アメリカンフットボール

登録日:2014/12/28 (日) 22:05:14
更新日:2023/06/22 Thu 14:17:11
所要時間:約 11 分で読めます




アメリカンフットボールとは、アメリカで生まれた球技のフリができてない格闘技である。


概要
ゲームの目的は、ボールを相手のエンドゾーンに向けて前進させ、得点することである。
ボールを前進させるには主にボールを持って走る方法(ランプレー)と、味方にパスを投げる方法(パスプレー)がある。
基本的にランプレーがローリスクローリターン、パスプレーがハイリスクハイリターンと考えてOK
明確に攻撃側と守備側に分かれているのが特徴で、1試合に登録出来る人数はNFLで46人、日本の大学フットボールの場合制限無し*1。それぞれ一度にフィールドに出られる人数は11人。
また、選手交代に制限がなく、攻撃時と守備時はもちろん、その中でも細かい状況に応じて使う選手を変えることもできる。
ボールをキックする事だけしか仕事をしない選手も普通にいる。

フィールドは長辺120ヤード(約109.3メートル)のサイドラインと短辺53ヤード1フィート(約48.78メートル)。長辺のことをサイドライン、短辺のことをエンドラインと呼ぶ。
また、両方のエンドラインの中央には、高さ10フィート(3m)のクロスバーで連結された、幅18.5フィート(5.6 m)のゴールポストが設置される。

試合時間は1クォーター15分×4の60分(日本の大学リーグ戦では12分×4の48分)であるが、ちょくちょく時計が止まるので実際の試合時間は約3時間ほどかかる。

フットボールの一種だが、特徴的な(わかり難い)点が
「攻撃チーム(得点の可能性があるチーム)と防御チームがはっきり区別される」
「プレイは短く区切られており、選手が並んでヨーイドン、ボールが止まったらストップというセットプレイの繰り返し」
であること。フットボールの名の通りラグビーや原始サッカーから派生したスポーツだが、試合進行はむしろ野球に近い。
あと「他のスポーツでは用いられない用語がやたら多い」というのものある。こればかりは覚えるしかない

国の名を冠するにふさわしく、アメリカ国内での人気ナンバーワンのスポーツ。
同じアメリカ発祥のスポーツであるバスケットボールや野球と比べてもその人気は頭一つ抜けており、プロ最高峰の試合である「スーパーボウル」は、テレビ視聴率が40%を超えると言う。プロリーグであるNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)はアメリカで最も人気があり、世界のプロリーグでは最大級の売上や資産を誇ると言われている。
そしてその登竜門であるカレッジフットボールも全米No2の人気だとか。

アメリカの高校では、成績や所属する部活によってスクールカーストと呼ばれる不文律的なヒエラルキーが存在している。
スポーツマンは「ジョック」と呼ばれるカーストの最上位であるが、その中でもアメフト部、さらに言えば花形ポジションのQBはまさに別格の存在であり、
もれなく女子のカースト最上位である「クインビー(チアリーディング部のキャプテン)」と交際する権利が与えられる。
アメリカの青春ドラマなどでは概して嫌な奴であり、権力を笠に着て調子に乗った末に破滅するというパターンが多い。
スプラッター映画やホラー映画であれば第一級の死亡フラグである。
日本の特撮ファンなら仮面ライダーフォーゼのメインキャラとして登場する大文字さんこと、大文字隼をイメージすると分かりやすいだろう(最も大文字さんは途中から頼もしいネタキャラ味方になったけど)。

ボールの形は似ているが、ラグビーとは全くルールが異なる。
「フットボール」の名の通り、原始サッカーとも言うべきサッカーとラグビーの元になった球技が源流、とは言えゴールにボールを運ぶという点や11人制等言われないと気付かないレベルでしか名残は残っていない。
防具をつけた姿が特徴的なため、存在だけは知られているが、ルールについては全くと言っていいほど知られていない。
今でもラグビーと混同する人が後を絶たず、年配者には「アメラグ」と呼ぶ人も存在する。
有名所だとコブラののラグ・ボール編で「野球とアメラグをを一緒にした~」って言い回しがある。


