上位互換/下位互換(TCG)

登録日:2014/09/11 Thu 15:15:40
更新日:2024/03/18 Mon 16:08:10
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この項目での上位互換/下位互換とは、トレーディングカードゲームにおける概念である。



●目次

概要

まず通常、上位互換/下位互換(Upper Compatibility/Lower Compatibility)と言うと同じ系列のソフトウェアやハードウェアの中で、
より高位の製品が下位の製品で作ったデータを処理できたり、フル機能版がスタンダード版の機能を全て使えたり、なんていう事を指す。

例えば「Win8ProはWin8の上位互換である」とか、
「Vita3GモデルはVitaWifiモデルの上位互換である」とか、「マナフィフィオネの上位互換である」とか。

また、新しい製品が古い製品の機能と互換性が存在している場合は「後方互換性がある」と表現される。
例えばゲームボーイアドバンスは、ゲームボーイ/ゲームボーイカラーシリーズに対する後方互換性が存在する。
中には、WiiWii Uの様に、一部機能をオミットした後方互換も存在する(パッケージ版のGCソフトを遊ぶことが出来ない)


対してTCGにおける上位互換というものは、あるカードから見て、より能力が上回るもの、より支払うコストが低いものを指す。
対義語は下位互換。
これらは元々英語圏での「Strictly Better/Strictly Worse」という用語を日本語へ訳すときに「上位互換/下位互換」という語を当てはめただけで、そもそもが一般に用いるそれとはまったくの別物。

TCGもMtGを皮切りにポケカモンコレ遊戯王OCGデュエマバトスピ、等々と歴史を着々と築きつつあるが、
そうして歴史が長くなってくるとどうしても避けられない問題が発生する。その一つが所謂「インフレ」である。
このインフレというのも「パワーインフレ」とも言われるように元々のインフレ(インフレーション)とは意味合いが異なり、「新カードのパワーが過去のカードと比べてどんどん上がっていく現象」を指す。

その対応としてMtGやポケカのように公式レギュレーション*1において定期的に使えるカードを最新の収録セットや時期などから狭め*2、仕切り直しを行うレギュを制定する事もあるが、そうしたレギュを他を押しのける(or制定しない)形で制定しても売り上げに支障がない規模を誇るTCGは本当に極稀。
基本的には制定してはいるが古いカードも使えるレギュの方が主流であったり、そもそもローテーションを伴うレギュを制定していない。

そうしてローテを一切しない方針を保っているが、その中でのインフレの解決がすこぶる困難となっているTCGも少なくない。
そのためか中には『遊戯王OCG』→『遊戯王ラッシュデュエル』などのように同一ブランド(IP)から別のTCGを出して実質的な仕切り直しとし、新規にも入りやすい商品展開をするといったパターンも見受けられる。

だが、もしカードのゲーム面での強さのインフレが無ければ、既存プレイヤーは「新しいカードを購入しなくてもいい」、ルールに詳しくない新規プレイヤーは「既存プレイヤーに実力の差などからほとんど勝てず、定着しない」という事になってしまう。
そのため、TCGでは上記の「ローテーション」と別に、ほぼ全てにおいて、徐々にではあっても時々「特定条件下で能力が上回るもの」を出し続け、プレイヤーの購買意欲を刺激する必要を迫られているのである。
また、新カードの能力を高めて「直近のセットだけでも勝ちやすい」とすることで所謂資産アドを是正し、過去のカードを持たない新たなプレイヤーの獲得も狙いやすくなるという面も大きい。

しかし、その『特定条件下で』を繰り返すうち、その初期のカードと全く同条件下、そこまで行かずともより緩い条件下でそれ以上の性能を発揮するカードが生まれてしまう。
結果として、「カードパワーのインフレ」(付随して「追加ルールの複雑化」「カードテキストの難解化」など)が起きてしまうのである。

これはTCGにおいて避けられない宿命であり、カードデザイナーもバランスを考えながら本当に考えているのか怪しい時もあるがデザインに苦慮しており、プレイヤーもその結果である新カード情報には一喜一憂している。

とはいえ、あまりに過度なインフレが起きた場合、購買意欲以上に、インフレについていけず引退を選ぶ人も当然いる。
結果的にプレイヤーを減少させてしまったり、過去のカードが紙くず同然になる事で批判される事も多い。


下位の方が使われる場合

そんな上位互換が出た場合でも「その条件が起こしにくい」「一部のステータス違いから対応するサポートが異なる」「下位互換も十分に強い」などの要素がある場合、下位互換でも使用されることがある。
これがいわゆる「差別化」である。

