美作昴

登録日:2014/11/14 Fri 00:01:29
更新日:2024/03/22 Fri 18:00:18
所要時間:約 19 分で読めます




美作(みまさか)(すばる)は『食戟のソーマ』の登場人物。


遠月学園高等部1年生。
秋の選抜における8人目の決勝出場者。
その綺麗すぎる名前とは裏腹にゴリラみたいにゴツいドレッドヘアーの男、しかしまだ高校一年である。

「微に入り細を穿つ」を信条とし、その外見に似合わない繊細な調理を得意とする。
バイクを停めるときからしても、まず車輪にロックをかけ、カバーを被せて紐で縛り、その紐にもしっかりと鍵をかける。
その上、防犯登録とGPSサービスにも加入済みという徹底ぶり。
ジャケットにも自分でこさえた丁寧な刺繍を入れている。
どうよこのギャップ。

秋の選抜には叡山枝津也から創真を潰すために送り込まれ、同率4位だった伊武崎と丸井を蹴散らして本戦出場を決めた。
そして本選では四回戦でタクミを相手にすることになったのだが……。



以下ネタバレ






その正体は「KING of ストーカー」の異名を取るストーカー野郎。

そもそも美作には得意料理と呼べるものがない。
それは美作の出す全ての料理が誰かをストーキングして徹底的に調べ上げ、コピーした料理であるから。
しかもその料理はただのコピーではなく、全く同じ品を食べ比べた時、より美味く感じるようなアレンジが加えられている。
これに対抗するには
  • 事前に宣言した物と全く異なる料理を出す
  • 直前まで内容を考えず「即興(アドリブ)」の料理で勝負する
などが美作本人から語られているが、前者は先に述べたストーキングにより隠し通す事は非常に困難。
食戟で予めお題が決定している場合も考えれば、ほぼ不可能な手段である。
但し、作中でアリスの様な他者が使用不可な調理器具及び入手困難な食材を使う相手の場合については追及されていない。

おまけに、美作自身の料理の腕は確かなものであり、再現は完璧。
アレンジで味のまとまりを崩すような事もない。
後者であっても真正面から叩き潰せるほどの「幅広い知識(恐らくこれまでにコピーしてきた料理人たちのものも含めた)」「技量」「才能」を兼ね備えている。
また、同じような環境でイメージトレーニングを積む事で「相手の調理技術(一週間前後の時間は必要な物の)」「思考パターン」すら完全再現する事も可能。
鉄鍋のジャン!』で例えるなら「汚い黄蘭青」である。向こうも結構腹黒いが。

ちなみに彼のイメージトレーニングとは、「対戦相手のコスプレをした上で相手の調理の光景や言動を実際にモノマネして再現する」というもので非常にシュール。
誰もいない厨房で独りブツブツ呟きながらイメージトレーニングするその姿は、傍から見ると完全に危ない人にしか見えない
実際、彼のトレーニング風景を目撃してしまった倉瀬さんは恐怖に慄いていた。

更に質の悪い事に、美作は相手の大切なものを奪うのが大好きなゲス野郎であるため、目をつけた相手に食戟を挑んでは料理人の魂とも言える包丁を奪い取る事を繰り返している。
その回数は秋の選抜時点で99回、ちなみに創真が約半年の間に行った食戟の回数はわずか2回である。

当然タクミに対しても同じ事を行い、
  • タクミの部屋を電柱に登って監視
  • 調理風景を隠し撮り
  • 材料を買った時のレシートを回収
……といった具合でストーキングを続け、

「タクミ・アルディーニ。トスカーナにあるトラットリアの跡取り息子。
日本人の父とイタリア人の母を持つハーフで、身長168cm、体重54kg、血液型A型。幸平創真に強烈なライバル意識を抱いている。
弟のイサミと二人暮らし。月に二回実家に電話する。遠月学園内にファンクラブが存在している。高いところが苦手。
日本の食品サンプルに興味がある。目覚ましは3つセットして寝る。左肩にホクロがある。どちらかというとシャワー派。
トランプが弱い。持っている下着の柄で一番多いのはチェック柄etc……」