ルール
反則を含めれば色々あるが、とりあえずは
  • 攻撃側には最初に4回の攻撃権が与えられる。攻撃側は4回の攻撃内で10ヤード*2進む事ができれば再び4回の攻撃権を得られ(これを「ファーストダウンの獲得・更新」という)、できなければ攻撃権を失い、攻守がその場で交代する。
  • ふつう、3回目でファーストダウンを更新できなかった場合、4回目の攻撃は自陣からボールを遠ざけるためにボールを敵陣深くまで蹴り飛ばす(これをパントという)。また敵陣のエンドゾーンが近い場合フィールドゴール(後述)を狙う、…ということを覚えていればOK。
  • この本当は4回あるというのがポイントで、後半負けているチームは4回目も普通にファーストダウンの更新を狙ってくる(これをギャンブルという)ため、擬似的に攻撃権が一回増える形になる。


得点方法
得点するには以下の方法がある。
  • タッチダウン
ボールを持ってエンドゾーン内に入る、もしくはエンドゾーン内でパスを受ける、などエンドゾーン内にボールを運ぶことをタッチダウン(以下TD)といい、この場合6点が入る。
この際ラグビーと違い、ボールを地面に着ける必要は無い。

  • フィールドゴール
一度地面についたボールをキックしてゴールポスト上を通過させて得点することをフィールドゴール(以下FG)といい、この場合は3点入る。

  • セイフティ
自殺点ともいい、自分のチームではなく相手に点が入る。攻撃側の選手がボールを確保した状態で自陣のエンドゾーン内でプレーが終わった際に発生する。
但し、そのプレーで攻撃権が入れ替わった場合はセイフティとならず、タッチバック(自陣20ydからの攻撃)となる。例えば「相手のTDパスをインターセプト、そのままエンドゾーン内で倒れた」場合がこのシチュエーションに当たる。
得点数自体は2点だけだが、攻撃権も失うことになるので踏んだり蹴ったりである。日本では審判のジェスチャーから人と呼ばれることもある。
残り時間わずか、ワンポゼッションゲーム*3中に相手の4thダウンギャンブルを潰して自陣数ydsからの攻撃というシチュエーションで、わざと4thダウンまでニーダウンで進め、最後はエンドゾーンで逃げ回って時間を稼いでからセーフティで終わらせるという作戦も一応ある。
2点献上する代わりに、安全に前からパントを蹴れる*4という利点がある。後はディフェンスチームがTDさえされなければ勝てるのである。

  • トライ
タッチダウン後、敵陣ゴール前3ヤード(NFLでは2ヤード)の地点から、1回のみの攻撃権が与えられる。
この時にFGまたはセイフティを決めれば1点、TDを決めれば2点獲得することができる。
基本的に決まりやすいのでキックが行われることになるが、1回のFGで追いつけるようにしておきたい時、後半TD時点で5点差(TD後トライでFGを決められれば結局逆転される)の時、
後半2点取らないと追いつけない場合等はTDを狙いにいく。
基本的にはキックで1点を取りに行くため、2点狙いのプレイは「2ポイントコンバージョン」と呼ばれる。

ポジション
基本的にオフェンスチーム・ディフェンスチーム・スペシャルチームに分かれており、それぞれ説明する。
  • オフェンスチーム
クォーターバック(QB)
プレー開始時にセンターからボールを受け取り(スナップと言う)ランプレー時はランニングバックにボールを手渡し、
パスプレー時はワイドレシーバーやタイトエンドにパスを投げるポジションである。
また、行うプレーの決定権も持っているため、まさに司令塔と呼ぶにふさわしいポジションである。
中の人無視の急加速装置やたら少女に契約を迫るあいつとは無関係。
パスを投げるための肩の強さ、コントロールの上手さ、視野の広さが必要であり、時に自分でボールを持って走ることもあるため、脚力もあることが望ましい。
一時期のNFLでは「QBまで攻撃に加える事で人数の差を作って有利に進める」というプレイスタイルが研究されてたほど。
自陣49ydsからの攻撃で、パスを出そうとしたら全部埋まってたのでスクランブル*5したら、相手がランプレイを全く想定していなくて、QBが99ydsTDランという珍記録もある。
さらには作戦立案のための頭脳も求められるため、あらゆる面での身体能力を高い水準で兼ね備えていなくてはならない花形ポジション。