また、そもそものTCGの多くは同名カードの投入枚数制限を設けており、その上限枚数分だと足りないと感じる場合には下位互換でも採用されることになる。
それらが使うデッキにとって必須級とあれば、下位互換含めてフル投入もありえる。

例えば、バトルスピリッツBooBooマンは本来「果物人ブルブルベリィ」の下位互換である「果物人リンゴスター」のそのまた下位互換という二重の下位互換であった。
しかし7枚目以降(原則、1種類当たり1デッキに3枚まで)ではあるが何枚でも入れていいという性質により、「同じカードを大量に必要とするデッキ」で活躍したことで規制されたという珍しい例である。

他にも「上位互換が入手困難なので下位のカードで妥協せざるを得ない」様な事もある。


調整版

但し、カードによっては前のカードより意図的にカードパワーを抑えた「調整版」カードを作る事もある。
これは元のカードがあまりに強すぎた場合に、そのカードの使用条件を厳しくしたり効果を弱めたカードを収録する、というものであり、結果としてそうなる下位互換とは別に扱われる。
差別化が極めて難しい場合は事実上の下位互換と言って差し支えない。

当然ながら調整元カードは規制されている物か、そうでなければ新たに使用制限がかかる。
そもそも調整版の意義は「規制対象の代用品」という点にあるのだ。

その調整版ですら環境を大きく支配する場合、元のカードのパワーを改めて実感するハメになる。《水蓮の花びら》とかね

……ときどき枠埋めに下位互換のカードを収録する事がある? 知らん、そんな事は俺の管轄外だ


完全上位互換/完全下位互換

「特定条件下では差別化できる」事もある、と先述したが、
どんな条件下でも全く差別化出来ない場合には「完全」と付けて呼び分ける事がある。

基本的には完全上位互換のカードだけで足りてしまう事が多い。
無論、足りないなら完全下位互換も持ち出す事になるが。
例えば遊戯王のテーマ、「影霊衣」において《マンジュ・ゴッド》の完全下位互換であるにもかかわらず併せてフル投入された《センジュ・ゴッド》が有名だろうか。
詳細は下記に譲るが、このテーマにおいては《センジュ》のサーチ範囲の狭さは余り気にならなかった故に起きた事である。

一応、カード名を参照するカード(遊戯王OCGの《禁止令》)などに選ばれにくいといった強引な差別化が出来る場合もある。

また、完全上位互換が複数種類存在する場合、完全下位互換はコレクションとしての価値しか持たない事になる。
特に下位互換が萌え(燃え)カードだったりすると「イラストアドだ!」と言う人も出てくるが。ジョークカードにでも参照されなきゃどっちもインクの染みである。

また完全下位互換を「劣化○○(上位カード名)」もしくは単純に「劣化」と呼ぶ事もある。
これまた「劣化」の本来の意味と違うが、互換も本来の意味と違う使われ方をしているのでこちらも気にしたら負け。


相互互換/完全相互互換

似たような能力で、特にどちらがより優れているという事もない、つまりカードパワーに明確な差がない場合は相互互換と呼ぶ。
広義には「相手のカードを破壊する」効果と「相手のカードを手札に戻す」効果も相互互換な効果同士と言える(ここではコストは考慮しない)。
前者は「再利用されにくいが破壊耐性持ちに対応できない」、後者は「再利用されやすいが破壊耐性持ちのユニット(or置物)に対応できる」という特徴があり、どちらを優先するかはデッキや環境との相談になる。

相互互換のうちカード名しか違わないものは特に完全相互互換と呼ぶ……が、上位下位互換と比べると余り使われていない言葉であり、多くのTCGでは後述の同型再版と呼ぶ事が多い。
単体で見た場合、完全相互互換のカードは能力的な差異が存在しないが
  • デッキ内に同じ能力及び効果のカードの総数を増やしたい
  • 同名カードをすべて破壊する」等、カード名を指定した効果へのメタ(相互・下位互換を使って行われる事もある)
  • 情報アドバンテージ面においてそのカードの投入枚数を悟られにくくする
  • イラストなどの趣味
といった理由で使い分けや投入がなされる。同名カードを1枚しか投入しない(できない)ハイランダー構築を組むともなると、尚の事(完全)相互互換の存在が重要視される。

