艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆

登録日:2014/07/26 Sun 10:47:00
更新日:2023/12/06 Wed 18:43:19
所要時間:約 9 分で読めます




艦隊これくしょん-艦これ- 鶴翼の絆』とは、DMM.com提供のブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』のメディアミックス作品の一つ。
出版は富士見ファンタジア文庫。作者は内田弘樹、挿絵は魔太郎が担当。全6巻。



【概要】

『艦隊これくしょん-艦これ-』のメディアミックス作品の一つであり小説作品。
主人公は正規空母娘である、五航戦の「瑞鶴」。
艦これのメディアミックスでは非常にシリアスな内容になっており、
艦これリアルプレイの群像劇に近い『一航戦出ます!』や、架空戦記モノでも熱血スポ根軍人モノの要素が強い『陽炎、抜錨します!』に比べ、
とにかく切羽詰まったギリギリの攻防を描く架空戦記モノの描写が多いのが特徴。

艦娘の設定も「あの戦争」(第二次世界大戦)の記憶を宿した戦艦の九十九神や精霊、生まれ変わりと言う設定に近い。
その為に大なり小なりその沈没や戦争のトラウマを抱えた艦娘が多いので、それを如何に克服していくかと言う作品でもある。
特に2巻では大戦艦「大和」のキャラ崩壊レベルのトラウマを如何に乗り越えさすかと言う話でも有った。

作風が作風なのでギャグは控え目でもあるが、瑞鶴の薄い胸部装甲ネタはけっこう顕著。

本編以外にも『ドラゴンマガジン』や『電撃萌王』で内田氏による外伝が連載されていたが、こちらは残念ながら単行本未収録。



【あらすじ】

かつて、囮作戦において轟沈するまで無傷で生還して「幸運艦」と呼ばれた船、瑞鶴。
そんな瑞鶴が意識を取り戻すと、軍艦の姿ではなく少女の姿になっていた。
「艦娘」と呼ばれるそれになり、異世界に飛ばされた彼女。
はじめはわけもわからず右往左往するが、持ち前の負けん気で障害を越えていく。
そして瑞鶴達艦娘は「深海棲艦」と呼ばれる敵との闘いに挑んで行くのである…。


【主なキャラクター】

●空母娘

原作ゲームでは五指に入る運のパラメーターを持つ「幸運艦」の彼女が主役。
真っ直ぐで勝ち気で前向きであり、向上心が非常に強い。
加賀や飛鷹等のライバルや友人の榛名達の交流を経て、空母娘として逞しく成長していく。
ただし胸部装甲が(空母娘仲間では)RJ並に薄い事がコンプレックス。
最終巻では明石から「改二」と「改二甲」二つの改造案を提示され悩むも、姉共々「改二甲」への進化を選んでいる。

  • 翔鶴
瑞鶴の姉、真面目で落ち着いた優しい性格だが、ちょっと天然ボケの気がある。
瑞鶴よりも先に実戦を経験しており、瑞鶴に誰よりも期待しその成長を見守っている。
生前の「あの戦争」の記憶を色濃く引き継いでるため、「不幸艦」のジンクスに囚われていた。
1巻では非常に危うい自己犠牲タイプとして描かれている。
そんな風に描いたためか、原作ゲームにて翔鶴改二が実装された際に彼女が己の運命を乗り越える決意を固めた発言をした事に作者が涙したというエピソードがあったりする。
そして最終巻では「改二甲」改装後、妹の様子とその後輩葛城の存在から、ある決意を固める事に…。

一航戦の誇りが気高いクールな女性。
見た目や口調はクールだが表に出にくいだけで内心は人一倍感情が激しく情が深い。
色々と物議を醸す「五航戦の子なんかと一緒にしないで」は、
「無意識に過去の栄光に拘っていた瑞鶴を諌め、一航戦がどうとか五航戦がどうとかではなく瑞鶴らしい戦いをするのが大事ということを模擬戦を通じてわからせるために敢えて挑発した」
という解釈になっている。
上記のように大事なことを教えるためとはいえ初対面でいきなり挑発して模擬戦を吹っ掛けたり、
模擬戦にて自身の艦載機に為す術なく翻弄される瑞鶴に「次発艦させる機は模擬弾じゃなく実弾積んでるから、どうにかできないとお前ここで死ぬから」と極限状況に追い込んだりと(勿論本当に実弾を積んではいなかったが)、
とにかく不器用でめんどくさいな人として描かれた。
和解してからはひたすらに面倒臭いツンデレ先輩になっている。

