ユウキ/紺野木綿季

登録日:2014/09/19 Fri 21:37:32
更新日:2024/04/12 Fri 16:27:48
所要時間:約 6 分で読めます





※この項目はソードアート・オンラインのネタバレ要素を含みます。



ぶつからなきゃ伝わらないことだってあるよ。
例えば、自分がどれだけ真剣なのか、とかね



電撃文庫から出版されているライトノベル、「ソードアート・オンライン」の登場人物。
CV:悠木碧

◆概要

初登場は第7巻 外伝«マザーズ・ロザリオ»。このストーリーのヒロインを勤める。
ALOの世界に突如表れ、瞬く間にその名を轟かせた謎のプレイヤー。一人称はボク。
種族はインプで、長い黒髪の美少女。
どこか不思議な雰囲気があるがとても明るい性格。
彼女の「秘密」を見破ったキリトを少し警戒している。
アスナとは共に過ごすうちに親友同士となった。


◆戦闘能力

使用武器は細身の片手直剣で作中屈指の実力者。ALOにおいて《絶剣(ぜっけん)》の二つ名を持つ。
圧倒的な強さを誇るプレイヤーで、真剣勝負でキリトを2度も倒した唯一の人物。
スピードタイプで、旧SAOアインクラッドのシステムが最速認定したキリトでも追いつけないほど速い。
キリトやアスナたちと同じSAO生還者であることも疑われたが、どうやらそうではない様子。
OSSでは現状最高の連撃数である11連撃を誇る《マザーズ・ロザリオ》を編みだした。


◆作中での活躍

「デュエルをして勝利した人に11連撃のOSS(オリジナルソードスキル)を渡す」という触れ込みで多くのプレイヤーとデュエルを行っていた。
実際リーファやリズベットも彼女に挑んでいるが敗れており、さらにはキリトまでも打ち負かしている。
さらにアスナともデュエルを行い、一進一退の攻防の末に勝利。

しかしその直後、アスナを自身がリーダーをつとめるギルド《スリーピング・ナイツ》へと招く。
彼女が辻デュエルを行っていた理由は、ギルドのメンバーと共にたった1パーティ(7人)でアインクラッドのフロアボスを倒す為の協力者を見出だす為。*1。キリトも候補だったらしいが少し警戒しているため結局誘わなかった。

ある事情から春にギルドを解散することになり、その前の最後の思い出作りのためのボス攻略戦の助っ人を頼むユウキの申し出にアスナは快諾。
ともに作戦を練り、戦ううちにアスナと親友になり、最終的に見事ボス攻略を果たすことに成功する。

しかし、ボス攻略を果たした後、アスナが自分をスリーピング・ナイツの正式メンバーにしてほしいと頼むと言葉を濁し、ユウキがアスナを「姉ちゃん」と呼んでいたと指摘された際は涙を浮かべながらALOから姿を消した。
以後、スリーピング・ナイツ全員がアスナに対して連絡を断つ。
まるで、そうせざるを得ないのだと言わんばかりに。


以下、《マザーズ·ロザリオ》編の根幹に関わるネタバレ








リアルのユウキはある病院にいた。
アスナの夫キリトはひとつの推論を立てていた。ユウキは医療用フルダイブVRマシン「メディキュボイド」の臨床試験被験者である可能性が高い、と。
アスナはこの推論を元に、殴り込み同然の面会を求めた。あわてた受付が連絡をすると、驚くべきことに面会の許可が降りた。
…メディキュボイド第一被験者の案件はそれだけ複雑なものであり、かつ被験者(…もはやユウキである事は確定)にひどい訳ありであったのは明らかだった。

アスナを招き入れたメディキュボイド担当の倉橋医師は、
ユウキの意思に従い彼女の状況を話し始めた。




この病院では現在フルダイブ技術を医療に転用する研究が進められていた。
これが進めば体に障害を持つ人でも自分の足で走ったり、見聞きする事が出来るようになり、更には社会復帰が可能になる。
さらに体感覚キャンセル機能が発展すれば体に負担が掛かる麻酔無しでの手術にも応用できることが期待できるからだ。

しかし、それ以外にももう一つ、医療用VRが大きな役割を果たすであろう分野があった。
それはターミナルケア、すなわち終末期医療。
現実の「ホスピス」など、もはやこれまでである人に施す医療分野だ。
現実でのターミナルケアでは、できるだけ患者と他者とコミュニケーションをつなぎ、苦痛を反らし、恐怖を和らげる努力が行われる。
フルダイブVRがこれらに非常に有益であることは一目瞭然であろう。

ユウキの本名は紺野(こんの) 木綿季(ゆうき)
ユウキは医療用VRマシンの試作機である《メディキュボイド》の被験者であり、3年間途切れる事なく仮想世界で過ごしてきた。
ALOでの異常なまでの戦闘力は、SAO生還者をも上回るフルダイブ時間に由来していたものだったのだ。
さらに倉橋ドクターは、彼女のかかっている病気についても説明する。


