捨て艦戦法(艦これ)

登録日:2014/09/07 Sun 10:36:49
更新日:2024/04/17 Wed 11:51:25
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『捨て艦戦法』とは、ブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』におけるプレイスタイルの一つである。



概要

やり方は、艦隊を高レベルな主力の艦娘1~2人と、残りを轟沈しても構わない、適当な低レベルの艦娘を選んで編成する、これだけ。実にシンプルである。

元々3-2、キスカ島撤退作戦駆逐艦6隻の編成でしかボス戦にのぞめなかった*1ため、3-2は2-4以後の難所の一つとして知られていた。
また、かばうシステムによって攻略難度がさらにあがったと誤認した提督も少なからず存在した。
現在では「かばう」は「ターゲットが旗艦に向かった際、陣形によって決まった確率でターゲットを再抽選する」というシステムであることが分かっている。その後の命中判定は通常通り行われるため「かばう→ミス」というのは普通に発生しうるのだが、「かばう」という名称から「旗艦に命中する場合に別の艦にダメージが移る」と言うふうに推測されていた時期があったのである。(ちょっとやってれば「かばう→ミス」があることには気づくのだが、初期にはそもそも「かばう」のエフェクトも分かりにくかった)
また、上述の理由から「かばう」システムはあくまで「旗艦にターゲットが向く確率を下げるもの」であり、駆逐艦6隻で編成されるキス島沖作戦などでは別に大破率に大した差が出るわけでもない。*2
しかしながら、「難易度の上昇との誤認」および「かばうシステムの利用」という二つの点が合わさって、主力である高レベルの旗艦及び主力の駆逐艦娘以外を低レベルの使い捨て艦娘で構成し、旗艦をかばわせる事で被害を減らそうという戦術ができた。

とりあえず最奥まで突っ込むのであれば有効な戦術であったので、旗艦以外全て使い捨て艦娘にする極端なプレイヤーや、レベルの低い余りやダブった艦娘を組み込んだプレイヤーなどが3-2クリア報告をあげた。
3-2以外にも、特定の海域でのルート固定のために余りや未育成の艦娘を使い被害担当艦にするプレイヤーもおり、ブラック鎮守府の代表例としてあげられる。*3
特に、13年11月のイベントでは第4マップで資材消費を抑えつつゲージを削る方法として注目された。
そのイベントは決戦!鉄底海峡を抜けて!(艦隊これくしょん)
皮肉にも、と言うべきか、アイアンボトムサウンドの由来に相応しい様相を呈していた。

イベント報酬が「武蔵」という破格の高性能艦であったため、
「この機を逃せば二度と手に入らないかもしれない」という焦りもあって*4、今まで捨て艦を否定的に見ていた提督でさえ、この戦法を採るようになった。
しかし、その反動は凄まじく「勝ったはずなのに違う涙が出てきた」、「捨て艦にした艦娘が夢枕に立った」などという報告もあり、多くの提督の心に深い傷跡を残したのである。
史実の帝国海軍は、追い詰められた末に特攻をはじめとする非人道的作戦に手を染めるに至ったわけだが、 あろうことかそれをデフォルメ化したゲームの世界でも同じ道をたどることになったわけである

他にも、燃料弾薬満載でドロップするダブり艦を使い、
轟沈した場合その時点の搭載資源は返還されるというシステムと
序盤から強烈な攻撃が飛んでくる5-5という環境を悪用した5-5海上護衛という資源回収法が存在している。

捨て艦戦法の欠点

とはいえ、この戦法もいい事ばかりではない。欠点もちゃんと存在する。

まず一つ目は、「戦闘での勝敗判定が厳しくなる」ことである。
艦これは戦闘が終了すると、どれだけダメージを与えたか、いくつ敵艦を沈めたか、また旗艦を沈めたかどうか、
などによって勝敗とそのランクが判定される。
ランクはE(敗北E)からS(勝利S、または完全勝利S)まであり、
B(戦術的勝利B)以上のランクを取れば勝利となる。
例として、敵を全滅させるとSランク勝利となり、
もらえる経験値にボーナスが入り、ドロップする艦娘もレアなものが出やすいといいことづくめである。
しかし、こちらに轟沈した艦娘が居ると、敵を全滅させてもSランクを取ることができない。
さらに、轟沈した艦娘が3人以上居ると、敵を全滅させても敗北扱いになってしまう(特に自分の艦隊に轟沈した艦が多数いた場合には、敗北Eとなることがある)。
ただし、イベントなど一部のマップで「少しでも敵のゲージを削りたい」という時は使えるかも知れない。
もっとも、後述の理由から最近は有用性は低くなっている。

