ヴィクトリー・ドラゴン(遊戯王OCG)

登録日:2014/08/15(金) 14:04:39
更新日:2024/04/16 Tue 14:04:09
所要時間:約 10 分で読めます




ヴィクトリー・ドラゴンとは、遊戯王OCGに存在するカード。
LIMITED EDITION 5に収録された闇属性ドラゴン族の最上級モンスターで、通称は「Vドラ」。

ヴィクトリー=勝利の名を冠するとおり、マッチに勝利するという前代未聞の能力を持つ。


【解説】

ヴィクトリー・ドラゴン/Victory Dragon
効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守3000
このカードは特殊召喚できない。
自分フィールド上のドラゴン族モンスター3体を
生け贄にして生け贄召喚しなければならない。
このカードの直接攻撃によって相手ライフを0にした場合、
このカードのコントローラーはマッチに勝利する。


三邪神以上の厳しい召喚条件の割に打点は上級モンスターの標準レベルでしかなく、またそのデュエル中の勝率を高めるようなメリット効果もない。
しかし重さと打点の低さというハンデを乗り越えてこのカードでうまく相手にトドメを刺せば、その時点で公式戦のマッチに勝利した扱いとなる。
一見シンプルな効果だが、ヴィクトリー(勝利)という名に恥じぬほどその実態はかなり凄まじい。


古今東西、MTGを始めとするカードゲーム含め、マッチの概念が存在するゲームの数々は特定の条件で勝利、敗北、引き分けになる特殊効果やルール*1は数あれど、
マッチに勝利すると直接かかれた効果やルールを持つのはこのカードが初であったろう。
そもそも「マッチに勝利する」という事がどういう意味かが分からないと、このカードの真のヤバさや異常性は理解できない。
シングル戦が大半というカジュアル志向のプレイヤーにとっては理解しにくいだろうが、マッチ戦慣れしているプレイヤーなら書いていることがそもそもおかしいと気づくだろう。


【マッチ勝利効果について】

ここでは、マッチ戦に馴染みがない方向けにまずはTCGにおけるマッチ戦というものについて解説しておく。

マッチ戦とは、いわゆる3本勝負である。
通常の対戦を3回行い、2本先取したプレイヤーを勝者とする。

例えば、貴方が【A】というデッキタイプを使っていると仮定しよう。
このデッキはとても強くて、他のほとんどのデッキに対しては勝率が50%を超えるのだが、
【B】というデッキにだけはなぜか相性が悪くて、ほとんど勝つことができない。

しかし、《C》というカードがあり、このカードを採用すれば【B】というデッキに対する相性差は劇的に改善され、勝ち越せるようになる。
だが、《C》は【B】に対しては優秀だけど、それ以外ではほとんど役に立たず、事故要素になってしまう(こんな感じで「特定のデッキの対策になるカード」をメタカードとかアンチカード等と呼ぶ)。

さて、どうするか。

そこで登場するのがサイドデッキである。
サイドデッキとは、デッキ調整用の「予備のカード」のようなものである。

そして、【A】を使っていて【B】に当たったときだけ、メインデッキのカードと入れ替える。
こうすれば、仮に1本目は負けたとしても、2本目・3本目を勝利し、2勝1敗で勝ち越すことができる。

この例のようにTCGでは、絶対的なデッキパワーだけでなく、相対的なデッキの相性差というものが存在しているため、
トーナメントでの当たり運などの要素も考慮して、サイドデッキを使用したマッチ戦がおこなわれるのが普通である。
だがこのカードの効果を決めたが最後、このカードはそうしたルールを根底から破壊してしまうのである。
しかも、もし1戦目で負けたとしても、2戦目でこの効果を決めてもマッチに勝利する。言い方を変えるなら、
このカードを入れたデッキは相手が2連勝する前にこの効果を1戦決めるだけでマッチに勝利する。
と言えばそのすさまじき効果がわかるだろう。
他のたとえとしては、「このカードを入れたデッキは、試合前に一勝する。」等とも評されることがある。

これでも理解がし辛い方のめに、TCG以外のことで喩えてみよう。
例えば、野球の日本シリーズ戦は7戦で、先に4戦先取したほうが勝つようになっている。

だがこのカードが野球で存在していたとしたら、
たとえ第一戦であっても「特定の選手がサヨナラホームランを打ったら日本シリーズそのものの勝利とする」というルールが付け加えられているようなものである。
…実際は条件がもっと緩く、あるピッチャーが初球ストライクならバッターアウト&3アウトチェンジになる位のインチキ効果である。