ユウキの病名は《後天性免疫不全症候群》、通称AIDS。


その短い言葉は途方もない重さを持っていた。


ユウキは出産の際に出血があり、その際の輸血用血液製剤からHIVに感染した。
輸血の際になにかパニックがあったらしく、検査不十分な血液製剤が輸血に使用された結果、
ユウキとその母親がもろともにAIDSに感染したらしいのだ。
ユウキの母親は早い段階でAIDSが重症化し、亡くなってしまった…。
生誕時から15年間、ユウキは闘病を続けてきた。彼女にとって生きることは病気と戦うことだった。
現在HIVは世間が思うほど恐ろしい病気ではなく、薬による適切な治療を行えば発症させないまま生活を送ることも可能*2であるが、感染したのは薬剤に耐性を持つ型のものであった。

それでもユウキはつらい薬の服用を続けながら通学し、小学校においては常にトップクラスの成績を維持し続けた。
しかし、あるときHIVキャリアであることがリークされると嫌がらせがはじまり、転校を余儀なくされた。
その後AIDSの発症により入院、医療用VRマシンであるメディキュボイドの被験者となる。
ユウキのAIDS発症の引き鉄を引いたのは、前の学校の教師や保護者の心無い言葉だったのではないかと倉橋ドクターは語る。

なお、メディキュボイドが完成したのは丁度SAO事件の最中であり、SAO事件も相まって被験者が中々見つからなかった経緯がある。
彼女の協力のおかげでVR技術を医療へ応用する研究は飛躍的に進んだが、病の進行によって免疫力が低下し、
日和見感染のおそれがあるためユウキはもう無菌室から出て現実世界に戻ってくることは叶わなくなっていた。

両親は2年前、双子の姉の紺野藍子は1年前にAIDSによりすでに他界しており、天涯孤独の身。
「スリーピング・ナイツ」はもともとユウキの姉がリーダーとして創設したギルドで、メンバーは皆重い病気を患っており、創設時のメンバーのうちユウキの姉を含む3人がすでに亡くなっている。
さらにメンバーのうち2人(十中八九うち1人はユウキだろう)があと3か月という告知を受けており、解散するのはそのため。彼らが言葉を濁したのもアスナを傷つけないためだった。




…倉橋ドクターから事実を聞き、むごい程に痩せこけたリアル・ユウキの現実に対面したアスナは、
これに真っ向から立ち向かいユウキの望みを可能な限り叶えようと決意した。
確かに非情な現実だが、「閃光」が「現実」ごときに易々と屈するわけもないのである
病院を訪ねてきたアスナにユウキは自身の事情を説明すると「また学校に行きたい」という願いを吐露した。
その後キリトが学校の仲間と作った《視聴覚双方向通信プローブ》を利用してアスナと共に数年ぶりに学校へと通う。

キリトに対しては自分の出自を見破ったため*3当初は苦手意識を持っていたが、プローブを提供された後は打ち解けており、コンピュータについて明日奈が理解できないレベルの会話を交わしている。

その後、プローブを通して自身の育った家をアスナと訪れ、自身の境遇やそれに対する想いを話す。
その会話の中での言葉はアスナが母親と和解するきっかけになった。

その後ALOで共に楽しんできた多くの仲間と盛大なバーベキューパーティを開き、大いに食べ、飲み、笑いあった。
みんなでいろんな場所へ遊びに行き、様々なイベントを企画しては大いに楽しんだ。
第29層ボスもスリーピング・ナイツ&アスナで攻略し、統一デュエル・トーナメントでは決勝戦で再びキリトを破り優勝。
学校にも通い続け、アスナたちと京都旅行も楽しんだ。


このまま、楽しい日々がずっと続くと思われた。


しかし、3月末にユウキの容体が急変する。

いつ来てもおかしくなかった「その時」がついに来てしまったのだ。

医師からの連絡を受けたアスナが駆けつけた時には、無菌室の扉が開け放たれていた。それはもう「どうにもならない」事を意味している。
しかし、ユウキはアスナに最後にもう一度メディキュボイドを使ってALOの世界に連れて行ってくれるように頼む。
そしてALOにて、アスナに最後の贈り物として自身が編み出した11連撃OSS《マザーズ・ロザリオ》を託す。
ユウキの元へ駆けつけたのはアスナだけではなかった。
スリーピング・ナイツのメンバーや彼女と戦った多くの仲間。
彼女と遊び楽しい時間を過ごした友人。彼女とデュエルをしたライバル。

妖精世界(アルヴヘイム)全域から、彼女を知る剣士達がユウキの臨終の場に飛んで馳せ参じたのだ。
最強の妖精剣士の退場の場に立ち会いたい、と。

ずっと…ずっと考えてた。死ぬために生まれてきたボクが…この世界に存在する意味はなんだろう…って。
何を生み出すことも与えることもせず…たくさんの薬や機械を無駄遣いして…周りの人たちを困らせて…自分も悩み苦しんで…。
その果てにただ消えるだけなら…今この瞬間にいなくなったほうがいい…何度も何度もそう思った…。
なんで…ボクは…生きてるんだろう…って…ずっと…。


