ティミー、ジョニー、スパイク/ヴォーソス、メルヴィン(TCG用語)

登録日:2014/12/01 Mon 13:50:44
更新日:2023/08/03 Thu 16:09:24
所要時間:約 5 分で読めます




概要

ティミー(Timmy)、ジョニー(Johnny)、スパイク(Spike)、ヴォーソス(Vorthos)、メルヴィン(Melvin)とは、
トレーディングカードゲーム(TCG)の開発において、カード開発の際に対象となるユーザーを大きく分類したものである。
提唱したのはMagic the Gatheringの開発元であるWotC社開発部(通称R&D)の筆頭デザイナー、マローことマーク・ローズウォーター氏。

TCGの楽しみ方は人によって千差万別であり、新しいカードへの需要も十人十色。
全てのプレイヤーが求めるものを的確に供給することは難しいため、プレイヤーのスタイルを大きく分類し、広い需要に合わせたカード開発を行うための指針として使われる。

注意点として、これはあくまでも開発時に方向性を決めるための指針であり、全てのプレイヤーが分類できるわけではない
1人で多くの楽しみ方をするプレイヤーもいれば、同じ分類の中でも更に細かく分類したりもする。
また、どのスタイルが正しく、どのスタイルが間違っているというわけでもない。
間違っても、「彼はジョニーだから悪いプレイヤーだ」などとレッテルを貼るのには使わないように。

ちなみにこれらの名称はプレイヤーのサンプルとして名付けられただけで、名前そのものに深い意味は無い。
元WotC社デザイナーのマイケル・エリオット氏がバトルスピリッツのコラムで言及した際には、ティミー、ジョニー、スパイクをそれぞれジギークラッキー、マックスと呼んでいた。

楽しみ方の分類

ティミー

TCGに「楽しい体験」を求めるプレイヤーとされる。
ゲームそのものを楽しむプレイヤーであり「かっこ良くて強いクリーチャーを呼び出して戦いたい」「みんなでワイワイ遊びたい」ということを求める。
いわゆるファンデッカーのシンプル寄り。

勝ち負けやカードの流行を重視しないわけではないが、それらよりも「体験」を重視するプレイヤー。
開発・販促上ティミーに対しては「一見して強さがわかりやすいカード」「全く新しいルールでのゲーム」などが主に有効とされる。

ジョニー

TCGに「自己表現」を求めるプレイヤーとされる。
ゲームで自分だけのプレイやデッキを皆に披露したいプレイヤーであり「独自のコンボやデッキを発見・開発したい」「誰も使わないようなカードを使ってみたい」ということを求める。
同じくファンデッカーのロマン寄り。

「自己表現」を求めているため、知名度の高いデザイナーズデッキや流行デッキは好まないことが多い。
これまでにない独特のギミックを考えなければならず、ジョニーに対するカード開発が最も難しいとされる。

スパイク

TCGに「困難な挑戦」を求めるプレイヤーとされる。
すなわちゲームに勝利すること、そしてトーナメントで結果を残すことを目的とするプレイヤーであり、「誰も目をつけていない強力カードで環境を制したい」「完成したデッキ、または環境に則したデッキを創りあげたい」ということを求める。
いわゆる「ガチデッカー」である。

「困難な挑戦」の最終目標はやはり「プレイヤー内の頂点に立つこと」であろう。
彼らに対しては極論をいうと「強力なカードを開発する」ことで需要を満たせるが、強力なカードを作り続けるとゲームがインフレしてしまう。
カード開発そのものは難しくないが、ゲームの寿命を維持するための長期計画は組みづらいとされる。

以上の3つの大分類があり、さらにそれらも細かく分類が可能とされているが割愛。
また、前述したように1人のプレイヤーが多くの分類に属していたり、プレイを続けているうちに他の分類に変わったりもする。
所詮は大分類であり、絶対的なものではないということは覚えておきたい。

さて、この3つが「プレイヤーの分類」であるが、それに加えて「デザイン観の分類」というものも存在する。

デザイン観の分類

ヴォーソス

カードの世界観やフレーバーテキスト、カードイラストなどを重視する。
同じシリーズや背景ストーリーで仲間であるカードでまとまったデッキを好む。
また、TVアニメや漫画とタイアップした作品ならば、その作品が好きでキャラクターが使用したデッキを求めたりもする。

プレイヤーではないためテキストの強さはわからないが、カードそのものの価値を求めるコレクターがヴォーソスの最たる例だろう。

メルヴィン

カードのギミックやメカニズム、フレーバーではなくテキストそのものを重視する。
カード性能を第一とし、実際に運用した際の機能性を求める。ルールの穴を探したり、詰めパズルや複雑なコンボを構築したり。
原作があるTCGの場合、あずにゃん猿の手を融合し暴走させるといった元の作品では考えられないデッキになったりも。

性能が第一ではあるが、メルヴィン=ジョニーorスパイクというわけでもない。
シンプルなテキストでわかりやすいカードを愛好するティミーも数多く存在する。

以上が、カードデザイン観を大きく二分したものである。
この2つはほぼ相容れることのない要素であるが、極端にどちらかにしか属さないプレイヤーはほとんど存在しないといわれている。
多くのプレイヤーはカードのどちらの面も愛する「メルソス(Melthos)」と呼ぶべき存在だとも。

ティミー、ジョニー、スパイク。
ヴォーソス、メルヴィン、そしてメルソス。
これらはプレイヤーの側面でしか無く、これだけの要素を持つゲームはそれだけ奥深いとも言える。
各々のプレイスタイルを尊重し合い、ともにゲームを盛り上げていくのが正しいプレイヤーのあるべき姿ではないだろうか。

なお、MtGでは銀枠(ジョーク・エキスパンション)世界に上記の分類をネタとしたカードが存在している。

まずティミー。

Timmy, Power Gamer
(2)(緑)(緑)
Summon — (Legend)
(4):あなたの手札にあるクリーチャーを1体戦場に出す。
1/1

手札のクリーチャーのコストを踏み倒す、「かっこ良くて強いクリーチャーを呼び出して戦いたい」を体現したカード。
ちなみにフレイバーテキストは

Just wait till I get my Leviathan....
(俺のリバイアサンを引くまで待ってくれ...)

