名探偵コナン 瞳の中の暗殺者

登録日:2014/12/03 Wed 09:52:10
更新日:2024/04/18 Thu 12:12:34
所要時間:約 19 分で読めます





蘭の瞳に隠された狙撃犯(スナイパー)を探せ!


監督:こだま兼嗣
脚本:古内一成
主題歌:小松未歩「あなたがいるから」

『名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』とは、劇場版名探偵コナンシリーズの第4作目のタイトルである。2000年4月22日公開で上映時間は100分。興行収入は25億円。

【概要】

江戸川コナンこと工藤新一と毛利蘭の関係をテーマに描かれた作品。
蘭が事件に巻き込まれたショックで、記憶喪失になってしまう衝撃的な展開。
それと同時に事件の裏側に警察の上層部が関与している可能性があるという、某ドラマ*1にありそうな設定でストーリーが進んでいく。
『ジェットコースター殺人事件』では語られなかった、新一と蘭のデートの詳細が明らかにされているのも特徴。
同シーンは後の『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』でも描かれている。映画において初めて米花町で殺人事件が起こった。

今回、前作まで劇場版ポスターに登場していた少年探偵団の3人がポスターに登場していない*2
本作が公開された時に少年探偵団がポスターにいなかった為、作者の青山先生が「ちょっと寂しい」と感じたらしく、次作の『天国へのカウントダウン』では少年探偵団がメインの作品となっている*3

白鳥任三郎を演じていた塩沢兼人氏が映画公開後に死去した為、今回が彼の劇場版コナンの最後の出演となってしまった。
なお、今回ゲストキャラクターを演じた井上和彦氏が二代目白鳥任三郎役となっている。


【音楽】

本作の楽曲は全体的にサスペンス色が強め。またメイン・テーマや「キミがいれば」はかなり原曲に近い形でのアレンジなのも特徴。
TVでの解禁は映画公開から1年以上経った2001年5月の『消えなかった証拠(前編)」となった。
これは半年前にTV用の新しい楽曲が導入され始めたため、それらとかち合わないように先送りされてしまったからだと思われる。
しかし解禁後はかなりの勢いで使われており、

  • 日常シーンの「とっておきクイズ」
  • 考察シーンの「黒い影-挑戦-」
  • 前編の引きの「犯人の正体*4
  • 推理披露シーンの「Need not to know.」「漆黒の殺意」

などの馴染み深い曲が揃っている。
中でも「暗殺者のテーマ-忍び寄る魔手-」は事件に関わるシーンならどこにでも使われるほどの汎用性の高さで、リニューアルまでは極めて頻繁に使われていた。
2007年のリニューアルでも多くの楽曲が続投し、現在でも(流石にいずれも頻度は落ちたが)使われている。


以下、ネタバレにご注意ください。


【ストーリー】

8月22日の雨の日、少年探偵団は米花公園の交差点で、米花警察署の警部補・奈良沢治が銃撃される現場に遭遇する。
コナンは奈良沢に誰に撃たれたのかを訪ねると、彼は左胸を掴みそのまま息を引き取った。
捜査本部では、コナンの証言から犯人は左利きと特定、奈良沢は左胸にしまってあった警察手帳を示していたものと考え捜査を進めることに。

その日の夜、マンションの地下駐車場で城南警察署の巡査部長・芝陽一郎の射殺体が発見される。
彼の右手には警察手帳が握られていた。その事はマスコミには伏せられていたが、マスコミは一連の事件を警察への挑戦や報復などと大々的に報道する。

数日後、白鳥の妹である沙羅の「結婚を祝う会」が開催され、招待されたコナン達は米花サンプラザホテルを訪れる。
会場には一般招待客の他に警察関係者も混ざっており、その誰もが重苦しい雰囲気を放っていた。
会場で事件の事を探ろうとする小五郎だが、白鳥から「Need not to know(知る必要の無い事)」と忠告され、元刑事として事態を把握する。
この言葉は警察の隠語で、この事件には警察の上層部、もしくは警察組織全体が関与しているかもしれないという事を示している。
そんな中、ホテルで突然停電が発生し、その暗闇の中で佐藤がトイレで何者かに銃撃される。
そこには蘭も居合わせていたが、佐藤が間近で撃たれた事にショックを受け気を失う。
この件で佐藤は意識不明の重体となり、蘭は外傷こそ無かったものの事件のショックで記憶を失ってしまった…!

