ゴーイングメリー号

登録日:2014/09/16 Sun 14:02:59
更新日:2024/02/07 Wed 11:55:57
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●目次

【概要】

ゴーイングメリー号』とは、『ONE PIECE』に登場する麦わらの一味の初代海賊船。
東の海のシロップ村~偉大なる航路・前半・楽園・ウォーターセブンまで旅をした。
初登場は単行本5巻・第41話・『海へ』より

間取りは4LDKで、カヤの執事メリー(デザイナー)曰く「カーヴェル造り三角帆使用の船尾中央舵方式キャラヴェル」。
本来の用途は遊覧船だが、自衛の為か一応の武装は施されている。

クロネコ海賊団撃退のお礼を込めてウソップの嫁であるカヤお嬢様にプレゼントされた些か旧式化した比較的小型サイズの船だが、彼らにとっては大切な仲間といっても差し支えないだろう。



【構造】

舵輪がないメリー号は、ホイップスタッフと呼ばれる棒を左右に動かす事で船の後ろの「舵板」を動かし舵を取る。

船首

船首のメリーさんの羊(?)は船長ルフィの特等席で、他人には譲らない。
デザイナーであるメリーがちゃっかりモチーフになっている。
偉大なる航路に入った直後いきなり破損する事になる。

アニメ版では甲板の柵共々白く塗られているが、原作では羊の目以外は無塗装。

マスト

帆に描かれた「麦わら帽子を被った髑髏」はルフィのデザインをウソップが清書したもの。
都合3回に渡ってへし折られる事になる。

会議室&キッチン&操舵室

ラウンジとして憩いの場になっているメインの大部屋。
操舵室も兼ねる。

男部屋

メインマスト直下。
クルーの大半を占める男たちのくつろぎ場・寝室。
むさくるしいし散らかってるがあのメンツなので仕方ない。

女部屋

カヤのためにデザインされた部屋。
倉庫の床の鍵付き戸から繋がるナミ専用の部屋で、その後もビビやロビンしか使わないので清潔。
ココヤシ村で作ってもらったバーがある。

砲列甲板&錨綱格納庫

船首の下、船の正面にある部屋。
中央には錨を巻き上げるキャプスタンがある。
漕いで進むときに使う巨大なオールや掃除用具の他、正面を向いた大砲が一門あり、その他剣や火薬、砲弾なども収納する実質的な「武器庫」。

倉庫&砲列甲板

ラウンジの真下。天井にはホイップスタッフと舵板を繋ぐ装置がある。
横向きの大砲二門と大半の食糧・水・酒はここに。

風呂場

倉庫の奥にあるユニットバス。シャワーだけでなくトイレもこの部屋。
現実より海の面積が広い作中世界では現実以上にろ過技術が発達しているらしく、甲板の階段の下にある汲み上げマシーン兼発電機で汲み上げた海水をろ過して風呂水に用いている。

みかんの畑

ナミが故郷から植え替えた3本のみかんの木。


【来歴】

"東の海"はさしたる事件もなく*1過ぎ去ったが、"偉大なる航路"進入直後に双子岬でアイランドクジラのラブーンと激突。
上記の船首がヘシ折れ、さらにラブーンとの喧嘩の際にメインマストをルフィにへし折られてから受難の始まりとなった…

その後も、
  • "偉大なる航路"最初の航海中の嵐でダメージ
  • ワポルに舷側の一部を喰われる
  • アラバスタ王国出港時、海軍大佐ヒナによる黒槍の集中砲火で船首周辺に大穴を多数開けられる

など、被害を受けるたびに「俺は船大工じゃねえ」とか言いながら修繕を加えるウソップのツギハギが増えて満身創痍…
モックタウン到着時点でサンジにもこのまま航海を続けるのは危険だと買い直すことを提案される程の状態となっていた。
さらにショウジョウの破壊の雄叫び(ハボック・ソナー)でツギハギから崩れていき、あわや解体の危機。
加えて空島への旅はモンブラン・クリケット曰くメリー号では例え新品の状態でも粉砕してムリという過酷なもの。