…いや、リバイアサンですか。わざわざ自分の土地をボロボロにするカードをあえてチョイスする辺り、かなりのこだわりを感じさせられる。

ちなみに再録時にはこう変わっている。

Just wait till I get my Gigantosaurus....
(俺のギガントサウルスを引くまで待ってくれ...)

5マナ10/10バニラに切り札が変わった。流石に色も合わずデメリットも強烈なリバイアサンを使うのはやめたようだ。

次はジョニー。

Johnny, Combo Player
(2)(青)(青)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) ゲーマー(Gamer)
(4):あなたのライブラリーからカードを1枚探し、それをあなたの手札に加える。その後あなたのライブラリーを切り直す。
1/1

デッキから任意のカードをサーチする、「独自のコンボやデッキを発見・開発したい」を体現したカード。
そしてフレイバーテキストは

"Just wait till I get my Krark-Clan Ironworks, Genesis Chamber, and Grinding Station. Oh yeah, and a second Myr Retriever."
(クラーク族の鉄工所と起源室と研磨基地が出るまで待っててよ。あっと、あと2枚目のマイアの回収者もいるな。)

…簡単に言えばこの5枚が揃えば、無限マナ・無限トークン・無限デッキ破壊の条件が整う。5枚中1枚しかパーツが揃っていないため、コンボが炸裂するのはだいぶ後になりそうである。


そしてスパイク。

Spike, Tournament Grinder (2)(黒/Φ)(黒/Φ)
伝説のクリーチャー ― 人間(Human) ゲーマー(Gamer)
((黒/Φ)は(黒)でも2点のライフでも支払うことができる。)
(黒/Φ)(黒/Φ)(黒/Φ)(黒/Φ):ゲームの外部から、あなたが所有していて構築フォーマットで禁止又は制限されたことのあるカード1枚を選び、それを公開し、それをあなたの手札に入れる。
1/1

デッキ外からマジックの歴史上で禁止カードまたは制限カードになったことのあるカード1枚を持ってくる。「強力カードで環境を制したい」を(ちょっと掟破りであるが)体現したカード。
ファイレクシアマナ(Φ)という上から下まであらゆる環境で暴れまわったシステムかつ、初心者が嫌う「自分のライフを削る」効果を持っているのも"Tournament Grinder"=勝つために大規模大会に足繁く通う人 という名前の通りである。

そしてフレイバーテキストは

"Just wait—I have a response."
(ちょっと待って ― それにスタックで)

大会などではどこでも聞くことになる応答である。スタックでどういう行動をするかは不明だが、例えばこの能力で《マナ吸収/Mana Drain》や《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を持ってきてしまえば上二人の計画はズタズタになることだろう。

2022年、満を持して登場したメガサイクルの四枚目はヴォーソス。

神話の重鎮、ヴォーソス/Vorthos, Steward of Myth (1)(赤)
伝説のクリーチャー ― 人間(Human) ゲーマー(Gamer)
神話の重鎮、ヴォーソスが戦場に出るに際し、名前のあるマジックのキャラクター1人を選ぶ。
あなたが、その選ばれたキャラクターが名前やフレイバー・テキストやアートに含まれている呪文を唱えるためのコストは(白)(青)(黒)(赤)(緑)少なくなる。この効果は、あなたが支払う色マナの点数のみを減らす。
[どんぐりシンボル付き - トーナメントでは使用できない。]
1/3

特定のキャラクターを選び、その色マナを軽減する。判定はかなりゆるゆるで、「別名・変身した姿でも可」「本人じゃなくて石像とかでも可」「ラクドス教団やアヴァシン教会のように個人名か団体名か区別がつかなくても全部まとめて可」「本名不明でも誰なのか特定できるなら可」などなど。
2コストで特定のカードを軽減、とくに多色であれば2コスト以上軽減することが可能であり、どんぐり銀枠でさえなければ普通に強い。なんならスパイクよりトーナメントで強いまである。地味にタフネスも3あり、他3人と比べて随分打たれ強い。ニコル・ボーラスのコスプレイヤーの彼女だが実際ボーラスは3色で重くて登場期間が長いので相性抜群。

そしてフレイバーテキストは

"Just wait,my Madara deck isn't all Emperor Bolas. There's an Umezawa Subtheme!"
(ちょっと待って、私のマダラ帝国デッキはニコル・ボーラスだけじゃない。梅沢もサブテーマに持ってるの!)
……ニコル・ボーラスデッキを組むにしても、レジェンド(1994年発売のパック)時代のテーマは流石に尖りすぎではないだろうか?

追記・修正はシンプル&ダイナミックかつ独自性・拡張性があり実戦的で格好良くてテキストが合理的なカードを開発しながらおねがいします。

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最終更新:2023年08月03日 16:09