一定の揚力を期待する(つまりミニ飛行機といっていい)巡航ミサイルとに大きく2分できる。

  • 艦載機
 第一次大戦の頃から攻撃手段として発達し、第二次大戦で一気に主力に躍り出る。
 艦砲とは桁の違う交戦距離(つまり超アウトレンジ攻撃)と様々な状況に対応可能な柔軟性で、戦艦を王座から引きずり下ろした。
 今や空母の有無は一流海軍のステータスになっている。
 それ以外では弾着観測など補助的な任務に使われ、通常の軍艦にも搭載された水上機や、戦後普及し、特に対潜戦の主役となったヘリコプターなど。
 近年では無人機(UAV)が急速に発達しており、ロボット戦争の未来図が現実のものになりつつある。

  • 核兵器
 人類が手にした最凶の破壊力。たった一発で大都市を焼き払う悪魔の兵器。
 過日は核砲弾もあれば対艦用の核ミサイルもあったが、今では廃れている(絶滅はしていない)。
 メインは報復戦力であるSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)。今日も海のどこかで1万トンを超える巨大潜水艦が息を潜め、万一の事態に備えている・・・

  • レールガン
 大砲の一種ではあるが、燃焼によるガスではなく電磁力で砲弾を射ち出す点で決定的に異なる。
 未来兵器と思う向きもあるだろうが、2015年以降実艦に搭載しての試験が始まろうとしており、実用化は目の前まで来ている。
 対地用の超長射程攻撃が主任務として考えられている。

  • 光学兵器(レーザー、ビーム)
 これまた未来兵器っぽいが、実はすでに実戦配備が済んでいる。もっともこれはまだ目くらましのレベルだが、
 今開発中の光学兵器は物理的な破壊力を持つレベルまでエネルギー量を増す予定。
 ただし「光」であるため大気中での減衰や散乱が激しく、また地球の丸みを考えるとあまり長い距離での使用には向かない。
 当面はCIWSを補完する近接防空火器として配備される模様。

防御力

  • 黎明期
 材質が木であった帆船時代、船に防御というものは基本的になかった。せいぜいが盾で弓矢を防いだりといった程度。
 火矢を受ければ燃え上がり、大砲で撃たれればぶち壊れ。攻撃を受ければ無事で済まないのが帆船の哀しき宿命。
 なので一戦終わった後の船上は、そりゃあもう悲惨な光景が広がっていた。

  • 装甲
 要は船の鎧。これが登場したことでようやく大砲の恐怖が過去のものに……はならなかったが。所詮兵器開発は矛と盾のイタチごっこなのよ。
 当然だがクソ重い鉄の板を張り巡らせるからにはそれだけのキャパが必要なわけで、装甲艦の登場から軍艦の規模は一気に拡大していく。
 と同時に、分厚い装甲をブチ抜くには威力の高い大砲が必要となり、そんな大砲はやはり重いのでたくさん積むことはできず、
 またそんなデカい船は風で動かすのは無理……で、よく知られる軍艦らしい姿が確立されていくことに。
 つまり産業革命によって近代軍艦の攻防走三要素が一気に揃ったのね。

  • ダメージコントロール
 装甲が直接被害を防ぐなら、こっちは被害を受けた後それが重傷にならないためにどうするか・・・という理論。ハードとソフトの関係。
 応急修理や火災の消火などは帆船の時代からあったことだが、第一次大戦頃から登場したこの理論では、注排水という新しい考え方も登場する。
 被害を受けて浸水し、船が傾いたときに「敢えて反対側にも海水を入れる」ことで船体を水平に戻し、以後の復旧活動を容易にしたり、戦闘力を維持したりの目的がある。
 艦船の技術が高度化し、どこも似たり寄ったりになってきた今現在においても、各国の技術と経験の蓄積の差がもろに出る分野でもある。

機動力

  • 人力
 ま、最初はこれだよね。
 さすがに手でぱちゃぱちゃやって進むなんてのは気が遠くなるので、木を切り出してオールを作るのは古代から行われてた。
 つか今でもボートの手こぎは船乗りの必須技能。あらゆる動力が使えなくなったとき、最後に頼られるのは人の力なのだ。

