お好み焼き

登録日:2012/04/30 Mon 21:17:25
更新日:2024/01/07 Sun 19:48:07
所要時間:約 7 分で読めます




お好み焼きとは、小麦粉を水で溶き、具材を加えて鉄板で薄く焼いた食べ物である。


概要

関西、中部、中国が特に盛んだが、原材料はどこでも手に入るので日本全国で食べられる料理である。
盛んな地域ではホットプレートを所有していて自前で作る場合も多く、庶民的な食べ物でもある。
フライパンでも調理できるが、面積と構造の関係でひっくり返すのがやや難しい。

起源を辿ると、今から2500年前の大陸で食べられていた、水で溶いた小麦粉を平らに焼いた「煎餅(せんぴん) 」と言う料理に行き着く。
これが遣唐使により日本に伝えられ、千利休の手により「ふの焼き」と呼ばれる菓子となった。
この時点で、「水で溶いた小麦粉を平たく焼く」と言う概念は日本に生まれた。
これが明治に入り、味噌を巻いた「助惣焼」と言う菓子になり、戦後GHQから配給されたメリケン粉を使い、ウスターソースを塗った「一銭洋食」となった。

一銭洋食は最初、駄菓子屋で売られる子供のお菓子と認識されていた(カルメラ焼きみたいなものか)が、
支給品であるメリケン粉を有効活用すべくキャベツを入れるなど工夫されていき、
やがてイカや豚肉など、「お好みの」具材を入れて焼く、「お好み焼き」となっていったのだった。

ちなみに、大人がなかなか一銭洋食を食べようとしなかったのは、やはり日本人は「米」を至上とし、小麦を下等なものと見なしていたから。
が、やはり空腹には敵わなかったのだ。

現在では、家庭・外食問わず様々な場面で食べることが出来る。
家庭用に専用のお好み焼き粉などが各メーカーから発売されており、具材さえ揃えれば料理素人でも調理は簡単*1
祭りの縁日や屋台などでもよく見かけるだろう。ボリュームの割に安価に手早く作れる上、濃いソース味がイベントでの食べ歩きや屋台料理に適しているのである。
お好み焼き専門の外食店なども、日本各地に生地を広げ……もとい根を下ろしている。


大阪風お好み焼き


全国に知られているだろう形はこれ。
野菜も卵も全て生地にまとめ、具材を乗せる形で焼き上げる。
近畿では昔から家庭料理と言うよりも、お店で、もしくはお店から持ち帰って家で食べるものと認識されているようである。
ちなみに、昔はサランラップが無かったので、新聞紙で巻いて持ち帰っており、ソースでベタベタになった新聞紙が風物詩だったとか。
「おかず」という認識でご飯と一緒に食べる人も多い。栄養云々は別にして、味の濃いお好み焼きとご飯の組み合わせは悪くない。
大阪では格子状に切るのが(食べやすさのためか)一般的とされ、放射状に(均等に)切り分けるのは「ピザの切り方」なんだとか。*2


広島風お好み焼き


朝ドラ『てっぱん』で有名。
クレープのように薄く焼いた生地に焼いた野菜、目玉焼き、具材を重ねるようにして焼き上げる多層構造が特徴。
戦後の復興過程で一銭洋食から発展した。
生地を薄焼きにする技術、目玉焼きをきれいに焼き上げる技術、全ての生地、具材を一気にひっくり返す技術など、大阪風よりも高い技術を要求される。
ソバを入れるのがメジャーだが、大抵の店でその有無を選べる。うどんを入れる場合もある。
また、広島県民や広島出身者にとってはこの広島風こそが真のお好み焼きで、
広島風お好み焼き』ならまだ呼び分け止まりになりやすいものの、『広島焼き』などと言ってしまった日には機嫌を損ねるだけなら僥倖で、人によっては怒られる可能性すらあるので観光に行く際などは気を付けよう。
ちなみに調理器具と最低限の材料は関西風とほぼ共通(違いはお玉が欲しいぐらい。あとどちらでも市販されているお好み焼粉を用いると楽)で調理方法だけが違うものなので、普通に家庭でも作られている。もちろん広島にも関西風のお好み焼きが食べれる店は普通にあるし家で関西風を焼く人もいる。


