ビスケット・オリバ

登録日:2014/07/29 Tue 19:40:48
更新日:2023/10/16 Mon 15:50:39
所要時間:約 30 分で読めます






愚問だな。

愛以外に人を強くするものなどあるものか




ビスケット・オリバはバキシリーズの登場人物。初出は第2部『バキ』・最凶死刑囚編。
CV:屋良有作(TVアニメ第一作)/大塚芳忠(TVアニメ第二作)


●目次

◆概要◆

アメリカ人(初登場時はキューバ出身とされているので帰化したと思われる)。
全米の凶悪犯罪者が集う『ブラックペンタゴン』ことアリゾナ州立刑務所に収監された『囚人』でありながら
範馬勇次郎の持つ『地上最強』の称号と対をなす『地上最自由』・『Mr.アンチェイン(繋がれざる者)』の称号を持つ男。
勇次郎とは旧知の間柄でもあり、彼と対等の会話が可能な数少ない人物。
『馬鹿力持ちの喧嘩好き』という点を除けばほぼ正反対の人となりなのだが、不思議と友情は長く続いているようである。

通常の官憲では手におえない凶悪犯を己の腕力で『ハント』することを生業(単なる趣味?)とするスペシャリストで、
その怪力無双の肉体から「アメリカで一番喧嘩が強い男」「全米最強」とも呼ばれている。
オリバ自身にもそこから来る国家を背負って立つという自負はあり、後述する刃牙との闘い終盤では
「自分の敗北=アメリカの敗北」だと本気で考えていた。

また、刑務所の囚人を含めたアメリカ国内外に「オリバとヤリ♂てえ」と思うHENTAI者が大量に存在し、
劇中で戦いに至ったJ・ゲバルや刃牙もこれに該当する。

『毒を以て毒を制す』という言葉があるように自身も犯罪者でありながらその犯人逮捕の実績は圧倒的で
合衆国政府からも「事件解決のための特効薬的効果は見込める」とその手腕自体は高く評価されている。
アリゾナ刑務所の服役囚の大半はオリバがハントしてきたものであり、刑務所自体が彼のコレクションのショーケースであるともいえる。
しかし、その活躍を考慮に入れたとしても刑務所(あるいはアメリカという国家)からは異常と言うほかない数々の特別待遇を受けている。


以上のように実質アリゾナ刑務所は『彼の国』である。無論彼の滅茶苦茶な待遇に不服な者は多く、
アンチェインの座を狙うゲバルからは「(刑務所の囚人なのに)そんな収容生活で一体何を償い、何を反省しているんだ?」と皮肉を言われ、
彼とオリバの決闘でゲバルが優勢になるとにわかにそれまでの『アンチェインコール』『ゲバルコール』に変わるなど
囚人達の中で、本心から彼の支配を認めている者など誰もいない。

また看守等が侍従のように媚びへつらう一方でFBI局長バート・アレンは
『日本における死刑囚捕縛のためにオリバを投入せよ』という打診を受けた際、オリバを『合衆国の恥部』と吐き捨てており、
彼の『自由』は決して諸手をあげて賞賛されているわけではない。しかしオリバ自身はそういった反対意見が多いことも充分承知しており、
その上で現在も堂々と君臨している。彼の生き様は「わがままを押し通すこと=強さ」という
バキワールドの不文律を体現しているのかもしれない。



◆人物像◆

うっすらと口髭をたくわえ鷹揚な雰囲気の黒人。
中年だが生え際がやや後退しており、本人もちょっぴり気にしているのか上述の肖像画では実際よりも髪を多めに描かせている。

身長は180cm余りで横幅が広い体格のため、肥満体と錯覚されることもあるが、その実骨格には
150kgを超える驚異的なボリュームの筋肉を搭載しており、なおかつ体脂肪率は常に5%未満に維持している。
毎日取り込んだ10万㌔カロリーの熱量は、常時消費し続けることで
ともすれば暴走しようとする筋肉を押さえつけるのに充てている。鍛えて強くなりすぎたゆえに燃費が異常に悪くなり、
なおかつ常に気を抜かずにいなければならないというのは窮屈そうにも思えるが
オリバ本人は「それでも熟睡できるのが自分のスゴイところ」と嘯いている。

