銀と金

登録日:2014/10/04 Sat 22:10:46
更新日:2023/12/18 Mon 11:53:08
所要時間:約 11 分で読めます




1992年から1996年までアクションピザッツで連載されていた福本伸行シリーズの漫画。
単行本は全11巻。文庫版は全8巻まで。2015年時点で、新装版として10巻までがリリースされている。

【概要】

アウトローに生きる男達の駆け引きやバトル、アクションなどを題材にした作品。
福本作品ではおなじみのギャンブルもいくつか登場するものの、カイジシリーズやアカギなどと比べるとゲームの進行や内容は非常にテンポが良くバランスもとれており、作品全体を通して一つの短い物語の中でしっかりと完結するのも特徴(だいたい1~2巻ほど)。


現在の福本作品と比較すると物語の一つ一つも冗長とはならず、それでいながら濃厚な人間、心理描写が描かれている。
また、後のカイジアカギなどといった作品の基本となった要素や(兵藤、鷲巣といった狂気の老人など)、女性キャラクターが多く登場するなど他の福本漫画にはない独特な要素も多い。
カイジとは違い、死者も遠慮なく出る。

様々なエピソードがあるが、どのエピソードも人気が高い。
最後の競馬編はやや劣ると見なされていた時期もあったが、2022年現在においてはある事情から競馬についての知識が広がり、「以前読んだ時は分からなかったレースの流れの楽しみ方がわかった!」「ドリームチームぶりが理解できたため、一気に面白く感じた!」などの興味深い現象で評価が上昇している。

以上のことから福本伸行の最高傑作とまで呼ばれている名作として名高い。

未完という形で休載となり、現在に至っても連載の再開はないものの、福本氏は機会があれば再開したいとコメントしている。


【あらすじ】

ギャンブル中毒だった素寒貧の若者、森田鉄雄は競馬場で裏社会のフィクサー・平井銀二に声をかけられたことをきっかけに、悪党たちが大金を握る裏社会で生きていく決意をする。

平井銀二は裏社会での様々な駆け引きや死闘を通して成長していく森田鉄雄を後継者にするべく期待と信頼を抱くも、ある出来事をきっかけに二人は袂を分かつ。
信頼していたパートナーを失った平井銀二は裏社会からの引退を決意していたが、今さら勝ち逃げなどできないと破滅の時まで勝ち続けると思い直す……。

様々な伏線を残したままで終了してしまったが、福本氏によると最後は森田と銀二が戦う展開にする予定であったという。


【登場人物】

◆平井銀二
主人公。「銀王」の異名と「銀さん」の愛称を持つ裏社会のフィクサー。
見た目や雰囲気は歳を食ったアカギニセアカギの髪型をしているといった感じ。
アカギばりに卓越した能力と独自の人生哲学、さらには悪魔じみた戦略・機転で人の心をつく天才・超人。

「巨悪を征するのはそれより大きな巨悪」という思想を持っており、基本は悪党。相手が自分より強大な悪党だろうが、弱者であろうが容赦なく金を搾り取る。
森田鉄雄を裏社会に引き込み才能と成長に期待していたが、彼が裏社会から引退してしまったことで「自分の中の何かを失った」と、それまでの元気や野望が無くなってしまい、一時は引退をも考える。
しかしそのあとの賭け競馬でかろうじて勝ったことで、何かが引退から引き止めたと感じ、引退を撤回する。が、敗れるのは次かその次だとも思っており、破滅が近いことを感じている。


「俺が牙、お前の強運が翼……! 二人でこの国の牙城を撃つ……!」


◆森田鉄雄
もう一人の主人公。初登場時は20歳。ただし、物語は基本的に森田の成長と活躍がメインであるため実質的な主人公は銀さんではなくこちら。
後ろで縛っている髪を解いた姿は輪郭が天貴史である以外はカイジそっくり。
天涯孤独の身で日雇いのバイトや競馬などのギャンブルにはまっていた所を平井銀二にスカウトされたことがきっかけで裏社会で「悪党」として生きる決意をする。