構成要素


生地

お好み焼きのベース。この段階でいろいろなものを混ぜ込めてしまうのがお好み焼きの大きな特徴。

◆小麦粉
さっくりとした生地が望ましいので薄力粉が使われる。

◆卵
大阪風では生のまま生地に入れられるが、広島風では蓋とするために一旦目玉焼きにしなければならない。

◆山芋
お好み焼きの生地をふんわりさせるために使用されることがある。
長いもやジャガイモ、とろろ昆布を入れる地域もある模様。

◆キャベツ
元祖はネギだったが、量をかさましし、ボリュームを出すためにキャベツが入れられた。

◆天カス
一銭洋食だった頃からの名残。香ばしさとコクが加わる。

チーズ
だいたいなんにでも合うが、やはりお好み焼きにも相性抜群。
トッピングとして焼いている途中や仕上げにかけることもできるが、固形のチーズを生地に混ぜ込むことが多い。


もっちりとした触感が出て、ボリューム感が増す。

トッピング

大抵のお好み焼きでは、生地の上にたっぷりとトッピングを乗せ、思う存分に濃い味を楽しむ。

◆ソース
かつてはサラサラのウスターソースが使われていたが、とんかつソースの登場からはとんかつソースが使われている。
広島風は「おたふくソース」や「カープソース」などが使われる。

マヨネーズ
偶然合うことが発見されてから使われるようになったが、こだわりの店では使っていないところも。
別口で注文する必要がある店も存在する。

◆かつおぶし
平べったい花がつおならアツアツのお好み焼きの上でユラユラ踊る様は食欲をそそるし、削り粉なら生地の食感はそのままに味わい深くなる。削り粉は生地の段階で入れる場合もある。

◆青のり
磯の良い香り付け。歯に青のりがついていると笑いあうのはお好み焼きの通過儀礼。

◆紅ショウガ
出来上がったお好み焼きのうえにぱっと散らすと、彩り良し、味にも変化をつけられる。
生地に混ぜ込む場合もある。

キムチ
チヂミという韓国のお好み焼きではよく用いられているトッピングで、最近はその文化がお好み焼きに流用されることも。

◆金粉
お好み焼き屋の店主が応援している球団が優勝して、テンションが上がった時に使うことも。
金は無味だから味には良くも悪くも影響しないが、豪華になるのは間違いない。


具材

生地の材料や味付けトッピング以外にも、いろいろな具材を様々なアプローチでアクセントにする。焼く前に生地に混ぜたり、生地を敷く下で予め焼いておくなど混ぜ方も多種多様。

◆豚肉
ぶたたまと言えば関西でも有名。
主に用いられるのはバラ肉。カリッとして、油が生地にしみ込んで美味しくなる。

◆イカ・エビ
イカたま、エビたまと呼ばれる海鮮勢。
イカを入れると切り分けづらくなるが、歯ごたえと旨味が絶品。
エビはサクラエビを散らすタイプとクルマエビをどーんと置くタイプがある。
海に近い地域では、ホタテやアサリといった貝類を入れる文化もある。鉄板焼きで好まれる魚介は総じて相性が良いと思われる。

◆すじこん(ぼっかけ)
柔らかくなるまで下茹でした牛スジ肉とこんにゃくを一口大に切り、一緒にしょうゆなどで甘辛く煮た料理。
関西圏、特に兵庫県の神戸市近辺等では、これをお好み焼きの生地に混ぜることもある。
オーソドックスなソースももちろん合うが、すじこんに合わせて醤油やポン酢等をつけると、一味違う和風お好み焼きが楽しめる。
ここから派生したのか、牛スジ肉を具にしたお好み焼きも広まっている模様。

◆フライめん
ベビースターラーメンのような砕けたフライめんを混ぜ込むと、従来とは異なる新たな触感と風味が生まれる。
もともとはもんじゃ焼きでローカルに行う文化だったようだが、最近ではチェーン店などもこれを取り入れ始めている模様。
ポテトチップスや他のスナック菓子を入れても様々な味を楽しめるんだとか。