もう一つは、2014春イベント「索敵機、発艦始め!」から実装された「索敵値が必要なマップでは使用が難しい」こと。
一部のマップでは、ボスマスまで進むために、一定以上の索敵値が必要な場合がある(2-5などがその一つとされる)。
索敵値が足りないと、絶対にボスまで辿りつけず、そのマップはクリアすることができない。
ゴール前でそれた場合、まず間違いなくお仕置き部屋行きになるため、むしろ無駄に被害ばかりが増す結果になる。
その為捨て艦でも索敵値を稼ごうとすると軽巡以上の艦に入手しやすい零式水上偵察機を積むことになるが、そこまでしてもルート分岐以前に沈めばおじゃんであるし、そもそも軽巡、零式水偵は共に入手性はいいとは言え、「捨て艦」と称されるペースでガンガン使い捨てていけるほどではない。
こうしたマップでは、捨て艦戦法は諦めざるを得ないだろう。というか、運営が13秋以降実装した高難度マップのほとんどで暫くの間索敵による判定を入れているのはこれの防止も念頭にあるのではなかろうか、といわれている。
捨て艦がほぼ攻略用途で無力化した後は編成による縛りが増えており、イベントでもカッツカツなくらいに索敵を求めるものはそう多くない。14夏の教訓でもあろうが。
その後2021年からは「索敵値どころか電探の数によるルート分岐」「要求索敵値の再上昇により補助装備を入れにくくしてプレイヤーに苦戦を予期させる」等、再び索敵値水準は上昇する傾向にある。

最後に、そもそも根本的に艦隊の火力が低くなるということである。
根本的に捨て艦は「被害担当艦を用意し、そこに被害が集中することを期待する」戦術なのだが、逆説的に捨て艦とされる艦は「戦力的には全くアテにできない」艦である。
一例として白雪を引き合いに出すが、改にして近代化改修を終えれば火力49/雷撃79となる。加えて装備欄も3スロット。駆逐艦ぐらいなら悠々沈められるし、雷撃も軽巡クラスなら一撃轟沈が狙えるライン。夜戦なら戦艦も食えるだろう。また、轟沈を前提としない以上有力な対空火器を積むなどして艦隊補助の役割も持たせられる。
それに対し、初期状態の白雪は火力10/雷装27。これは、火力+2の砲を2つ積んでもT字有利でなければ駆逐イ級すら沈められないラインである。敵の戦力がある程度以上の海域では、基本的に攻撃面では「いないもの」扱いにならざるを得ない。
これではせいぜい夜戦までもつれ込み、なお捨て艦が小破以下であった場合で(その場合そもそも捨て艦を使わなければもっと楽に勝てた可能性が高いが)ようやく敵駆逐艦の撃ち漏らしを何とか出来ることがあるくらいである。
なお、この戦法が最も有効であったイベントMapである2013秋イベE-4ではゲージの回復を止め、かつ出来るだけ飛行場に多くのダメージを与える事が最優先事項であり、捨て駆逐~戦艦が主砲を二つ積んで(連撃)さえいれば、
「道中及びボス戦で捨て艦が轟沈しても実質的な損害は0なので、ボス戦への到達率が大幅に上昇する」
「どんな破損状況でも、飛行場に攻撃を実施さえすれば最低保証の割合ダメージで一定の戦果を挙げられる」
と言う理想的な艦隊の盾兼ダメージソースとして捨て艦が働いたためこの欠点は特に問題にはならず、
三式弾装備金剛型2+捨て艦4でゲージを削り切りボス撃破用構成でE-4を突破し、E-5攻略に移行する提督も複数存在した。

しかし現状は、特に高難易度のマップとなるほど艦隊編成の6枠/連合艦隊の12枠を余さず使い切ることが求められる。
システムに対する理解が進んだことおよびさまざまな機能の追加により、まともに攻略しようと思う場合「捨て艦を入れるぐらいならそこにきちんと戦力となる艦を組み込んだ方がいい」ことが殆どである。
このため、現状でなおこうしたことが行われるケースは「1-1キラ付けの際の随伴艦*5や支援艦隊の駆逐艦枠など、『とりあえず頭数としていればいい』場面での使用」「そうして使った艦を轟沈が出た場合、その艦の搭載量の資源が戻ってくることを利用して資源稼ぎ」という手法が殆どである。

上で捨て艦を使う例とされた3-2にしてもリアルマネーと言うコストを考えないならダメコンを使った方が当然突破率は高くなる。
補強増設というダメコンなどの補助兵装専用スロット、および改二駆逐艦が多数存在する現状ではなおのことそうである。


捨て艦戦法についての是非

さて、ここまで捨て艦戦法について説明してきたが、これの存在自体がまたかなり賛否が分かれる。
「捨て艦」の名の通り、キャラクターを完全に捨て駒扱いしている事になる故、嫌悪する人もいる。
ましてこのゲームの場合、無謀な作戦の果てに人知れず沈んだり、なぶり殺しという表現すら生温い最期を遂げた(リアル艦船の)歴史を持っている艦娘も少なくない。
かなりデリケートな話題であるので、不特定多数のプレイヤーが集まるようなコミュニティでは無闇に捨て艦の話を出さないよう気を付けよう。

