ギガノトサウルス

.登録日: 2014/08/28 Thu 21:48:17
更新日:2024/02/05 Mon 20:26:00
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『ギガノトサウルス』とは中生代白亜紀後期の南アメリカに生息していた大型肉食恐竜の一種。
ジュラ紀を支配した「アロサウルス」の仲間から進化したカルカロドントサウルス科の恐竜であり、指は3本。

あのティラノサウルスに匹敵、もしくは凌駕する巨体を誇っていたとされ、
「史上最大の肉食恐竜」という話題になると必ずと言ってもいいほど名前が出てくる常連さん。

名前の由来はギガ【大きい】とノトス【南風】をくっつけたもの。
【巨大な南のトカゲ】といったニュアンスであろうか。そのまんまじゃん

最早言わずと知れた恐竜界のスーパー帝王、ティラノサウルスに遅れることおよそ90年、
発掘されたのは1993年とわりと最近でありながら、現在では恐竜を少しかじっている程度の人でも意外と名前が出てくるほどメジャーな存在になっている。
これはマスコミや記者が盛んに「ティラノを凌ぐ巨大肉食恐竜」として、その巨大さを盛んに宣伝していたことが大きく影響したとも。

気になるその全長はなんと 14.3メートル。
最大のティラノサウルスと名高い「スー」でさえ12.8メートルであることを考えると物凄い数値である。
また頭骨もティラノサウルスの1.5メートルに対し 1.8メートル と明らかに大きい。
骨の作りも非常に頑丈であり、その体重は 8~9トン という見積もりが出ている。

1998年には全身の組み立て骨格が完成し、いくつかの博物館に納入され始めた。
サイズは若干縮んだものの、 13メートルオーバー とやっぱり巨体なことに変わりはなく、その威容は訪れた来場客たちを圧倒した。

ティラノをも上回る史上最大の肉食恐竜、それがギガノトサウルスである。



追記・修正お願いします。













  *   *
 *   + うそではないです
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *




このギガノトサウルス、デカいことにはデカいのだが、
2000年初頭から 全長を水増ししたのではないか と言う疑惑が盛んになっていた。
その根拠となったのが 頭骨。

少し話がずれるが、肉食恐竜の頭骨にはとりわけよく目立つ4つの穴が空いている。
(ググればすぐに出てくるので一度見てみよう。アロサウルス辺りがとても分かりやすい。)

これを鼻先から後頭部へ順に並べると、

外鼻孔(鼻の穴)

前眼窩窓(一番大きい穴。恐竜の化石を初めて見た時、恐らく誰もがここを眼の穴だと思うだろう)

眼窩(ホントの眼の穴)

外側頭窓(一番後ろの部分に空いている細長くいびつな形をした穴。 今回の水増し疑惑の中核 )

となる。

ギガノトサウルスの件で問題になったのはこの外側頭窓。
一般的に肉食恐竜の場合、この部分は 細長くいびつな作り になっていて、殆ど目立たないことが多いのだが、
ギガノトサウルスはこの穴が 明らかに大きく・広く 復元されていた。
この「大きくポッカリ空いた外側頭窓」が当てはまるのはケラトサウルスの仲間のみであり、
全く別類の恐竜であるギガノトサウルスがこのような復元になっているのはおかしいという指摘が数多く出たのだ。

かくして1998年7月~10月に東京・国立科学博物館で、「ゴンドワナの恐竜」という特別展が開催され、
その関連行事の一つとして、研究者たちによるシンポジウムが開かれた。
ここには南半球の恐竜学の権威がずらりと集まり、非常にレベルの高い質疑応答が交わされる豪華なものであったという。
そこで「ギガノトサウルスの頭骨のつくりは不自然ではないか」という質問も出たがその返答は…




…やはりであった。

最初に述べておくと恐竜の化石は全身まるまる見つかることは まず無い。
死んだ時の環境や埋まっている地層の影響を受けてバラバラになってしまったり、全身の数%にも満たない微細な骨しか見つからないパターンも少なくないからである。

ギガノトサウルスもその例に漏れず、最初に見つかった化石は全身の半分にも満たなかった。
(後に発掘が進み、現在では確認されている化石をかき集めれば 全身の70% が揃うという。)
問題となった外側頭窓の周囲の骨も、発見された時点で粉々に砕けてしまっており、
上述の ケラトサウルスの仲間である(つまり外側頭窓が大きく広い)カルノタウルスやアベリサウルスを参考にしたという。

