サーベルタイガー(古代生物)

登録日:2014/08/09 Sat 23:35:39
更新日:2023/06/27 Tue 16:26:53
所要時間:約 7 分で読めます





サーベルタイガー(古代生物)とは

1.更新世(300万年前~10万年前)に南北アメリカ大陸に生息していたスミロドンの異名。
2.哺乳類ネコ目ネコ科マカイロドゥス亜科の動物たちの愛称。

この項目では両方いっぺんに解説する。

●目次

1の概要

ネコ目ネコ科マカイロドゥス亜科スミロドン属に属する絶滅動物で、マカイロドゥス亜科では最後期に出現した、最も知名度が高いメジャーな動物
南北アメリカがパナマ地峡で繋がった頃に北米に出現すると、あっという間に南米にも生息域を広げ大いに繁栄した。

体長は大きくても2m、体高も1m前後とライオンといった現生大型ネコ科動物と較べても決して大きくないが、
犬歯の長さは25㎝と現生のモノを圧倒する長さを誇る。まあググれば分かるけどメッチャ長い。
この牙をぶっ刺して一撃決殺を狙うのに特化した体つきになっており、待ち伏せて力強く長い前脚で抑え付け、
120°まで開く顎をガバっと開き牙を首に刺し、首に牙が届かない相手なら動脈を切断して失血死させ大物を狩るスタイルだったと推定される。
このように、強大な牙で一撃死を狙うスタイル故に現生ネコ科動物より強そうに見えるが、実際には欠点も多かった。

  • 長さの割に硬さがそうでもない牙を固い骨にぶつけたりして折ると狩りができず詰む。
  • 誤って硬い部位に刺し込むと抜くときに苦労したり、牙から力がかかって最悪頭骨ごと折れる
  • 前脚をガッチリ構造にした結果、ネコの利点であるスピードがなかった。マッチョすぎてスピードが劣るというやりすぎ進化のいい例。
  • あたまがわるく、カリフォルニアにある天然のデストラップ「ランチョ・ラ・ブレアタールピット」(天然アスファルトの沼、沼に引っかかった動物を食べようとしてその肉食動物も引っかかった)に引っかかったアホランキング2位に堂々ランクイン。
    ちなみに1位は当時のアメリカでハイエナ的掃除屋稼業をこなしていたダイアウルフ(巨大な狼)。

などといった欠点を抱えていたため、マンモスやマクラウケニア、メガテリウムなどといった主な獲物である大型動物が
氷河期の終わりによる環境変動で数を減らすと覿面に数が減った。
代わりに繁栄を始めたプロングホーンやエルクといった連中は体格で威圧するより脚を速くして逃げる方向性になり、
バイソンあたりは高度な社会性を備え子供を守るようになったため
同時期にアメリカ大陸に進出していたカリフォルニアライオン(現生のライオンに非常に近縁、頭が良く脚が速い)やジャガーが新たな環境に適応する一方、
彼らは生きることも至難となり10万年前ごろには勢力を完全に失い絶滅したとみられる。

よく図鑑や映画などではクロマニヨン人など古代人類と戦う動物としてスミロドンが登場するが、実際には対面していない可能性がある。
なんせ、人類が北アメリカに到達したのは1万2000年前ごろにカナダに広がっていた大氷床がようやく割れて南に行けるようになってからなので、
その頃にはおそらくスミロドンはいなくなっていたと思われる。
まあ、多少の群れが生きていた可能性もあるが、それでも彼らの絶滅にはおそらくほぼノータッチと見られる。

…というのが定説であったが、歯の分析からスミロドンは草原ではなく森の生物であった可能性が浮上している。
確かに待ち伏せ型であれば森の方が隠れる場所が多いので生きやすいとは言える。
そうなると超大型動物のマンモスやマクラウケニアではなく
森林にいたと思われる中くらいの動物を主食にしていた可能性が高くなる。

よく似た動物

  • ティラコスミルス
南米特有の環境で大物狩りを志向した結果同じ方向性で進化した有袋類のサーベルタイガー。
南米特有の有袋類や特有の動物たちで作られた生態系の頂点にいたプレデターであった。
パナマ地峡で南北アメリカが繋がって侵入した洗練されたハンターであるジャガーやスミロドンといったネコ科の動物に駆逐されて滅びた。
ただ、骨格の作りをみるとより洗練された刺殺系プレデターだったらしい。
古い系統ではあるが、スミロドンより進化は進んでいたという。
有袋類とはいえ一概に劣っていたとは言い難い、そんな存在である。
じゃあなんで滅びたか?というとおそらくは有袋類の繁殖能力がそう高くないのがネコ科のスミロドンやジャガーに対して大きなディスアドになっていたのだろうか。