あらゆる難局を純粋な腕力のみで切り抜ける揺るぎない肉体信仰の持ち主だが、
総身に知恵が廻りかね、ということはなく、個人図書館の膨大な蔵書は全て読破済み。
その優れた知識と教養は捜査上のプロファイリングでも遺憾なく発揮される。
日本語も堪能(ふざけてわざとエセ外人風の片言喋りをしてみせることも多いが)。
「彼に知らない事は無い」とまで言われる程の事情通でもあり、
第3者には非公開の秘密会議の決定で日本から使者の園田が来ることや渋川剛気龍書文のプロフィール、
地下闘技場で刃牙が見せた『剛体術』まで知っていた。

普段の言動は非常に鷹揚で余裕と貫禄に満ちている。ウィットに富んだ会話やジョークを好み、身勝手なくせにどこか憎めない愛嬌をふりまく。
しかし本質的な性格はまるっきり大きな子供。
良くも悪くもその時の機嫌が全てであり、気分の善し悪しがダイレクトに態度に出るタイプである。
我がままで見栄っ張り、そのくせ些細なことで傷つきやすくすぐムキになり、
自分のプライドを傷つけた相手に対しては埋め合わせを求めるあまりどこまでも冷酷で攻撃的になる*1

刃牙とも最初は人の良い親戚のおじさんといった様子の付き合いだったが、勇次郎への挑戦を控えた刃牙が
自身を鍛える『砥石』としてオリバとのファイトを望むあまり
過度な挑発を繰り返したことで人間関係は随分と険悪になってしまっている。
特にアンチェインという権威を保つために純粋に怒りを爆発させることができずにいるところに囁かれた

「誰よりも自由じゃないと、自由を感じられないなんて、カワイソ」

…という哀れみの言葉は単なる煽りにとどまらず
自由であることに固執することでかえって自由に縛られているオリバの内包する矛盾と本質を痛烈に指摘している。

勇次郎も「過剰に搭載した筋肉―――図書館並みの蔵書―――所有する量はそのまま 不安の裏返しにも見て取れる」と分析しており
蛮性むき出しで地上最強めがけ突っ走る他の闘士たちに比べるとどこか守りに入った繊細さを持っているのかもしれない。


◇Mr.アンチェインの恋人

刃牙に強くなるための秘訣を訊かれ冒頭の名台詞で答えたこともあるオリバだが、
その愛というのは全て恋人・マリアに注がれている。その有様はまさにデレデレのベタ惚れというべきもので、
作中で展開されるオリバの惚気の数々は作者の表現力をフル稼働させた濃厚なもので愛情の深さを感じ取れると同時にちょっと気色悪い…




ゲバルは『誰も見たことの無いオリバの恋人』「自分の自由をアピールするためのガセネタ」と断じ、
読者も「…人間なのか、それ?」「ひょっとして娘さんのことじゃね?」「アメリカという国家そのものが…」
「思い出の場所とか、建物とか?」「脳内彼女乙www」「…死んだ母親の…幻影…」「ペットの犬とか猫だったりして」etc…

…と散々な予想を交わしあったが、結論から言うとマリアは実在し、なおかつオリバとはちゃんと相思相愛の関係にある素敵な女性であった*2



身体の大きさがキングサイズベッドを埋め尽くすほどの肥満体ではあるが。



……昔からそうだったというわけではなく、かつては誰もが振り返る程の美貌を誇っていた。
しかし病に冒されたことで投薬の副作用により肥満化、結果自力では歩くことも困難なほどの巨体となってしまったという。
実はオリバの肉体は『マリアをお姫様抱っこする』ために作ったものであり、愛ゆえに強くなったという言葉もそこから来ている。

性格は非常に気難しく、心の底から気を許せる相手であるオリバに対してすら罵詈雑言は当たり前
お世辞ではない、オリバの本心からの褒め言葉には完全否定で答え、
そのへんにある物ウイスキーのビンとか。あぶねえ)を遠慮なくぶつけまくる。
ただマリアに「ダーリン♡」と呼ばれただけでオリバはほぼイキかけているので、
ひょっとするとこのツンな態度はオリバの生命を気遣ってのことなのかもしれない。


また、とても気丈で美しさを失っても卑屈になることなく、かつての傲慢な程の自信や誇りをそのまま持ち続けている。
ここでも「わがままを押し通すこと=強さ」というイズムが垣間見える。マリアもまたオリバ同様に強者なのだ。