  • 赤城
加賀の姉貴分にして、不器用な彼女のフォロー役。
ツンデレ加賀をからかうような場面も多いが、基本的に空母娘の筆頭として出来る先輩として描かれている。
一方大食いネタもキャラを崩さない程度に健在で、瑞鶴との初対面の挨拶の際も片手に大盛りご飯を持ったままで話し、
過去には出撃頻度が高すぎたために資材や食料を食い尽くしてしまったという。

自称「ライバル」の元客船軽空母。
加賀とは別な意味でプライドの高いキャラではあるが、やや空回り気味。
「軽空母である自分が格上に対抗するには死中に活を求めるしかない」という考えの持ち主で
少々無茶をしすぎるきらいがあるもののそんな自分を迷いなく貫いており、瑞鶴とは良き(一方的な)ライバル。
洋食好きで周囲の洋食店は全メニュー制覇済など、どことなくお嬢さんキャラでもある。

  • 隼鷹
飛鷹の妹、テンションの高い飲んべえ。
飛鷹がクールに決めようとする度に台無しにするムードメーカー。
いつもお気楽なようでいて先輩風を吹かせようとする飛鷹の痛い所を突いて軽く釘を刺しつつ
裏では瑞鶴に無茶しがちな飛鷹のフォローを頼むなど随所で思慮深い一面を覗かせる。

5巻で姉の雲竜・天城や空母仲間の大鳳と共に鎮守府に誕生した、姉たちに可愛がられる新米正規空母。
天城と共に先輩瑞鶴の指導を受ける中、瑞鶴へと姉天城への感情など自身の悩みを打ち明ける等で成長していき、瑞鶴を先輩として慕うように。

●戦艦

金剛型の三女、実質2巻中盤以降の主役。
控え目で礼儀正しいが心が強い艦娘、大和の復活の立役者であり、自身も大きく成長した。
瑞鶴とは似たポジションの妹と言う事であっさり友達になる。

  • 金剛
比較的、他のメディアミックスに比べ落ち着いた金剛デース。
責任感が強く妹想いのキャラクターとして描かれてマース。
改二になってpowerupしましたネー。でもteatimeは大事デース。

  • 比叡
原作では比較的子供っぽいイメージの比叡だが、本作では勝ち気なキャラクターとして描かれている。
終盤の大和との一騎討ちは見物。

  • 霧島
金剛4姉妹の末妹、冷静な頭脳派。
一方で「自分には似合わない」と漏らしつつも雄叫びとともに肉薄して接射を行うなど血の気の多いと言うかプライドの高い一面ものぞかせる。

1巻の終盤で「自分を沈めろ」と言う衝撃的なデビューを果たす。
2巻から本格的にストーリーに絡む超弩級戦艦で実質的なヒロイン役。
ゲームではややマイペースでほんわかした彼女だが、本作ではかなり卑屈。
「あの戦争」での自身の不甲斐なさや犠牲になって沈んだ僚機の事が負い目になっていた。
ただし、内に秘めたプライドと責任感は高い。
最終的にトラウマを乗り越え出陣、ラスボスと相討ちとなるが…?

●軽巡洋艦

  • 那珂
毎度お馴染み川内型姉妹の3番艦なアイドル艦娘。5巻のメイン級の一人。
本作では本土でもアイドルとして有名で、本格的なアイドル活動の手始めとして戦地慰問コンサート兼強化合宿のためトラック泊地派遣の「T部隊」入りして同地に移動。
だがその一方で4巻後護衛任務中に自身が盾になってもなお守るべき船を庇い切れず乗客の子供達を死なせてしまったことから、戦闘に出る事が怖くなり気遣った姉妹からあえて戦いから遠ざけられアイドル専業を勧められる状況だった。
それでも前世の自分が最期を遂げた地で起きた深海棲艦との戦いで他の姉妹が戦う中恐怖に震えるも再び立ち上がり、前述の護衛任務の際の生き残った船員からの激励や明石と香取による改二艤装等周りの声に背を押されて…。


●艦娘以外

鎮守府の責任者で艦娘たちを率いて艦隊の指揮を執る青年。
艦娘へのセクハラ癖がひどく、瑞鶴との初対面では正面衝突&生パイタッチというラッキースケベを敢行し爆撃を受けた。
艦娘たちに人間らしい幸せを与えたいと考えている心優しい人物だが、
指揮官として不本意な命令を下さねばならない場合でも艦娘たちには自身のものとして命令を下し、全ての責任を背負う覚悟も持ち合わせている。
セクハラもあえて憎まれ役になることを意図してやっているらしいが根がスケベなことも確かであり、個人的な欲望の正当化である部分も否めない。
ただし潜水艦娘達酷使する。慈悲はない。

