青の騎士ベルゼルガ物語

登録日:2011/07/05 Tue 09:00:18
更新日:2024/03/30 Sat 14:46:26
所要時間:約 7 分で読めます




青の騎士ベルゼルガ物語』は、アニメ作品『装甲騎兵ボトムズ』の外伝小説。
著者ははままさのりで、掲載は当時ボトムズの各種設定の創作もしていたデュアルマガジン。
当初は掲載誌のデュアルマガジン休刊に合わせて終わる予定であったが、人気があったためソノラマ文庫で続きが執筆された。
単行本は1985~87年にソノラマ文庫より刊行され(1997年に同レーベルより新装版が販売)、2017年には朝日文庫から再販された。いずれも全4巻構成。

物語は主人公が恩人の仇を追う「黒き炎編」と、アストラギウス銀河を巻き込む陰謀に主人公が立ち向かう「メルキア騎士団計画編」の二部構成になっている。
ちなみに当初は読み切り版であり「黒き炎編」のみの状態で内容が大幅に違った、この「初期版」はHJのムックに収蔵されている。

設定・経緯が本家ボトムズ本編の世界観から逸脱していき、また後述される登場メカの他作品への流用問題もあって最低野郎間でも評価が分かれる。だが藤田一己氏による秀逸なメカデザインやハードな作風から根強いファンが存在する。
かの虚淵玄氏も本作に強い影響を受けたと言われている。

機甲猟兵メロウリンク』と共にパイルバンカーという武器の人気と知名度を向上させ、特に「パイルバンカー=一撃必殺」というイメージ定着に一役買っている。 


◆あらすじ

百年戦争が終結し、メルキアに帰還したケイン・マクドガルはクエント人傭兵シャ・バックと再会し、その勧めでバトリングの世界に足を踏み入れる。順調に勝利を重ねていたある日、ケインとシャ・バックは謎のATシャドウ・フレアに勝負を挑まれ敗北、シャ・バックは殺害されてしまう。ケインはシャ・バックの仇を討つべく彼が遺したベルゼルガを駆り、シャドウ・フレアを捜す旅に出る。その中でケインは巨大な陰謀に巻き込まれていく。


◆登場人物

  • ケイン・マクドガル 
主人公。元メルキア軍所属のAT乗りで「青の騎士」というリングネームを持つバトリング選手。戦友シャ・バックを殺害した謎のATシャドウ・フレアを追い、青く塗装されたATベルゼルガを駆り各地を放浪する。その旅の中で旧劣等種( ベルゼルガ )として覚醒していく。 
シャドウ・フレアとの最終決戦後は当初は戦場に戻る気は無かった。だが謎の新型ATウォーリアー・ワンとの遭遇をきっかけに「メルキア騎士団計画」の存在を知り、それを止めるべく再び戦場に舞い戻る。
旧劣等種故に強靱な肉体と高い生命力、強い闘争本能を持つ。どれほど絶望的な状況であっても決して諦めずに立ち向かう。心を通わせたヒロインとは死別し自身も右足の膝から下と左目と左腕の手首を失い言語中枢に異常をきたしてもなお闘志を失わずに最後まで戦い抜いた。

  • ロニー・シャトレ
ヒロイン。バララント出身の少女。ケインが収容所から脱走する際に強奪した密輸船に人買いの商品として乗せられていた。脱出後は「ファニー・デビル」のリングネームでバトリング選手をしていたがケインと再会、行動を共にする。

ケインに想いを寄せており、ケインにとってもまた大切な存在だったが…。

  • ミーマ・センクァター 
自称流れ者のマッチメーカー。正体はメルキア軍情報将校にして次世代主力AT「FX」開発責任者。ケインに興味を持ち復讐に協力する。
W-1やレグジオネータの存在に気付き、それに対抗する為新型ATを開発。バララントへの出征を命じられると新型ATを持ち出しメルキア軍から離反する。そして開発中の切り札テスタロッサの仕上げを進める。

  • シャ・バック 
クエント人傭兵でベルゼルガの本来の持ち主。ケインとは旧知の仲。偶然再会したケインをバトリングに引き込んだ。シャドウ・フレアにリアルバトルを挑まれ殺害されてしまう。
実は融機人であり、クリス達に恭順しなかった事から命を狙われていた。

  • クリス・カーツ 
「シャドウ・フレア」を名乗るバトリング選手。正体は肉体を改造した異能者「融機人」の異能結社「ラストバタリオン」総帥。アストラギウス銀河を融機人の手で支配せんと目論む。バトリングでシャドウ・フレアの実戦データ収集を行っていた。

元メルキア軍人で、ワイズマンの宇宙船襲撃作戦に従事した際にワイズマンの情報操作により融機人を虐殺。それにより融機人としての記憶が覚醒した。

  • ネブロウ・J・ロリンザー
メルキア軍大将。ギルガメス連合軍の中心的人物でかつてAT開発に従事し、時に自らATを駆り高い戦果を挙げていたという経歴の持ち主。
レグジオネータにより洗脳されており、「メルキア騎士団計画」を秘密裏に遂行する。
ケイン同様旧劣等種の因子を持つ。

