登録日:2014/12/06 Sat 20:19:51
更新日:2024/03/03 Sun 00:00:06
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のび太が勇敢な剣士に大変身!?
頑張れのび太とドラえもん!
妖魔大帝を倒せ!!
監督:芝山努
脚本:
藤子・F・不二雄
主題歌:武田鉄矢一座「世界はグー・チョキ・パー」
挿入歌:武田鉄矢一座「夢の人」
『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』とは、『映画
ドラえもんシリーズ』の第15作目及び『大長編ドラえもんシリーズ』第14作目のタイトルである。
1994年3月12日公開で上映時間は98分。
同時上映は『ドラミちゃん 青いストローハット』、『ウメ星デンカ 宇宙の果てからパンパロパン!』。
ドラえもん映画化15周年記念作品にあたる。
●目次
【概要】
アレクサンドル・デュマ・ペールの代表作である「三銃士」をモチーフにした作品。
夢世界(夢宇宙)の一つである「ユミルメ国」を舞台とするファンタジーもの。
ストーリー構成も、選ばれし剣士が伝説の武器を携え世界を脅かす巨悪を打ち倒すという王道
RPGにありそうな構成となっている。
本作品を作るにあたって、作者の
藤子・F・不二雄は「ぼくは長いストーリーを組み立てるのが苦手です」と前置きを書いた上で、
書き進むうちに作者の意思と関係なくキャラクターが動き始め予定していたゴールとは外れることもあると述べ、今作品はゴール大はずれ(失敗作というわけではない)の極端な一例であると述べた。
元々は「気ままに夢見る機」が暴走し、夢の世界の妖怪などが現実世界に紛れ込んでくるストーリーを考えていたようだ。
しかしドラえもんの作品を作る上で大切にしている「一般社会(日常)に影響を及ぼさない」というルールを守った上で、
夢世界と現実世界の混同をやってしまうと後始末が大変だということで、今作品のように夢世界の中で話は完結した。
それが原因なのか漫画版と映画版の違いがかなりはっきりとしている。
また最終決戦の際にジャイアンとスネ夫が既に物語から退場していたり、(生き返るとはいえ)明確な主要人物の
死が描かれるなど、
ドラえもんの映画としてはかなり異色な作品となっている。
挿入歌の「夢の人」は勇ましい曲調であり、本編と大変マッチしていることから度々使われ、ドラえもんの中でも人気が高い曲である。
【あらすじ】
現実の世界で何をやってもダメなのび太は、せめて夢の中では自分の思い通りになりたいとドラえもんに訴え、「気ままに夢見る機」を使い好きな夢を見られるようになった。
そんな中、謎の老人から「夢幻三剣士」のカセットの存在を伝えられ、ドラえもんに頼みカセットを手に入れたのび太。
選ばれし剣士である「白銀(しろがね)の剣士」となり冒険を始めるドラえもんとのび太だったが、その夢は単なる夢ではなく、夢世界侵略を目論む妖霊大帝オドロームの魔の手が迫っていた。
【登場キャラクター】
【メインキャラクター】
ご存知僕らの中古
ロボット。今作では魔法使いのドラモンとしてのび太の冒険に同行する。
当初は
空気を読まず世界観を無視して
どら焼きやら
タケコプターやら
ミサイルを出してのび太に怒られるが、それ以降は反省して四次元ポケットは置いていった。
ただ現実と夢が入れ替わる隠しスイッチを押してからは、ひみつ道具=
魔法と認識されてしまったのでバンバン使う。
途中で四次元ポケットを盗まれてしまうのでひみつ道具は使えなくなるが、それでも魔法の箒(
犬のように懐いている)を使った戦闘力は高く、敵の雑魚兵なら相手にならない。
ちなみに夢世界の登場人物はノビタニヤンを始め「ゲストキャラクター」として紹介されているが、ドラえもんだけは夢世界ではイレギュラーな存在であるためかゲストキャラクターとは扱われていない。
余談だが、6年後に公開された「
のび太の太陽王伝説」でも、ティオに「ドラモン」と呼び間違えられていた。
ご存知物語の発端。
最初は夢の世界なのにやたらと現実っぽい「夢幻三剣士」の世界に嫌気が差していたが、伝説の武具である白銀の剣と兜を入手してからは驚異的な戦闘能力を得て、冒険を始める。
戦闘能力は一行の中で間違いなく最強。
大木すら軽々と切り裂く「白銀の剣」の切れ味と、作中最高峰の剣技で敵を圧倒する。恐らく歴代最強クラスののび太。