例えば、将棋のタイトル戦の名人戦などは、7番勝負のうち4本先取で勝利するのがルールなわけだが、
このカードはやっぱり「特定の駒で相手の王将を詰んだら名人戦自体の勝利とする」というようなものである。

例えば、麻雀ではランダム性を考慮して1局(1試合相当)に増減する点数がある程度決まっており、一定数の局をした後、半荘内(1マッチ相当)で最も総合点数を稼いだプレイヤーが勝つが、
やっぱり「特定牌の組み合わせや出方に成功したプレイヤーが半荘に勝利する」というようなものである。

例えば、……もうやめようか。ここまで書いた内容で、「マッチキル」という効果の異常性を理解できたと思われる。
つまるところ、おおよそ複数回対戦を行って勝利を決める形式のものであまりにも理不尽なルールであるという認識があれば問題はない。


【浮かび上がる問題点】

おそらくKONAMIは「こんだけ召喚条件難しくしといたんだしマッチ勝利狙うより普通に2勝しようって思うッショHAHAHA」とでも考えていたのだと思われる。
そして実際、登場したときにはプレイヤー達にも「効果は派手だけど使えないロマンの塊」、平たく言えばネタカードだと思われていたのである。

が、上記の通り決まったときのリターンは物凄く大きいので、デッキ構築の研究は進むわけである。
そもそもこの手のカードは、悪用されまくってと呼ばれるか、使えなくてとして見放されるかのどちらかでしかない。
そうした研究の末出したプレイヤーの結論は、それも他に類を見ないレベルで最悪の邪神であった。

やはりというかサイドデッキから投入されるメタカードに滅法弱いが、一戦目の勝率だけは高く、Vドラ効果を確実に決められるぐらい相手を封殺できる、地雷デッキと称されるようなまともじゃないデッキで採用されることになる。

例えば「カウンター罠を大量に仕込んでロックを決める」そのまんま【Vドラコントロール】だとか、
混沌帝龍-終焉の使者-八汰烏の無情なコンボを決めて身動きできなくなった相手にこれでトドメを刺す【八汰ロックV】だとか、
挙句サイエンカタパのギミックを使って相手のLPをギリギリまで削った後に魔力の枷でロックをかけて身動きをとれなくしてからVドラを出す【サイエンカタパV】だとか、

マッチ戦ならではのカードの駆け引きはおろか、一戦目のカードの駆け引きにすら唾を吐きつけるようなロクでもない使われ方ばかりされていた。

極めつけは後攻1ターンマッチキルまで可能なループコンボ、【MCV】である。
これに加えて、一時的にドラゴン族のリリースを用意することのできる「竜の血族」が存在したことも問題の悪化に拍車をかけていた。
自分のフィールド上のドラゴン族モンスターを3体リリースする必要はあると言っても、揃えてリリースするだけであっさり召喚できてしまうため大した手間はかからないのも問題点。

またVドラ対策をするためには一戦目からメインデッキにメタカードを投入する必要があるため、メタカードを標準搭載できない至極全うなビートダウンのようなデッキは通常より事故りやすい状態の戦いを多く強いられてしまう。
そして最も対戦する機会が多い一戦目が事故りやすいということはカード同士の駆け引きの減少につながるためVドラが流行るほどゲームとして不健全になってしまう。

試合の絶対数が減少するのも地味だが重大な問題。
カードゲームでは少なからず手札事故の可能性や流行り環境によるデッキの相性差もあるため、極力プレイヤースキルによる影響を増やすためにも最低限の試合の絶対数がないと相対的に単なる運ゲーに傾斜する。
ただでさえ性質上1ゲームで勝敗が決するジャンケン&運ゲーになりやすいのに、手札事故やデッキ相性差によるマッチキルの許諾が横行すれば、ますます環境は歪な方向に迷走し続ける。
それこそ上記の麻雀の例にたとえるなら唯でさえランダム性が高いにもかかわらず1局で半荘が決まるようなものであり、運ゲーすぎてプレイヤーはやってらんないのである。
そもそもいくら公式のカードとはいえ、対人戦にこのカードを使った時点で「まともにやり合う気ないので一戦でマッチキルしますね^^」という冷める発言みたいなもので、存在が許された時点で既に余計な争いの火種になっていたとも言える。