そんな普段は居丈高だがその実かなり常識人。自分は醜いことも理解している。

さらに相手をいたわる優しさ包容力(物理的にも精神的にも)を持っており、
赤の他人の刃牙にいきなり抱き枕扱いされても驚きこそすれ怒らない。

バキ曰く、彼女は柔らかくって暖かくってスッゲェいい香り…………だったそうな。
刃牙も重度のマザコンなのでマリアの母性には惹かれるものがあったのかもしれない。

この手の女性にしては珍しく漢の喧嘩についても理解があり、「男勝負はシンプルな倒し合い」「他に方法なんてあるの?」
ルールの枝葉を巡る揚げ足の取り合いに陥っていたオリバVSゲバルの決闘を全否定し、
「彼女に見直されたい」という一心にさせることでオリバの闘志に火を点けた。

物質的には一方的にオリバを奉仕させているかのように見えるが、
刃牙の挑発に内心苛立ち深く傷ついているオリバをそっと癒すなど、メンタル面では間違えなく彼の最大の支え。
同時にマリア自身も普段の気丈さを捨てて「いつもギリギリ」という弱気な本音を漏らせる唯一の相手としてオリバを愛している。

オリバと刃牙の戦いの終わりを察した際には、なんと闘いの場へと自ら歩いて向かい、オリバの敗北を目の当たりにした。
その後、オリバに自分を自室まで運ぶよう要求。何のことはない、例え誰に敗北しようと、オリバと彼女の関係は不滅だったわけである。

なお、美しさを失ったと書かれてはいるが、別に顔に傷があるとか、皮膚病にかかったとかいうわけではなく、単にものすごい肥満体になってしまっただけである。
肌も目鼻立ちも整ったままであり、仮に痩せることができれば、再びかつての美貌を取り戻せることは容易に想像がつく。



◆戦闘スタイル・実力◆

博識ゆえにあらゆる格闘技の『術理』に関する知識は有し、所見の相手のスタイルを見抜く高い分析能力も持っているものの、
オリバ自身の闘いにそんなものは一切関係ない。とにかく筋肉筋肉筋肉である。
攻撃も防御も一切は己の筋肉に委ねる。強さ=筋力。
全ては分厚いMUSCLE お前の身体のその奥 流れているのさ 愛さえ友情さえ!

ゲバルに勝利を収めた際の「脱力だ 技術だ 重心(バランス)だ 支えだ…と他の恋人達とイチャイチャやってきた」
という言葉にも表れているように、その強固な肉体信仰ゆえオリバにとって筋肉はマリアと並ぶ最大の恋人であり、
技術・工夫は不純物という論調は勇次郎に非常に近いものがある。

その怪力は線路用の大釘を親指でへし曲げ、柔道着の袖を引きちぎり、
筋トレと称して軍の輸送用ヘリと綱引きを成立させるなど完全に漫画(漫画だよ)の次元。

筋肉の齎すパワーをストレートに開放して殴りつける・投げつける・圧し潰すなどの攻撃を得意とする。
そのどれもが恐るべき威力を持つが、犯罪者ハントでは極力相手を死なせず『逮捕』しなければならないので
ゲバルと対戦するまで本気で人を叩いたことは随分なかったようである。
全力で突進すればまさに『肉弾』と化し、刑務所の独房の隔壁を次々と貫通。

それを目撃した囚人には「(アンチェインという名は比喩だと思っていたが)閉じ込めておける場所が無いという意味だった」と述懐されている。

分厚い筋肉は鉄壁の防御壁ともなり、ショットガンの至近射撃にすら耐え、腹筋を固めればナイフも通さない。
さらに全身複数個所の筋肉を同時に硬直させる巧みなマッスルコントロールによって
外部から加えれた衝撃を内側からの筋力で相殺する特技を持っており、刃牙の飛び後ろ廻し蹴りや渾身の剛体術すら無効化した。
この時の形態はアルマジロのように完全な『筋肉の球体』であり、刃牙に同じ『筋肉の要塞』を持つ鎬紅葉と比較しても
筋量にあまりの差があって気付かなかったとすら言われるほどの威容を誇る。

また、この形態は防御一辺倒ではなく、まるで捕食するかのように相手を取り込むことも可能で看守からは『パックマン』と形容されている。
この攻撃は身動きが取れない相手を全方位からオリバの筋肉で包み込んで圧縮するという肉体的にも精神的にも甚大なストレスを齎すもの。
想像するだけできつい…