何とか退院する事は出来た蘭だったが、米花駅のホームで何者かに背中を押され危うく命を落としかける。
コナンはその出来事から、記憶を失う前の蘭が犯人の顔を見たので、口封じのために命を狙っているのではと考えた。
その日の夕方、蘭の記憶が戻る可能性があると考え、トロピカルランドへ蘭を連れて行こうという話が持ち上がる。
しかし、蘭はコナンが自分のために危険な目に合わせたくないという思いから、コナンには自分達がトロピカルランドに行くことは知らせないようにと伝える。

翌日、コナン抜きでトロピカルランドを訪れた一行だったが、そこでも蘭は犯人に命を狙われる事に。
一方のコナンは、ルポライターの仁野環の協力により少しずつ真相に近づいていたのだが……

果たしてコナンは蘭を守り抜き、彼女の記憶を取り戻す事が出来るのか?


【事件関係者】

  • 小田切敏郎
CV:中田浩二
警視庁刑事部部長で階級は警視長。56歳。
小五郎の元上司でその時は捜査一課課長だった。居合の達人でもある。左利き。
息子の敏也とは仲が悪く、パーティーでも口論になっていた。
奈良沢に仁野保の事件の再捜査を命じており、彼が死亡した後は目暮に引き継がせている。
「真実を明らかにするのは我々警察の仕事」だという信念を持つ。
名前の由来とモデルは戦国武将の「織田信長」。

  • 小田切敏也
CV:江川央生
ロック歌手で敏郎の息子。左利き。紫色の髪にサングラスとガラの悪い風貌をしているが、目元と眉毛は父親にそっくりである。
仁野保の事件の容疑者だったが、担当だった信勝の急死もあり真相はうやむやになっている。
しかし自室で敏郎が保のライターを発見し、それが元で保を恐喝していた事が発覚する。
自分を疑い、ライブハウスにまでつきまとう環を鬱陶しがっている(その時に彼が歌っていたのは「血まみれの女神」)。
ちなみに彼の母親(敏郎の妻)の生死は不明。
恐らく、敏郎は仕事に一辺倒だった故に幼い頃から敏也にあまり構えず、面倒はずっとお手伝いさんに任せっきりだった可能性があり、それで敏也がぐれたのかもしれない。

  • 風戸京介
CV:井上和彦
米花薬師野病院の心療科医師。36歳。
白鳥の主治医で彼のカウンセリングを行っている。
記憶喪失になった蘭の診察も担当し、佐藤が撃たれたところを目撃した精神的ショックから、自分を守る為に記憶喪失になったと診断する。

  • 仁野環
CV:深見梨加
ルポライター。27歳。
兄の保のことは嫌っており、事件の事を調べているのも「ただ真実が知りたいだけ」とし、「兄は患者のことなど考えていない最低の医者」と保の事に関しては否定的だった。
敏也が保と口論をしていた所を目撃していた為、事件の真犯人として彼を疑っている。
敏也のライブ会場でコナンと出会った事がきっかけで協力関係を結び、コナンの為に自分が集めた捜査資料をカフェで見せるなどした。
しかし、環が無意識に左手でライターの火を付けたところをコナンから指摘された際は、犯人が左利きである情報が流れていただけに身の危険を感じたのか、
急に予定があると言ってコナンと別れ、トロピカルランドへと向かった。
(左手を使った理由については環曰く、本来は左利きだったが右利きに矯正したものの、今でも考え事をすると無意識に使用してしまうとのこと)
しかしそれがきっかけで、コナンにあることを気づかせた。
ちなみに以前小五郎に依頼をしに来た事があったらしい*5

  • 友成真
CV:森川智之
フリーターで信勝の息子。25歳。左利き。
信勝が亡くなったのは部下だった刑事達の責任だと思っており、警察そのものに不信感を持っている。
今回の事件現場の周辺で度々目撃されており、犯人が左利きだった事と今回の被害者が信勝の部下だった事もあり最重要容疑者として指名手配される。
その後、トロピカルランドでトロッピーの着ぐるみを着て蘭達に近づいた所を、探偵団の活躍により逮捕された。
中の人は後の羽田秀吉