 これまた早くから当たり前に頼られてた。というか蒸気機関が登場するまでの動力の主役は風。
 追い風を背に受けて軽やかに疾走・・・なんて浪漫あふれるシチュエーションだが向かい風だとどうなの?
 大丈夫、人の知恵は向かい風でも望む方向に進む技術をちゃんと編み出したのだ。詳しくはググれ。
 なお帆船の操縦は今でも船員の大切な技能であり、日本にも練習帆船「日本丸」と「海王丸」が船乗りの卵たちを厳しくも優しく育て続けている。

  • 石炭
 産業革命で産み出された新たなる力。
 風まかせの航海から脱し、黒煙を吐きながら力強く進む黒船。
 江戸幕府が恐れおののいたのも無理はない。
 ただ石炭を動力に使うということは、石炭を備蓄する必要が生じたということ。
 実のところ、日本が開国を迫られたのも石炭(やその他の補給物資)を出先に確保したいという動機が強く働いている。

  • 石油
 次に燃料になったのはご存じ燃える水。
 石炭より石油の方が燃焼効率が高く、また液体であることから貯蔵や運搬が容易なのですぐに主流となり現在に至る。
 ガスタービンだのディーゼルだのあるが根本的には同じシステム。
 なお燃焼効率の高さから、煙突からはき出す煙が薄くなったために敵に発見されにくくなるという副産物も。
 これを逆手にとり、煙幕を張るときは敢えて不完全燃焼させて燃焼効率を落とし、黒煙を盛大に吐き出す。

  • 原子力
 今のところ最強のエンジン。でもヤバい。さらに高い。
 一旦火を入れれば数十年単位で動き続ける夢のエンジンだが放射能漏れ対策だのなんだのでコストが跳ね上がる。
 ぶっちゃけ同じ性能の軍艦でも原子力にするかしないかでコストが倍以上違う。
 一時はオール原子力艦隊という漢の浪漫が実現しかけたがさすがに無理筋だった。
 今では高コストを我慢してでも得がたいメリットが認められる空母と潜水艦のみ意義がある。
 ・・・実はロシアには原子力砕氷船とかあるけど。

探索力

  • 肉眼
 なんだかんだ言って最良の探知システムは人の目、これ現代でも変わらない。
 一瞬で映像から情報を処理し、判断を下す能力はたとえコンピュータでもまだ人間にはかなわないのだ。
 ましてレーダーなどない昔ならなおのこと。
 高いマストの上から見張る、闇夜を見通す目をこらす。そりゃもう涙ぐましい努力で見張りのスキルを磨いたのだ。
 その目を遠方に飛ばすことができるので、軍艦が索敵機を積むようになるというのはどれだけ凄いことなのかということなのだ。

 目で見えない海の中を探索する手段は音しかない。
 そこに潜む潜水艦を探し出すのは至難の業。
 かすかな音を拾ったり、こちらから音を出して跳ね返ってくる反響音から距離や速度を判定したり。
 機械を介すにせよ、最終的にはこれまた人の力。
 ソナーマンってのは潜水艦にせよ水上艦にせよマジ職人芸よ。

  • レーダー
 第二次大戦から急速に発達した電波の目。
 初期においては人外の能力を超人的な努力で獲得した人間に遅れを取ったりもしたが、技術の発達で急速に追いつき追い抜き
 特に「雨や夜の影響が少ない」「機械と連動できる」の二大特性によって探知手段の主役たる地位を確固たるものとした。
 その一つの到達点が、有名な「イージス・システム」である。

その他

  • ステルス性
 広い意味では潜水艦は、もっとも早い時期に登場したステルス艦といえる。
 狭く考えればレーダー対策がメインになるが、このせいで近年の軍艦は突起物の少ない、のっぺりした外観ばかりになって軍艦ファンをいささか嘆かせている。
 まあ海の上だと、自分が立てる波なんかがかなりレーダーに映って完全なステルスは難しいのだが、大型のフネが小っちゃく見えたりとか
 ミサイルに見つけられる時間を遅らせて、その間に対処する余裕を稼ぐとかの効果はあるので無意味というわけでもない。
 近年ではあまりにステルスを徹底すると逆に自然現象の波風から「浮いて」しまう、要はかえって目立ってしまうことがわかってきたため、以前ほどは熱心にならなくなってきた。ステルス金かかるからね、仕方ないね。

