革正団(灼眼のシャナ)

登録日:2012/03/14(水) 23:00:27
更新日:2022/04/30 Sat 15:49:27
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我らは、“紅世の徒”――この世を人間と紡ぐ来訪者!!
我らが力に触れて彫り付けなさい。我らが理に触れて刻み付けなさい


知られざる隣人“紅世の徒”の存在を、認識するために!!
我らは名乗ります……超常の力を振るい、以って迷妄を啓き、世を革める団……
その名は――

[革正団(レボルシオン)] とは『灼眼のシャナ』に登場する組織の一つ。初出はS巻の外伝『マイルストーン』。


19世紀後半に現れ始めた『人の世に自分たち“紅世の徒”の存在を知らしめる』という思想――『明白な関係』を掲げる持つ者たちで構成された思想結社。
その実体は組織と言うより『集団』で、組織としての実体はあってなきが如し。
明確な組織の首魁・根拠地すら定めず、思想に共鳴した者が各地で一員を名乗り、自らの行いを『運動』と称して活動していた。

この『明白な関係』は、異世界人である紅世の徒が、自分たちの欲望を叶えこの世に留まるために一方的に人間を喰らい続けていること、
喰われた人間は「いなかったこと」になるという、
『この世の本当のこと』を、人間社会に知らしめるというもの。

これは人間たちに自分たちが一方的に喰われる地位にいること、どうあがいても刃向かえない人喰いが僅かな制限だけで野放しになっていること…
つまり人間が虐げられている種族である、と公に認めさせることと同義。


現れ始めたのは、『封絶』が広まり始めた頃と同時期であるが、
発生の理由は『市民革命からの感化』『アメリカの奴隷廃止宣言による衝撃』『隠蔽の自在法封絶に対する反発』『導きの神による表明思想の啓示』など、
人間社会の影響や徒たちの事情などさまざまな諸説があるが、はっきりとは解明されていない。


それまで“徒”とフレイムヘイズの間にあった「人間社会には極力干渉しない」という暗黙の了解を打ち破る、
周囲からすれば「奇天烈」としか見えない思想を掲げて支持者や共鳴者を増やし、
1930年代の欧州で大々的に決起、人間社会への『封絶を張らないまま、人間の眼前で自己の存在を宣布する』という戦いと、
それを止めようとする者らの間の戦いが勃発した。
その思想の実現は、今まで喰らい喰らわれる関係ながらも一定の平穏はあった人間と徒双方への確実な戦乱、騒動、虐殺を誘発し、
さらには「明らかに力の劣った種族」である人間という種族の取り返しの付かない挫折や失望の危険すらあった。
そのため、人間とのそのような形での関わりを望まない大多数の徒や、人間社会への混乱と破滅の可能性を是としない討ち手からは狂気の集団として扱われ、
外界宿を通じて世界各地より集った討ち手だけでなく、徒の組織である仮装舞踏会(バル・マスケ)も革正団覆滅のための兵を投入、
欧州全域で一進一退の攻防が繰り広げられ、最終的にフレイムヘイズ陣営の取った浸透戦術の戦果が功を奏し覆滅された。


しかし、人間と徒の関係に目を向け、喰らい喰われる関係が明らかになっても人間となら共に世界で生きて行ける
というこの思想は徒以外にも確かに影響を与え、
革正団ほど極端でなくとも確かに影響を後世に残していった(例えばフレイムヘイズに呼びかける際は契約者から呼ぶなど)。













15巻では本編の約百年前、20世紀初頭のハワイにおいての革正団の一派の活動が描かれた。

以下ネタバレ含む
“征遼の睟”サラカエル
ハワイにおける革正団の中心人物で、存在に関係なく「同志」を求める。炎の色は碧玉。
固有自在法は睨んだ対象に瞳を転移・宿らせる『呪眼(エンチャント)』。大小多数の眼として様々な自在法を飛ばせ、呪眼による直接攻撃や防御も可能。
異民族の侵略や流入により興亡を繰り返しながらも発展し変わっていった人間の歴史を見てきたことで、
“徒”という異種族に対して人間が気づくことすら出来ず一方的に搾取される現状を憂いており、
人間ならこの世の本当のことを知れば苦難を乗り越え、両種族にとって現状より良い道を見出せると信じ、その理想を果たすために革正団として命を掛ける。

“吠狗首”ドゥーグ
二足歩行の黒犬。炎の色は灰色。革正団に参加する前からサラカエルをお頭と呼んで慕い、彼と共に革正団に共鳴した。
岩石獣人型“燐子”『黒妖犬(モディ)』を多数使役するが自身の力は弱い。


クロード・テイラー
『空裏の裂き手』の称号を持つ、“觜距の鎧仗”カイムのフレイムヘイズ。炎の色は空色。

神器は左を向いた鷲のバッジ型の『ソアラー』。
固有自在法である鷲を象る力の衣『サックコート』を纏い、空中戦や格闘戦ではトップクラスの強力な討ち手。
元は平凡な農夫であったが、息子が徒に喰われたことで復讐のためにフレイムヘイズとして契約する。
『約束の二人』という協力者もあり数年で復讐を果たすが、そのため使命感を形成出来なかった。
果たせぬこと薄々察して、契約の代償に自分を忘れた大切な妻子の元に戻り彼らを助けるが、
得られたのは「かつての絆」ではなく「赤の他人との新たな関係」であった。
かつて捨てた物への罪悪感、自分の愚かさを思い知り、かつてを忘れた妻に再び愛されつつあることを恐れ、
過去の全てを打ち明けて、『約束の二人』に渡された命を掛けねば使えない宝具『ヒラルダ』を渡して去り、
愛する者からの逃避として世界を変えることを目的に革正団に参加する。