しかし実は「優しすぎるゆえに竜を殺すことが出来ず、不死身にはなれない剣士」として、オドロームの側近であるトリホーから選ばれ、半ば意図的に「夢幻三剣士」の世界に巻き込まれていた。
夢世界でも現実同様心優しい性格のままで、熊親子や竜に感謝されたりシズカールの信頼を得る事になるのだが、「不死身の剣士を作らせない」というトリホーの策略は成功してしまった。
そして作中でなんと一度死亡し後のない状況に陥るが、夢世界を放ってはおけないとして最後まで勇敢に戦い抜いた。
名前の由来は「三銃士」に出てくる青年、ダルタニアンから。
ご存知
お風呂好きのヒロイン。のび太の想い人であるがゆえにヒロイン役の王女と案内役の妖精の二役を担当する。前作で印象が薄かった反動か今回は出番が多い。
中盤からはのび太がこっそりつけたマイクロアンテナにより本人が演じる。シルクの方は多分違うが。
というより、ガイドでありながら自分の無責任な行いを棚に上げてのび太達を非難する辺り、『ドラビアンナイト』のミクジンの方が数倍優秀である。
ノビタニヤンのことを初対面時は良い印象を抱かなかったようで、「家出してよかった」と呟いている。
剣の腕前は城の兵士から手ほどきを受けていたのでそれなりらしいが、活かされる場面は少ない。乗馬ができないらしい。
ただ、スパイドル将軍の軍勢を倒す策は彼女が思いついており、後述の最終局面での大活躍があるなど見せ場は作っている。
のび太がマイクロアンテナを外すように直接言えなかったために最終決戦にも参加。オドロームと一騎打ちになり一度死亡するが、彼女の機転で世界が救われることになる。
オドローム打倒後は城へ戻り、ノビタニヤンとドラモンには正体を明かさぬまま王女へと戻った模様。
旅を通じノビタニヤンの強さと優しさという魅力に触れた彼女は、父王に「あの方となら」と結婚を承諾する旨を告げていた。
ご存知ガキ大将。夢の世界では怪力を誇る剣士として登場。白銀の剣と兜を手に入れるためスネミス(スネ夫)と決闘し瞬殺するなど戦闘力は高いと思われる。
ノビタニヤンとの決闘に敗れた後は、「夢幻三剣士」の一人として行動を共にする。
…がその戦闘力が活かされる機会は殆ど無く、竜の谷では速攻で
石化され、最終決戦の時にはマイクロアンテナをのび太に外すよう言われて外していたので登場しなかった。
名前の由来は「三銃士」の一人であるポルトスかアトス、又はその両方からか。
ご存知ボンボン。夢の世界では身のこなしが高い剣士として登場。爵位持ちの
貴族で子爵。
現実のスネ夫と同じく弱いものには強気で、強いものには下手に出るという性格。性格も気弱。
どうもその性格のせいで召使いに逃げられたらしい。
こちらもノビタニヤンとの決闘に敗れた後は、「夢幻三剣士」の一人として行動を共にする。やはり活躍の場面は少なく、ジャイアンと同じ理由で最終決戦には参加していない。
名前の由来は「三銃士」の一人であるアラミスからか。
ご存知のび太の担任。シズカリア王女の父親でユミルメ国の王様。
のび太に登場人物の設定を任されたドラえもんがどうやら国王に配役したらしい。マイクロアンテナは最後まで付けられていないので、顔が同じの別人だが。
ただ一瞬だけ大臣たちを怒鳴り散らす際に先生の格好になる。
シズカリアには白銀の剣士との結婚を頼むが、本人としても窮する国のため本当に仕方なくといったところであり、ラストでは帰ってきたシズカリアに謝罪している。
原作では白髪白髭の老人。
ご存知のび太のママ。
なにげにのび太一行の命を救うことに。
夢世界という観点では「雲の王国」と同じく世界を救うことになる。
ちなみに原作ではのび太のパパがその役目を担っている。
【ゲストキャラクター】
CV:家弓家正
夢世界にあるユミルメ国の支配を目論む妖霊軍の首領にして本作の
ラスボス。幽冥宮という城を拠点とする。人間に比べるとかなりの長身で、ローブを纏った白髪の魔族といった容姿。
性格は冷徹にして極悪非道。部下にはチャンスこそ与えるが、逆らう者には一切の容赦もせず、たとえ幹部級の部下であっても失態を犯したら慈悲もなく死の制裁を加える。
戦闘能力は作中どころかドラえもんシリーズ全体を通しても最強クラス。
圧倒的な魔力と醸し出される威厳、白銀の剣でしか倒せない生命力を誇り、作中ではノビタニヤンとシズカールを文字通り塵にして殺害した。
絶大なインパクトを誇る即死魔法「塵となれ」以外にも、幻影魔法、空中に浮遊する術、瞬時に
杖を伸ばす、砦中の人間全てを催眠術にかける、分身の術や空から流れ星を落とし拘束するなど、作中で披露されただけでも数々の魔術を扱うことが出来る。