といっても基本的に根は善人であり、銀さんに「大金をやるから人を殺せ。罪にはならない」と言われてもそれを拒んだ。故に「悪党」としては中途半端でもある。(なおこれは銀さんのテストであり、ここで大金を掴んでいたら森田は銀さんの仲間にはなれなかった)
銀さんとその仲間たちにはない天性の強運や、損得勘定なしの感性、さらには相手の虚を突く天才的な企画力を持っており、さらには自らの命を捨てる度量まであるなど銀さんからはとても信頼されている。

銀さんの才能に憧れ、「銀」を超える「金」となるために裏社会で活動していたが、やがて「悪党が得になることをするのはもううんざり」と裏社会から引退することになる。

無一文の状態から一気に数億という大金を手にしながらそれで堕落するといったこともなく、女にまでモテたりとかなり優れた描写が目立つ。
言ってみれば、カイジの上位互換に等しいキャラクター。

作中では麻雀を行っているが、特殊ルールだったとはいえ雀力自体は普通。自らの強運も武器にして大物手を作りやすい。
しかし、ひろゆきと同じく直感よりも計算を重視するタイプであり、確率や打算的な思考からミスを犯すことも多かった。

実写ドラマの最終回では未完となった本作で望まれていた後日談が描かれている。

「名前は森田鉄雄。背景はない」


◆安田巌
銀さんの仲間の警視庁OB。福本作品ではおなじみの刑事キャラといったところ。銀さんの仲間の中では一番出番が多い。
作中では専ら銀さんや森田を引き立てるための「凡夫」といった描写が目立ち、自分が破滅しても構わないという森田と対照的にリスクを極端に嫌っている。
それでも元刑事というだけあってか人情味があり、非常に面倒見が良い性格。たまに名前を間違えられる。

「I NEED Youとか言って繋ぎ止めておくの」


◆巽有三
銀さんの仲間の元新聞記者。常にサングラスをかけている風貌はカイジの遠藤とよく似ている。
情報収集から雑用まで様々な形で銀さん達をサポートする。

実写ドラマではキャスト比的なバランスを取るためとして登場した。


◆船田正志
銀さんの仲間の元検事。さらに自らの経歴を元に企業を脅しているブローカー。
上の二人と比べると出番やセリフが少ないので印象が薄い。……というか誠京麻雀編から作者にほぼ存在を忘れられており、最終巻でちらっと出てくる程度。
このように存在意義があまりにも低いためか実写ドラマでは役回りを安田が兼任することになり、ますます存在感が無くなった。


◆川松良平
森田が引退した後、森田の後継者……ではなく、一度限りのタマとして銀さんの仲間に加わった少年。見た目はまんま治。
初期の森田と同じギャンブル中毒で、さらには闇金から400万もの借金を抱えていた。
相手がもしも帝愛ならエスポワールに落ちるか地下行きになっていたことだろう。
銀さんが声をかけたのはターゲットの息子に似ていたというだけ。なので、森田ほどのスペックがあるのかは不明。最終エピソードのみの登場のため、その成長が描かれる余地はなかった。
一応ラストの描写を見るにこれっきりの関係で終わった訳ではなさそうだが……

◆土門猛
帝日銀行の頭取。当初は銀さん達と敵対する形となったが、以降は協力者となる。
銀さんの知り合いとはいえ、素性のしれない森田とも偉ぶらずに接する結構いい人。
4億もするセザンヌの絵画を所有している。単なる道楽ではなく、偽物を見分ける審美眼もそれなりにある。
銀二が損害額を担保してくれるとはいえ、その絵を森田に盗まれても返してさえもらえれば禍根無く許すというとてつもない器の持ち主。
Vシネ実写版では死神博士などでお馴染みの天本英世氏が存在感抜群の演技を見せつけた。