◆野菜
玉ねぎや刻んだニンジン、もやし、コーンなどを混ぜ込む。どちらかというと栄養を考慮した家庭でのお好み焼きでよく混ぜられる具材。
かき揚げと同様に余った野菜の有効活用にされる場合もある。


半セルフサービス店


各テーブルに鉄板とお好み焼き用の道具が置かれ、客が自分達で焼くスタイル。
店にとっては人件費の節約にもなるが、客にとっても楽しいスタイルである。


お好み焼きの仲間たち

お好み焼きのように小麦粉をベースに鉄板で焼いた料理は一般的に「粉もの」(関西圏では粉もん)と総称されている。

◆大阪焼き
よく誤解されるが、大阪焼きは大阪風お好み焼きを指す言葉ではないのだ!!なんて目くじらをたてるほど変わりはないが
生地を広げるお好み焼きと違い、今川焼き用の金型に入れて焼くものを大阪焼きと呼ぶ。それ以外は大阪風お好み焼きと大きな違いはなく、つまりは形が整ったお好み焼きという事である。
食べ歩きなどではこちらのほうが食べやすいので縁日や屋台でよく出店されている。
なお、大阪では「リング焼き」と呼ばれている。東京のアメヤ横丁では「アメ横焼き」で通じるんだとか。

◆どんどん焼き
箸や串に巻き付けたお好み焼き、というとイメージしやすいだろうか。
といっても、形状・材料など様々な種類が存在しているので、偏に「串に刺さっただけのお好み焼きです」とは言えない料理であり、そもそも「これがどんどん焼きのレシピです」と提示すること自体が難しい。
地域によってはクレープ状だったり、普通に丸く焼いてあったり、たい焼きの型で作られたり
味付けもお馴染みソース風や醤油風味、砂糖を用いた甘菓子風など、お好み焼きからかけ離れていることもある。同名の駄菓子もあるしね!
兎も角、これも大阪焼き同様に屋台や縁日向けに粉ものから派生した料理。「どんどん」というのは屋台の太鼓の音を指している。

◆もんじゃ焼き
こちらは関西ではなく東京発祥の粉もの料理。特に中央区の月島周辺には何軒ものもんじゃ屋が立ち並んでいることで有名。
お好み焼きと似ているが、固まらないほど緩い生地にあらかじめ下味がついており、焼きながら半固形状のものを少しずつ食べる。
明確な違いはあれど、やはり似たようなものではあるので、お好み焼き専門のチェーン店ではもんじゃ焼きも一緒に扱っていることが多い。
香りや出来上がったものは兎も角調理過程はお世辞にも食欲を誘う見た目とは言い難い
名前の由来は文字を描くように焼いた「文字焼き」から来ているという説が有力。


たこ焼き
タコが入った団子状でお馴染みなB級グルメ仲間。詳細はリンク先を参照のこと。
生地はお好み焼きと同じようなものだが、実は用いられる粉の配合が微妙に異なっている。
お好み焼きのほうがふっくらモチモチしやすい配合、タコ焼きは粘りがあってまとまりやすく、表面がパリッとしやすくなる配合であるのが一般的(メーカーによって異なる)。
大差はないのでそれぞれの専用粉で代用可能。
この手の類似料理というと派閥が生まれたりすることも珍しくないが、お好み焼きとはあまり競合している様子はない。
(お好み焼きはそれだけで大阪風と広島風でバチバチしてるからね!)
なお、似た料理として主に兵庫県明石市近辺で食べられる明石焼もある。こちらもたこ焼きの項目に詳細があるが、たこ焼きを開発した際に参考にされた料理である。

焼きそば
中華麺を鉄板で香ばしく焼き上げるB級グルメ仲間。詳細はリンク先参照。
大手メーカーが作るソースを基準にすると、お好み焼きは中濃ソース寄り、ソース焼きそばはウスターソース寄りな配合になっている傾向にある。
大阪風お好み焼きに中華麺かうどんを混ぜて焼き上げたものは モダン焼き という派生料理になる。
ちなみに、ここで言う「モダン」とは「近代的(modern)」ではなく「くさ」の略。