刃物や銃器で武装した犯罪者とも素手で渡り合っており、その際に心臓部分に日本刀の刺突を受けた事がある。
これは流石に筋肉を貫通して突き刺さっているが、「ガキン」という金属音と共に先端で止まっており、オリバ自身は「(内臓及び急所を)プレートでカバーしてある」と発言している。
日本刀の刺突で貫通しないだけの厚さの金属製のプレートを外科手術で埋め込んでいるらしい。
また、全身の肌は古のボクサーの知恵に則り粗塩を刷り込むことで切れにくく変質しており、
猪狩をズタズタに切り裂いたシコルスキーのカーヴィング・ナックルすらモノともしない。


一方、やろうと思えば高等テクニックも瞬時に習得・使用できる変態、範馬一族と違い
オリバには知識や理解力こそあれど、そうした精密さは一切無いので技術的に後れを取ることはたびたびある。
日本で出逢った渋川先生のミステリアス・パワー『合気』ワザマエには成す術なく制圧されてしまったほか、
大擂台賽では龍書文の正確にして迅速な拳で足の甲や眼、鼓膜といった鍛えられない箇所
ピンポイントで攻められ、常人と変わらない脆さをさらけ出した。
瞬発的なスピード自体はあるのだが、軌道が単純なので動作を見切られた上でカウンターを受けやすいという欠点もある。

精神面は肉体的強靭さとは裏腹に、核心を突かれる言葉を吐かれるだけで揺らぐ程に結構繊細で、
その筋力とフリーダムな性格で相手を自分のペースに飲み込みやすい一方、
子供っぽさと自由さ故か、相手のペースに飲まれることもしばしば。

また致し方ないことであるが唯一の取り柄である筋力においても
地上最強の生物・範馬勇次郎には勝てないことが明確に描かれている
本人も力比べで負けた時は「やっぱりね…;」とらしくもない弱気なコメントを漏らしていた。

とはいえおそらくパワーだけなら勇次郎を凌駕するピクルにも及ばないと思われるが、
刃牙はピクルとの対戦中、オリバならピクル相手でもまるで神話のように真っ向から殴り合うだろうと予想しているあたり、筋力に関しては最高クラスの一人なのは間違いない。なんで最大トーナメントに参加しなかったのだろう



◆劇中の活躍◆


◇最凶死刑囚編

『敗北を知りたい』という共通の欲望がシンクロニシティを起こし、東京に集った5名の最凶死刑囚。
その猛威は対テロ用の特殊装備に身を固めた精鋭が壊滅し、
末端の巡査から「例外的にという条件付きですが警察官にも機関銃の装備を認めるべきです」
あながち大袈裟でもない意見が挙がるほどに深刻なものだった。

事態を憂慮した警視庁は死刑囚を収監していた米・英・露の警察関連者を招集し、対案を練る。
その結果スペックにひどいめに遭わされた警視正・園田盛男が
アメリカまで切り札たるオリバを呼んでくることとなり、オリバ自身も
無法の限りを尽くす死刑囚に「私以上の自由は許さない!!!」と一般的な正義感とはかなりズレた動機で乗り気になっていた。

なお、それと前後しオリバの実力披露イベントとして
彼への恨みからビル立てこもり事件を起こした元悪徳警官、ジェフ・マークソンのハントが描かれた。
ただのかませ犬相手の蹂躙劇と侮るなかれ、オリバのアメイジング・マッスル・パゥワァ♥を堪能できる良イベントである。
散弾銃や日本刀を真っ向から凌ぎ、ビルから落ちて死ぬのではなく、落ちている途中で絶命するほどのハンマーパンチ。
とどめに武装解除の名目でオリバは全裸。しかも状況を楽しんでいるのかイチモツはバッキバキにSTAND UPしているしかもデカイ
立てるのはキャラだけでいいから…;



日本についてからもアンチェインゆえやりたい放題で相棒?の園田を振り回す。
この辺の描写は凸凹刑事ムービーのようで非常にコミカル。
来日後は勇次郎と旧交を温めているが、そこに梢枝を攫ってきたシコルスキーまで居合わせていたので
とりあえずビルの窓から投げ捨てる。おい、逮捕しろよ!