その上、ラスボスにあるまじきアクティブなところがあり、首領であるにも関わらず、ノビタニヤンたちの
弱点を掌握するや否や
直接彼らのもとに殺害に赴く、最終決戦では「みんな下がれ!」と、部下達を下げて自ら戦いに躍り出るなど、戦闘力に伴う絶対的余裕も見せつけた。
そりゃこんな
魔王が敵側にいれば夢世界の人間軍も歯が立たないのは仕方がない、といったところである。
自分が夢世界の住人であると自覚し、目覚めの世界(現実世界)からやって来る不死身の剣士がいずれ自分を倒しに来ることを
予言で知っており、先手を打つため部下のトリホーを現実世界に送り込んだ。最終決戦ではまず城に潜入していたシズカールを塵にして瞬殺。流れ星を落としドラモンの身動きを封じた上でノビタニヤンとの一騎打ちを演じる。
分身の術で翻弄し、杖で身動きを封じたところで止めの一撃を放とうとするが、シズカールが一度生き返ることを知らなかったため、彼女に奪っていた四次元ポケットを奪還され、ビッグライトで
巨大化した白銀の剣で体を貫かれ、
断末魔とともに死亡する。
CV:田村錦人
オドロームの部下で鳥の妖魔。オドロームから現実世界に行き、剣士が夢世界にやって来る前に始末しろとの命令を受ける。
しかし「剣士が現れるのは絶対に変えることが出来ない定め」であると理解し、逆転の発想で「現れる剣士が不死身でなく、オドロームを倒せるほどの人物でなければいい」と思いたち、優しいがゆえに竜を殺せず不死身になれないのび太を「白銀の剣士」にするべく導いた。
剣士を招いた事でオドロームは憤慨していたが、「奴は『強い剣士』にはなれても、不死身にはなれません」と返し、実際にその目論見は当たる事になる。
ただ一緒に来るドラえもんのひみつ道具と、シズカールが生き返れる事について進言する事を失念していたようで、一応四次元ポケットの強奪には成功するが蘇ったシズカールに取り返され、オドロームは敗れることになる。その後の行方は不明。
映画版では終盤に登場する
二十二世紀デパートの職員(ロボット)と顔や笑い方がそっくりだが、関係は不明。この辺、デパートの陰謀説も囁かれる。
CV:
屋良有作
土の精部隊を率いる
蜘蛛の妖魔。六本の毒剣を操る六刀流。
アンデル市を陥落寸前まで追い詰めるが、策にはまり土の精を弱点の水で全て溶かされ壊滅。最後のあがきで単身切り込んでくるが、ノビタニヤン達に前に敗れて逃亡。
その後撤退するものの、オドロームに任務失敗の罪で粛清され死亡する。
ちなみに、「
ドラえもん のび太のワンニャン時空伝」の時の映画25周年記念ムービーでも登場し、ドラえもんの尻を刺した。
CV:
郷里大輔
水の精と鉄の精を率いる
象の妖魔。大きな耳で空をとぶことが出来る。
シャルペロー城を攻め落とそうとするが、ドラモンの魔法(ひみつ道具)に尽く軍が敗れ去り、最後はノビタニヤンとの一騎打ちを演じるが、耳を斬られて墜落し敗北する。
映画ではそのまま退場となるが、原作では敗北後巨大化し再戦を挑んでくる。しかし、
ドンブラ粉で沈められて完全敗北。
この二人以外にも
見るからにうだつの上がらない顔をした鳥のような妖魔と
豹のような妖魔が居るが、幽冥宮でオドロームに諂う以外これと言った出番は無いので詳細不明。
幽冥宮にノビタニヤン達が侵入してきた時も何やってたんだこいつら。
CV:
石丸博也
竜の谷に住む伝説の竜。人間の味方でも、妖霊軍の味方でもない。
性格は平穏な生活を望む穏やかなものだが、浴びると不死身になると言われる自分の血を狙って多くの戦士たちが押し寄せてくるので、自衛のため石化ブレスで多くの人間を石にしてきた。
弱点は髭で、これを切られると一定時間力が出せなくなる。
割とすぐ再生するが
髭を切り、自分を殺して血を浴びる絶好のチャンスだったのにも関わらず止めを差さなかったノビタニヤンの優しさに触れ、血を流す代わりに
温泉に自分の汗を溶かし、一度死んでも生き返ることが出来る温泉を作った。また石化された者もこのお湯をかけることで元に戻る。妖霊軍との戦いに向かうノビタニヤン達を、幸運を祈ると言い見送った。
原作では東洋風の竜だが映画では西洋風。
【用語】
本作の舞台。元は豊かな国だったが、オドロームたちに侵略された結果、衰退した。現在では全80都市のうち44都市が支配されている。
【ひみつ道具】
思いのままの夢を楽しむことができる機械。「夢カセット」を本体にセットし、ホクロのような「マイクロアンテナ」を顔につけて眠ると、その夢を見ることができる。