船の要である竜骨に致命傷を負うが、それでもなお、モンブラン・クリケットらの手で"GM号フライングモデル"に換装。
"突き上げる海流"を乗り越えて空島へと一味を導いたメリー号はウソップが空を飛んだ船と評している。しかし、

  • 空の神官シュラの"火の試練"により危うく燃やされかけ、やむを得ずチョッパーの手によりまたもマストを折られる

この後、霧の中で船を修繕する何者かをウソップは見たが、さらに青海への脱出をも助けるために

  • 空島からの超高高度着水時に底部を損傷して大浸水

と、船もそろそろ限界になり、空島で得た黄金で本格的な修理を検討し、今後のために新たに船大工を仲間に加えることが提案される。



◆ウォーターセブン到着後

世界最高の船大工の溜まり場、ウォーターセブンに辿り着いた一味に告げられたのは残酷な真実だった。


諦めきれないルフィは何とか直してもらうように懇願するが、ルッチは完全同一設計の姉妹船を新造した所で木の性質上同じ船を生み出すことはできず、違和感を覚えるのは今までメリーに乗ってきた一味ら本人だと諭される。

アイスバーグ達が敢えてぶつける厳しい言葉の重みは結果的にルフィの考えに変化を与え、先に話を聞かされていたゾロもまた、メリーがもう走れない事を悟っていた。

「渡ってきたからこそだろ 人間なら波を越える度強くもなるが船は違う…痛みをただ蓄積するだけだ」

最終的にルフィはメリー号との別れを決断する。

しかし、フランキー一家の子分達に大金を奪われたウソップがメリー号を絶対に修理してやりたい思いを吐露し、ボロボロの身でありながらも殴り込みをかけ、金を返すように懇願。
フランキー一家に暴行されて気を失い、やがて意識を取り戻したウソップにルフィは強硬な態度で修理不可能と突きつけ、最終的に船を乗り換える旨を宣言。
人一倍愛着が強いウソップだけは船との別れに猛反対する。

「どんな波も!! 戦いも!!! 一緒に切り抜けてきた大事な仲間をお前はこんな所で…見殺しにする気かァ!!!!」

更に船と自分自身を重ねたウソップは仲間達に抱えていた劣等感を吐き出して、最終的にルフィと決闘

その結果は…まあ当然ルフィが勝つのだが、その決闘中、雨と波しぶきが船首に当たる姿は涙を流しているかのようだった…

どうにもできない自然の摂理を突きつけられ、反発は免れない上でメリー号と別れる道しか決断できず、更にウソップの深刻な悩みにも気付けなかったルフィは無力感に苛まれ*2、メリー号をそのままウソップへと引き渡す。

その後、ウソップを載せたままメリー号は麦わらの一味をおびき寄せる餌としてフランキーに運び込まれる。
ウソップの心情に一定の理解を示したものの、フランキーはメリー号を解体し始め、止めようとするウソップに現実を突きつける。

そこで遂にウソップは、船の限界に既に気づいていたこと、それでも空島で見たおとぎ話のような現実(クラバウターマン)*3を見た以上、メリー号の廃棄は船に宿った命を殺すも同然であり受け入れられなかったことを打ち明ける。

その時、無情にもフランキーの正体を知ったCP9が来襲。
船大工としての仕事と称して、メリー号は海へ流されてしまう。


その後の行方は杳として知れず……………………のハズだった。


◆“降りそそぐ追想の淡雪”

話は移ってエニエス・ロビーでの戦いも終盤。
海軍によるバスター・コールの砲撃を受け、麦わらの一味たちは絶体絶命の危機に陥る。
だが、一味は謎の声を聞く。「下を見ろ」と。
「まだおれ達には! 仲間がいるじゃねぇか!!」

その言葉を受けて、一味は海へ飛び込む。

そこにいたのは、…あのメリー号だった…!!


また…冒険の海へ!!
迎えに来たよ!!

