ザムザ(ダイの大冒険)

登録日:2011/05/21(土) 12:26:57
更新日:2023/10/19 Thu 19:30:48
所要時間:約 5 分で読めます





我が名はザムザ!!
だがその正体は人間ではない!!

魔王軍妖魔士団長ザボエラが一子、
妖魔学士ザムザだ!!!


漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の登場人物。
CV:陶山章央(2020年版)

●目次

【概要】

魔王軍・妖魔士団の幹部であり、その肩書きは『妖魔学士ザムザ』。学部卒?
妖魔士団長である妖魔司教ザボエラの息子でもある。
182歳という年齢は長寿の魔族としてはまだまだ若年で、人間換算では高校生程度。
見た感じは人間でいう青年期あたりである。
……マユゲが無いせいでやや老け顔っぽいが。

【人物】

歳の差もあって容姿はそれほどでもないものの、性格はやはり父に似て外道。
人間を「モルモット」「ゴミ」と言い切り、使い捨ての道具と見做す考えの持ち主である。
特に悦に入る時の「キ~ッヒッヒッ!!」という笑い声は親譲りというほかない。
また魔道士としての素質も同様に引き継いでおり、多種の攻撃呪文を扱える。

ただし、自身が傷つかないことだけを重んじて他者が犠牲になろうとも一切気にかけないザボエラとは違い、ザムザは自らの肉体を研究の材料にし、戦線に出て危険を冒して戦うことも厭わない。
人間を実験材料にしようとした理由についても、「実験の度に部下を犠牲にするわけにはいかないから」という自軍の仲間への配慮を挙げており、これも平気で手下を身代わりにしたり殺して素材にするザボエラとは全く方向性が違う。
劣勢でも退かず、敗因を素直に認める、死ぬ時も潔く受けいれるなど、「残酷だが自分なりの美意識や節度を持つ悪役」という演出になっている。

生物学に精通し、他の生物の因子を取り込んだ新しい生命体「超魔生物」の研究を進めていた。
これは妖魔士団の多くが呪文の扱いに長ける反面、肉体的に脆弱という弱点を補う目的でザボエラの発案により行われていたもの。
既に理論は大部分が完成し、ザムザ自身の身体をベースに実際の成果が得られつつあるという。
また、この研究の過程で魔物同士を掛け合わせた魔改造合成モンスターなども造り出している。

【戦闘能力】

妖魔士団長の息子だけあってメラ系ギラ系イオ系などの多彩な呪文を使いこなす上級魔法使い。
また、切り札として魔族から超魔生物への変身能力を持つ。
既に90%近くまで完成しているが、呪文が使えなくなる欠点を残している。
具体的な他の生物の因子については全身が変身する前から使用している大猿系怪物の柔軟な皮膚以外は不明。
クロコダイン脱退後の百獣魔団を材料にしたんだろうか
変身後は原型をとどめておらず、頭からは四本の角、背中からは鰭か翼のようなものが生え、
左手ははさみ状で足の指は鳥状の数メートルの怪物となる。

呪文が使えなくなった代わりにその攻撃力や防御力及び再生能力を武器とする他、
腹には円形の巨大な口を備え、捕獲や呼吸を行う。口からは閃華裂光拳をも封じる特殊な皮膜粘液を吐き、闘気を操ることも可能。

ただ、チウ程度を相手にいつまでも仕留めきれずにスタミナ切れを起こすなど、戦闘スタイルはほぼ持ち前のパワー頼りで戦闘技術そのものは乏しい。もっとも、元々が研究職であることを考えるとまがりなりにも戦えるぐらいの技術を持っているだけ優秀だろうが。
また、閃華裂光拳の仕組みも即座に気付き、有効な対応策を打つなど、戦闘における判断力・洞察力は十分優れている。

しかし生命活動を異常促進させることで自壊を促す閃華裂光拳(マホイミ)を相手にするとその生命力が仇となる。
致命傷を負うと、肉体は死体すら残らず灰となってしまう。
戦闘中にマァム達から向けられた憤りに応えてかザムザは「生命を弄んだ天罰かも知れない」と語っている。

漫画『勇者アバンと獄炎の魔王』では、超魔生物研究はザムザが始めたものと語られており、その成果の一環として合成魔物が生み出されている。
…が、ザボエラは魔王ハドラーに対して自分の成果と言って自分を高く見せつつ、魔物を売っていた。

装備

  • 生体牢獄(バイオプリズン)
名前の通り牢獄の部品は生物組織で、柔軟さと強靭さを併せ持つ皮膜は打撃、斬撃、呪文と、あらゆる攻撃を跳ね返してしまう。
また、時間が経つと内部に痺れガスを充満させて、捉えた相手を動けなくする機能もついている。
だが、マァムとゴーストくんには回復魔法を全身に纏う技で痺れガスを防がれ、さらに生物だからこそ有効な『閃華裂光拳(せんかれっこうけん)』を叩き込まれ破壊されてしまった。