ランニングバック(RB)
QBから直接、もしくはショートパスで渡されたボールを持って走るランプレー中心のポジション。
足の速さはもちろんだが、相手のタックルにも簡単には倒されない強さ、ラインの開けるホールを見つける視野の広さ、及び適切なルートを走るカットの上手さが要求されるポジションである。
セットする位置によってハーフバック(HB)、フルバック(FB)と呼称が変わる。
またパスプレー時は後述のOL、TEと共にブロック(体の一部を使って守備側の選手を妨害すること)に参加することもある。

ワイドレシーバー(WR)
パスプレー時にQBからのパスを受けるポジション。ボールをキャッチする能力はもちろん、相手のコーナーバックのマークを外すルート取りや速さも要求される。
またランプレー時は後述のOL、TEと共にブロックに参加することもある。

オフェンスライン(OL)
C(センター)、G(ガード)、T(タックル)に分かれており、ランプレー時には相手選手をブロックしてRBが走るためのホールを開け、
パスプレー時にはQBを相手選手から守るポジションである。
あまり目立たないポジションだが、全てのプレーの土台となる重要なポジションである。
攻撃側が上手くいってないと思うときはラインに注目してみるといいかもしれない。
ただ逆に攻撃が上手くいかないと批判の的にされてしまったりするあたりやはり可哀想なポジションである。
いかにもアメフト体型な人々はこれか、下のDLのプレイヤーである。

タイトエンド(TE)
WRと共にパスを受けたり、OLと共にブロッキングに参加したりする何でも屋ポジション。ブロックが得意なTEをブロッキングTE、レシーブが得意なTEをレシービングTEという。
ラインやRBをやるには体が細い、WRをやるには足が遅い等、微妙に中途半端なポジションの選手がここに振られるせいか、給与水準が無駄に安いらしい。

  • ディフェンスチーム
ディフェンスライン(DL)
DT(ディフェンスタックル)とDE(ディフェンスエンド)に分かれていて、DLが3人の時のDTの選手をNT(ノーズタックル)と呼ぶこともある。
OLとは逆に、相手のランプレー時には走者の穴を潰し、パスプレー時には相手のOLをかいくぐってQBにタックルを仕掛けに行くポジション。
OLがプレーの土台になるポジションなら、DLはプレーの土台を崩すポジションである。

ラインバッカー(LB)
MLB(ミドルラインバッカー)とOLB(アウトサイドラインバッカー)に分かれており、ラインバッカーが4人の時のMLB2人をILB(インサイドラインバッカー)と呼ぶ。
対パス守備も対ラン守備もこなすディフェンスの中心。このポジションからパスプレイをしようとするQBを急襲する「ブリッツ」なんかも行う。
ILBがディフェンスチームの司令塔を勤めることが多い。DLとLBを含めてボックスと呼ぶ。

コーナーバック(CB)
相手のレシーバーをマークして妨害するポジション。
CBによるパスインターセプト(守備側がパスをノーバウンドで捕球すること)はその場で攻撃権が入れ替わる守備側のビッグプレーだが、
そもそも相手についているレシーバーに投げさせないことも同じくらい重要である。

セーフティ(S)
QBの利き手のサイド(ストロングサイド)にいる選手をSS(ストロングセーフティ)、SSの逆サイド(ウィークサイド)の選手をFS(フリーセーフティ)と言う。
CBとSのことを含めてセカンダリーと呼ぶ。
LBがボックスの何でも屋ならSはセカンダリーの何でも屋で、パスプレー時にはCBと共にWRをマーク、または抜けられていた際に止めに入り、
ランプレー時にはビッグゲインさせないことはもちろん、少しでも余計な前進を防ぐためやはりCBと共に止めにかかる。そのためLBではなくSに守備の司令塔を置くチームもある。

  • スペシャルチーム
キッカー(K)
FGのキックを蹴るポジション。より遠くからでもFGを決められる脚力とコントロールを要求される。基本的にキックオフを蹴るのもこっち。

パンター(P)
パントのキックを蹴るポジション。
キッカーとの違いは距離調整含めた蹴り分け能力を求められる点(相手ゴールラインを超えるとタッチバックになるため、ゴールラインギリギリを狙えることを求められる)。
たまーにこっちがキックオフを蹴ることもある。