さらにこのカード、マッチ勝利という前代未聞の効果を持つため、ルール面もかなり混乱させた問題児でもある。
「わざと違反行為(デッキを崩す、勝手にドローをする、手札を見せる)をすることでそのデュエルは負けになるけどマッチキルは阻止できる」を始めとする、頭の痛くなるような解釈が山のように生まれてきたのである。
中には、「相手のサレンダー(降参)を受けても拒否できる」という解釈もあるが、公式の規定ではそもそもサレンダーが認められていないので、このカードの有無に限らず拒否される可能性もある。
ちなみに勘違いしやすいが、だからといってサレンダーが認められるからといってこのカードが許されていい理由はひとつも存在しない。むしろサレンダーが認められるなら更なる問題を引き起こすカードでもある。
このカードを出されてマッチキルを行おうとしたところで相手がそれを嫌がってサレンダーを行おうとした場合、どうなるか。
つまりそれは「相手がルールに則って効果を使おうとしているのを外部手段を用いて妨害していること」となるからである。
要するにサレンダーがルールで定義されていようがいまいがこのカードはこの辺りの問題やトラブルから絶対に逃れられないカードがこのカードであり、こんなに頭が痛くなるような問題をたった一枚のカードが引き起こすという意味でも何かがおかしいというのはこの記事をここまで読んでいればなんとなく察することが出来るだろう。



【そして禁止へ…】

色々な意味で問題が多すぎるので、結局禁止カードに指定されてしまった。
ちなみに、無制限から禁止カードまで一気に格上げされたのはこのカードが初。
エラッタによる規制解除を期待しようにも本質的にマッチキルによる駆け引きの否定も、マッチキルを無視できるから第一線の駆け引きを否定もしてしまうから、
そもそもゲームがつまらなくなることはあっても面白くなることが全くと言ってもいい程ない効果であり規制解除する理由がない
…と思いきや、2006年9月の1度のみだが実は制限カードに何故か緩和された時があった。
マッチキル回避関係のサレンダー問題も解決されておらずゲームブレイカーとして再び環境及び人同士の信頼に影響が出た為即座に禁止カードに戻されている。あれだけ悲惨な目にあってなぜ解除したし
今ではハンデス三種の神器魔導サイエンティストなど、名だたる禁止カードたちを遥かに超えた史上最悪の永世禁止カードとして認識されている。
そういったその魔導サイエンティストを始めとした先攻1キルデッキは「先攻さえとってしまえば相手に何もさせずに勝利できる」と言う点でTCGのゲーム性を否定しているからこそ非難されている。
しかし、逆に言えばどれだけ先攻で勝利出来た所でマッチ戦である以上必ず一回は後攻を取らなければならない。
Vドラからすれば、仮に初戦で相手に先攻1キルされた所で、こちらが先攻となる二戦目でサイドデッキから1キル対策した上でゲームを取れればマッチ勝利できてしまう。
言い換えてしまうと初戦で相手に何もさせずに勝利できるのは当然として、Vドラ使いからすればマッチ中に1回負けた所で痛くも痒くもないのである。
こういった事情から、もし禁止カードを全て解禁したデュエルでマッチ戦を勝利した場合、
このカードを入れて扱えるデッキ以外は全て使用価値が存在しないとまで評されている。
実際、非公認イベントではあるが海外でそこそこの規模のノーリミット大会が開催されたのだが、上位入賞者の殆どがVドラを採用しており、逆にこのカードを採用できない1キル型デッキは全て予選落ちだったという例がある。

現在ではドラゴン族自体の展開力が当時とは比べ物にならないほど向上しており、聖刻カオスドラゴン征竜、ドラゴンリンクと、専用構築にしなくても悪用できるデッキは多く、
特に便利なサーチ手段である「エクリプス・ワイバーン」も生まれてしまったため一時期は比較的容易に呼べてしまう状況すらあった。
さらに2014年の裁定変更でちゃっかりマッチキル効果が効果外テキストになっため、現環境でありがちなモンスター効果を無効にするメタカードに耐性ができてしまった。