  • 仁野保
CV:内田直哉
東都大学付属病院の外科医。事件当時35歳。
この事件の発端となった、去年の夏に起きた事件の被害者。
性格・腕ともに最低レベルの医者で、死亡する数日前に手術ミスを患者の家族から訴えられていた。金にも汚く、薬の横流しをしていたという噂もあった。
自宅で右側の頚動脈を切断し死亡。当時は泥酔していた事もあり動機もあった事から警察は自殺と断定する。
しかし妹の環は「手術ミスを詫びて自殺するなんてありえない」と自殺説を真っ向から否定した。
6年前には心臓病患者の手術を担当していた時に、一緒に執刀していた医師の腕を切ってしまう。
それが原因でその患者は帰らぬ人となってしまった…

  • 友成信勝
CV:大山高男
警視庁捜査一課の警部で、目暮の先輩でもある。真の父親。
1年前に仁野保の事件を担当していた。
その事件の張り込み中に心臓発作が起こり、自力でタクシーを拾おうとしたが途中で倒れてしまう。
後を追った佐藤が彼を見つけ、東都大学付属病院へ運ぶも間に合わず、手術中に息を引き取った。

  • 奈良沢治
CV:島香裕
警視庁米花警察署の警部補。48歳。
元は警視庁捜査一課所属で信勝の部下だった。
歩行者信号の青の点滅で横断歩道を渡ろうとしていた少年探偵団を優しく注意した。コナンが少年探偵団に出題したクイズの材料に使われている。
だがその後、電話ボックスから出ようとした時に犯人に銃撃される。
死の間際に左胸を掴むようにダイイング・メッセージを残す。
敏郎から保の事件の再捜査をするよう命じられていた。

  • 芝陽一郎
CV:山野井仁
警視庁城南警察署の巡査部長。31歳。
奈良沢同様元は警視庁捜査一課所属で信勝の部下。
自宅のある緑台のメゾン・パークマンション地下駐車場で射殺体が発見される。
右手に警察手帳が握られていたが、その証拠には不自然な点があった。


【レギュラー陣】

ご存知主人公。
記憶喪失となった蘭を、犯人の魔の手から命がけで守る。
作中では超人的なスケボー捌きだけではなくハワイで親父に教わったというボート操縦技術を披露した。
犯人から逃げる際に「どうしてこんなに守ってくれるの?」という蘭の問いかけに対し、新一として「オメエの事が好きだからだよ…。この地球上の誰よりも…」と告白した。

ご存知平成のホームズ。
蘭とのデートの際にトロピカルランドで、広場の中央で2時間に一度しか見られない噴水の綺麗な景色を一緒に楽しんだ。
この事が後に蘭の記憶を取り戻すきっかけとなる。

ご存知蘭姉ちゃん。
佐藤が撃たれた原因が自分にあると思い込み、そのショックで記憶喪失となってしまう。(小説版では、目の前で佐藤が撃たれ、それが自分のせいだと思い、自らの記憶を閉じ込めてしまったと書いてある)
だが記憶を失った後でも、新一の事は断片的に覚えていた。
記憶を失う前に犯人の顔を見ていた為、命を狙われる。

ご存知迷探偵。
娘の蘭が記憶喪失のみならず命の危機にまで陥っているだけに、今回は三枚目ではなく父親属性が強め。
それでも高いところは苦手で、ジェットコースターで絶叫をあげていた。
英理に対し、新一にも引けを取らないクサい台詞でプロポーズをした過去があると発覚。

ご存知哀ちゃん。
「組織だった頃の記憶を失くして、小学生の灰原哀になれたら…」という意味深な発言をするも、すぐに冗談だと言う。
もしかしたら少しは本気で言っていたのかも……?

ご存知天才発明家。
犯人に狙われていた蘭を身を挺して守り、肩を負傷する。

ご存知少年探偵団。
今回のダジャレクイズは彼らがコナンを「参った」と言わせたいがために出題するが、コナンにあっさり正解された。
蘭を守る為に「蘭姉ちゃんを守り隊」を結成。
それぞれ個性的な武器(おもちゃ)を用意していたが、それが意外な所で役に立った。
何だかんだ言っても、小五郎の事は名探偵として尊敬している模様。

ご存知蘭の親友。
記憶喪失となった蘭の傍らで「たとえ記憶が戻らなくてもあたしは一生友達だからね…」と号泣していた。
蘭がピンチになっても姿を現さない新一に憤る。

ご存知法曹界のクイーン。
小五郎にイヤミを言いつつも、心の中では彼を信頼している。記憶喪失になってしまった蘭を小五郎と共にケアに務める。
相変わらず料理下手な様子で、手料理を振舞おうとしたら小五郎とコナンに露骨に嫌がられていた。