同型再版

相互互換と似た概念に同型再版(再販)というものがある。
これは過去に登場したカードと同一の効果を持つ別名カードの事で、事実上の(完全)相互互換になる。テキストは同じだが種族などは異なっている場合も同型再版と呼ばれる事が多い。当たり前だが後発のカードの方のみがこう呼ばれる。

このようなカードが登場する理由はTCGによって様々。
多いのは、ゲームデザイン的な都合として特定のカードが欲しいものの収録セットに対応したストーリー背景やフレーバーにその名前のカードの噛み合いが悪い場合、カード名を変えて収録するというもの。
有名な例はMTGの《ラノワールのエルフ》や《フィンドボーンのエルフ》と《エルフの神秘家》、《霊魂放逐》と《本質の散乱》*3、《空民の助言》と《予言》*4など。
MtGに限って言えばスタンダードで互換元と同型再版が同居することは稀な為、使い分けはされない(出来ない)が、同居した場合やローテの無いフォーマットであれば上述の完全相互互換と同じ扱いを受ける事も珍しくない。

なお同型再版や相互互換という用語に関しては各TCGにおいて使ったり使われなかったりする。プレイヤー間の会話では要注意かもしれない。
例えばMtG界隈では相互互換という言葉は使われていない。こちらでは専ら同型再版と表現しているのだ。
逆に遊戯王では同一効果を持つカード自体がほぼ無い、ローテションが無いといった理由から同型再版自体が皆無。一応、用語として理解してる決闘者は多い。

ちなみに再「版」か再「販」かだが、TCGによって微妙に違っている様子。正直どっちでもいいと思う
各TCGのwikiで同型再版/再販項目は
  • 再版→MTG・ヴァンガード
  • 再販→DM・バトスピ
となっている。MtG・DMは兄弟なのに違うのである

○○互換

カード名に加えて種族や色なども違うが、能力的に同じカードを指す言葉。要は「AはB互換である」とは「AはBの相互互換である」ということ。
例としては「《闇噛のファミリア ミョウガ》は《ヤミノカムスター》互換である」といった使われ方。

ヴァンガードなんかではこの表現が多い。これはクラン制TCG特有の「互換カードが発生しやすい」という理由から。


各TCGごとの上位互換/下位互換の扱い

Magic: The Gathering

「Strictly Better/Strictly Worse」という概念とその訳語はこのMtGが発祥。世界初のTCGは伊達ではない。
但しカード名を指定する場合や、MtG特有の付属する種族の種類や数(主にクリーチャー・タイプ)の違い、また「相手のカードを使う能力」なども豊富なために、
下位互換である事がメリットになる場合(特定条件下でむしろ上位互換になる場合)も多々存在するゲームである事から、
「100%上位互換/下位互換である」カードは存在していない、とされている。要は考慮すべき事があまりに多いためである。

また、MtGは組み込むデッキ(その色の比率)が変わればコスト論も大きく変わりうるので、単純に「こっちのが強いよね」とも言いにくい。
それでも人によっては依怙贔屓をしてしまうようだが。

実際、上級者の間でもカード名を指定する呪文が丸々刺さらないよう別の呪文を採用する、なんて事はしばしばあった模様。有名な例では2001年頃の《翻弄する魔導士》対策として《神の怒り》と《総くずれ》を散らす構築など。
また、限定戦(MtGでは「リミテッド」と総称)が公式に大会を行うほどメジャーであり、《殺戮の暴君》と《巨体な戦慄大口》(同コストだが《殺戮の暴君》の方が完全上位互換でレアリティも上。クリーチャータイプまで一致するのは珍しい)の様に同一セットの中にレアリティの違う上位、下位互換のカードも存在する。特に最低レアリティであるコモンでの収録経験の有無はパウパー(Pauper)というフォーマットの使用条件に問われるため、そのプレイヤーにとってはその点が高い壁となっている。

但しそれでも例えば「《幻影獣》は《大ダコ》の上位互換」なんて表現をすることはする。
さすがに絶版カードも多いし、それに相手に利用されないなら上位のカードの方が優れていることは間違いないのだ。

遊戯王

MtGとは別方向に完全上位互換/完全下位互換を決めにくい、というより不安定。
特に現在はテーマ(カテゴリ)の恩恵が構築の主軸に据えられがちなため、より優れる、優れないを決める事が難しいのである。
また度々「レベル○○の××属性モンスター」とか「攻撃力○○以下の○○族モンスター」等と指定してくるカードが登場するため、
そうした新カードの条件に当てはまっていた事で再評価されだすカードも結構多い。