一味全員メリー号に乗り込み、そのまま軍艦の包囲網を突破。
脱出後に、ガレーラカンパニーの船と出会う。
だが、そこでメリー号は突然、役目を終えたかのように船体が真っ二つに裂けた。

ルフィですら一度は諦めていた希望が蘇った事もあり、彼はメリー号を修理するように改めて頼むのだが、アイスバーグは「だったらもう 眠らせてやれ…!!」と諭した。

CP9により廃棄されたメリー号は、アイスバーグの話によるとアクア・ラグナにやられて壊滅寸前の状態で廃船島に漂着していた。
だが…


走りたい…!!
もう一度だけ走りたいんだ

アイスバーグには、メリー号の叫びがハッキリと聞こえた。
そしてたった一人で最後の手を尽くし、修繕が終わった直後、誰も乗っていない筈のメリー号が、独りでに沖へ出たという。


ありがとう

その姿を見て、アイスバーグは語る。

「おれは今…奇跡を見てる」
「……もう限界なんてとうに越えてる船の奇跡を」
「――長年船大工をやっているが ……おれはこんなにすごい海賊船を見た事がない」
「見事な生き様だった」

「わかった」
麦わらの一味のメンバー達はアイスバーグの話をおとぎ話や嘘だとは疑わなかった。
その後もウソップが直接的に真相を言う事はなかったが、彼が伝えたかった思いは仲間達に届いた。
ついにルフィはメリー号を眠らせる決意をする。

麦わらの一味全員が見届ける中、海賊船らしくメリー号は水葬に。

「ウソップは…いなくてよかったかもな…」
「あいつがこんなの…たえられるわけがねェ」とルフィ。

だが、そげキング(ウソップ)は「決別の時は来る 男の別れだ 涙の一つもあってはいけない」
「彼にも覚悟はできている」と、自分自身の思いを仮面越しに伝えた。
自分が意識を失っている間にルフィが船との別れを一方的に決めた事で、仲間に対する怒りや失望を覚えたのも事実であるが、
ルフィの本心に気付けて誤解が解けた事もあり、船との別れという決断を受け入れたのだった。

その後、海へ船が消えゆく最中、空からは雪が…
その雪とともに、船員たちも今までの船の思い出を心に甦らせる。

(以下原作の"降りそそぐ追想の淡雪"より引用)

ごめんね
ーもっとみんなを遠くまで運んであげたかった…
…ごめんね
ずっと一緒に 冒険したかった…


見守る全員の耳に聞こえる船の声。その声にルフィも応える。

ごめんっつーなら!! おれ達の方だぞメリー!!!
おれ舵ヘタだからよー!! お前を氷山にぶつけたりよー!!
帆を破ったこともあるしよー!! ゾロもサンジもあほだから色んなモン壊すしよ!!

そのたんびウソップが直すんだけどヘタクソでよォ!!!
ごめんっつーなら…


だけどぼくは 幸せだった


今まで大切にしてくれて どうもありがとう


ぼくは 本当に 幸せだった



◆その後

メリー号亡き後、麦わらの一味はフランキーの設計したサウザンドサニー号に乗船。

「だが!! あの船の勇敢な魂は!! このサウザンドサニー号が継いで行く!!!」

また、本船に用意された買出し船はゴーイングメリー号を模したミニメリー2号と呼ばれるもの。
フランキーの麦わらの一味への粋な心遣いである。
その心遣いにはルフィやウソップは涙を流して喜び、皮肉屋コンビのゾロとサンジですら「最高の心遣い」「これならいくらでも買出しに行く」と一切の皮肉抜きの絶賛を送った


【余談】

  • その存在
一味の船員の一人、ではないが、様々な冒険を共にしたゴーイングメリー号の最期は、麦わらの一味にとってこれまでの所(そしておそらくは、これからも)唯一の仲間の「死」を扱った内容だとも言える。

また、ウォーターセブンに始まるエニエスロビー編は、一面ではニコ・ロビンと彼女の過去にまつわる話が主題だが、新たな船大工の仲間の加入、誰にも信じてもらえないであろう事実を知ってしまったがために自分を顧みずに必死で船を守ろうとしたウソップ、抗いようのない現実と船長という立場の重さを突きつけられたルフィの苦悩や苛立ち、最後の雄姿も含めて、ゴーイングメリー号がもう一方の主役だったと評しても過言ではないだろう。