主な区分(艦種)


手漕ぎ船

古代ギリシア・ローマの軍船は通常航海には帆を張り、戦闘となれば手漕ぎで動き回る。
そのためオールの数=人手がそのまま機動力となった。
だが当然オールの数が増えればオール同士がぶつかるようなことも増える。そのため一糸乱れぬ統制が求められた。
また限られたスペースに効率よく多数のオールを配置するため、二段、三段と積み上げていき、また一本のオールを数人が共同で漕ぐことも行われた。
中世に至るまでこのタイプの軍船はガレー船の名で活躍し、特に波の穏やかな地中海では一般的なものだった。
手漕ぎと侮るなかれ、人力のため持続時間は短いものの、多数のオールを持つガレー船は瞬間的にはかなりのスピードを出すことができ、よく訓練された屈強な漕ぎ手を多数持つというのは重要な戦力だった。

帆船

ガレー船と併用して、特に外洋で使われた、人力より風を主に頼む船。
形式はおおきく2通りで、主力となる大型船とこれを補助する中型船。
大砲が登場すると、積んでいる大砲の数で等級が定められるようになる。
前者はガレオンから戦列艦へと発展し、後者はフリゲートになっていった。
その他にも様々な船種があるが、いちいち挙げていたらきりがないので省かせていただく。
より詳しく知りたい方は大航海時代を調べるべし。

戦艦

決戦に勝つ! ただそれだけのために戦艦は在る。巨大な大砲と分厚い装甲を持ち、攻撃力も防御力も最強、それが戦艦。
一般には1892年完成のイギリス艦「ロイヤル・サブリン」によって戦艦の構成要素は完成したとされる。以後発展を遂げつつ海上の王者として君臨した。
20世紀初頭の戦艦は軍艦であると同時に戦略兵器とも呼べる存在で、戦艦の保有量が国際的な力関係を示すほど大国の象徴となっていた。
我が日本国が歴史に残る「日本海海戦」でパーフェクトゲームを収めた頃が絶頂期で、以後第二次世界大戦に至る数十年、
「大艦巨砲主義」なる「より大きく、より強い戦艦」を求める時代が続く。
その頂点に立つ存在こそ我ら日本の誇る戦艦「大和」である。
ちなみに現実でもSFなどでも「鈍足、足の遅いユニットの象徴」というイメージを持たれがちだが、実際のところ戦艦の速力というのは重要な要素であり、空母や巡洋艦、駆逐艦など「もっと速いやつもいる」というだけのことで、船の中では極めて足の速い部類であることは認識しておくべきである。
また例外なく巨大なため海上の時化に強く、荒れた海面では「お供の駆逐艦が護衛対象の戦艦や空母に追いつけない」などという場面もまま見られたのである。

空母(航空母艦)

今世紀に入って急速に発達した航空機を軍艦に乗せて役立てたい、まあ当然の発想ですね。
最初は気球に始まり、やがてフロートつきの水上機、ついには陸上で使う飛行機そのままを載せた艦が登場する。
もちろんそれまでの紆余曲折は大変長い話になるので興味ある人は調べれ。
ともかく先の世界大戦で一気に海の女王の座を射止め、今や押しも押されもせぬ主力艦。
アメリカの大統領は世界のどこかでキナ臭い何かが起きると、まず部下に「空母はどこにいる?」と尋ねるそうな。
そんだけ強烈な存在感と、それに見合う強大な戦力を持つ大国の象徴なのであるよ。
搭載する航空機のための大量の燃料、弾薬の搭載と発艦させるための速度、大量の電力や水蒸気が求められる艦であり、原子力機関と相性が良く、他の水上艦への搭載が諦められる中、空母だけは「できれば原子力艦にしたいなー」とどこの国も思っている。