《ゴヨウ・ガーディアン》(エラッタ前)と《大地の騎士ガイアナイト》の様に、明らかに前者のほうが性能が高くとも、後者にも利点自体はあるからである。(ちなみに前者は現在エラッタされてより差別化された)
攻守と効果だけ見れば《カオス・ソーサラー》は《カオス・ソルジャー −開闢の使者−》に勝てる要素がない完全下位互換であるが、
属性・種族・レベルの違いによってエクシーズ素材やシンクロ素材に使う場合は《カオス・ソーサラー》の方が使い勝手がいいと言う理由から、
上位の存在の《カオス・ソルジャー −開闢の使者−》と制限リスト上で肩を並べていた事もあった。

では単純な攻撃力や守備力の数値の面はどうだと言われると、これもまた一概に「高ステータス=上位互換」とも言い切れない。
例えば同じ1900打点のレベル4下級バニラアタッカーの《サファイアドラゴン》は守備力が1600であり、守備力1500以下のモンスターをサーチする《黒き森のウィッチ》のサーチに対応していない。
そのため単体の能力値で勝りこそすれ、このサポートに対応するか否かで評価が分かれる事になり、守備力900の《ヂェミナイ・エルフ》の方が優先されていた。
この様に、重要じゃない所が無駄に高いとサポートの対象外になったりして損をしてしまう事がある。

また、遊戯王も初期の頃は出したモンスターでそのまま殴り合うだけだった為に(一部のカードを除き)単純にステータスの優劣がモンスターの強さに直結していたが、
エキスパートルールの実装を経て、更にシンクロ召喚やエクシーズ召喚といった低ステータスのモンスターも利用して高ステータスのモンスターを呼ぶという方向性にシフトしていった。
そのため、低ステータスゆえ場に呼び込む手段が豊富で、かつ高攻撃力のモンスターをダイレクトに潰す一部のカード*5に引っ掛かりにくい低ステータスモンスターに、
「高ステータスモンスターの素材」という差別化要素が与えられたためである。
殴り合ったり壁にする事を求められていないモンスターにおいては素のステータスより、どんなサポートを受ける事ができるかが重要になる。
《ドラグニティ・コルセスカ》《ジュラック・アウロ》など低ステータスな上に効果はほぼ使われた事は無いのに、サポートカードで使いやすいステータス、又は同条件で攻守が優れるという理由だけで環境で使われたカードは数多く存在する。

また、低ステータスモンスターにしか利用できない専用サポート(《トライアングルパワー》、《トライワイトゾーン》、《リミット・リバース》等)も多数存在しており、
これらを活かして低ステータスを強化して殴る「ローレベル」といったデッキ構成も存在する。

このために単純にステータスで有用性が決まる通常モンスターに至っては、
「(特別なサポートの有無を考慮しない限り)サーチリクルートの手段が少なく展開を妨害されやすいため高ステータスの方が下位互換」と言われる場合すら出てくる。
むしろ中途半端に攻撃力が高いと「妨害されやすい上に低ステータス特有のサポートが受けられず、かといってアタッカーとしても不十分」というなんとも言えない扱いを受ける事になってしまう。

このように低ステータスモンスターは高ステータスのモンスターと全く違った用途での出番が与えられるため、
各モンスターの固有効果やカード名の括りといった特異な事情を一切考慮しなかったとしても単純に攻撃力守備力の優劣だけでは各カードの有用性は比較できない。

全く同じステータスを持ったカードの、効果の有る無しによる違いならばどうかと言えば、「通常モンスターであること」、「効果モンスターでないこと」を指定するカードも存在するため、効果モンスター>効果の無いモンスターとは一概には言えない。
むしろどっかのドラゴンみたいに「通常モンスターなら……ッ」となる効果モンスターも数多い。
融合モンスターなどでは「このモンスターは融合召喚以外で特殊召喚できない」などの召喚方法に関するデメリットを持っているだけで、効果モンスター扱いとなってしまうため、一層悲惨な扱いを受けてしまう事も多い。
逆にリンク召喚では効果モンスターを素材に指定する物が多いため、効果モンスターじゃない方が損をすると言った事例も起こる様になった。

初期の通常モンスターなども、昔は属性や種族が軽視されがちだったためあまり見向きもされなかったものが、通常モンスターサポートとともに、シンクロやエクシーズの条件などを考慮して使われるようになったものがある。
例に出すなら《カース・オブ・ドラゴン》とか《大くしゃみのカバザウルス》とか。