登場人物の配役は自分で自由に決める事ができるので、のび太は、専ら主人公は自分でヒロインはしずかちゃんにしていた。
マイクロアンテナを複数人につければ、複数人で同じ夢を見、同じ世界を味わうこともできる。
見ている夢の内容は、現実世界にある本体から第三者が見ることが出来る。
「かくしボタン」という装置があり、これを使用すると現実と夢が入れ替るらしい。
だがこの現実と夢が入れ替わるというのが具体的にどういうことなのかはよく分かっておらず、単なる認識の違いなのかそれとも
夢の世界で死亡したら現実世界でも死亡するような恐ろしいものなのかは不明。
映画版でのラストにあった演出に背筋が凍った人もいるとか。ちなみにメーカーは「
民天堂」。
VR作品を先取りした様な道具ともいえるか。
気ままに夢見る機に差し込むカセット。下記に記すものの他、「ミックマウス」「マクドナルド・ダッグ」「ペノキオ」「ウゴウゴガール」「ピーターポン」「ズボンの騎士」「ドラえマン」「フラダンスの犬」「ドラボンゴール」などの突っ込み所満載なタイトルのものや、「盆栽の作り方」「よくわかるマーストリヒ条約」といった学習用と思しきタイトルもある。
本編のメイン舞台。ユミルメ国の支配を目論む妖霊軍との戦いを描く内容。
「
ドラゴンクエスト」の様なRPGをまさに「体感」することができる。
しかし他の夢カセットとは異なり、単なる夢ではなくいわば
パラレル世界に行くことが出来るカセット。
なので通常はありえない夢世界の住人が現実世界に来ることもでき(トリホーとシルク)、のび太達が夢を見なくてもその世界の情勢は着々と進んでいく。
また強すぎる力により、時に現実世界に影響を及ぼすこともあるという。
のび太は「夢の中で強くなれば現実でも強くなるんじゃない?」と前向きに捉えていたが…
何作ってるんだよ二十二世紀デパート…
1つだけの特注品で値段が高く、ドラえもんは買うことを渋っていた。
12回払いの分割払いも可能とのことだが、ドラえもんは頭金を無理して払ったといっており、かなり高額な様子。
伝説の都アトランチスが崩壊し、生き残った羊飼いの少年と助けた王女が最終的には王国を築くという物語。
ただのび太が水が出る夢を見たせいでおねしょをしたので物語最序盤で目が覚めてしまった。
ドラえもんがのび太に薦めたが「僕より小さい子向けじゃない?」と返され却下された。
元ネタは多分
アンパンマン。
恐竜の住む惑星での冒険物。監督はスピルバーガー。
予告編ではのび太にも好感触だったが、女の子(ヒロイン)が出ないということでやはり却下される。
元ネタは言うまでもなくジュラシック・パークとスティーヴン・スピルバーグ。
メーカーはAMPLINE、EMIX。
予告の最後に過度の使用は健康を害し、現実世界への影響をおよぼす場合がありますと夢幻三剣士と似た注意書きがあるがこれは単にゲーム依存による健康被害に対する警告と思われる。
本編でもおなじみのひみつ道具。
夢の世界で最初にドラえもんが出したひみつ道具だが、世界観がぶち壊しになると激怒したのび太が投げ捨て、流れ星に引っかかりどこかへ行ってしまった。
だが紆余曲折を経てドラえもんの手元まで戻ってきた。
本作では川の水まで取り寄せていたが、夢世界にないものは現実世界(主にのび太の家)から取り寄せていた。
{余談}
ラストでの学校がえらく高い山頂にある事(普段は「学校の裏山」などが出ることからも分かるように平地に存在)ついては、ドラえもんファンの間で幾度も論戦が行われた。
- 夢見る機の影響で学校がお城の位置に移動してしまったというギャグ描写」説。
- 「実はまだのび太達は目覚めておらず、妖霊軍との新たな戦いが待っている説。
- しずかちゃんとだけ出会ったのがヒントであり、あの後に「夢の中」で最後まで出来なかった結婚式&シズカールの正体判明イベントが発生する」説。
- 「単なる設定ミス」説。
など多岐に渡る。
主題歌の「世界はグー・チョキ・パー」はエンディングで初めて流れ、ほとんど歌詞も画像も本編と無関係な点はよくツッコまれるが、
歌詞に合わせているように見える画像も「
アメリカが夜 ペキンは朝」という意味のことを歌う場面で、「アメリカ側(左)が昼、ペキン側(右)が夜」という、
歌詞と真逆の光景になっているさらにツッコミどころの場面もある。
追記・修正は気ままに夢を見たい人がお願いします。
最終更新:2024年03月03日 00:00