しかし、艦これはあくまでゲームであり、戦法として割り切ってしまえばそれまでであることもまた事実。
ポケモン』の捨て交代やだいばくはつ
『ドラゴンクエスト』のメガンテメガザル
FF2』のパーティアタックによるHP・MP上げ、
ファミコンウォーズ』の歩兵の群れによる兵器の護衛、
……など、キャラクターが犠牲となる(仲間を捨て駒にする)ことを前提とする戦術を取れるゲームは存在し、それらと同じ感覚でやるプレイヤーも多い。
と言うより、捨て艦戦法を強く否定しながら、これらのコンシューマゲームでは何の罪悪感もなく類似の効果を行うプレイヤーも少なくない。

上記のゲームは『戦闘中に犠牲になっても戦闘終了後には復活する』または『予算さえあれば損耗したユニットを容易に補充できる』という前提ありきだが、
ロマンシング サ・ガ2の「ルドン送り」などはデータ的に完全にロストする。
UNDERTALEのGルートやARMORED CORE for Answer虐殺ルート(ACfA)など、味方ではないが意図的な虐殺を推奨するルートもある。
どちらにしろ感情論といえばそれまでなので、その辺りは各プレイヤーの心持ち次第だろう。

なお、感情的な面を抜きにしても、前述のような欠点があるため、マップ次第では採用する意味がない場合もある。

捨て艦戦法を反対する人も肯定する人も、お互いに煽ったりなどせず、あまり熱くなりすぎない様に。


余談

捨て艦戦法が広く行われ、その是非を巡って議論が起きていた2013年秋イベの最中、
ある提督が2ch過去ログの「捨て艦」を「アナルバイブ」に置き換えた画像をうpした。
「アナルバイブ戦法でゲージを確実に減らしましょう」
「確かにこれはマトモにやってたんじゃクリアできないな…アナルバイブやるしかねぇわこれ」
「アナルバイブ何回しようが俺の勝手だろ」
といったカオスな文章に秋E-4やE-5で焦燥していた多くの提督が笑いの渦潮に呑まれ、一時の平穏をもたらせた
その為、現在でも艦これ界隈では「アナルバイブ」を「捨て艦」の意味で使う提督も多い。
捨て艦野郎とかブラック鎮守府とか罵られても平気な提督も、さすがにアナルバイブ提督と呼ばれることには抵抗を示す者が多いとか。
なお、下ネタではあるので、使いどころには注意したい。
























司令官は変わってしまったわ。

昔、わたしたちが何度も3-2の進撃を失敗していたとき、
司令官はいつも笑顔で慰めてくれた。
家具コインは箪笥が買えるって言ってくれて、
誰かが大破したときはすぐに撤退するよう言ってくれてたのに。

今ではもう、司令官はレベルの低い駆逐艦のロックを解除しだしてる。
レアじゃないおまえらの命でゲージの回復が止められるなら安い安い、って。

金剛さんと比叡さんは、死ぬと分かっている子たちを連れてE-4に行く。
明るかったあの人たちはすっかり塞ぎこんでしまった。

「ゲージの回復」っていうのが何のことか、わたしにはわからない。
でも、それが司令官を苦しめてるっていうのは、わかる。

大丈夫、あんな飛行場、この雷様に任せておきなさいって。
司令官は何も心配しなくていいの。
あのゲージの回復は、わたしが止めてくるからね。

それじゃあ、いかずち、司令官のために出撃しちゃうね。


追記、修正は轟沈する前にお願いします。

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最終更新:2024年04月17日 11:51

*1 現在では旗艦は軽巡でもよい、となっている。

*2 厳密な確率はケースバイケースとなって正確な算出は不可能だが、小破以上の艦はかばわないことからダメージの分散につながり、大破が出にくいという見方もある。

*3 なお、「未育成だが戦力として十分計算できる」(2017夏イベントE-5へのリシュリュー投入が有名な例。)、「ルート固定で突っ込んで、周回中にレベルが上がっていくことも期待する」場合はあんまりブラックとは言われない。あくまで使い捨てること前提としている場合に言われる。

*4 現在でこそ大型建造で、根気があれば誰でも手に入れられる武蔵だが、艦これには未だに初期のランキングやイベント報酬でしか手に入らなかったアイテムもある。震電改や巡洋艦装備可能の53cm艦首魚雷なんかが好例である。

*5 轟沈されてしまうと勝敗判定の仕様によりキラ付けの効率が悪くなるので普通は轟沈させず、生還させた後に解体する(通称バイト艦)のが一般的