復元に当たって全く別種の恐竜の化石を使うのは色々と問題なのだが、最大の問題はこの復元によって 全長が大きくなってしまったこと。
動物の頭がい骨は、「カタマリに目や鼻の穴が空いてる」と言うよりも、
「パーツを組み合わせて行ったら穴あきのカタマリが出来る」という仕組みであるため、穴が大きければその分パーツも大きくせざるを得ないのだ。
つまり「頭骨の穴を広げた」ということはそれだけ「頭を長大にした」ということであり、全長が伸びるのは至極当然。
更に研究者によればギガノトサウルスは頭骨だけでなく、脊椎や尻尾も少々延ばされているという疑惑も伝えられている。
これが本当だとすれば、13メートルオーバーを売りにしていたギガノトサウルスは、少なくとも30センチは縮んで12メートル台ということになる。

全長の水増し疑惑が起こったのは事実だが、本来恐竜の研究において、その全長を割り出すのは 非常に難しい作業である。
化石の大部分が見つかっていないから復元できない、既に見つかっている恐竜の年齢や個体の違いかもしれない、
などの様々な要因が絡んで、まったく別の恐竜の骨を使って補完することも決して珍しいことではないのだ。
(あのティラノサウルスでさえ、「スー」が発見されるまで前脚の化石が不完全だったため、アルバートサウルスのものを 流用していた。 )

特に、世界最大と言うタイトルが絡んでくると、
その争奪戦はスーパーサウルスやアンフィコエリアスに代表される大型カミナリ竜より、
知名度という点ではティラノサウルスに代表される大型肉食恐竜の方が激しく、より生々しいとも言える。
どんなに冷静な研究者でも、自分の研究している恐竜が史上最大かもしれないというタイトルを掲げていたら、
ちょっぴりでも手心を加えようとしてしまう気持ちは分からなくもない。

ただしギガノトサウルスの名誉の為にも言っておくが、彼が肉食恐竜の中でも非常に稀な巨体を持つ大型肉食恐竜であるという点は一切偽りのない事実である。
スーパースターであるティラノサウルス越えを無理にしようとするから色々ケチがついてしまうだけであって、彼自身も立派なロマン溢れる太古の覇者であるという事を忘れちゃいけない。
もう一度じっくり彼自身の事を見つめられるのなら、ギガノトサウルス独自の魅力もしっかり見えてくるだろう。


よく 「ティラノサウルスとギガノトサウルスが戦ったらどっちが強いんだろ(・・?」 と疑問に思う人がいる。(名前覚えたての小学生とか)
しかしこの2体、生息していた場所どころか 時代が全く違うため、 そもそも比べようがない。
ギガノトサウルスが生息していたのは白亜紀後期でも初頭の方、 約9,800万年-から9,600万年前である。
白亜紀の最後の最後(約6,850万-6,550万年前)に登場したティラノサウルスとは周囲の環境や獲物となる草食恐竜の進化方向が大きく違っていたのは語るまでもないので、
比較するだけ野暮と言うものであろう。そう言われると比べてみたくなるのが男の性というやつであるが。


最初に述べたとおり頭骨は非常に大きく、ゴツイ。
しかし歯はティラノサウルスのような太く頑丈な作りにはなっておらず、ナイフや剃刀のように鋭利で薄かった。

「強靭な顎の力と極太の牙に任せて骨ごと獲物の肉体を噛み砕くティラノサウルス」 と、
「巨大な口に生えた無数の刃物で獲物を切り裂き、致命傷を負わせるギガノトサウルス」 と言ったところであろうか。

アロサウルスの仲間なので前足はティラノサウルスに比べるとがっちりしている。
爪も大きく、牙と並ぶ強力な武器の一つであったと考えられている。

彼らの生きていた時代・地域はあの全長40メートル、史上最大級の恐竜・アルゼンチノサウルスも生息していた。
恐らく、というかほぼ確実にギガノトサウルスはアルゼンチノサウルスを獲物にしていたと思われる。
並外れた巨体と生命力を誇るアルゼンチノサウルスに対しては、
傷による出血や苦痛を与えることに適したギガノトサウルスのナイフのような牙が大活躍したことだろう。

ちなみに、同じ時代の南米には最大クラスの個体はほぼ同サイズでやや敏捷なつくりのマプサウルスという種も生息していた。
そのころの南米ではアルゼンチノサウルスの他にもアンデサウルスなど白亜紀型の大型竜脚類ティタノサウルス類が多種多様百花繚乱の進化を遂げていたため、
マプサウルスとは餌の面で住み分けがあったことは想像に難くない。
骨太がっちり型でタフなギガノトサウルスは、アルゼンチノサウルスなど地球史上最大級の生物を専門に狩っていたのかもしれない。

創作物での登場

「ギガノトサウルスを一気にメジャーにした作品は何か?」と問われれば、真っ先に上がるであろうアクションゲーム。
ギガノトサウルスは本作のラスボスとして登場し、前作『ディノクライシス』のボス*1ティラノサウルスを一噛みで殺すという衝撃的なデビューを飾った。
大きさはかなり誇張されており、体長は21mもある。