但し、だからといって「使用されるか」とは別の話で、やはり絶版になるカードにはそれだけの理由が存在するものも多い。

完全上位互換と完全下位互換は存在し、ステータス・レベル・種族・属性が全く同じで《マンジュ・ゴッド》と比べて儀式魔法がサーチできない《センジュ・ゴッド》や、
《サイクロン》に「相手の魔法・罠ゾーンにカードが3枚ある時発動できる」「チェーン3以降で発動できる」などの発動条件を加えただけの《トルネード》や《一陣の風》などがそれに該当する。
ツイツイのようにコストを逆利用したりもできないため、無理矢理な差別化も図りにくい。
このパターンは「規制されたカードの調整版として作られたけど、インフレ・環境の変化で調整元が戻ってきた」というケースが多い。
《センジュ・ゴッド》の様に4枚目以降としての役割を持てるのであれば採用されるケースはあるのだが、実際はその戻ってきたカードの相互互換や上位互換が出てしまうため結局使われなくなっていくパターンが多い。
過去においては環境トップデッキの【影霊衣】においては儀式魔法がサーチできないことは大した欠点にならなかったため、《マンジュ・ゴッド》《センジュ・ゴッド》共にフル投入し両者とも制限送りになったケースもある。

また、カード名を指定して発動する《禁止令》や《マインドクラッシュ》や同名カードを纏めて除去する《連鎖破壊》や《連鎖除外》などが存在する為、どんな下位互換カードであっても「カード名を指定するカードで狙われにくくする為」という強引な差別化が一応可能となっている。
それだけを理由に採用されるかは別問題であるが、ある意味では完全下位互換は存在しないともいえる。

デュエル・マスターズ

MtGの弟分として誕生したが、このゲームでは「完全上位互換」「完全下位互換」「完全相互互換」もちゃんと存在する。

例えば、《ボルシャック・大和・ドラゴン》は《ボルシャック・ドラゴン》の完全上位互換だし、
《DNA・スパーク》は《ホーリー・スパーク》の完全上位互換となる。

種族違いによって差異が生まれたり、コスト違いが影響を与えることもあるため、
その意味で上位互換/下位互換を決めにくい部分は先述の2種のTCGと同様、あるいはそれ以上に難しい話なのだが、
一方で同じ弾に初収録なのに《節食類怪集目 アラクネザウラ》と《長鼻類 マンモスドン》のような完全上位互換/完全下位互換が出たりとか、
パッと上位のカードが出やすい素地がある。

特に相手に利用されないクリーチャーなんかは情報が多ければ多いほど上になりがち。
特に「上位のカードのほうが低いレアリティ」なんてことも発生するくらい。
また種族の差異も、種族自体が上位だったりってパターンもないわけでもない。

一方で低コストカードはそれを上回るカードを作りにくいためか第1弾のカードなのに上位互換が存在しないものも多数ある。
というか上位互換/下位互換の議論になりやすいのが大抵中間~重量級のコストのカード。

あとデュエル・マスターズの場合、規制したカードと同一スペックのカードを産んだパターン(アクア・ハルカスを参照)がある。なんでさ

そもそも「相手に利用される機会が少ない」「色を絞るデッキ構築が一般的でない」などの他のTCGにそう無い特殊な路線なため、
完全上位互換と完全下位互換も生まれやすい代わりに環境の固定化を防いでいるフシもある。現状は一長一短だが。

あと、《超神龍ザウム・ポセイダム》と《蒼神龍ザウム・ポセイダム》のような完全相互互換もある。
……つーかこれ絶対誤植だろ。

バトルスピリッツ

新シリーズになると新規の系統(クリーチャー・タイプや種族に相当)を出したりして差別化を図るものの、
前シリーズでプッシュしていた要素を露骨に対策したカードを出すことが多く、
他の例にもれず上位互換はかなり多い。

極端な例だと、系統も同じで
  • スピリット「サンゾック・ベア」(2015年7月25日発売)…「召喚時にBP5000以下の相手のスピリット1体を破壊し、軽くはない条件付きで更にBP5000以下の相手のスピリット1体を破壊」
  • スピリット「庚獣竜ドラリオン」(2016年4月29日発売)…「召喚時にBP5000以下の相手のスピリット2体を破壊し、破壊出来たら自分の手札にあるブレイヴカード1枚を、コストを支払わずに召喚」
といった具合である。