◆伊沢敦志
自由民政党の最大派閥・竹本会のナンバー2。見た目はどう見ても小沢一郎そのもの。
土門猛の義理の息子、海道正行の呼び寄せたヤクザたちに捕まった銀さんを救うために森田が癒着のテープと引き換えに解放を依頼する。
しかし、ここで森田は一策を講じ、成長の第一歩を見せることになる。
現実における細川政権成立に該当するエピソードでは銀さんの協力も得て連立政権樹立までこぎつけるが、それ以降はほぼ出番がなくなる。


【登場人物・敵キャラなど】

銀と金では一つの物語ごとにそれぞれ異なった敵キャラクターが登場し、それぞれが個性に満ちている。

◆有賀研二
女子供などを生きたまま切り刻むなどの凶悪な連続殺人事件を起こしていた殺人犯。
逃亡中にヤクザに捕らわれ、組員の身柄解放をエサとして警察に引き渡されるはずであったが、策を弄して武器を奪いヤクザ五人を殺害、脱出を図る。
肉体的にはそこまで強靭とは言えない優男だが恐怖に晒された人間の心理を巧みに突くことで多くの人間を殺害していき、怯まなかった森田に対しても最後に隙を見せたことで半殺しにしたが、銀二には攻撃手段を見破られてしまい敵わなかった。
当の銀二は森田が持つ豪運を称えていたが。
後述のVシネ実写版ではチエの輪を武器にするという器用さを見せる。

「弱い者しか殺せないだって? その通りだよ……死ね! 弱者!」


◆中条明夫
傲慢で疑り深い画商。カイジに登場する社長のモデルとも言える風貌だが、ザンスとまでは言わない。
川田と組んだ森田が吹っかけた本作品初のギャンブル、「金の橋」ではセザンヌの絵を手に入れるか4億を失うかの瀬戸際の中で買収や不正を駆使した。
が、実は買収も不正も全部森田がわざとそう動くように仕向けたもので、動けば動いた分だけ自分の首を絞める結果となった*1
森田曰く「パッと見の直感だけで決められたら負けていた」とのことで、セザンヌに心打たれて画家を志した頃の中条なら当てられたという*2
結局、彼が4億もの金を放出して掴んだのは、自分がこき下ろした冴えない画家の模倣画だった。
しかも、その絵を選んだのは「本物を自分の目の前に晒せるわけがない」という鑑識眼とは程遠い理由から。
大損で狂気に陥った果てに、後述の川田の口車に乗って借金を負い、川田の指示で「金の橋」で金稼ぎをするだけの走狗となり果てた。
なお、分け前をもらえるようにはなっているが、準備資金としての借金に対する利子で全部吹っ飛ぶバランスとなっており、続ければ中条の画商としての信頼度は当然下がっていくので破滅は明白。

「勝つ……! 這いつくばってでも勝つ……!」


◆川田三成
中条から金を搾り取ろうとする森田とコンビを組んだ詐欺師。関西弁を喋る。
元々中条を狙っていたが彼の猜疑心を崩すことができず、それを突破した森田のセンスとアイデアを高く評価。資金面から勝負のためにセザンヌの絵の贋作を用意するなど森田を全面的にサポートする。
結果的に「金の橋」の勝ち分4億の分け前、2億を手にしたものの強欲な性分が森田とは合わずにコンビ解消となる。
発狂状態の中条に対して上記のあまりに理不尽な契約を結んでいるためそのうち刺されると忠告されるが、返り討ちにしてやるとのこと。
後に、あからさまな犯罪行為で私腹を肥やそうとしたことで根が善人の森田を激怒させてしまう。
後述の西条戦の際にオールスター状態となった時も呼ばれなかった辺り、完全に決裂した形になる。
だが、川田が最後に見せた涙は川田にも複雑な心持ちがあることを感じさせるものだった。