でも……でもね……ようやく、答えが……見つかった、気がするよ……。
意味、なんて……なくても……生きてて、いいんだ……って……。
だって……最後の、瞬間が、こんなにも……満たされて……いるんだから……。
こんなに……たくさんの人に……囲まれて……大好きな人の、腕のなかで……旅を、おえられるんだから…………。


ボク、がんばって、生きた・・・。ここで、生きたよ・・・。


彼女と接した多くのプレイヤーに看守られながら、ユウキはアスナの腕の中で静かに旅立っていった。


彼女の葬儀には明日奈をはじめ、100人を超えるALOプレイヤーが参列した。
木綿季の遺族は、病院暮らしが長く友人が少ないと思っていた彼女にこれだけの友人が葬儀に参列したことに素直に驚愕したそうな。


ユウキは自分は何も生み出さなかったと言っていたが、そんなことは決して無い。
ユウキがこれまで接してきた多くの人たちに与えてくれたものは、これからもずっと受け継がれていくはずである。

「絶える事の無い剣」、それが彼女の二つ名の意味する物となったのだ。

ユウキが亡くなった後、スリーピングナイツのメンバーでリンパ性白血病を患っていたシウネーは治療薬を使ったサルベージ療法が功を奏し、奇跡的に快方に向かった。
また、難しいガンを患っているジュンも徐々に腫瘍が小さくなってきているという。
それはまるで、ユウキがまだこっちに来るのは早いと、そう言っているかのようだった。


そして《アンダーワールド大戦》編において、彼女が託した力が逆転の糸口となる。


◆余談

病名を伏せたりせずにAIDSとはっきり明記したことに対して作者の川原氏は、
「予想されうる問題を未然に避けようとするならば触れるべきではないのは自明のことだったが、作者として、ユウキというキャラクターに辛い運命を与えてしまったことに意味を見出したいと思い、著作を通して読者さんを啓蒙しよう、などと不遜なことを言うつもりはないが、AIDSという病気をフィクションで扱うことの是非が議論されることも含めて、この物語に触れて下さった方が病気に関心を抱き、知識を得るきっかけとなるならばユウキが物語の中で短い時間を生き、そして去っていったことに意味が生まれるのではないか。そう考え、現実の病名を用いることにした。」
と語っており、アニメ化の際にもスタッフから「ユウキの病名を伏せる、ないし変更しよう」という声は出なかったらしい。

また、ユウキの死に際して多くのプレイヤーたちが集まったことについては
「この展開は、シーンの説得力をいくぶん損なうかもしれないと書いていて迷ったが、不特定多数の人間たちから浴びせられた悪意がAIDS発症のきっかけになってしまったユウキには、最後は数え切れないほどたくさんの人間たちが善意で見送られていってほしいと考えてこの展開にした。」
と語っている。

そしてこの外伝のタイトルにもなっている彼女のOSS《マザーズ・ロザリオ》の「ロザリオ」とは、カトリック教徒が祈りの際使用する数珠のこと。正式なロザリオは珠の数が決まっていて、基本となる《一連ロザリオ》は小さな珠が10個、大きな珠が1個という組み合わせで出来ており、OSSの連撃数、攻撃方法(10回の小突き、1回の大突き)と一致している*4
これは彼女の母親が熱心なカトリック教徒であったこと、辛い時には母親が聖書に記された神様の言葉を語り聞かせてくれた事に由来していると思われ、これについて作者はTwitterにて「OSSマザーズ・ロザリオは、ユウキから母親に捧げる祈りでもあり、ユウキを見守り続けた母親の象徴でもあるわけです。」とのコメントを残している。


また、if時系列のゲーム版時系列では病状が少しづつではあるが快方に向かっており、定期検査や投薬は続いているものの元気に仮想世界を駆け回り剣を振るったり、アスナに教えてもらいながら勉強をする等年相応に振舞う彼女の姿を見る事が出来る。現実の身体でアスナやスリーピング・ナイツの面々と出会う日も、そう遠くは無いのかもしれない。


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最終更新:2024年04月12日 16:27

*1 ALOのアインクラッドのフロアボスはデスゲームで無くなった分体力ゲージが見えないなど大幅強化されており、SAO時代にはなかった回復・蘇生が有ってなおSAO時と同様の40人規模のレイドメンバーで挑むのが普通という極悪なバランスに調整されており、ボス攻略専門ギルドまで出来る程。

*2 現在では完治した人まで報告されている。

*3 おそらくキリトは菊岡からメディキュボイドの話を聞いたことがあったのではないかと思われる。あるいは、キリトは今後の進路のためにフルダイブVRハードウェアの勉強を自主的に積んでいたので、その途中で知ったのかもしれない。

*4 一般的にキリスト教徒が使うロザリオは、五連つないだ数珠に十字架を取り付けてネックレスにする。十字架の首飾りを「ロザリオ」と呼ぶ事があるのはこのため。