  • 絵本ティラノサウルスシリーズ
原作絵本5巻「ぼくにもそのあいをください」では主人公のティラノサウルス・ハートに襲いかかる2頭組の恐竜として登場。
劇場版『おまえうまそうだな』では過去にバクー(ティラノサウルス)が倒したことがある旨が語られている。

No.175&176。作中では恐竜ハンターの親玉「黒マスクの男」が使役。

  • 古代王者 恐竜キング
第1紀から炎属性、必殺わざはグーで登場。強さ1400とえらく低く設定されている。
ショルダーネームは「南米の覇者」。

恐竜たちが闊歩する島で生き抜く、オープンワールド型サバイバルゲームでも登場。
険しい山や雪山といった中盤から後半にかけて行くエリアに稀に出現する恐竜となっている。
強さはゲームに出現する恐竜の中でも最強の一角に君臨しており、野生の個体は膨大な体力と強力な噛みつき攻撃(加えて出血による継続ダメージ)でティラノサウルス数匹程度で襲い掛かっても問答無用で返り討ちに遭ってしまう程無茶苦茶強い。飛行生物で海に誘導して溺死させるか、ガトリング砲等の強力な設備や恐竜がいないと討伐は非常に難しい。基本的に山にいるとはいえ、他の生物を追いかけて山を下りてくることもあるので、その際自分の拠点の近くに現れたらもう泣くしかない。
捕まえてペットにする(テイムする)ことも可能だが、難易度は相応に高く、罠を使わないと捕獲はまず出来ず罠に使う建材も鉄やTEKでないと破壊されるし麻酔矢や弾の必要数も非常に多い等、入念な準備が必要になる。
苦労の末にテイム出来れば野生で見せた体力と火力は下げられているものの、マップ上に敵はいないと言えるレベルで強力な戦力になってくれる。ただし、ギガノトには固有の怒りゲージが存在し(心臓のアイコンになっているもの)、敵対生物からダメージを受けると攻撃力も上がるのだがこのゲージがマックスになってしまうと、暴走状態になってしまい騎乗していた際は振り落とされ、十数秒間敵味方問わず襲い続けるようになってしまう。また、スタミナゲージが低いのでステータスポイントを振ってないとちょっと噛んだり走ったりしただけで息切れしてしまうのも注意。強力なぶん、ボス戦にも連れて行きたい恐竜だが、一部を除いてボス戦には基本的に連れていけないのも悩みどころ。

  • ゾイドシリーズ
ゴジュラスギガとゼログライジスのモチーフになっている。
実際のところ体格はゴ●ラ

パチスロ版の特殊演出としてギガノトサウルス型のテラフォーマーが登場。
他のテラフォーマーの4倍近い巨体を持ち、あろうことか火を噴いて暴れる。京楽のスタッフはM.O手術を何だと思っておるのか。

  • ギガントサウルス
NHKで放送されたアニメ。
パラサウロロフスのロッキー、ブラキオサウルスのビル、トリケラトプスのタイニー、アンキロサウルスのマズの4人が主人公だが、日本語版OPの歌詞に「ホントの主役はもう一人」とあるようにギガノトサウルスことギガントが五人目の主役なのである。

《ギガントサウルス/Gigantosaurus》としてカード化。5マナ5シンボル10/10バニラという「大きいことはいいことだ」を地で行く極端すぎる能力を有する。
大きいだけのクリーチャーが役に立たないのは甲鱗様をはじめいくらでも前例があるが、さすがにこのサイズとなると馬鹿にならない。
また緑マナシンボルを大量に有しているため、それを参照する信心デッキでは意外な活躍をすることも。
また、後述のジュラシックワールドコラボでも《残忍なギガノトサウルス/Grim Giganotosaurus》として登場。こちらも10/10というヤケクソステータスだが、なんと怪物化することで20/20になると共にほかの全てのクリーチャーとアーティファクトを破壊する、文字通りの怪物である。しかもこのスペックで伝説では無いので、割とそこら辺にいる扱い。

シリーズ最終作品に満を持して登場。しかも、前日譚において遺伝子の元となった個体がレクシィの遺伝子の元になった個体を一騎打ちの末殺害していたことが分かるなど、強烈な高待遇である(時代と生息地については気にしてはならない)。
バイオシン・サンクチュアリの頂点に君臨し、主人公一行を執拗に追い回す、今回のラスボス枠。そして最終局面において、前世からの因縁のあるレクシィと、時を超えた決戦を繰り広げた。その結末は……

追記・修正はギガノトサウルスに噛まれてからお願いします。

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最終更新:2024年02月05日 20:26

*1 もちろん別個体である