「正しさとは都合や……!」


◆西条進也
西条建設の御曹司。同じボンボン仲間の有田と岡部と組んでイカサマポーカーで女たちから金を巻上げ、体まで頂いていた不良青年。
森田との青天井のポーカー勝負では億単位の賭け金のプレッシャーから手札勝負を挑み、結果的にイカサマを逆手に取られて敗北し、9億もの大金を失う。
その後、蔵前仁と麻雀で勝負をするもののここでも完敗してしまい、完全に破滅した。実家からの勘当は免れないだろう(森田が助けた可能性も考えられなくはないが、蔵前との麻雀における借金はその人物に見合った額であり、大損害を出した問題児とはいえ西条建設の御曹司の首輪をたかが4億で買えるかはかなり怪しい。)。
そうでなくても森田との勝負に使った金は不正告発をちらつかせて脅した銀行支局長に出させていたもので、既に相当アウトである。

Vシネ実写版・実写ドラマとも勘当どころか負債の肩代わりさえも拒否されて地下で買い殺しにされる末路に…。

実写ドラマではスーパータイムジャッカーなどでアニヲタ的にもお馴染みの大東駿介氏が怪演を見せつけた。

「失礼……? そんなもの僕と君らで存在しない。何故ならランクが違う……。君と僕らは違う人種……」


◆蔵前仁
巨大企業グループ、誠京コンツェルンの総帥。モデルは西武グループらしい。
自らの主催するギャンブルパーティで負債を背負った人間を地下の檻に閉じ込めて文字通り「飼い殺し」にし、破滅していく姿を観察しながら酒を飲むのが愉悦というとんでもない悪趣味の持ち主。
帝愛の地下王国で強制労働をさせられるかのどちらがマシかは微妙だが、頑張っても数週間で人格が崩壊してしまうらしいので人としての生還の可能性がまず無いという点ではこっちがキツイか。
一方で、ギャンブルパーティには政治資金が未だ心許ない新人議員を多数招待しており、勝者には勝利金を裏金として回し、敗者には借金を肩代わりするという形で、全員を自分に都合の良い手駒として取り込んでいく、という狙いもあった。*3
特殊ルールの麻雀で森田と銀二のコンビを相手に、圧倒的な資金力と麻雀の腕前を武器にして終始圧倒する。
最終的には森田の強運と銀二のブラフによりグループそのものが崩壊しかねないほどの危機に追い込まれ、彼が抱え込んでいた議員の債権を手放すという形で決着した。

カイジシリーズの兵藤和尊、アカギの鷲巣巌、零の在全無量といった福本作品おなじみの狂気の富豪・老人の元祖とも言うべきキャラクター。
彼らとは違い部下に対しても暴力的な振舞いは見せない*4が、そのイカれた趣味は見る者をドン引きさせる。
なお、この蔵前との対決で行われた誠京麻雀は福本作品おなじみの麻雀勝負でありながら、鷲巣麻雀のように長々と何巻も続けるわけではなく2巻ほどで決着がついた。

「人間が崩壊していく様は……楽しい……」


神威秀峰(かむい ひでみね)
G県でその地域を支配する程の地方財閥「神威家」の七代目家長。羽織袴を着用し、若い頃の姿は若い兵藤そのものといった風貌。
森田たちと敵対するわけではない……と言うか依頼主なので最初から最後まで味方ポジションなのだが、その人間性は自分と家の権威のためならば我が子さえ容赦なく手にかける上、愛情のひとかけらも抱かない最低の父親。
さらには息子達五人を子供の頃から競争させ、出来が悪いと徹底的に差別する上、うち一人は監禁・虐待も日常的に行っていた外道である。
85歳とは思えぬバイタリティの持ち主で、日本刀を振り回したり、を放ったり、至近距離から銃や刀で相手の急所を狙うなどとても老人の体力ではない。
名前の元ネタは、当時福本氏のアシスタントだった漫画家・佐藤秀峰。(ただしこちらは「しゅうほう」と読む)
森田が裏社会から引退する原因となった張本人。彼が敵なら早々にぶん殴ってオサラバしていたのだろうが、よりによって保護対象(味方)だったのが運の尽きだったと言えるか。