巡洋艦

「海のクルーズ」と聞くとのどかな船旅を思い浮かべる方もおられよう。
巡洋艦の英語読み「クルーザー」は、まさにそういう性質を表したものだ。
戦艦が巨大で強力なのは論を待たないが、当然のようにとってもお高いし数も少ない。
気軽にあちこちで使えるわけではないのだ。
巡洋艦はそれに代わりあちこちで様々な任務に使われる。ワークホースという言葉は巡洋艦にこそふさわしい。
そのルーツは帆船時代のフリゲートなのでいささかややこしいが、まあ勘弁してくれ。
現代ではアメリカやロシアに少数が残るだけで絶滅危惧種だが、実際はそうではない。
今駆逐艦とかフリゲートと呼ばれている艦が事実上巡洋艦化しているのだ。名前は消えるかもしれないが巡洋艦の役割はしっかりと受け継がれているのである。
え?艦長の階級?悪いけど次は駆逐艦の艦長で我慢しておくれ。

駆逐艦

魚雷一閃、海の大物狙い、一発屋。そんな印象が強い駆逐艦だが、発祥はいささか異なる。
本来「一発屋」の呼称はより小さな水雷艇(後述)に与えられていたものだった。駆逐艦は小うるさい水雷艇を「駆逐」するために生まれた、
大物狙いというより「大物狙いな連中から味方を護る」ための軍艦なのだ。
しかし水雷艇が基本的に沿岸で行動するのが精一杯の小船なのに対して駆逐艦は味方を護り、水雷艇が行動する「敵国の沿岸」まで出張れる航洋性を持っていた。
結果水雷艇の役目を分捕り、自分が大物食いを狙う立場になったのである。
こうなると使い勝手の良い駆逐艦はあちこちで引っ張りだことなる。まさに海のワークホース。あれ? 巡洋艦の立場は?
そう、駆逐艦は水雷艇の次に巡洋艦の役目も分捕ってしまったのだ。今や世界の海軍は駆逐艦ばかりという時代。
それどころか現代の駆逐艦はやや小型のフリゲートより強力な、主力艦と呼べる存在にまで出世しちゃってる。
え?排水量1万トン超でミサイルてんこ盛りの駆逐艦?排水量2万6000トンで航空機を飛ばす駆逐艦?寝言は寝て言ってくれや・・・

フリゲート

いやこの艦種くらい立ち位置ころころ変わってるのも珍しい。
帆船時代は先に書いた通り。その次は駆逐艦より小型の護衛艦。
第二次大戦後には巡洋艦ルーツが復活し、原子力フリゲートがアメリカで建造(後に巡洋艦に類別変更)。
今は駆逐艦より小型だが十分な外洋行動力を持った水上戦闘艦の立場に舞い戻っている。
帆船時代以来の「気軽に使える海の何でも屋」という立場の解釈次第でどこにフリゲートという名前を放り込むかが時代とともに変わっていったということか。
現代海軍の水上戦闘艦は大半がフリゲート、一部がより大型・豪華な駆逐艦というのが普通。
ただしその境目は非常に曖昧で、国別、時代別に「言ったもん勝ち」状態なので深く考えたら負けだ。他国の駆逐艦よりデカい自称フリゲートを持っている国もあるしね・・・

潜水艦

水の底で息を潜め、獲物を待つ海の狩人・・・
姿が見えないことを最大の武器にする、海のステルス。
二度の世界大戦ではいずれも猛威を振るい、無力な商船を沈めまくった。
しかし一旦攻撃をしかけると位置がバレ、今度は自分が攻撃を受ける番に。
特にエゲレスは信じられないほどねちっこく狩り出し、数多くのUボートを海の藻屑としてきた。
この構図は今でも基本的には変わらず、攻撃後の身の安全は保証の限りではない。
海中から一方的に水上艦を攻撃できるイメージがあるかもしれないが、1発魚雷やミサイルを発射した途端にそれまで苦労して潜めてきた自艦の位置をバラしてしまうので、潜水艦からの攻撃と言うのは本当にリスキーなのよ。