  • 抜猫(ばつねこ)
鎮守府内で飼われている白と黒のぶち猫。愛宕曰く鎮守府の次席指揮官。
目覚めたばかりの瑞鶴のブラジャーを盗んでいった。
色合い的にラスボス妖怪猫土下座の猫。

  • 妖精
鎮守府内に住み着いている小さな妖精で、何十人もいる。
日常での仕事や戦闘時の武装の操作などで艦娘たちを手助けしてくれるがその正体はよくわかっていない。


【世界観】

※他メディアミックスにも言える事ですが、この作品における設定であって、『艦これ』全体での共通設定ではありません

  • 社会情勢
舞台は日本とほぼ同じ文化を持ち一部日本と同じ地名を持つ日本に良く似ているが日本ではない島国。
突然現れた深海棲艦により世界中の海上運送が遮断され、航空輸送も空母級の存在により困難となっており
特に島国かつ貿易国家であるこの国は海上交通網が封鎖されたことで物資不足が深刻化、存亡の危機に立たされている。

  • 艦娘
「『あの戦争』において活躍した軍艦のもうひとつの姿」「深海棲艦と戦うために生み出された」とされる女性たち。
見た目は普通の人間とほぼ同じだが艤装を展開することで水上航行能力や武装などが使用可能となり、
装甲と呼ばれるバリアを展開することで砲弾すら耐え抜くほどの高い戦闘力を発揮することができる。
艤装は自分の意思で出し入れ可能だが破損の修理や物資の補給、装備の開発などは外部からの手助けが必要。
詳細は不明だが武装や装甲には『霊力』が使われており、同等の能力を持つ深海棲艦に対抗できるのはほぼ彼女たちのみ。

艦だった頃の記憶をある程度保持しており、個人差はあれど大なり小なり過去の因果に影響を受けている。
この因果の力は現実すらも捻じ曲げてしまうらしく、一例を挙げると『幸運艦』という逸話を持つ艦は
明らかに他の艦に比べ敵に狙われる確率が下がり被弾率も少なくなることが確認されている。

10年ほど前に世界中の海に突如出現した正体不明の敵性存在。
目的は不明だが海洋を支配する意思を持っており、その脅威は沿岸部にまで及び始めている。
艦娘と同等の能力を持っているため艦娘以外ではほぼ対抗できず、加えてその物量は圧倒的。
他の勢力を発見すると問答無用で攻撃してくるため対話は不可能。

原理は不明ながらある程度の範囲内に7人以上の艦娘が集まると深海棲艦に位置を察知される確率が跳ね上がるため
待ち伏せを避けるために同時行動する艦娘の最大数は6人までとされる。

  • 鎮守府
艦娘たちの前線基地であり活動拠点。
艤装の修理や各種物資の補給、新兵器の開発などの軍務を行う工廠と
提督と艦娘たちの暮らす生活拠点が存在し、単に鎮守府と呼ぶ場合は生活拠点を指す。
元々の鎮守府は工廠に隣接した軍事基地になる予定だったが提督の意向により
日常生活を過ごす場として港町近くの老舗旅館を借り上げて現在の鎮守府が設けられた。
工廠は湾の奥の人気の少ない場所にあり、旅館と行き来するにはバスを使う程度の距離がある。

鎮守府には本館に提督の執務室や艦娘の生活する客室のほか
大食堂「豊川」を始めとする食堂に加えて甘味処や居酒屋、多数の温泉などの保養施設があり、
別館には宴会場として使われる100名以上収容可能な大広間や訓練のための弓道場などがある。
特に温泉は艦娘たちに大好評で、一番人気は唯一の露天風呂「竹林の湯」。

工廠では艦娘だけでなく人間の将兵も働いているが
鎮守府では可能な限り自助努力する方針を掲げており食事の準備など日常業務は非番の艦娘の交代制。
旧海軍式(正確にはそれを受けた海上自衛隊式)に則って金曜日の夕食のメニューは必ずカレーライスと決められている。

  • 『あの戦争』
はっきりとは明言されてはいないが、太平洋戦争(第二次世界大戦)のこと。
この世界の住人たちにとっては別世界の出来事だが艦娘たちからの伝聞でおおよその内容は把握しており、
軍上層部は艦娘たちがかつて辿った運命とその因果から発生する『力』を軍事利用しようと考えている。



追記・修正は、日々苦労している潜水艦娘を労う気持ちでお願いします。

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