「最後の最後……捨て駒としての使い道はあったということ……これで充分……」


◆神威勝輝
◆神威勝信
◆神威勝幸
神威家の正式な四兄弟の中で秀峰から優遇されていた三人。
口ひげを生やした長男の勝輝は衆議院議員。眼鏡を掛けた次男の勝信は県知事。三男の勝幸は家電メーカーの社長。
秀峰から兄弟同士で強制されてきた家長をめぐる競争にさすがに嫌気が差し、兄弟三人で共謀して秀峰を抹殺しようとする。
三人の中では長男が一番活躍し、三男は悲惨な最期を迎えることになる。


◆神威勝広
神威家の四男。上三人の兄と比べて劣っているという理由で幼少期から五男と共に虐待、差別されてきた。
五男と共に秀峰と兄達への復讐を企て、防弾チョッキやフルフェイスヘルメットを着込みショットガンマシンガンなどで完全武装したヒットマンとなってガチで殺しにかかってくる。ジャギ様ではない。
兄達より劣っているということだが、神威家配下のヤクザである黒木組を全滅させるなど明らかに兄達(特に下二人)よりも覚悟が座っている。
なお、文庫版では眉毛が少し太くなっている。

「俺が長年見た花道なのだ……! 急ぐことはない……! 処刑……! 裁きへの道……!」


◆吉住邦夫
神威家の五男。苗字が違うのは腹違いの兄弟のため。
脳に障害があるという理由から幼い頃から学校にも行かせてもらえず監禁・虐待され、下男として飼い殺しにされてきた。
母親以外に唯一優しくしてくれた四男・勝広と共謀して秀峰達に復讐を行うが、勝広が殺されたことで完全にブチ切れ、森田でも手に負えないバーサーカーと化す。
この五男と四男の悲劇の人生は本作でも屈指の陰鬱な物語である。
Vシネ実写版では邦夫は登場せず、過去に銀二と出会っていた勝広が意外な結末を迎えることになる。

「差別されたんだ……」


◆河野洋一
自由民生党総裁にしてJSAの上層部である農産族のボス。モデルはどう見ても河野洋平。
次期内閣総理大臣の座を狙い、資金集めのために銀さんと300億の競馬勝負を行うが、最後は敗れて許しを請う。その姿を銀さんは憐れんでいた。
Vシネ実写版では中尾彬氏が貫禄ある演技を見せつけた。

「ワシは何としても掴まねばならんのだ。民政党総裁の座を…!」


【登場人物・ヒロインなど】

福本作品に女など必要ない! ……と、言う者もいるかもしれないが、この作品では意外にも女性キャラが多く登場している。
今の福本氏が書けばどのようになるかは……想像がつかない。


◆伊藤美緒
森田がいきつけだった喫茶店のウェイトレス。本作の二大ヒロインの一人。
「女は金に群がる」というのは森田の弁だが、美緒は森田の資産を知る前から懐いていたので金目当てではない様子。そのためか、森田は彼女の距離感に困惑していた。
西条のイカサマポーカーで餌食になりかけるが森田の助け舟を得て助かった。

喫茶店での出会いからポーカー勝負の交流を通して完全に森田に惚れ込み、何と告白までするという場面を見せた。
しかし、森田にはあっさりと断られてしまった。沙織と比べてとても良い子なのに勿体無いことをする……。女は大好きだったはずだが、裏仕事に手を染めた中では一夜の関係ではなく、カタギの彼女と本格的に付き合うのは流石にNOということだろうか。

なお、苗字がカイジと同じことから、カイジの姉ではないかという説がちらほら見かけられる。*5
もっとも両作品の雰囲気が違いすぎる点や時代が合わない点などから否定的な意見も多いが。

「あんた何様のつもりよ! 用が済んだらとっとと帰るわけ……失礼にもほどがあるわ!」


◆明穂と由香理
美緒の友達。西条に買収されそうな雰囲気があったものの、森田の素性をよく知らないので結局断った。
ちなみに美緒は損得勘定抜きで買収を拒んでおり、美緒との引き立て役にもなっている。
美緒には他にも喫茶店の同僚といった友人が何人かいる。