と執拗に調べ上げ、イサミを侮辱し、兄弟のであるメッザルーナにガムを吐き捨てるという挑発によってタクミを食戟の場に引きずり出す。




そしてこの顔である



そしてタクミが完成させたセミフレッドを数々のアレンジを加えて上回り、窮地に陥ったタクミは機転を利かせて新しい調味料を作り上げたのだが、



「けふっ」

「くふっ。あひェ……かふっ!」

「ひゃは」

「あひャひャひャひャひャひャひャひャひャひャひャひャひャひャひャひャひャ!!」

「“信用”してたんだ! オマエなら現場で鍛えられた対応力を発揮して、絶対に諦めずにアレンジを仕掛けてくるってなァ!!」

「カワイイなァ俺の手の平で走り回って!! 全部! ぜ~~~んぶ読まれてるとも知らずによおおォォ!!」


美作の「周到なる追跡(パーフェクトトレース)」は相手の人格までも完璧に調べ上げていた。
その結果、タクミは完成品はおろか土壇場で作り出したアレンジまでも読み切られ、敗北を喫す。


そして次なる相手は幸平創真。

美作はタクミから奪ったメッザルーナを賭けた食戟を創真に持ちかけ、タクミを馬鹿にして創真を怒らせようとするが、創真は逆に今まで美作が奪ってきた包丁100本と自分が料理人をやめる事を賭けた食戟を美作に持ちかけ、自らが試合で作る料理を予告する。


「試行錯誤を繰り返して、何度でも失敗して、その過程があるから皿は輝く」

「可哀想だよおまえ……料理をする本当の喜びをお前は知らない」

「だからあんな勝負で笑えるんだ。上っ面の勝ちで相手の誇りを奪うだけ……そんなの料理人なんて認めねえ」

「道具100本あるべきところに返してもらう───」

「おれの料理人の全てを賭けてでも」


「お前を倒すよ、美作……昴!」


「……じゃあ俺は更に上回って完璧にトレースし抜くだけだァ……!!」

まさしくその戦いは、己の魂を掛けた牛若丸と武蔵坊弁慶の一騎打ちの如き決戦であった。


そうして始まったビーフシチュー対決。

創真の品をコピーしアレンジを加えたビーフシチューは審査員を唸らせ、土壇場の即興料理で勝負を仕掛けてきた創真を越えたかに思われた。
しかし、


「寂しい事いうなよな美作ァ」

「俺だってこの一週間、お前の事をずうっと考えていたんだぜ?」


美作は創真の料理を苦し紛れの即興料理と決めつけ、それとは対極の時間と手間をかけた料理で勝ちを拾ったつもりだった。
だがしかし、創真は自らの経験を総動員して料理を組み立て続け、美作が届かない領域まで築き上げた品によって勝利。
積み上げてきた経験の差が勝敗を決したのだった。

そしてみんな大好きゆきひーランドの味に美作は童心に帰り、まだ料理を始めた頃の気持ちを思い出す。

美作の実家は高級レストランであり、「昴ちゃま」と呼ばれて従業員に可愛がられていた。
12歳にして既に、どんな料理でもレシピや写真を見れば再現出来る才能の持ち主だったが、美作の父はそれを猿マネとして認めようとはしなかった。
というのも父親はオリジナリティを重視する人物であり、「唯一無二の料理を作ってこそ真の一流」と言う考えの持ち主だったからである。
ある時、美作は父の看板料理にアレンジを加えた品を作る。
父に褒められ、認められる事が動機だったのだが、皮肉にもその料理が上客を集めた品評会で、元となった父の看板料理に勝ってしまった。
そして美作は追い出されるように遠月に送られた。
「父は自分から逃げた」「アレンジで相手を超える事など簡単」と悟った美作は、それ以来料理を作る事に対して魅力を感じられなくなってしまう。
「料理をする本当の喜びを知らない」という創真の言葉は正にその通りであったのだ。

そして自分のやり方が間違っていた事を突きつけられ、料理を続ける理由を完全に無くした美作は料理を止めようとするが、創真は「それじゃあ俺が食戟を受けてやった意味がない」とチョップを食らわせ、創真の試合を見たタクミからも「次は負けない」と宣戦を布告される。



