芹沢五郎(ゴルゴ13)

登録日:2014/09/18 (木) 10:20:57
更新日:2024/03/15 Fri 09:57:42
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あんたたちも悪いいたずらをするもんだ……
おれの方で聞きたいよ…………




芹沢五郎とは、「ゴルゴ13」第25巻に収録された記念すべき第100話のエピソード「芹沢家殺人事件」にて登場する謎の人物。

概要

戦後間もない時期に発生した「芹沢家殺人事件」における唯一の生存者であり、芹沢家の五男。
事件当時は既に8歳で意志疎通が可能な年齢だが、事件当日に殺人現場にいたのにもかかわらず終始泣き続け、事件からある程度の日時がたってもなお事件の事を何も語らなかった。
この芹沢家自体も太平洋戦争時にに多くの青年がいたはずなのに何故か全員招集を免れているなど謎が多く、事件を担当していた刑事の安井修記郎後藤はこの一家に疑問を抱き始めることになる。

容姿は少年時は大人しい雰囲気の坊主頭だったが、青年時には鋭い目つきで冷酷さすら感じる雰囲気に変貌している。
なお、修記郎が西ドイツの成形手術の権威・ゾルリッヒ博士に五郎の理想的な整形で顔を変えたらどうなるかと依頼したところ、ゴルゴ13と全く同じ顔になっている。
言動や仕草なども基本的に作品中期時代(ゴルゴがジョークとか言わなくなった時期)のゴルゴその人と瓜二つである。
一方で修記郎は事件の真相に関する仮説を唱えた際に、五郎を一家の中では一番人間らしかったのではないかと推測している。

最終的に日本から出国して消息不明になっているが、その直後にある暗殺者の名前の噂が広まるようになる。
それこそが世界の裏で暗躍を続けることになる史上最強のテロリスト「ゴルゴ13」だった。

芹沢家殺人事件

戦後間もない昭和21年(1946年)6月に起きた事件。芹沢家で主人1人とその子供4人が何者かの手により殺害される。
だが、その一方で一週間前に母親が井戸で水死体となり発見、事件の同日に使用人のばあやと末っ子のひろ子が行方不明になる等、謎も多い。

当時現場にいた修記郎と後藤は事件の唯一の生存者の五郎に話を聞こうとするも彼は何も話さない。
そんな中、芹沢家は非常に裕福な暮らしをしながらも財源が不明、戦時中に軍隊に誰一人として召集されていない、事件の一時間前にばあやとひろ子が失踪、と謎も出る。
二人は米軍から芹沢家関連の資料を手に入れようとするも門前払いとなり、更に五郎が芹沢家関係者の佐久間茂造に引き取られる。
結局、何の成果も得られないまま捜査本部は解散し、修記郎と後藤以外の世間はこの事件を忘れようとしていた。

芹沢家殺人事件から15年後、二人は事件が時効になることを佐久間と五郎に報告に行く。*1
その夜、修記郎は事件の1週間前に起きた「政府高官暗殺未遂事件」の記事を見つけ、この事件と今回の事件は何か関連があると睨むも、その直後に時効が成立した。

だが、その翌日に行方不明となっていたひろ子とばあやが警察の前に現れたのだ。
二人に事件について聞こうとするも何も話そうとしない。ただ、ひろ子は五郎と二人っきりで会わせれば全てを話すと言う。
真実を知りたい修記郎はあえてひろ子の要件を飲み、ひろ子と五郎は警察官に見張られる中で指定されたホテルの部屋で会合することになり、後藤と修記郎はばあやと共に二人を待っていた。
だが、五時間経っても何の動きも無いことに違和感を感じた修記郎は部屋に乗り込むと、そこには五郎だけでひろ子の姿は何所にも無かった。
五郎に聞いても部屋には他に誰も来なかったの一点張りで、ばあやに詳しい話を聞こうにも、やはり何も喋らない。

修記郎は佐久間に詳しい話を聞こうと部下と後藤を彼の元に行かせるするが、その直前に佐久間は何者かに狙撃され死亡。
佐久間の死を知った修記郎は悩んだ末にばあやを解放するが見送りの途中で彼女も狙撃され、ばあやが最期に呟いた言葉は「ぼ、ぼっちゃん…」と五郎の関与を示唆する言葉だった。

五郎が芹沢家殺人事件の全ての原因だと確信を持った修記郎は五郎をばあや殺害容疑で逮捕するも、証拠不十分で釈放することになる。
だが、その直前に五郎がパスポート申請して外国に飛ぶ事が発覚し、釈放後に外国へと飛び立ってしまった。

◇修記郎の仮説

事件の一週間前に起きた「政府高官暗殺未遂事件」、それが今回の事件と関係があると睨んだ修記郎は驚くべき仮説を立てた。

芹沢家の正体は忍者の様に一子相伝で引き継がれていく暗殺集団だった。
今回は母親が高官暗殺を請け負ったがそれに失敗し、母親はその責任として一族に殺されてしまった。

母親の処刑は8歳の五郎には刺激が強い為、彼に秘密裏に行った。だが偶然、五郎は家族が母を殺すその光景を見てしまった。
半ば錯乱状態になった五郎は、母を殺した家族を殺害。それが芹沢家殺人事件の真相だった。
ひろ子は直前にばあやに連れられて逃げた事で難を逃れたのだ。