アニメ版ではTRIPLANEが歌う16期ED「Dear Friends」(エピソードオブメリーでは「Horizon Knot〜君と見てた夢」)が挿入歌となり、団員一人一人のメリー号との思い出が流され、更に涙を誘う演出となっている…。

  • ジャンプフェスタ
エニエス・ロビー篇が始まる前の当時のジャンプフェスタ2003において、尾田栄一郎氏は「来年、仲間が一人減ります」と発言したため、当時の担当編集者である土生田高裕氏(アラバスタ編担当)は周囲から「ウソップっていなくなるの?」などと聞かれて大変だったと「偉大なる座談会(グランド・トークショー)」(東京ワンピースタワー2017年8月23日開催)にて語っている。なお、ウソップが仲間達に対する劣等感を抱えている事への伏線は当時の本編の所々に張られており、しかも実際にメリー号が去ったのは、その約3年後だった。

ジャンプフェスタ2014で作者が語ったところによると、当初船を乗り換える予定はなかったが、構想が大きく膨らんで行く中で、周りの船がどんどん大きく、強いものが出てくる中で、もうメリー号での航海を最後まで続けるのは無理だと判断したためにこのエピソードを構想したという。
公式ファンブック「GREEN」では、展開案の一つとして「改修」というものもあった事が明かされており、メリー号の船首にライオンのようなタテガミを付けたラフが掲載されている。

  • 特別編にて
WJの夏と冬の恒例行事である連載漫画の特別編にて、一味がクリスマスパーティーで盛り上がる中、
メリークリスマス」の掛け声からウソップ、次いで他の船員たちが水葬されるメリー号を思い出してしまい、
当時未加入だったブルックとツッコミを入れるゾロ以外の全員が一気にお通夜状態になるというネタが描かれたことがある。

  • 航海日数
現実時間では1998年~2006年と約8~9年間もメリー号での旅が描写されており、思い入れのあるファンも少なくない(WT100で32位)のだが、実際に貰ってから大破までは約40~50日ぐらいしか経っていないと推測され、大事な人から貰った船がたった一ヶ月半で全壊という現実をウソップが受け入れられずルフィと大喧嘩になってしまったという意見も存在する*4

  • 進水式
SBSで、カヤ達がメリー号の完成を祝って進水式を行うシーンが描かれた。
船旅の成功と幸運を願ってシャンパンの瓶を船体にぶつけて割る儀式が執り行われたが、瓶が割れなかったためお通夜ムードになってしまう。(瓶が割れなかった場合、その船は不幸に見舞われるとされている。)
これからメリー号に待ちうける過酷な運命を予言してたかもしれない…。



追記・修正はクラバウターマンを見た船乗りがお願いします。

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  • 降りそそぐ追想の淡雪
  • 新しい船を手に入れるときのボスは猫
  • 海賊船
  • 全世界人気投票32位
  • 初登場が物語開始~クロ編終了まで

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最終更新:2024年02月07日 11:55

*1 クリーク海賊団との戦いの合間にナミに乗り逃げされてゾロに諦められかけ、ウソップの主張で追跡するもアーロン一味の縄張りに停泊しているところを発見され今度はウソップに諦められかけるなどそれなりの大事件はあったものの、船自体は無事という意味で

*2 一味も喪失感と悲しみを隠せなかったがゾロだけは自分達の状況を冷静に分析し、船長という立場の重さに気付いたルフィに仲間達が前を向くためには自分自身が立ち直らなければいけないと厳しい言葉をぶつけた

*3 フランキーにより本当に大切に乗られた船の妖精で、船の化身のようなものと示唆された

*4 尤も、ウソップの場合は船の修理を自分のアイデンティティとして見ていた節があり(他の非戦闘員であるナミ、チョッパーは航海士、船医とそれぞれ重大な役職を持つ)、自身の本職である狙撃はルフィたちが見ている前では大した活躍はできておらず、おまけに船大工が一味に加入するとなれば船の修理というアイデンティティさえ奪われかねないため、メリー号はウソップにとって麦わらの一味に居続けるために無くてはならない存在だった