さらにそこへ刃牙まで乱入して大騒ぎ。梢枝に手を出され気が立っていた刃牙からのとばっちりを喰らいながらも
同じく刃牙のフルパワーキックできんたまが全壊したシコルスラリアットで吹き飛ばし、
めでたく第一のターゲットハントに成功するでもこの後露助はふしゅるふしゅる言いながら脱走する。

その後婦警に女装して警察署内に潜入したドイルと交戦したり、
そうしたら唐突に柔道のブラックベルトが欲しいといいだし、署内の有段者を純粋な筋力だけで投げまくる(どの辺が柔だ)
など何のために日本に来たのか忘れてるような斜め上の大暴れを見せるが、
とうとう逮捕術の指導で警察に来ていた渋川先生に「おでぶちゃん」扱いされ、苦も無く子供を扱うように捻られてしまう。
ただ、楽しませてくれたお礼に達人のお墨付きの黒帯をプレゼントされた。よかったね♡

ここまでは順風満帆といっても良かったのだが、ある日



道を歩いていたら隕石に当たり、死んでしまった。          \ITEッ/








…というのはドイルをからかうために独歩ちゃんのついたウソ八百だが、
獲物に対して狩人が多すぎたのか、以降は活躍に恵まれなかったのは事実である。
最終的なスコアは、柳龍光の毒手で失明してしまったドイルを見つけて逮捕することで〆、となっている。
仕事はこれで終わり…のはずなのだが、

オリバは自我崩壊した最凶死刑囚・ドリアンを連れて唐突に中国に向かうのだった。自由すぎる。



◇中国大擂台賽編

オリバの目的は中国最大の武術大会『大擂台賽』(だいらいたいさい)の大会荒らしだった。
基本は中国武術を極めし『海王』の称号を持つ達人のみが参加できる擂台だが、
死刑囚ドリアンがかつて『白林寺』で拳法を修めた『怒李庵海王』だったことを利用、
彼のセコンドとして同行し、自我崩壊ゆえ戦闘者としては再起不能なのが明白なドリアンをダシに、
対戦相手・楊海王を焚き付け強引に参加する事に成功した。

楊海王は五体の金剛(ダイヤモンド)化を神髄とする金剛拳の使い手であり、
純粋な打撃に対してはおそらく作中でも屈指のタフネスを誇る猛者だったが、オリバはこれに対し、
頭の上に乗せた手に全力をかけることで、力づくで楊の肉体を『折りたたみ』文字通り『圧』勝。
かつて最大トーナメントでジャガッタ・シャーマンに同じ仕打ちをした勇次郎もこれを見て
「笑いが止まらねェ」「ダイヤモンドがヘシ曲がってやがる」と上機嫌だった。

海王の質が下落したのか、今回に限ってオーガやら神の子やらの化け物どもの参戦を許可してしまったからか、
擂台を外国人選手が荒らしまくる事態を重く見た『地上最強の老害』郭海皇が強硬手段を発動した結果、
大会はいつのまにか中国連合軍V.S.日米勝ち残り組という総当たりチーム戦の様相を呈することになる。
マジでどうしてこうなった。

オリバはチーム先鋒として中国裏社会において無敗を誇る闇の拳士『Mr.不可拘束』こと龍書文(ろん・しょぶん)と対戦。
奇しくも同じ『繋がれざる者』の異名を持つ者同士の闘いとなった。

ハンドポケットの姿勢から拳を『抜拳』することで最速を完成させる龍の『居合い拳法』の鋭さに大苦戦するが、
大将・勇次郎の「競うな 持ち味をイカせッッ」というソウルの籠りまくったアドバイスを受けて起死回生、
わざとハンドポケット(というかパンツに手を突っ込んでる)を真似して龍を苛立たせてからのダブルハンマー、さらに筋肉を信じ相手の攻撃をノーガードで受け続けることで攻撃に転じようとする際に発生する僅かな隙を縫って龍を捕捉、龍の顔面が踏みつけたピンポン玉のごとく変形するほどの顔面頭突きで見事勝利。
尚トドメ以外にもこの頭突きは数度放っており、それを見た勇次郎をして「ケッ、オリバの頭突きかよ。想像したくもねぇな」と言わしめている。
オリバは龍を対戦開始直後はポケットに入れたり出したりスマートじゃねぇな、と評しているが、オリバのダブルハンマーや数度にわたる頭突きを受けて敗北してもなおハンドポケットを止めなかったそのスタンスには逆に「最後の最後まで、スマートな野郎だぜ」と賛辞を送っている。
帰ってきたオリバはチームの仲間から惜しみない祝福を受けるのだった。この作品では珍しい『集団の和気』が描かれた微笑ましいシーン。
オリバ自身も恥も外聞も無く勝利に全てを懸けるも敗北した寂海王
「自分ノ土俵ニ 引キズリ込ンデノ心理戦 ファンタスティック ダッタゼ」と賛辞を送っている。



