生死之縛・玻璃爛宮逆サ磔

登録日:2014/08/24 (日) 20:26:00
更新日:2024/03/23 Sat 19:48:02
所要時間:約 6 分で読めます






「お前は俺のためだけに生まれ、生かされている」


 ──生死之縛・玻璃爛宮逆サ磔──





◆概要

生死之縛・玻璃爛宮逆サ磔(しょうししばく・はりらんきゅうさかさはりつけ)とは『相州戦神館學園 八命陣』の登場人物、柊聖十郎の使用する邯鄲の夢である。
三種以上の夢を複合した五常・急ノ段。

創法の形・界を軸に、後述の効果で他者から奪い取った資質を使い、逆十字に磔とされ腐り果てた木乃伊と己の病巣を外界へと展開する結界空間を形成する。その効果は協力強制に合意した術者と対象間での病み輝きの等価交換である。

協力強制の条件は聖十郎が相手の輝き(何かしらの美点を指す、健康な肉体というごく簡単なものでも当て嵌まる)を「羨ましい」と思い、その相手が聖十郎に向けて「『敵意・憎悪・憤怒・憐憫・同情・嘲笑』といった負の感情を抱きそこに疑念を覚える」事。
これらの合意によって、聖十郎の抱えている「病み」と、負の感情を抱いた側の「輝き」がそっくりそのまま入れ替わる。
具体的に説明すると、合意した相手は聖十郎に肉体の部位のような身体的なもの、記憶や感情といった精神的なものから、才能や能力といった概念的な美点までもが奪われてしまい、逆に聖十郎からは病気を押し付けられてしまう。どこが等価交換なのか

押し付けられる病気もステージ4の癌、脳腫瘍、白血症といった強烈な重病ばかりであり、健全な人間が一つでももらうと戦闘不能に近い状態となる。
ただ輝きの簒奪は病との交換なので、逆に言えば健常の体では条件が満たせない。しかし聖十郎の体質は彼が生きる限り病魔を生み続けるので、いくら他者の輝きと交換したとしてもその身体が完治することはない。
最終的には対象は自身の全てを奪い尽くされてしまい、聖十郎から病を押し付けられた結果彼の展開する異界の木乃伊と化してしまう。

戦闘面について考えた場合、一度聖十郎に悪感情を向けたが最後、肉体のパーツは一瞬で消し飛び彼の展開する木乃伊の一部となってしまい攻撃どころではなくなってしまう。
これを防ぐには何らかの手段によって肉体を再生・補填する必要がある。簒奪の順番は相手の「表面」から行われ、大抵の場合肉体⇒精神⇒概念となるため肉体を再生し続ければ簒奪されるものを肉体だけで留める事が可能…と思いきや、精神や概念部分の浸食も緩やかに行われるので結局のところこの方法では時間稼ぎにしかならない。

聖十郎はこの能力で奪ったものを自由に使用でき、簒奪した肉体のパーツの射出や戦闘技術、固有能力の行使も可能となる。作中では幽雫宗冬の破段を使用していた。
ちなみに彼は数千人単位の人間の肉体から才能まで全て奪い尽くしており全方位に長じたオールラウンドな能力資質もこの能力のおかげだったりする。

奪った固有能力は聖十郎の価値観に沿えば十分に効力を発揮できるが、逆に沿わない夢の真価を引き出すことはできない。
しかし聖十郎は創形の応用によって、奪い尽くした人間のパーツや感情を使い、その人間を元にした「人形」を作り出す事が可能。これにより自分に合わない夢でさえも戦力として扱い、そして六勢力「逆十字」は聖十郎一人でありながらいくらでも配下を増やすことができる。
この人形は基本的に聖十郎の意のままに動く手駒であり、元となった人間そのものでもある。ただし、奪い取った人間の核となる一感情だけで動いているため、本物であったとしてもその精神性や性格は元と比べてどこか歪んでおり、不自然さを抱えている。無駄な感情を削ぎ落とすことでより純度の高い能力の行使を行える利点もあるのかもしれない。



◆対抗手段

結論から言えば人間がこの異能を打破する事はまず不可能。


なぜなら聖十郎との戦闘は彼に対する一切の敵意や憎悪はおろか、興味すら持たずに戦う必要があるからである。
且つ、対面する相手が聖十郎の境遇を知っていた場合更に術中に嵌りやすくなる。真っ当な倫理観を持つ善人や聖人であれば、死に瀕している重病人である彼に同情や憐憫の念を抱いてしまうし、彼の悪行や外道ぶりに怒りや義憤を抱いても同じ事である。
かといって倫理に疎い悪人でも彼への嫌悪や嘲笑、侮蔑といった感情により条件に嵌ってしまう。

何より、聖十郎は健常者から見れば生きているのが不思議な死人同然の身体である。否応なく死を感じさせる彼に対して根源的な恐怖を抱くのは生物として当然のことといえる。聖十郎側からの「相手を羨ましがる」という条件もほぼ常時達成できるので、その凶悪な効果に反して発動条件は極めて緩い。

更にこの能力には射程の限界や人数制限、時間経過による効果消滅等は存在しない。
一度逆さ磔に囚われてしまえば己が抱く悪感情を消し去る以外で簒奪から逃れえる術は皆無。しかし、いくら頭で感情を抑え込もうともこの急段は対象の深層意識から感知するので嵌れば詰みと考えていい。
急段は条件が厳しいほど強制力も強くなる?知らんな