実写ドラマでは三島明穂、近藤由香理とフルネームが設定された。


◆田中沙織
神威秀峰が監禁されていた病院の看護婦。本作の二大ヒロインの一人。
秀峰の救出作戦で森田のパートナーとなったものの、実は神威兄弟とグルであった。
森田にそのことを見破られて以降は最終的に自分も殺されると説得され(実際に兄弟は彼女も口封じのため殺すつもりで動いている)、以降は仲間になる。

ちなみに初登場時からしばらくは福本が描いたとは思えないほどに可愛く描かれていたのだが、後々福本らしい絵になってしまった。
前述の美緒も初登場時は可愛いかったのだが、こちらも徐々に絵柄が変化していくことに。

「森田くんは何をやったってきっと成功する……。銀さんみたいな人にも会えるよ……!」

【登場人物・残された伏線】

◆ある老人
銀二と謎の元極道・広瀬との会話に出てきた存在。
某国ナンバー2の巨大資本を持っているらしい。
銀二は森田がある老人が示した「最も困難な条件を生まれながら」にしてクリアしており、
巨大資本を引き継ぐことができるかもしれないと述べていたが…。


【登場した勝負・ギャンブル】

ギャンブルがメインの漫画ではないのでそれほど多くはないが、主要なエピソードを彩る。
「金の橋」のようなオリジナル性の強いものや、麻雀をベースに独自ルールを追加したものなど後発作品に繋がるようなものも出ている。

  • 金の橋
絵画「ジャ・ド・ブッファンの眺め」を巡る森田と中条の勝負に使われたギャンブル。
森田はこれを「帝日銀行の大規模な絵画取引の目利きを中条に依頼したく、その為に頭取が要求したテストの1つ」だと説明している。
薄暗い部屋で僅かな灯りを頼りに、5メートル離れた位置から本物の絵、海外のシンジケートが作った本物そっくり(と言っても平時の中条なら難なく見破れる)の偽物、新人の画家が描いた本物とは似ても似つかない下手糞な偽物の3つから本物の絵を当てる。
ただし1枚は布で隠されている。これは全部明らかにしてしまうと消去法で本物を容易く当てられてしまうからだという。
5メートルは遠すぎるという中条のクレームに対し、100万円につき1cm近づけるという追加ルールを森田は提示。この100万円の札束に乗って前に進める様を「金の橋」と称した訳である。
中条の資金は4億なので本来なら近づけるのは4m(ただしある理由から残り1.5mまでしか距離を詰められなかった)。森田も中条も、4億全部払っても本物が手に入ればお釣りがくるという判断を示していた。
中条はある方法でもってこの目利き勝負を事前に察知しており、様々な手段でもって攻略しようとしたが……

福本先生お馴染みの特殊ルール麻雀。とは言え本作におけるそれはプロトタイプに近く、ルール自体は通常の麻雀と一緒。
違いとしては牌をツモるごとに供託金を支払うことで、親は供託金の額を自分のツモ番が来る度に倍に出来る権利がある。
「降り」を宣言すると供託金を払わなくてもいいが、以後は全てツモ切りを強制されるので振り込む危険が跳ね上がる。
更に、親子共に気に入らないツモを引いたら、降りる前に限定されるが場代の3倍を支払って隣の牌をツモり直せる。
供託金は半荘ごとにトップを取った者が総取りする。
また、一発逆転の要素として役満を振り込んだ場合、変動相場制の役満祝儀が発生する。場代×現時点での供託金となるようだ。

森田はこれを「麻雀を使ったポーカーのようなもの」と例えた。
供託金は親がその気になれば1ツモで相手を破産させられる青天井まで跳ね上げられるが、降りを宣言されると自分がツモるか相手が振り込むまでは自分の投資だけが続いてしまう。勿論それで半荘を取れなかったら無駄になってしまう。
一方で資金力に物を言わせて相手を無理やり下ろし、限りなく自分が有利な状態で進めることができるので基本的には金持ち(蔵前)が有利なルールではある。
これだとあからさまに不公平感が見えてしまうからなのか、蔵前はこの誠京麻雀以外にも複数種のギャンブルを提示しておりそれらは至って普通なゲームの模様。
ただ、賭け金が膨大なのでうまく行けば半荘で勝負を決することができるとして森田はあえてこのギャンブルを選択した。