◆チヂミ(지짐이)
韓国のお好み焼き。具材はニラやネギなど。緩い生地で薄く焼き上げ、ソースではなく醤油とごま油ベースのタレにつけるなど文化の違いがある。
実は韓国ではチヂミは鉄板で焼いた料理の総称で、本場では「プチムゲ(부침개)」と言わないと通じないこともある。(最近は、観光地ならチヂミでもたいてい通じるらしいが)

◆バインセオ(BANH XEO)
ベトナム料理の一品で、南部発祥の粉もの料理。
米粉とココナッツミルクの生地にターメリックでオムレツみたいな食欲をそそる色をつけ、お好みの具材を乗せて畳んで召し上がる。ソースは魚醤ベースが一般的。
薄皮に焼き上げて包むという工程は、お好み焼きというよりクレープに近いが、豚肉や海老など主菜を包んで食べる。
他にも、パクチーやもやしなどの新鮮な野菜もたくさん入れて食べるので、ボリュームの割にヘルシーな料理。

◆モンピャータレッ
ミャンマーのお好み焼き。安くて手軽な屋台フード。
米粉と卵を使った優しい味わいの生地に、パクチー、ひき肉、豆、タマネギ、トマトなどの具材をのせて焼く。
細切りの野菜を包むクレープ風のモンピャータレッもある。

◆ブランボラーク(BRANBORAK)
ジャガイモ生地のチェコ風お好み焼き。
ジャガイモ・小麦粉・卵に牛乳、あとは味付け調味料を捏ねて焼くだけというシンプルな家庭料理で、チェコ料理店などで見かけることはあまりないだろう。
基本的にソースはつけないが、塩気とニンニクを利かせたものはビールのお供にピッタリだとか。

◆スパニッシュオムレツ(tortilla(トルティージャ)
スペイン料理の一品で、スペイン風具材たっぷりオムレツといったところ。
生地に溶き卵を使用し、ホウレンソウ、タマネギ、ジャガイモ、ベーコン等が具材。
小麦粉がメインで使われないが、完成品の見た目や調理方法はお好み焼きとほぼ同じである。


お好み焼きに縁のあるキャラ・作品


日野あかねとその家族(スマイルプリキュア!)
家がお好み焼き屋。
生粋の大阪人であるが作中でお好み焼きを「ピザ切り」した事が一部で物議を醸す事態になった。



◆久遠寺右京(らんま1/2)
フライ返しは投げるもの。

ベジータ(ドラゴンボール)
こちらを参照。

◆王様の耳はオコノミミ!
お好み焼きを題材にした漫画、試食審査シーンがカオス。
ぶっちゃけお好み焼き版ジャぱん

たまゆら
お好み焼き屋「ほり川」とのタイアップを行い、作中に何度も登場した。
「必ず君を、お好みにする。それが、お好み焼き!」

◆北沢瑞穂
『暖かな冬の日に』に登場するヒロインでお好み焼きに目が無い。主人公からは切ったら血の代わりにお好み焼きソースが出てくるんじゃないかと思われるほど。

BOY-ボーイ-
主人公、日々野晴矢の好物の1つ。

◆てっぱん
2010年秋に放送された朝ドラ
広島県尾道市で育ったヒロインが大阪で広島風お好み焼き店「おのみっちゃん」を開く物語。

ヒシミラクル
元となった競走馬が幾度となく奇跡を起こしたのに対し、あくまで自分はふつ~を主張するゆるふわウマ娘。
幼い頃から大好きで、家族でわいわい食べるのが特に気に入っている様子。
実はこれには元ネタがあり、史実での勝ち鞍が全て関西圏なこと、そしてJRAでのCMでクローズアップされた時に「全部のせのお好み焼きの具に例えられるほどの豪華メンバーのレースを勝利したのがヒシミラクル」といったところから来ている。

「この無敵の俺様に追記、修正してほしいだと!?

ならお好み焼きおごれや!」

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最終更新:2024年01月07日 19:48

*1 後述する大阪風のもの。

*2 非常に出やすく分かりやすいツッコミのためか、他のツッコミを強請られると『パックマンか』ぐらいしか出てこないらしい。