ロングスナッパー(LS)
FGやパントの時にスナップを担当するボジション。
普段より長距離を投げる上にミススナップすると悲惨な事になるので専門職が担当したりする。

ホルダー(H)
フィールドゴールやトライ時にボールを保持する役割。正確にキャッチして、安全にキッカーにボールを蹴らせる事が要求される。
誤ってキャッチやボール保持に失敗した時の保険に控えQBが兼任することがある。とはいえある程度のレベル以上になれば基本的にそんなことはない。基本的には。

キックリターナー・パントリターナー(KR・PR)
キックオフやパントの時、それらのボールをキャッチして敵のエンドゾーンに向かって前進するポジション。専任というよりはWRやCBが兼任することが多い。

【時間との勝負】
アメフト特有の要素でもある「クロック・コントロール」。
アメフトではプレーの合間に残り時間が進むときと止まる時があり、どのタイミングで止めるのかというのが駆け引きになっている。
もちろん得点が欲しい時は残り時間を使わずに攻めなければいけないが、余りにも攻め急ぐと「得点後に相手に逆転されるかもしれないプレイをさせる時間」を与えてしまう事にも繋がる。
故に「この攻撃では時間をたっぷり使って相手にプレッシャーを与えながら、タッチダウンによる7点を狙わず、FGによる3点で終わらせる」という選択肢が浮かび上がるのである。
もちろん時間が有るのに作戦会議の時間を規定まで使わずにハイテンポで攻撃して考える暇を与えさせないだとか、時計を止めるためにプレイ直後に足元にボールを叩きつける*6。なんてのもこのクロックコントロールの一つ。

【日本では】
前述通り、まだまだルールが知られておらず、マイナースポーツの域を出ないが、大学では人気が高い。
大学の合格発表の場で、合格した人のところにアメフト部がやってきて胴上げする(ついでに勧誘もする)というのはお決まりの構図だろう。

また、学生チームであっても、プロさながらに公式のチーム名がついており、なかなかオシャレ。

東京大学ウォリアーズ、早稲田大学ビッグベアーズ、日本大学フェニックス、筑波大学エクスキャリバーズ等々、厨二心をくすぐる名前がたくさんある。


【アニヲタ的には】
週刊少年ジャンプの名作アイシールド21を外すことはできない。
ただしアレは面白さを追及するためリアル7・ファンタジー3の案配で描いたと作者が表明しているくらいなので、アレをあのまま鵜呑みにするのは止めよう。

川崎のぼる作画による『フットボール鷹』という作品もあるが、スポ根ブーム末期の作品であるためか、同作者の『巨人の星』に比べて、あまり知名度は高くない。

プロテクターを着けた姿が特徴的なために『UFO戦士ダイアポロン』の主役機やガンダムマックスターなど巨大人型ロボット(兵器)のモチーフになったり
格闘技の力強いイメージから仮面ライダーストロンガー(登場キャラクター)や『闘士ゴーディアン』の主人公など戦うヒーローがやっていたり
ゴレンジャーハリケーン*7のように技として採用されるなど、スポーツ作品以外でも部分的に取り入れられることもしばしば。
特に70年代末は目立つが、これはアメリカ合衆国独立200周年でブームになっていた影響だとか。

追記・修正よろしくお願いします

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • スポーツ
  • アメリカンフットボール
  • アメフト
  • アイシールド21
  • 球技
  • NFL
  • ナショナル・フットボール・リーグ
  • スーパーボウル
  • アメリカの国技
  • アメリカ

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年06月22日 14:17

*1 なので背番号が被る選手もいるが、同じ番号の選手を同時にフィールドに出さなければOK。

*2 約9.14メートル

*3 6~8点差。要は「セーフティ2点+FGによる3点では逆転されないがTDでは同点や逆点がある状況」。

*4 普通にプレイを進める場合、途中でファンブルやインターセプトによるTDを喰らう危険性が出てくる。

*5 緊急発進、もといパスプレイができないのでQBが自ら走る決断をすること。上にも書いたデザインでQBが走るプレイはスクランブルとは言われない。

*6 パスインコンプリート扱いになり、ダウン一つを犠牲に時計を止めることが出来る。

*7 これはラグビーかも