哨戒艦艇

主に領海内の限られたエリアで、警察行動に従事するものと、押し寄せる敵艦に強烈な一撃を見舞う小型高速艇の二種に分かれる。
前者は哨戒艇とか警備艇と呼ばれる比較的軽武装のものが多く、一方でフネとしての性能は十分なものが求められる。
巡洋艦が思いっきり武装を減らして小型化したようなものと考えてもそう間違いじゃない。
日本では海上保安庁の巡視船なんかも海外では哨戒艦艇の一種と見做される。
後者は小型・高速の船体に一撃必殺の強力な武装を備えたものが多く、古くは水雷艇や魚雷艇、現代ではミサイル艇などが該当する。
一時は対艦ミサイルの威力で一世を風靡したが、小型過ぎてやや使いにくいのと航空機に対して全くの無力であることから
近年はもう少し大きな数百~千トン級のコルベット(これも歴史の古い名前)が主流になってきている。
なおコルベットは大きいとフリゲートに近いものもあり、駆逐艦~フリゲートと同じくフリゲート~コルベットの境目もかなり曖昧。

揚陸艦艇

両用戦(「海」と「陸」で両用)ともいわれる上陸作戦で用いられる。要は兵隊や武器を大量に搭載し、それを敵地海岸まで運ぶ船。
それだけだと普通の貨物船にもできることなのだが、専門の揚陸艦艇の場合、迅速に人と物を陸揚げできるように特別な装備を施されている。
最初は小舟を積み、それを上げ下ろしする多数のデリック(クレーン)を全身に装備した貨物船のバケモノみたいなものから始まったが
より迅速な部隊展開を可能にするため、小舟=上陸用舟艇が自力で発進できるよう、スロープを使って海に降りられるようにしたとか
船内に巨大な空洞を設けて舟艇を収容し、水を張って浮かべて発進させるドック型揚陸艦とか
はては海岸に直接のし上げ、艦首をバカンと開いて兵隊に自分の足で降りてもらうとか様々なギミックが考え出された。
なお意外かもしれないが、近代的揚陸艦の第一船は日本陸軍が改造した神州丸という船だったりする。

現代ではヘリコプターの進化とホバークラフト型舟艇の登場により、立体的な作戦を展開して数百名もの重武装軍隊を
あっという間に上陸させる能力を持つものもいる。中には自分で戦闘機すら飛ばす空母みたいなやつもいる。

機雷戦艦艇

大きく分けると、機雷(=機械水雷)をバラ撒く側と掃除する側。どちらもこのカテゴリーに含まれる。
水中の爆弾である機雷は、触れる、磁気、音など、様々なショックで爆発し、船に深刻なダメージを与えるが、
様々なショックで作動するがゆえに掃除するのはとっても大変、この辺地雷と同じだね。
なので掃除専門のプロフェッショナルな軍艦=掃海艦艇が発達した。
一方でバラ撒く側もちょっとしたショックで爆発するキケンブツを大量に運び、短時間でセットする必要からそれなりに専門性が求められる敷設艦艇となる。
まあ掃除するのに比べればイージーなので、ちょっとした軍艦に少し積んでバラ撒くのは割と普通にある(ロシアとか北欧諸国の得意技だったりする)。

支援艦艇

軍艦だって乗り物。乗組員の腹は減るし、船だってメシ=燃料を食う。長い間働けばカラダにガタもくる。
そういうのを支援して、万全の体制に持っていってあげるのがここにあげる艦艇。
  • 補給艦=水だの燃料だの武器弾薬だの、種類ごとに専門の補給する
  • 工作艦=ちょっとした損傷くらいなら修理する
  • 母艦=行動能力の小さい艦(ミサイル艇など)や、艦のスペースの問題で十分な休養スペースを設けられない艦(潜水艦など)のための整備休養を担当する
  • 練習艦=乗組員の訓練に使う
などなど、様々な雑用毎にいろんな専任の艦艇がいる。
分類の仕方にもよるが、数十種類は余裕であるので、興味あるなら海上自衛隊のフネだけでも調べてみると面白いだろう。

その他

  • 砲艦
 補助艦艇の一種。
 軍艦は国の威信を体現するフネであり、国家そのものと見なされる。
 その身分は国際的に保証され、艦そのものが治外法権として成り立っており、外国の港に逗留することそれ自体が外交の一手段なのだ。
 砲艦は軍艦の中でも比較的小型・軽武装だが政治的な役割は非常に大きく、砲艦外交、という言葉もあるくらい。