◇超絶!!監獄バトル編

第3部『範馬刃牙』のエピソード。
勇次郎と闘うための準備として強者とのファイトを求める刃牙がオリバと対戦するためにアリゾナ刑務所にやってくる。
同じくアンチェインとの闘いを求める『ミスター2』J・ゲバルも絡め、オリバの国である刑務所の様子が詳細に描かれた。

これまで無邪気かつフリーダムに振舞っていたオリバだが、この編では
アンチェインという肩書ゆえの重圧やしがらみを気にしなければならない皮肉な姿も描かれており、
キャラ描写も従来に比べると、君臨する支配者としてのプレッシャーを放ちながら神経質さも感じさせる、良くも悪くも人間臭いものとなっている。


新顔の挑戦は軽々と受けられないと一度は刃牙の申し出を退け、
アンチェインの座を狙うゲバルと闘い、一進一退の攻防を繰り広げる。
闘いにおいて必要なのは『筋肉』『技術』かを争い最終的には自身の筋肉に対する信仰心(愛)が勝りゲバルを打ち倒した。

しかし、ゲバル脱獄後行動を開始した刃牙は素手による脱獄未遂で自分は権威にすがらずともアンチェインとなり得ることをアピール。
さらに懲罰房に押し込められながらもオリバに自分との対戦を踏み切らせるためだけに執拗な挑発を重ねていく。

醜悪な顔で嘲笑いながら口八丁でオリバを煽る刃牙(主人公です)に、
自身のプライドを満足させるためだけに動けない刃牙に向かって放尿を敢行するオリバ(ちょっと前はお茶目なおじさんでした)

…と、このどちらにも共感しようがない陰険かつストレスフルな展開は読者の精神を地獄の釜の底に追いやった。
あんなに一緒だったのに~♪

さらにバキから上述の「自由だという姿を見せつけないと自由だと感じられない(自由という言葉に却って縛られている)」という指摘を喰らう。

哀れなオリバは自分の自由を嗤われたことで精神の安定を加速度的に崩していき、
美貌を失っても確固たる自信を持った性格のまま堂々と生きているマリアと、見え透いた刃牙の挑発に苛立つ自分を比較し、
自身の心の弱さを嘆くあまり恋人の胸で声を上げて泣くなど、あまりにも幼く、繊細すぎる一面を見せている。
例え筋肉の鎧を纏おうと、心の弱さは守れないのだ。

それでもマリアのお蔭で精神を持ち直し、アンチェインの地位とプライドを賭け刃牙と闘う。
懲罰房で闘いを始め、その怪力でコンクリートの壁や鉄製のドアを破壊しながら互いに技や奥義
(人間タオル・剛体術・液体化・背中の鬼・宮本武蔵・ユーザーズイリュージョン・筋肉大移動・アルマジロ・パックマン・舐めたらいかんぜよ…etc)を駆使した戦いを展開。
そして最後には自分より体格の劣る刃牙と正面から殴りあった末、敗れる。
嗚呼、範馬の血(主人公補正)さえなければ…(血涙)

その後刑務所の一同の前で刃牙を新たな『Mr.アンチェイン』及び『ここ(刑務所)で1番強い男』とした上で
「それが俺は我慢できない」(ゲス顔)という理由でホールズ所長に刃牙の釈放を認めさせ、
結果として囚人でなくなった刃牙から自由な囚人としての「ここで1番強い男」の座を取り戻した。