この異能を無効化できる者は、大まかに分けて三種。
一つは、彼の悪性を全肯定する事ができる悪魔や外道の類。彼の外道極まる人格と所業を笑いながら肯定できる存在ならば悪感情を抱く事もないからである。
次に、人の道理を解さない者。例えば知性や自我を持たずに闘うような人外・機械の類には効果が無い。

但し、最初から効かないことがわかっているならば聖十郎も別のアプローチをかけられる。事実、百鬼空亡に対して急段無しで時間稼ぎを行って見せたように、天才的な頭脳と極まった邯鄲法の資質を併せ持つ彼は六勢力最多の手札を所有するからだ。













聖十郎の急段に対する合意条件の核となるのは「聖十郎に対して何らかの悪感情を抱くこと」であり、その悪感情の定義とは 『聖十郎を自分と対等の人間と認めていないが故に生じる諸々の排斥感情』 である。
善人が彼に抱く「こんな境遇ではこうなるのも仕方がない」「助けてあげたい」といった同情や憐憫、義憤は、無意識に相手の存在を自己の下位として見下す事と同義であり、敵意や殺意に関しても「こんな鬼畜外道を同じ人間とは思えない・こんな存在を許しておけない」という倫理に端を発している。

人間が人間のまま聖十郎を打倒するには、彼の悪性を知った上で在るがままを受け入れ、心の底から愛する度量を必要とするのだ。



詠唱




干キ萎ミ病ミ枯セ(かわきしぼみやみこやせ)盈チ乾ルガ如(みちひるがごと)沈ミ臥セ(しずみこやせ)


――急段・顕象――


生死之縛(しょうししばく)玻璃爛宮逆サ磔(はりらんきゅうさかさはりつけ)



◆相州戦神館學園 万仙陣

  • 生死之縛・玻璃爛宮逆サ磔
緋衣征志郎の急段として登場。
征志郎は父親である聖十郎とほぼ同一の境遇・思想・能力の持ち主であったため、発現した夢もまた「逆サ磔」であった。
聖十郎との相違点は、異母弟の柊四四八に対して抱いた圧倒的な憎悪と嫉妬の情。
柊四四八を相手にした時、彼の逆サ磔は聖十郎のそれを上回る特効を発揮したとされる。

  • 玻璃爛宮
「万仙陣」に登場した廃神。等級は神野明影百鬼空亡と同じ第八等指定。
外見は山をも越える巨大な逆十字とそれに磔になったミイラの姿。名称はそのままこの神格が逆サ磔のを、正確には集合的無意識の中の、逆十字に対する人々の想念を基に生まれた存在であることを示している。

その能力は端的に逆さ磔の強化版。輝きと病魔の交換である。
しかし神格故に急段であった時とは異なり、協力強制を必要とせずにその権能を発揮する。
捕捉人数、射程距離も無制限のまま。無尽の病を携えあらゆる存在の輝きを奪い尽してどこまでも強大化する。
しかも聖十郎本人ではないため、かつてのように協力強制による過剰回復という攻略手段も封じられている。

ただし神野同様、核となった人間と廃神の繋がりが断ち切られた場合は現世に留まることができず崩壊する。



◆元ネタ

詠唱の元ネタは古事記の応神天皇記に登場する呪詛。
「如此竹葉萎而青萎。又如此鹽之盈乾而盈乾。又如此石之沈而沈臥(此の青い竹の葉の如く萎め。この塩の如く乾いて干からびろ。この石の如く沈み臥してしまえ)」

能力名の玻璃爛宮については、玻璃が宝(美点)、爛宮は宮刑(罪人の性器を切除する刑)を指すと思われる。
まとめると相手の宝を奪って、その傷口を病毒で腐らせてしまうといったところか。



◆余談

戦真館とは違う世界観である神座シリーズでは格の違いや物量差によって相性を力押しで突破したり、格下からの干渉を無効化する格差絶対の世界観なのだが、それらの要素を無視(互いに能力が効力を発揮する状況)した場合にこの逆サ磔を無効化できるのは『Dies Irae』ではラインハルトだけであるらしい。
死人のカインや感情で揺るがないマキナ、狂乱状態のシュライバー、女神以外塵芥思考の水銀、慈愛のマリィは嵌らないのではないか?と言う意見もあるが、彼らは聖十郎を対等の存在として尊重している訳ではないので嵌るのだろう。
またその条件なら波旬もクリティカルで嵌るらしい。

発動条件がこれほど緩く、まさにチートと言うべきこの能力であるが、よく考えてみるとこの「病み」と「輝き」の等価交換は聖十郎の病魔を生み続ける体質があってこその凶悪さであるため、ある意味一番条件が厳しい能力である。

更に余談だが、八命陣の公式サイトの逆十字のページには勢力の欠点として「聖十郎のワンマンチームなので頭を潰すことが肝要。そのためには聖十郎の有する心の闇を解き明かすのが唯一の道である」と書かれている。しかし上記の説明通り、 彼を受け入れる愛も持たずにその心を探ろうとすれば条件に嵌って死ぬ。









いいぞ。非常に優れた追記修正だ。俺はお前が羨ましい

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 相州戦神館學園 八命陣
  • 相州戦神館學園 万仙陣
  • チート
  • 光と闇(病み)の交換
  • 柊聖十郎
  • 緋衣征志郎
  • 古事記
  • 聖十郎の真実
  • 弱点は愛
  • 急段
  • 邯鄲の夢
  • 悪辣
  • 強欲
  • 嫉妬
  • 覇道
  • 主人公殺しの条件付け
  • 病気
  • 病魔
  • 正田崇
  • 廃神
  • 玻璃爛宮
  • 生死之縛・玻璃爛宮逆サ磔

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月23日 19:48