  • 特設艦艇
 軍艦として生を受けず、しかして軍艦となったフネ。
 つまり商船として建造されたが国が買い取って軍艦に改造したもの。
 改造といっても魔改造レベルで徹底的に弄くり倒された場合は普通に軍艦に類別されることが多く、「特設」は元の商船の面影が相当残っている。
 種類は巡洋艦や空母といった強力なフネもあるが、殆どは補助艦艇や機雷戦艦艇、哨戒艦艇といった二線級。
 軍艦は建造も維持も金食い虫なので保有量に限りがある。
 なのであまり重装備を求められないような艦は有事の際に商船を調達して手っ取り早く数を揃える方が便利なのだ。

アニヲタ的には


フィクションでの活躍

海の王者的なキャラクター性から、海洋モノに出番が多い。多いと数千人にもなる乗員の数から海上都市的な扱われ方をされる作品もある。

怪獣映画となると、戦闘を行わないor噛ませ犬としての役割が大半で、それも戦後の艦艇が登場することがほとんどである。核兵器を餌にするような連中が相手なのでしょうがないところもあるが・・・・
といっていたら、ついに旧帝国海軍艦艇VS怪獣王という夢のカードが切られた。

ゲームではなんといっても艦隊これくしょんが近年のトレンドだろう。アズールレーン等がそれに続いている。鋼鉄の咆哮も一度プレイしたら忘れようがない。


模型

精緻な模型はそれ自体美術品のようなもの。軍艦の模型をディスプレイとして展示しているところは想像以上に多く、また鑑賞に堪える美麗なものは数十万円を超えたりする。
そこまでいかずとも、比較的手の出しやすいお値段で、世の少年たちを一時は夢中にさせたモーターで浮かべて走る30cmシリーズやウォーターラインシリーズの名は聞いたことのある御仁が少なからずとお見受けする。
他にもボトルシップのような、手先の器用さと忍耐を試される趣味も。

宇宙戦艦

SFアニメで活躍する宇宙戦艦は、三次元運用に適応した突飛なかたちのものも多いが、現代の軍艦そのままに水上艦ライクな姿をしたものも負けず劣らず多い。
そしてそれ以上に、与えられた役割・区分は現代の軍艦そのままであることがほとんどで、例外はいわゆる超兵器の類くらいのもの。
数千年の歴史を経た軍艦の役割・区分は一つの完成形を為しており、新たな想像が入る余地はほとんどないということなのだろう。

「宇宙戦艦」が(主役級として)登場する作品

言わずもがなの日本SFアニメの金字塔。主人公艦ヤマトをはじめ多数の軍艦(宇宙戦艦)が登場する。
ヤマトや各種空母などは水上艦のスタイルをかなり踏襲しているが、作品全体ではどちらかというと宇宙戦艦!って感じの特異なフォルムをしているものが多かったりする。

作品内での戦闘は基本宇宙戦艦同士の殴りあいなので、主役メカとして多くの宇宙戦艦が登場する。
実は原作小説時点での宇宙戦艦の描写はかなり薄味で、戦艦や巡洋艦、駆逐艦と言った艦種区分があること、中性子ビームやミサイルを主武装とすることぐらいしか設定が無かった。
しかしアニメ化時にアニメスタッフによって設定が基本から構築され、艦船の基礎フォーマット(細長くて艦首に格納型の主砲砲郭を持つなど、潜水艦に似てる)や具体的なスペック、各艦種の区別や艦級の設定が行われており、以後の作品でもおおむねこの時の設定を踏襲する形で作られている。
運用面では水上艦やヤマト的なSF戦闘とは異なり、ナポレオン時代の戦争の兵士を宇宙艦に置き換えたようなスタイルであり、宇宙戦艦がハード面のギミックを見せて大勝利!とかはまずない。

やはり各種宇宙戦艦が主役メカとして登場する。
原作の時点でかなり詳細な設定や世界観が練られているが、アニメ化の際にはなかなか尖がったデザインが用意された。
詳細はこちらを参照→星界軍の軍艦(星界の紋章)