これ以降の登場は勇次郎とピクルVS刃牙の結末に関して刃牙の勝利が是か否かを談義したり、
地上最大の親子喧嘩を高層ビルから俯瞰するなどチョイ役に留まっている。



◇刃牙道

第4部『刃牙道』では闘士たちに蔓延する『退屈』をオリバも感じているらしく、
欠伸をこらえながら筋トレの量を増大させている。



◇バキ道

相撲が題材となる第5部『バキ道』では、アメリカ人ながら神話の存在である野見宿禰の第二代の存在を認知しており、自身よりも力持ちであるという話を聞いて、憤怒の表情と共に恒例の筋肉操作で脱衣しながら刑務所から飛び立つ。
この頃になると、『バキ』時代でよく見せた鷹揚さが鳴りを潜めて『範馬刃牙』時代でよく見せた気難しい性格が目立つようになる。
そして、日本の徳川邸でサンドバッグを破裂させていた宿禰の前に、廻しを付けた力士の姿の戦闘態勢で現れるが、宿禰からは「なんとも救いがたく――痩躯な力士もいたものだ」と評された。

徳川達も見る中で、いざ相撲の立ち合いに入ったオリバだったが、パワーを使った全力の体当たりも手ごたえがなく、廻しを掴んで引き上げようとしても上げられず、逆に振り回されるなど子供のように扱われてしまう。
この理由について「三角形が重要な角力の相撲で見栄えだけの逆三角形は通用しない(要約)」と、オリバの特徴である逆三角形を完全否定するかのような指摘をされてしまった。
持ち上げられ続けたオリバも逆三角形の指摘は認めるが、それは相撲だけの話だと自然界のカマキリの話を持ち出して反論を行う。
話を聞いてフリーファイトを承諾し、オリバから相撲の合図の話を受けて語りだす宿禰の顔面に、なんとオリバは強襲的にパンチ。
「アレ?今ノハ「待ッタ」カナ…?」などと煽り気味にどや顔したのだった。


オリバは咬ませ犬なんかじゃないッッ!!!(担当コメント)


しかし、宿禰はそれも効いても居なければ不意打ちに対する怒りもなく、逆にオリバの呼吸に合わせられなかったと謝罪。
オリバはむしろ謝られたことが、血だらけなのに爽やかさが消えていないと不機嫌になる。
オリバの不機嫌を見て、命乞いでもすればよかったかと宿禰も返して互いに軽口を叩いた後、再度臨戦態勢に。
向かってくる宿禰に対してオリバは金剛力士像の構えで拳を頭に放つが、逆に拳を砕かれた上に身体を掴み捉われてしまう。

しかもただ抱えられただけでなく、世界一の厚い筋肉を超えて肋骨を掴まれての状態だった。
力も入らなくなったオリバに対して、命を実質掴んだ状態だという事から決着とする提案をし出す宿禰。
それを拒否する様に最筋力姿勢を始め出し、宿禰の忠告も無視して一気に力を入れ出したオリバだったが、異様な音と共に肋骨が人体が梯子から落ちた時みたいな勢いで完全粉砕されていく。

骨を一気に失った肉体は、力もなく大回転をして地面に叩き付けられたのだった。
宿禰は地面に投げられたオリバを手当てする様に指示し、叩き付けられたのが板の間でなく地面だったら死んでいただろうと感想を述べる。
オリバも宿禰に対して怒号を投げかけようとするが、人語のような声にもならず、倒れた肉体を僅かに震わせている事しかできないのだった……。

「咬ませ犬なんかじゃないッッ」と言われながらも、結果は咬ませ犬とすら呼べないような完全敗北。
オリバから勝負を仕掛けながらも自慢の力が通用せず、最期は警告を無視しての自爆のような形で肉体を破壊した姿に多くのファンは涙を流すような決着だったと言えるだろう。
ちなみに徳川のじっちゃんとは作中で初めてのコンタクトだったのだが当の両名は宿禰と宿禰vsオリバの戦いにしか興味が無かったのでお互いにスルーしていたのだが、やたらと徳川からの評価が高く〝魔人〟だとか〝怪物〟だとか〝鋼鉄の男〟だと評されていた。*3

その後オリバ本人は再登場していないが、
  • ぶちかましでオリバのタックル以上の威力を発揮し、実際に宿禰からも「さすが大関」と実力を認められた路上の現役大関
  • かつてオリバの剛力をも無力化した事がある合気を、怪力で無理やり打ち破ってみせた大関の巨鯨
  • オリバと同じく宿禰に肋骨を粉砕させられたのに直後の閉会式に平然と参列し、日を開けずにリベンジも仕掛ける等ピンピンしている横綱の零鵬
  • 新たな武術「噛道」を持ってして宿禰に挑戦し、拳の打ち合いを演じながらも結果的にはノーダメージでの圧勝を果たしたジャック・ハンマー
らの存在が追い打ちを掛けている。