ご存知警部殿。
最初は事件の事について口を開こうとはしなかった。
だが後に蘭が事件に巻き込まれたため、警察を辞職する覚悟で事件の情報を小五郎に提供する。
佐藤にガードをつけようとしたが断られ、結果彼女を守れなかったことを非常に悔いていた。

ご存知御曹司警部。
管理職になってから、色々と悩み事が多いらしい。
事件を詮索していた小五郎に忠告するも、目暮同様覚悟を決めて情報提供をする。
事件関係者である敏也の事を調べていた。
劇場版でのポスターではかなり悪そうな顔で映っていた。

ご存知高木君。事件関係者である真の事を調べていた。
犯人に狙われている可能性があると分かっていながら、佐藤を守りきれなかった自分を責める。
しかし、それが原因で、蘭を駅でガードしている際に佐藤が撃たれた時のフラッシュバックに遭って気を取られ、蘭が何者かにホーム上から線路内へと突き落とされてしまったり、
トロピカルランドではトイレに行った隙に真が蘭に接触するチャンスを与えてしまったりする(更に真を誤認逮捕したせいで蘭達を油断させてしまった)など、今回はかなり失態が多い。

ご存知一課のマドンナ。
劇場版初登場。
仁野保の事件で捜査に加わっており、その時に倒れた信勝を病院まで運ぶ。
事件の後は奈良沢に頼まれ、芝と3人で事件の再捜査をしていたが、保と敏也の関係は知らされてはいなかった。

再捜査をしていた3人のうちの2人が殺害されていた為、次に狙われる可能性もあったのだが、ガードをつけようとはしなかった。
その後米花サンプラザホテルのトイレで銃撃され、助かるかどうかは五分五分と診断されるほどの重傷を負い意識不明の重体に…。
今思うと、現在の彼女ならほぼあり得ない失態をしていた。

ご存知千葉君。
佐藤と同じく劇場版初登場。
高木と交代で蘭のガードを行う。
登場する度に大抵何かを食べている。
夜間も一時も目を離さずに毛利探偵事務所を見張っていたが、熱心過ぎたせいで当初容疑者の一人としてマークされていた真が車のサイドミラーに映っていたのを見逃してしまっている。

英理の秘書で妃法律事務所事務員。
14番目の標的』にも出演していたが、今回初めて名前が設定された。
コナンに電話で蘭がトロピカルランドにいる事を教える。


【その他】

  • 白鳥沙羅
CV:大原さやか
弁護士の卵で白鳥の妹。
同じ弁護士である英理とは付き合いがある。
その英理に、どのようなプロポーズを小五郎にされたのか教えて欲しいと詰め寄る。
名前の由来は、晴月と共にアメリカの推理作家「サラ・パレツキー」から。

  • 晴月光太郎
頭に「売れない」が付く画家。
沙羅の結婚相手だが、プロポーズの言葉は苦手。

  • 看護師
CV:斎賀みつき
東都大学附属病院の看護師2人組。
小五郎のファンらしく、コナンが小五郎の助手だと聞いて小五郎のサインを欲しがった*6
仁野について「嫌な先生だった」「金に汚く腕は全然」と評し、上記の手術ミスについての話を勝手に2人でし始めたところにコナンが食いついたので教えた。


「何もかも思い出したわ!あなたがこの項目を荒したことも。わたしがその荒らしを追記・修正したこともね!」


追記・修正は全ての記憶を取り戻してからお願いします。


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最終更新:2024年04月18日 12:12

*1 公開日時点では未放送だったが、約2ヶ月後に単発の2時間ドラマでスタートした。

*2 少年探偵団が劇場版ポスターに登場しなかったのは、今作と迷宮の十字路、銀翼の奇術師、水平線上の陰謀の4作品だけである。

*3 『コナン』の初代プロデューサーである諏訪道彦氏の話によれば、探偵団の3人がメインでもなく毎回ポスターに出ているのは同年代の小学生に向けての意味合いがあるとの事だが、現在は一部のキャラクターファンを中心に興行収入の上昇につながっている事がほとんどの為、諏訪氏の話とは裏腹にポスターに出ている探偵団が明らかに浮いている部分が強い。

*4 この場合イントロ部分をカットし、じわじわと盛り上がるサスペンス部分が主に使われていた。

*5 当の小五郎はかなり酒に酔っていたらしく詳しい事は覚えてなかったが。

*6 コナンは「あんなおっちゃんのサインならいくらでもあげるって」と半ば呆れて(?)いたが。