題名通り多数の宇宙戦艦が登場しバトルするライトノベルだが、技術の進歩により戦艦や無人機空母を単独で操作出来るようになった未来世界が舞台。
主人公がSTGに長けた凄腕ゲーマーな事もあり実質的には戦闘機に相当する感じであり、20世紀から来た主人公と仲間以外の殆どの未来人は単に「戦闘艦」と呼んでいる。
なお主役サイドの勢力はF1風戦艦・対立する勢力は魚介類風戦艦とそれぞれ変わった形をしていたり。

その他

 地方によって呼び方に差はあるが「グー=軍艦」「チョキ=沈没」「パー=ハワイ」等と呼び変えたじゃんけん。本家Wikiに単独項目が立つくらい由緒ある遊びである。
 諸氏も子供の頃、楽しんだ記憶をお持ちと推察する。
 歴史はかなり古く、遅くとも戦中には誕生している。

  • 軍艦マーチ
 「まもるも せめるも くろがねの~♪」で始まる、とっても有名な日本の軍歌。
 何が有名って、パチンコ屋の定番BGM。編者はほとんど出入りしてないので最近の事情は寡聞にして知らないが、一昔前はどこもかしこも自動ドアをくぐればこれが耳に飛び込んできたものだった。

  • 軍艦巻
 寿司ネタの定番。シャリに海苔を巻き、上にネタを乗せたその姿が軍艦に見えるということから名付けられた、マジで軍艦がルーツの食べ物。
 それだけに実は歴史は意外なほど浅く、登場はなんと1941年。考案者の名前もわかっている。

  • 軍艦島
 栄えある世界遺産に登録された我が国の産業革命を担った施設の一つ。あまりにも島全体がいじられまくった結果、外観が軍艦そのものだ・・・ということでこう呼ばれるように。
 なお現在では各施設・建物の老朽化が深刻なため、出入りは規制されている。

  • 世界三大記念艦
 軍艦は作られてから無事退役するまで、数十年の歴史を積み上げることからまるで人間のように数奇だったり栄光に満ちてたり、あるいは幸運の女神に見放されたような生涯を送ることになる。
 不幸の極致が沈没だが無事全うした場合、歴史的意義があるものについては保存が図られることもある。
 そんな彼女らのなかで、万国共通で認められた記念艦と呼ばれる3隻がある。
  一つはトラファルガー海戦で英雄ネルソンと共に戦ったイギリス海軍の旗艦・ヴィクトリー号
  一つはそのイギリスと戦い「オールド・アイアンサイズ」のあだ名で親しまれたアメリカ海軍のフリゲート艦・コンスティチューション号*1
  最後の一つは我ら日本の誇り、日本海海戦で歴史に残る完全勝利を成し遂げた日本海軍の戦艦・三笠である。

もっと知りたい方へのオススメ


文献

  • 世界の艦船(海人社)
 本邦で軍艦関係の雑誌といえばまずコレ。創刊(1957年)以来すでに半世紀を超える歴史を持つ。

  • 連合艦隊軍艦銘々伝(片桐大自)
 筆者が20余年の歳月を費やし、日本海軍草創期から刊行時点の自衛艦に至るまで、実に800隻以上の日本軍艦についてその名前の由来と活躍をつぶさに調べ、纏め上げた大作。
 まさにライフワークと言うべき一作で、筆者はこれを書き上げた後数年を経ずして静かに世を去った。
 文体は平易にして格調高く、単純に読み物としても推奨できる。

  • Jane's Fighting Ships
 「ジェーン年艦」の名で知られる、全世界の軍艦を網羅した一冊。毎年刊行されるので最新の情報を得るにはうってつけだが
 洋書なので英語に親しまないとツラいのと、何より財布にツラい(一冊が10万円超!)。個人で入手するのはなかなかきついが、図書館に置いてあったりもするので見てみよう。
 何年か前の古書ならかなり値段が下がっているので、手を出せないこともない。



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最終更新:2024年04月12日 00:49

*1 なお彼女は未だに現役でアメリカ海軍に籍を置いており、祈念式典などで帆を張り元気に走る姿を見ることができる。大切にされているのだ。