インフレによって読者間での評価が落ち続けていたオリバだが、紅葉の元で治療とリハビリを受けたことによって身体が回復。
ジャックとの戦いの負傷から間も空いていない宿禰の前に現れ、駐車場でリハビリと称した戦闘を開始。
前回完敗し助骨掴みに対しては閂による対策を行いスープレックスで投げ、力比べも小指の欠損で宿禰の怪力が劣化したことで優勢に立ち、刃牙戦以来となるパックマンを披露して蹴り攻撃などの打撃を跳ね返す。
パックマンの捕食はサイス差で無効化されてしまうが、最終的にはぶちかましに対してパンチで対抗し、吹き飛ばされるも宿禰にダメージを与えて勝利した。
リベンジには成功したが、宿禰はジャック戦の影響で大きくダメージを負っていることから明らかに前回よりもコンディションは劣っていたため、負けを認める宿禰に対して備えが無かったとフォローするのだった。



◇アニメ『グラップラー刃牙』

TV放送版は幼年編~最大トーナメント編までの時系列を描いて完結したため、
オリバが登場することはなかったが、DVD化に際し、最終巻特典として特別編・『邂逅』サプライズ的に登場。
ベトナム戦争後、南米にて単身でグリーンベレーシールズデルタフォースを壊滅させた若き日の勇次郎への
カウンターとして送り込まれ、現地の麻薬カルテルを全滅させたついでに勇次郎にちょっかいをかけるも
興味を持たない勇次郎に逃げられるというもの。

これが二人のファーストコンタクトであり、すぐ後に勇次郎に降伏したアメリカが友好条約を調印するところで話は終わっている。
この話は完全にオリジナルエピソードであり、原作には無い。



◆余談◆

  • モデルとなったのは1960年代、権威あるボディビル大会『ミスターオリンピア』を3連覇した伝説のボディービルダー、セルジオ・オリバ。
    作者・板垣自身もボディビルには造詣が深く、第2部あたりを境に登場キャラクター達の筋肉造形も実際の格闘家のそれよりボディビルダーの身体を参考にしている感がある。
    バキフィギュア販売開始時のインタビューによると、本物のボディビルダーの筋肉はもっと凄いが、あんまりリアルに描きすぎると気持ち悪くなっちゃうのでこれでもまだ自重しているらしい…;

  • 死刑囚編で初登場したうえ彼も囚人なので誤解されることもあるが彼は死刑囚ではない。しかし罪状は未だ不明。
    ちなみに花山薫が主人公を務めるスピンオフ作品『バキ外伝 -疵面(スカーフェイス)-』によると、同時期にシンクロニシティの一部として電車を脱線させるほどの怪力を誇る痛風持ちの17歳、登倉竜士・通称レックスが脱走し暴れているが、彼も病院の入院患者であって囚人ではない。
    …いずれにせよ当時の東京は危険すぎる。

  • アリゾナ刑務所で描かれたオリバの弱さはどことなく板垣版『餓狼伝』のオリジナルキャラクター、クライベイビー・サクラにも似ている。
    こちらは生きる希望を喪失した母親に喜んで欲しくて己の肉体を極限まで鍛錬した究極のマザコン闘士(そういう意味では刃牙にも通じるものがある)。
    愛する女性に全てを捧げ尽くすために闘う・芸術に堪能・物質的には豊かな生活を送っているなどオリバとの共通点が多い。



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最終更新:2023年10月16日 15:50

*1 早い話、オリバは気分屋であり気を悪くさせなければ善人寄りの性格をしていると言ってもいい。良くも悪くも自由の負の側面を体現したかのような性格をしている

*2 なお、刑務所内にマリアを連れ込む許可と衣食等の補充、並びにオリバ自身が刑務所から外出している間にマリアの世話をする際には刑務所の力を借りる必要が有った為か、ホールズ所長はマリアの正体を知っていた模様。

*3 まあ、敗北こそすれ力量自体は本物の中の本物と言えるほど高いので当然の評価と言えば当然なのだが