ハリー・スミス
ハワイの外界宿に務めていた、この世の本当のことを知る人間。
母が徒に喰われたこと、そのことで母を愛し愛されていた妹が、母のことを忘れ去ったこと、それを目の当たりしたことを期にこの世の本当のことに疑問を持ち、
『明白な関係』を実現することで悲しいことも嬉しいことも本当のことを見つめて欲しいという願いから参加。
外界宿を襲わせ、そこで彼の裏切りに怒り悲しんだ友人の討ち手ジョージにより死亡。

ハリエット・スミス
ハリーの妹。
兄の助手として務めていた外界宿で、兄の裏切りにより友人だったフレイムヘイズらを失い、
そうまでして革正団に協力した兄の心を何をしてでも知りたいと願って革正団へと協力する。

“探耽求究”ダンタリオン
「教授」と呼ばれる。炎の色は馬鹿のように白けた緑。
作戦の大規模さに興味を惹かれ、技術面で協力し助手と共に革正団の同志として参加。
まあ彼としては自身の発明研究目的な部分も多く、思想云々は気にしていないと思われる。客分的ないつもの行動である。

ドミノ
教授の助手である“燐子”。人間や徒と変わらない意志総体を持つ高度なタイプ。


彼らの計画は全世界に自在法を込めた「この世の本当のこと」の映像と音声を発信しようとしていた。
そのためにハリーの手引きで外界宿を襲い気配隠蔽の宝具『テッセラ』を強奪、
6年間地下基地の存在および建造中の『オベリスク』を隠蔽していた。

計画の最後の詰めにして最後の機会として、海魔討伐に参戦した討ち手が引き上げ、外界宿の再設置と調査にやって来た討ち手を殺害する計画だったが、
クロードを追ってやって来た『約束の二人』により、『鬼功の繰り手』サーレ・ハビヒツブルグと『極光の射手』キアラ・トスカナの殺害に失敗。
ハワイ島でオベリスク起動と発射を巡る攻防が繰り広げられた。
一進一退の激しい攻防はキアラがトラウマを克服し真の顕現を果たしたことでサラカエルたちの敗北に傾き、
ハリエットに最後の言葉を遺したあと、僅かな距離への宣布の中途でサラカエルは討滅された。

「人間たちよ。聞こえて、見えていれば、幸いです。我々は紅世の徒……貴方達の隣人です。
我々は、貴方達を蹂躙し、喰らいます。我々は、貴方たちに混じり、隠れます」
「貴方たちは、我々に敵わない、追うことすらできない、生来の力の劣った種です。しかし、我々と同じものも、持っています。それは意思、あるいは心と呼ばれるもの。
貴方たちが生きる拠り所とし、常に何かを始める、きっかけとなるもの。貴方たちは、我々との間においても、そこから――」




教授とドミノは自爆させた地下基地から逃げ果せ、
クロードは『ヒラルダ』を使った妻からの伝言を聞いた後に『約束の二人』にハリエットを託して契約を解除・消滅し、
ハリエットはサラカエルの遺言により革正団の行く末を最後まで見届け、ドゥーグもハリエットと別れ出立した。

「どうして貴方たちは、人を喰らうんですか? それさえ。それさえしなければ……」
「しようが、ないんだ」「俺たちは、止まらない。同胞たちは、どんどんやって来る。止められ、ないんだ。だから、同志サラカエルは、探して、いたんだ」




ドゥーグはその後運び屋百鬼夜行の力を借りながら欧州で革正団の思想を説き続け、多くの者に人間と徒の関係を考えさせる大きなうねりを起こした。
心が世界を動かしたのだ。


そして時は流れ現代、新世界『無何有鏡』に付け加えられた「人間を喰らえず」の理を徒が受け入れたことで、新世界は人を喰らえない世界となった。

これに革正団の思想がどれだけ影響があったかは誰にも分からない。これから人と徒がどうなるのかもわからない。
それを見届けるためにドゥーグは人間と徒の共に生きる世界を望んだ、今は亡き二人の同志への言葉と共に新世界へと旅立った。
「……同志、サラカエル。同志、ハリエット・スミス。俺、行って、くる……あれが、あそこが、探して、いた物、なのかどうか……確かめて、くる……!」


その思想と事実は悠二にも星黎殿の書庫の本を通じて伝わり、彼が新世界ですべき道を定めることとなる。



ドゥーグの[革正団]としての活動は新世界に渡ってからもまだまだ続いている。それは徐々に影響を現しており、いくつかの“徒”の集団や組織が、人間との関わり方について規則を決めてそれに従うようになっている。
そんな彼は現在の“徒”達から、[革正団]の思想の首魁だと見られている。



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最終更新:2022年04月30日 15:49