「……な? 料理でプロ目指そうって人間はどうしようもねー負けず嫌いの集まりなんだ」

「よーく聞けよ美作。一回こっきりの勝負だけで相手の誇りを根こそぎ奪おうなんて二度と考えんな」

「積み上げてきた自身も自負も全部吹き飛ぶような失敗をしても」

「もう立ち上がれないくらいの惨めな思いをしても」

「明日も絶対に店を開けなきゃならねー……!」


「それが料理人なんだよ」


「お前もそうじゃねーの? 美作よう」

下らない勝負で悦に入り、せっかくの腕を腐らせている美作にその事を伝えるために創真はあえて食戟を受けたのだった。


俺は間違っていた。そんな俺に料理を続けろと……言ってくれるのか。

硬くこわばった俺の心が……解きほぐれてく───




そして美作の解きほぐれた心はドレッドヘアーを乙女のようなキューティクルへと解きほぐし、きれいな美作として改心したのだった。

彼が捻じ曲がった理由は父親に才能を認められなかったからであるが、料理を完全コピーするというのは凄まじい才能と技術がなければできないことである。
父親がオリジナリティに拘りすぎたせいで……と言えなくも無いが、美作自身も子供心とは言え、いくら父親に褒めて貰おうと思ったとは言え、「新作発表会で父親の看板料理を真似して、アレンジを加える」という子供だった事を差し引いても、あまりにも軽率な行為が決定打となった可能性も否めない。
そもそも、オリジナリティが大事と言われたのにオリジナル料理を作ろうともせずに父親の看板料理を真似しているものを出品していることからも父親の話にまったく耳を傾けていない*1
ある意味、父親の悪いところが似たとも言えるが。

ただ、「信念なき料理は要らん」と言いながらも料理人の名門校である遠月に美作を送っていることから、父親は美作から料理そのものを奪う様なことをしていない。
もしかすると父親の方も、どこか思うところがあったのかもしれない……。

彼の行動に問題があり、事前調査に関しては方法は犯罪だが、食戟においては妨害等の違反行為はしていない。
相手への煽りはマナーの範疇だし、他の奴もやっている。
そのため、細かい事を抜きにすれば美作昴は正当な勝者なのである。

それ故、美作からしたらエリートを気取りながら敗北した挙句、方法を非難ばかりする負け犬の遠吠えばかりの状況。
父も彼なりに思うところはあったのかもしれないが、結局のところ何も言わなければ美作にとっては体よく追放したに過ぎない。
ただ、父親の登場シーンが美作の回想しかないのでなにか言ったかもしれないが美作は聞かなかった可能性もあるが。
方向性こそ違えど、学園の常識に逆らい、実力を持ちながら評価されない立場にいるソーマとは似た者同士。
そして、彼のみ真っ向勝負で勝利し、同時に彼の能力を惜しんだ存在である。
少なくとも、食戟においてはソーマを除いて美作に非難するのはお門違いに等しいが犯罪行為の上での勝利なので非難されるのも当然であるので
上記であげた様にあくまで細かいことを抜きにした上での話ということを頭に入れてほしい。


【お品書き(偽)】
  • 美作のセミフレッド
タクミのセミフレッドをコピーした品。
タクミの3層構造のセミフレッドに対し、卵を別立てで立て、生クリームにマスカルポーネチーズを加えてコクを増す、
スポンジ生地をビスキュイ・ジョコンド(スポンジ生地に使う小麦粉をアーモンドパウダーに置き換えたもの)にする等のアレンジが加えられている。

タクミはこれに対し、オリーブオイルでレモンカード(卵やレモン果汁等の材料を混ぜてペースト状にした調味料)を作り、それによる第四の層を加えることで対抗したが、そのアレンジを読んでいた美作は塩レモン(レモンを塩漬けにした調味料)を隠し味として加え、レモンの風味を強化しており、それが僅差でタクミのセミフレッドの味を上回った。
ジジイが乙女になる味。


  • 美作のビーフシチュー
創真のビーフシチューをコピーした品。
創真のテール肉を使ったビーフシチューに対し、黒糖や各種スパイスを加えた塩漬け液に漬けて旨みを引き立たせ、メスキートのスモークチップで独特の香りを加えた特製ベーコンをガルニチュール(付け合わせ)として加えている。

牛と豚のクロスインパクトな強い旨味は審査員を唸らせたが、強いガルニチュールで味を強化するという安易な方法ではなく、様々な素材を精緻に組み合わせて味を広げる事を選択した創真のビーフシチューに敗れる。




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最終更新:2024年03月22日 18:00

*1 味の良し悪し以前にぶち切れ案件になってもおかしくない。過去の回想でもオリジナリティのある料理を、と何度も言われているのにコピーした料理ばかりだしていた模様