旧カードのサポートが数年後に出されて救済が行われる場合もあるが(魔帝龍騎ダーク・クリムゾン、『スペシャルデッキ【12宮Xレアの輝き】』)、
2008年より展開してきたためにインフレは当然激しく、2015年冬以降には、最初期のカードを同名のまま、
効果を強力にした状態でリメイクする「リバイバル」、つまり公式で上位互換を出すことが行われている。
第一弾の『リバイバルブースター【龍皇再誕】』では効果の面影をかなり残していたが、本流のパックとのシナジーが無いことも合わさり実用性に欠けたカードが殆どという悲惨な結果だった。
第二弾では人気投票の結果星座編がリバイバルされたが、上記の結果を踏まえてかサポートする系統や効果が本流パックのものになり、旧カードにほとんど対応していない別物だったためこちらはこちらで賛否両論状態に。
その後も定期的に通常ブースターや構築済みデッキでリバイバル版が登場しているが、性能の傾向はまちまち。

Z/Xヴァイスシュヴァルツなど

Z/Xやヴァイスなどの一部TCGではコストに対する基本的なパワーが明確に決まっておりそこから能力の強弱によって能力値が上下する、いわゆる「査定」という手法が用いられている。
これにより既存のカードを上回る強力な能力を持ったカードには必ず何らかの使用条件やデメリットが付与されるため、上位互換のカードが基本的には存在しない。

しかしながら上位互換を生み出せないことによる弊害も少なからずあり、新しいカードのデザインが既存のカードに強く縛られてしまうため、コアプレイヤーにとって魅力的な新カードを作るのが難しい。
また強力なカードの使用条件を自然に満たせるデッキ構築を強いられた結果、却って使えるカードの自由度が落ちることもある。
インフレとも無縁というわけでなく、ないに等しい使用条件を設定することで完全上位互換でこそないが実質的に上位互換であるカードが登場することも非常に多い。

実際のところ、上位互換が存在しなくてもインフレは避けられないし、面白いゲームになるとも限らないのが現状である。
ヴァンガードのように新シリーズ展開に合わせて査定の基礎部分を上昇させ(≒過去カードが査定面で下位互換になる)、一律のインフレを起こすことでデザイン空間の解決を図る作品も存在するが、切替タイミングでは大きな賛否を伴う。
それだけTCGのカードデザインは難しいのである。

またこれらのTCGは性能以外の面で購買意欲を刺激するべく、同名カードのイラスト違いが希少レアリティに設定されることが多いのも特徴。
TCGがジャンル名にトレーディングカードの名を冠するだけあって性能に限らずイラストアドも特に重視される事もあり、ゲームへ影響しない部分からのアドバンテージによる上位互換/下位互換は特にコレクター層にとってはあると嬉しいものとなっており、そうした差分を設けるために更なる苦労を強いられがちなメーカーにとっては悩みの種にも金のなる木にもなる諸刃の剣である。

カードファイト!!ヴァンガード

査定形式なので基本的には上述の通り。
無印→Vシリーズ→Dシリーズと2回にわたり大規模なローテーション(所謂スタン落ち)を行い、それに伴って査定面が上下した。
その為査定形式でありながら各シリーズ間のカードパワーにはかなり違いがあり、シリーズを跨ぐと大量の上位/下位互換が存在する。
また無印シリーズではクランを跨いだ互換が非常に多かった。
面白いのは「バミューダ△候補生 シズク」。汎用性の高いこのカードの登場後各クランに「シズク」と同じ能力を持ったカードが配られ、通称「シズク互換」と呼ばれるサイクルを成した。メガコロ?刀剣?知らんな
が、よくよくテキストを見るとオリジナルの「シズク」と後発の「シズク互換」は能力に微妙に差異があり、「シズク互換」の方がほんのわずかに上位互換となっている。
微々たる違いで運用上の差異はほぼ無かったのだが、このせいでサイクル名の通称なのに「シズクはシズク互換の下位互換」などとネタにされていたことがある。



追記・修正は完全上位互換・完全下位互換・完全相互互換が出た人がお願いします

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最終更新:2024年03月18日 16:08

*1 略称・略記は『レギュ』。MtGなど一部TCGではフォーマットとも。

*2 所謂ローテーション(縮めて「ローテ」とも)。多くは新セット発売に合わせ、それまで使えたセットの中でも古いもの数セットを使用不能とする。

*3 (1)(青)インスタント クリーチャー呪文を1つを対象とし、打ち消す。

*4 (2)(青)ソーサリー カードを2枚引く。

*5 地砕き、奈落の落とし穴、死のデッキ破壊ウィルス、レベル制限B地区、等々。