しかし、今度は時効後にひろ子が突然警察の前に現れ、ホテルで消えた謎についても修記郎は更に驚くべき仮説を立てた。
ひろ子が五郎の前に現れた理由。それは、私情のために人を殺した五郎への「暗殺者」としての批判だった。

そして、五郎を追い詰めたひろ子は他殺に見えるよう工作し、自殺。
このままでは、警察に「ひろ子を殺害した」として逮捕されてしまう状況に追い込み、「冷徹に肉親の死体を処理させる」ことで五郎を「完璧な暗殺者」にする。それがひろ子の狙いだった。

その方法は、死体の肉を砕いて骨を削って全て水洗トイレに流すというものだった。
余りにも現実離れで残虐過ぎる推理に否定しようとする後藤だったが、修記郎は事件現場の615号室に引き篭もっているときに40kg近い骨と肉を買い何度も実験したが、結果は全て水洗トイレに流されたと語る。
五郎が615号室から警察の前に現れた時、彼はひろ子が望んだ「暗殺者」になっていた。

その後、ばあやと佐久間を殺害したのは「暗殺者」になるために自分の繋がりを消す「整理」でしかなかった。

芹沢五郎説の末路

様々な仮説を立てて推理を行った修記郎は、何とゴルゴ13に7時に自分の暗殺を依頼する
ゴルゴ13に「芹沢五郎なのか?」と聞いても彼は何も答えなかった。

だが、修記郎は殺害についてある条件を出した。
7時直前に顔の前で杖を振り子のように振る。自分が五郎であるなら顔中央より左に行った時に狙撃、五郎でないなら顔中央より右に行った時に狙撃するように注文した。

後藤は修記郎の妻の元に行き彼を止めるように頼むが、彼女は全てを受け入れており、約束の7時になる。
狙撃音を聞いた後藤は修記郎が居た場所に戻るが、彼は既に息絶えていた。
ゴルゴ13が放った銃弾は、修記郎が持っていた杖の頭部をもぎ取っていた…。

「つ、杖が……顔の中央に来た時に、撃たれたんだ!!」
「と……ということは……」
「や、やつは……」
「やつは!?……」

芹沢五郎はゴルゴだったのか?

結局作中では、修記郎の命懸けの依頼による説の真相の証明も答えが分からずに終わっている。
ゴルゴ13=芹沢五郎説は肯定はされていないが、逆に言えば否定もされないまま真相は闇の中になったとも言える。

一応、ゴルゴの経歴と照らし合わせても矛盾する要素はなく、ゴルゴの活動確認時期とも時系列的な違和感や矛盾はない。
明確な否定材料が無いことから、ファンの間では有力説の一つとして考える声が多い。
後述するが、この芹沢五郎の登場したエピソードがファンの間で評価がかなり高いことも有力説にされている原因の一つだろう。

メタ的に見れば登場エピソードが記念すべき第100話目の話であり、ゴルゴの正体を明かすタイミングとしては適切ということも挙げられる。
また、「芹沢家殺人事件」では「ゴルゴ13」自体の登場は写真2枚でセリフすら無いことだろう。
ゴルゴの出番がほぼ無いのはこの漫画ではよくあることだが、完全に登場すらしないことはなかなか珍しい。特に記念回なのに。
ここから、「芹沢五郎がゴルゴ13だったとすれば作中で終始主人公がちゃんと記念回でずっと登場していることになる」として、五郎説の根拠として提唱されている。

一方でこの説に関しては少なからず疑問点も指摘されている。
まず、芹沢家自体が戦時中の招集を免れるなど政府と何かあった一家という可能性自体は高いと思われるが、その答えが「暗殺者一族」という結論は具体的な根拠もない唐突な話であることだろう(これは作中でも「突拍子の無い話」と後藤に指摘されている)。
また、五郎とゴルゴが同一人物という結論も失踪時とゴルゴの活動開始時期の被りという点と(ちゃんと整形外科医と実証したとはいえ)「理想的な整形」という、かなりの大雑把な憶測になってしまっている。

修記郎が後藤に真相を知らせるために仕掛けた杖についても中央で撃たれるという結末を迎えたが、これも様々なゴルゴの意図が考察されており、謎が尽きない。

余談

  • 芹沢五郎が登場する「芹沢家殺人事件」は「ゴルゴ13」の出生の謎に迫る話として今もなおゴルゴ13史上最高傑作との声が高い名作で、「THEゴルゴ学」の人気投票でも堂々の一位に輝いた。




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最終更新:2024年03月15日 09:57

*1 当時殺人罪の公訴時効は15年だった。現在は廃止されている