  • 覇者(はしゃ)の剣(偽)
ロモス王国の国宝である覇者の剣の贋作。恐らくは鎧の魔剣などと同じ金属で出来ていると思われる。
偽物ではあるものの、パプニカのナイフ程度の武器では瞬時に消滅してしまい、鎧の魔剣でさえ、一度使った後、完全に消滅してしまったダイ竜闘気(ドラゴニックオーラ)を用いた攻撃にも、一撃分は持ち堪えたので、かなり良い武器ではあったようだ。
オリハルコンを原材料とした本物の覇者の剣ほどではないものの、十分に名刀といえる一品。

【作中での活躍】

人間達の国であるロモス国に人間に扮して潜入、ロモス王に進言して武術大会を開催させた。
進言の際の名目は「腕自慢を集めて国力増強の助けとする」こと。
しかし実際の目的は、「超魔生物の研究を進める実験の為に、モルモットとなる強い人間を集める」ことである。



この大会の優勝賞品には伝説の金属オリハルコン製の覇者の剣が用意されており、対バラン戦直後、自分の竜の騎士の力に耐える武器を求めたダイもポップと共にエントリー。
……しようとしたのだが、選手の登録時間は終わっていたので参加は不可。
武闘家に転職後の腕試しとして偶然この大会に参加し、会場でダイ達と合流したマァムに賞品獲得の願いを託すことになる。
ここではマァムの兄弟弟子である「空手ねずみ」のチウも初登場(二足歩行し、しかも喋るねずみ)。


しかし覇者の冠にしろコレにしろ、ロモス王がどこから入手したのかは結構気になるところ。
いつもニコニコしている気さくな雰囲気の裏で、謎の蒐集スキルを持つ王様である。……○ダル王?



大会は順調に進み、ベスト8が決定。
その中には無事勝ち残ったマァムと、謎の着ぐるみ「ゴーストくん」の姿が。
……チウ?初戦で負けたよ。
そして8人がリングに上がったときに自分の身分と目的を明かし、リングに仕掛けていた生きた檻「生体牢獄(バイオプリズン)」を起動させて彼らをその中に閉じ込めた。
恐らくはそれごと中の人物を連れ去るつもりだったのだろう。

当然ながらダイとポップはそれに立ちふさがる。
が、ザムザは驚きつつもダイの登場に歓喜の声を上げる。
竜魔人と化した竜の騎士こそ、自身の研究する超魔生物の到達点なのだからと。


「おまえはまさに飛んで火に入る夏の虫!」
「最高のサンプルなんだ!!」

おまえの親父みたいな…

化け物をつくるためのなああっ!!!!

ポップがツッコんだように超魔生物化したザムザの容姿は竜魔人バランよりもよほど化け物じみてはいるが。
普通の魔族や魔物を素材として竜魔人に近いパワーを得るにはここまで肥大化・異形化するほどの改造が必要ということか。

敵対したとはいえ父親を化け物呼ばわりされたダイの怒りのラッシュを受けるが異常なまでの頑丈さを見せ、破れた服の下から異様な肉体を覗かせると、自身をベースに超魔生物は90%近くまで完成していること、大猿系怪物の皮膚と闘気の併用で捌いたことを明かす。
そして、自らの肉体に施した超魔生物への変身機能を開放。
巨大な体躯とパワーでダイを拘束するもハサミを破壊され脱出されてしまうが、直ちに紋章の力が尽きて倒れたダイを腹に備えた巨大な口で飲み込み一度は完勝する。

しかしポップの五指爆炎弾(フィンガーフレア・ボムズ)とチウの決死の窮鼠包包拳を喰らって腹の口を開いてしまい、バイオプリズンを破壊したマァムの奥義・閃華裂光拳により再生能力が失われてしまい圧倒されるが粘液により腕を封じてマァムを逆に追い詰める。
しかし、ポップのメラで粘液を溶かされて再び閃華裂光拳を喰らい、最後は腹から脱出したダイが最後の力で振るう覇者の剣によって敗れ去った。

なおこの覇者の剣は事前に摩り替えられたニセモノで、当然ダイの力に耐えられずボロボロになってしまった。
本物はやがてハドラーの手に収まることとなる。



子として

「自分以外は全て道具」「役に立たないならゴミ」と常々口にするザボエラの子であったザムザは、やはり自身も道具として見られつつ育った。
人間をゴミと呼ぶ姿勢は己の優秀さを自認する為のものであり、それにより父に認めて欲しいという願望の現れでもある。
結局の所、根底の部分ではザムザもまた、人間の青年と何ら変わりはなかったのである。

死に際に自分の研究データをザボエラの下へと送るザムザの献身に、ポップはつい口を出してしまうのだが…。


「バ…バカ野郎!てめえの親父ってのはザボエラだろうが!!!」
「あいつがそんなことやって感謝するようなタマかよ!!!」


「…フッ…わかっているさ。そんなこと」
「…オレが死んでも涙ひとつ流さないだろう…」

……だが、あんな父でも
オレの父であることに変わりはない…!

そう言い遺し、いつか完成した超魔生物がダイ達を倒すことを夢見ながら満足気に死んでいった。


いつか完全なる超魔生物がおまえたちを倒す…!!