フィクションでのスミロドン

氷河期の古代人類と戦うのはマンモスかスミロドンかという位の頻度で登場する。ハリウッド映画の紀元前一万年辺りが好例であろう。
『ゾイド』シリーズだとライガーシリーズと対になるセイバータイガーは最もメジャーなサーベルタイガーであるスミロドンがモデル。
他だと『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のタイガーレンジャー/ボーイ、『仮面ライダーW』のスミロドンドーパントなんかがいる。
モチーフに取られる率では哺乳類の絶滅動物ではマンモスとツートップのため他にもいろんな形で登場している。
…アレがないとかこれがないとかあると思うけど本当多いから列挙しただけですごい量になるんですよねぇ。
ベリオロスとか原始タイガーとか…。

ボクシング漫画『はじめの一歩』では浪速の虎と呼ばれるフェザー級ランカーの千堂武士が、
対戦相手のメキシコ王者・ナーゴとそのセコンドからこれに喩えられたことがあり
「瞬発力とパワーに長けすぎた時代遅れの古生物」と揶揄されるもその下馬評を打ち崩して勝利するという一幕があった。



2の概要

絶滅して地球上から姿を消した亜科であり、今ではこの系統の遺伝子を継ぐものは残念ながらただの一属も存在しない。
ネコ科の中では今わかっている中で最も早くに分岐した系統で、約2400万年前頃から現れだしたらしい。
日本語では剣歯虎、あるいは剣歯猫が異名になっているが、
実際今を生きる大型ネコ(ヒョウ亜科)、小型ネコ(ネコ亜科)たちとはネコ科の動物というくらいの繋がりしかない。
ましてトラ縞の毛皮など生えているわけがない。
同じネコ目でもイヌ亜科のオオカミイヌよりはネコに近いけれど、それ以上でもそれ以下でもないといった関係である。

この亜科の特徴は牙が長大、あるいは切れ味バツグンなどかなり特殊化しておりその牙を確実に急所に当てるために抑えこむ前脚が非常に発達していること、
一方で後脚が短いなどの点で現生のネコ科の動物とは大きく異なる。
スミロドン以外の刺殺型は下顎に牙の鞘を持っていたが、スミロドンはなぜか鞘を持たなかった。

斯様な特殊化を推し進めた結果、獲物がいるうちは大繁栄したもののその代償としてネコの代名詞たるスピードに乏しく
更新世末期の氷河期終焉で大型動物が次々滅び、草食獣が逃げ足を速くしたり、子供を守ることを優先する方向にシフトすると衰え、
スミロドンらの絶滅をもって係累は皆地球上から姿を消した。
一部の種は人類との競合もあったであろう。

ネコの原点に回帰出来るように進化出来なかったのかとも思うが、2000万年以上に渡り、「大型草食獣に牙を突き刺して一撃死を狙う」というスタイルを続けた結果
後発のライオンや虎、ヤマネコあたりに小型・中型草食獣を追いかけ回して狩る生態的地位(ニッチ)を完全に埋められてしまったため、
回帰したくても出来なかったのであろう。
大型動物が多かった時期には必要で、繁栄の鍵となった特殊化が環境変動で仇になる、地球46億年の歴史ではよくありすぎて困る事故である。


主な動物

  • ホモテリウム
剣歯虎の仲間であるが、こちらは牙や裂肉歯(ネコが肉食べるときに顔を傾けてでも使う歯)の切れ味を極限まで高める方向性に進化したタイプ。
切れ味重視の牙から別名はシミターキャット。
その牙は切れ味バツグンだが、硬い筋や軟骨は噛み切れないという難点を抱える事になってしまい、内臓や脂肪など柔らかめな部位しか食べられなかったと思われる。
主な獲物はゾウの子供だったようである。マンモスやマストドンあたりは今のように子供をがっちり守るフォーメーションを取っていなかったらしい。
なお、今アフリカゾウあたりを相手に子供狩りをやろうとしたら寄って集って踏みつけられてボロ雑巾確定である。
アフリカで生まれ、ユーラシアを中心に最盛期に南米にまで進出するなど長きにわたって繁栄したが、マンモスなどの大型草食獣が衰えるとともに衰えて姿を消した。

  • マカイロドゥス
亜科の名前にもなった動物。こちらは牙が長めで刺殺するタイプ。
体長2.5mとスミロドンと比しても大型。
刺殺タイプだが、切れ味重視のホモテリウムの祖先らしい。

  • スミロドン
上記したとおりの最もメジャーなマカイロドゥス亜科の動物。



追記・修正は氷河期が始まってからお願いします。







ぬいぐるみ?もちろんあるよ。

画像出典:Caramelmama Webshop NINE LIVES/ナインライブズ より
「HANSA/ハンサ 恐竜のぬいぐるみ サーベルトゥース 50cm」
url:ttp://ninelives-chaka.com/SHOP/HANSA-4885.html



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最終更新:2023年06月27日 16:26