  • K'(ケイダッシュ)
W-1の生体コンピューターが産み出したケインのクローン。レグジオネータが自らを操縦するのに最適な人間として作り出した。
レグジオネータの理想通り旧劣等種のケインのクローンである為に強靱な肉体と高い生命力を持ち、かつ余計な教育が一切施されていない真っ更な状態である。産み出された直後からレグジオネータを乗りこなす。


◆登場メカ

  • ベルゼルガ(ブルーナイト)
シャ・バック所持のベルゼルガをバトリング用に改造した機体。本来圧縮空気射出式のパイルバンカーをアームパンチ用カートリッジ3発で射出する仕様に改造し、両腕にアームパンチ機構を搭載。背部に瞬間的に出力を向上させるスーパーチャージャーを装備する。シャ・バックの死後はケインに受け継がれる。
何度かの改修を経て、最終的にジェットローラーダッシュや次期主力AT用パーツを組み込む事で性能が大幅に向上したベルゼルガ・スーパーエクスキュージョンとなる

  • シャドウ・フレア
クリス・カーツの駆る謎のAT。実はバララントの新型ATで、バトリングで実戦データを収集しており、圧倒的な性能で多数のATをバトリングで葬った。
ドリルを装備しており、ブルーナイトとの最終決戦ではパイルバンカー対ドリルというロマン溢れる対決を繰り広げた。

  • ゼルベリオスVR-マキシマ
ベルゼルガを失ったケインにミーマが与えたAT。次期主力M級AT「カラミティドッグ」の白兵戦仕様(ブルーバージョン)
本機は特別な戦闘用コンピューター「VR-MAXIMA」を搭載しており、他の白兵戦仕様と区別する為ゼルベリオス(ケルベロスの独語訳)と呼称される。
なおカラミティドッグ自体はブルー以外にグリーンとレッドが存在する。
ベルゼルガを参考に開発されており、左腕のシールドユニットにはパイルバンカーを装備している。
本機はケイン機含め3機のみ存在し、内1機はロリンザーが搭乗しケインが乗るテスタロッサに挑むも一蹴されている。

  • ウォーリアー・ワン
通称W-1。生体コンピューターを搭載した所謂無人機であり、既存ATを遥かに凌ぐ運動性を発揮する。
実は人物を殲滅した後に新人類を産み出すというメルキア騎士団計画の中枢を担う機体である。

  • ベルゼルガSSS-X テスタロッサ
ケインの最後の搭乗機。ケインのベルゼルガを参考にミーマがアストラギウス銀河の全テクノロジーを結集して作り上げた「最強」にして「対レグジオネータ専用」AT。
主動力源としてジェネレーターを搭載しており、マッスルシリンダーは補機として使用されているのみ。これにより出力が爆発的に増大したが、ケイン以外には全く扱えない機体となった(そのケインでも操縦には多大な負荷がかかる)。
回収したケインのベルゼルガのパイルバンカーを装備しており、これにかつて古代クエント人がレグジオネータ追放に用いたエネルギー推進装置「キューブ」を装備する事でパイルバンカーを打ち込んだだけで地割れを起こし
1万機のW-1を飲み込む等凄まじいパワーを発揮する。機体の性格はスーパーロボットだがこれは前述の通り「対レグジオネータ」の為だけに作られた物だからである。
テスタロッサとはイタリア語で「赤い頭」
AT離れした設定から賛否両論ながらヒロイックなデザイン故に外見的には高い人気を誇るATである。

  • レグジオネータ
全てのATの原型となった「最古」にして「究極」の機体でどちらかと言えば装着型のパワードスーツ寄りの機体。メルキアの5000年前の地層から発見された機体でその解析過程でATが誕生した。
未知の駆動系とジェネレーターを搭載する。重装甲だがこれは高過ぎる運動性を抑え、装甲の隙間から来る風などによる搭乗者のダメージを抑える為に装甲を追加した物である。
腕を振るだけで放電現象でATの装甲を切り裂き単機でAT800機を撃破する等圧倒的な戦闘力を誇り自身を操縦可能な人間の文明を作る事を目的とし、洗脳用の装置を搭載している。

これだけならまだいいが、著者のはま氏はこの機体を自分の作品である『兇兵器ヴァン・ビール』においてほぼそのままの状態で使ってしまった。つまり盗用同然の事を行ってしまったのである。
その為当時の顛末を知っている読者には、この機体及びメルキア騎士団計画編に対するアンチが少なくない状態になっている。


◆用語解説

  • 旧劣等種( ベルゼルガ )
かつてクエントを支配した異能者を追い払ったと伝えられる凶暴な勇者。異能者を上回る身体能力に強靱な肉体、高い生命力、強い闘争本能を持つ。
本作ではATベルゼルガの名称はこの旧劣等種からとったものであるとされている。



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最終更新:2024年03月30日 14:46