オレの…オレの戦いはムダじゃなかった…

そうさ……。決して……ムダではな……かった……は……ず……

本作には様々な親子関係が描かれており、これは恐らく作者の掲げたテーマの一つでもある。

互いに反目し、一度は殺し合いながらも互いを想わずにはいられないダイとバラン。
ごく普通の両親を持ちつつ、家に嫌気が差して飛び出しながら両親を想い続けるポップ。
戦火の中を過ごす両親の間に生を受け、それ故に平和に生きることを望まれたマァム。
物心付く前からモンスターに育てられたダイとヒュンケル、また彼らに愛を注いだブラスとバルトスなど…。
そんな中で「敵方の親子」として現れたザムザの最期は、ダイの心に深く、強く刻み込まれるものとなった。


………わかる…
…おれ…なんとなくわかるよ…

戦いが終わり日が落ちかける頃、灰となって消え行くザムザを見ながらダイはそう呟いていた。

そして、傍らには役目を終えたニセ・覇者の剣が、まるでザムザの墓標のように地面に突き立てられ、夕日を浴びて鈍く輝いていたのだった…。



【研究成果の後継】

キーッヒッヒッヒッ!
よくやった!まったくよくやったぞザムザよ!
お前の人生はわずか200年足らずの短いものだったが実に有意義なものだったわい!
あの世で誇るがよい!お前の研究成果が生み出す魔王軍最大最強の魔人のことをな!

ハドラーの超魔生物化

ザムザが死の間際に転送した研究データを元に、ザボエラがハドラーに施術。
超魔生物になると呪文を使えなくなる欠陥は、魔族←→超魔生物間の変身機能を残しているために生じるもの。
よってハドラーは自らの決定の下、この変身機能を排除させた。
これはつまるところ、復活が約束された魔族の生を捨てて死ぬまで獣の身であり続ける覚悟に他ならない。
権力に固執するヘタレの終わり、そして1人の武人の始まりである。


超魔ゾンビ

ハドラーすら研究途中の産物と見做し、最終的にザボエラがたどり着いた究極の超魔。

予め特殊な細工を施した魔物の遺体をザボエラの魔法で合体させ、巨大なゾンビに造り替えたもの。
死肉の凝縮体であるため生体活動を異常促進させて自壊を促す閃華裂光拳(マホイミ)が通じず、さらにゴムのような弾性と強力な毒素で並大抵の武器は腐食・破損させてしまう。
こちらでは魔法力を攻撃呪文ではなく、ボディ内部からゾンビを意のままに操るために使う。
痛覚のない死体であるため、攻撃を受けてもザボエラ自身は痛くも痒くもない。

総合的な戦闘能力で見ればハドラーの方が明らかに上だが、ザボエラの理想とするヴィジョンに基づいて、単に強くなることよりもいかに自分自身に負担を掛けず、安全に一方的に敵をいたぶることができるかを追求したものとなっている。
そのためザムザやハドラーのように自身の肉体を改造するのではなく、他人の肉体を素材に造り上げたパワードスーツのような代物となった。
ただ竜魔人の能力の再現という超魔生物本来のテーマからは外れている上、同じ魔族をモルモットにしないために人間を捕えたザムザからすると嫌悪感を持たれそうな発想である。


ザムザの死後、超魔生物の研究に課せられた課題は以下の通りだった。
  • 呪文が使えなくなる欠点の克服
  • 竜魔人に匹敵する力を得るための戦闘力の強化
  • 閃華裂光拳のような生体組織にダメージを与える技への対策
  • 寿命を削るほどの肉体への負担の軽減

これらの課題のうち、「呪文の使用可能」「戦闘力の強化」を重視したのが超魔生物ハドラー、「閃華裂光拳への対策」「肉体への負担の軽減」を重視したのが超魔ゾンビと言える。

【余談】

  • ザムザの母
ザボエラの奥さん、つまりザムザの母親について存在するのかも長年の謎だった。
しかしYouTubeで配信されているダイ好きTVにおいて、作者の三条陸は「夫の命を狙いかねない極悪な美女魔族で、妻はザボエラを殺そうとして返り討ちにあったのかも。ザムザは母の事をほとんど覚えてないだろう」と答えている。
もし両親が揃っていたらザムザはどんな性格に育っていたのやら…。
ザボエラにまともな夫婦関係が築けるとは思えないため、この発言があるまでザムザは試験管ベビーではないかと囁かれていたのは内緒。

  • 親子についての認識
ロモス城でのクロコダイン戦における「子供が絶対に逆らえんもの…それは『親』じゃっ!!」というザボエラの台詞。
単体で聞いても下衆な発言だが、その後ザムザの登場によってザボエラ自身もまた子を持つ親であった事が判明。
にも関わらずこの認識だったという事になるので、ザムザ没後の「お前の人生は実に有意義なものだった」発言も合わさってさらに読者から見たザボエラの株が下がったのは言うまでもないだろう。


フッ・・そうか・・負ける要素は追記・修正を“ゴミ”とあなどった・・オレの心の中にあったのか・・。

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最終更新:2023年10月19日 19:30