  • サシ競馬
銀さんと河野が行った勝負。
GIIレース(ジャパンカップと有馬記念の間に府中で行われたという設定の架空のレースの模様)を私物化し、両陣営が6頭ずつ馬を用意して純粋にゴールに最初に飛び込んだ馬の陣営を勝ちとする。
(レース中に行われた各種不正については一切不問とする)
馬というが当然ながらそれに携わるスタッフや騎手も全てそれぞれの陣営が用意しなければならないまさに総力戦。
当然ながらJSA(元ネタはJRA)と太いパイプを持つ河野が圧倒的に有利であるが、銀さんは当然それを織り込み済みで策を練っていた。

ちなみにこのレースで登場した馬は全て架空のものだが元ネタが存在するものが多い。良平が考えた「河野が押さえてくるであろう馬」にも元ネタがある。
このレースの主役ともいえるナリタブライオン辺りは分かりやすいが、他にも居るので探してみよう。


【余談】

PSゲーム「賭博黙示録カイジ」では本作品のキャラクターがスターシステムとして多く出演している。

アニメ化はされていないが、Vシネマとして実写化されている。
銀二役は歌手活動もしていた中条きよし氏。ヅラこそ目立つものの流石の演技である。
銀二が森田を誘ったキッカケとして「森田の父親が銀行によって自殺に追い込まれたため恨みがあるため」と示唆されている・Vシネマオリジナルの描写として銀二が持病を抱えており焦っている*6など改変・補完点が多い。
加えて視聴者サービスとしての濡れ場も妙に多いが、作品の雰囲気がVシネマと合っているためか作品の評価は高い。
売上も良かったらしく、序盤はBGMも貧相だったが中盤以降は妙に豪華で壮大な別のBGMがかかるようになった。
その他、大きな改変として神威編時点で森田と銀二が決別しておらず、秀峰と同行するのが銀二になっているという面白い改変がある。
またラストとなる競馬編も河野洋一の息子本人に関するエピソードが追加され、大幅なボリュームアップが図られている。特に決別していないのに森田が急に出てこなくなるが…。

2017年には誠京麻雀編までのストーリーが実写ドラマとして放送された。
こちらは森田がやや粗暴な性格になっている他、スタイリッシュな雰囲気を推す一方で原作と比べて銀二のセキュリティ意識が甘いような描写が多いなど賛否両論である。
一方で決別後に再会した森田と銀二が対決に入るするシーンが最終回で描かれたのは原作ファンから評価が高い。
また(情勢への配慮か)Amazonプライムビデオ限定で配信された殺人鬼・有賀編も有賀の狂気を描き切ったクオリティーから好評。

その他、パチスロという形で動く銀さんたちが見られる。
大塚芳忠ボイスの銀さんが見られるのはパチスロ銀と金だけ!


追記・修正は5億円を稼いでからお願いします。

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最終更新:2023年12月18日 11:53

*1 具体的には、メンバーをスパイにする→その雇用料をはした金で済ませられる、当たりの額にマークを付ける→不正暴露で勝負を無効にするカードになる、マークを見るための策に1億払う→その金で買えるはずの1mの方が森田的に危険、など。

*2 即直感で当てに来られることを防ぐため、まず絵を見せてからあれこれルール追加を行っている。実際、薄明りの中でもぼんやりとだが早々に当たりに目を付けられており、自分の鑑識眼に自信があれば勝てていたはずだった。

*3 銀二曰く「この国の政治は、芽が出る前から腐っている」

*4 一応彼らが暴力的に出る可能性を阻止するため、麻雀の後半戦は蔵前の客という前提はあれど衆人環視で行われることになった

*5 『銀と金』は90年代初頭、『カイジ』シリーズは90年代中期が舞台で、カイジの姉は公務員として働いている事が、遠藤の口から語られている

*6 だが、いつの間にか出てこなくなり、コレについては死に設定となった