そもそもこのカード、元より「リスクはあれど、得られるリターンがゲームとしてあってはいけない大きさ」「出せないからこそロマン、容易に出せるようになったら最悪レベル」「ゲームをつまらなくすることはあれどロマン以外で楽しめる要素がない」なのである。
むしろリターンが大きすぎるあまり「このカードで勝てないような場面ならこのゲームはむしろ捨てるべき」と言ったプレイングが推奨される冷めた状況はもはやロマンすら感じられないだろう。
結果論ではあるがいわゆるゲームブレイカーそのものであり、あらゆるカードゲームにおいて絶対に刷ってはいけない類のカードであり、勝負ごとにおいて存在してはならない代物だったのである。
唯一の長所にして、ゲームにおける禁断の領域に触れる効果を持ってしまったのがこのカード最大の不幸だったのかもしれない……。


【マッチキルモンスター】

ちなみに、このカードのように「マッチに勝利する」効果を持つカードをマッチキルモンスターなどと呼び、このカードと同等の効果(召喚条件が異なる)を持つカード群が世界大会の優勝者などに授与されることもある。中には、種族の関係上これより扱いやすいカードも何枚もある。
公式デュエルで使用可能かつ一般販売されたのはこのカードだけであり、他のマッチキルモンスターには必ず「公式のデュエルでは使えない」と明記され続けている。
他のマッチキルカードの詳細についてはマッチキルモンスターを参照。
世界大会景品は限られた枚数しか存在しない、超が付くほどのレアカードであるため、たまに市場に出回ると何百万、何千万といった価格で取引されている。


【ゲーム作品での扱い】

上記の通りシングル戦では無意味なため、シングル戦が主体の遊戯王ONLINE(かつて存在した遊戯王のオンライン対戦環境)では、
上記の亜種とともに制限カードに格下げされていた。
しかし、同じくシングル戦しか存在しない遊戯王マスターデュエルではそもそも実装すらされていない*2。いずれマッチ戦を実装する予定があるのか、あるいは(バニラでしかないはずの)シングル限定ゲームですら出せないような忌み子的扱いなのか…。
またマッチ戦でなければ無意味なカードであるということはこのカードは仲間内で遊ぶ分には殆ど問題が発生しないのに、「公式環境だけを荒らした」というかなり特殊な禁止カードである。
最近は禁止カードをエラッタして釈放することが多々あるものの、性質や記念賞品として授与されていることを考えると、他のカードと同様に「公式のデュエルでは使えない」の一文が加わる事は想像に難くなく、OCGへの復帰はあり得ないだろう。それでも無理矢理復帰させるというのなら、召喚条件や発動条件を眠れる巨人ズシン(アニメ版)並*3の難しさにするしかないとすら言われている。
現在は禁止カードであるため、使用可能な環境はノーリミットデュエルに限られる(他のマッチキルモンスターではできない)。
…が、店によってはその性質上、例外的にノーリミットにも拘わらず禁止されていたこともあるらしい。
このカードの異常性を体感したい人は、遊☆戯☆王タッグフォースシリーズで、CPU相手のマッチ戦ででも試してみるといいだろう。



ヴィクトリー・アニヲタ/Victory AniWota
効果モンスター
星8/根暗属性/wiki篭り族/攻2400/守3000
このカードは特殊召喚できない。
この項目上のキーワード3個を
リリースしてアドバンス召喚しなければならない。
この項目の追記・修正によって相手ライフを0にした場合、
その追記・修正者は建て主に勝利する。

ATM「《ヴィクトリー・アニヲタ》召喚! 追記・修正!!」

杏子「もうやめて! とっくに建て主のライフはゼロよ!」

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 遊戯王
  • 遊戯王OCG
  • マッチキル
  • ドラゴン族
  • 禁止カード
  • インチキ効果
  • チート
  • 問題児
  • ヴィクトリー・ドラゴン
  • 星8
  • 闇属性
  • 永世禁止カード
  • LE新規収録カード

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月16日 14:04

*1 相手側のルール違反による罰則の形式を除いて

*2 他の禁止カードは入手不可になっているだけでデータ上では存在する。

*3 レベル1通常モンスターを10ターン以上表側表示で残し続けることで特殊召喚できる。あまりに過酷すぎるがそうでもしない限りこのカードの復帰はまずあり得ない。とはいえ前述の例えから分かるように、それでも禁止にしておいた方がいい類いの効果なのがマッチキルという効果なのだが……