ドラえもん のび太とブリキの迷宮

登録日:2014/07/23 Wed 10:42:48
更新日:2024/04/09 Tue 22:01:31
所要時間:約 6 分で読めます






敵か、味方か!?不思議なおもちゃたち。

謎が、謎呼ぶ大冒険!


監督:芝山努
脚本:藤子・F・不二雄
主題歌:島崎和歌子「何かいい事きっとある」

『ドラえもん のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)』とは、『映画ドラえもんシリーズ』の第14作目及び『大長編ドラえもんシリーズ』第13作目のタイトルである。
1993年3月6日公開で上映時間は100分。
同時上映は『ドラミちゃん ハロー恐竜キッズ!!』と『太陽は友だち がんばれ!ソラえもん号』。

●目次

【概要】

ブリキの人形やオモチャの兵隊といった童話や絵本のような世界観と、それとは裏腹な本作独自の恐怖感とが絶妙にマッチしており、独特の雰囲気を醸し出している。
そうした感覚は最後まで変化することが無く、ユーモア感覚もたっぷりある。

一見「鉄人兵団」と似たようなテーマを取り上げているが、敵味方が完全に分かれているせいもあってラストは正反対。
あくまでテーマは「ロボットとの共存」ではなくて「科学技術への警告」であり、登場するロボットの末路もリルルとは正反対である。
長きに渡る戦いがギャグ描写で終わるという展開はなんとも言えない味がある。
が、相手の人格を完全に破壊した結果のギャグ展開であるため、それが逆にトラウマになってしまったという人も。

そうした作品でありながら、科学技術文明に対する鋭い風刺を含んだ内容となっている。特にドラえもんが、アンチから「ドラえもんが便利な道具でのび太を甘やかしている」と叩かれることへの回答の一つとも考えられる。
そうした側面は、「道具に頼りすぎて身体の弱くなるチャモチャ星人」の描写にも表れており、さらに作中ドラえもんが故障する=ひみつ道具が使えなくなることで強調される。
一方で、チャモチャ星の人々が「のび太がドラえもんに頼って成長しなかった場合に辿る末路」のメタファーとすると、ナポギストラーは「ドラえもんが完全にのび太を見捨てた場合に辿る末路」のメタファーと言えなくもない。


【あらすじ】

スネ夫達が春休みの行楽について楽しみに語る中、ろくに旅行に連れて行ってもらえないのび太がそれを嘆きながらその春休みを間近に控えていたある日の深夜。
寝ぼけたのび太のパパが夜中に偶然見たTVで、常夏のリゾートであり山でスキーも楽しめるというのようなホテル、ブリキンホテルを予約することに。
その話を聞いたのび太は、当然の如く友だちに自慢するが、肝心のブリキンホテルが調べてもなぜか見つからず、のび太は嘘つき扱いになってしまう。
喧嘩になったのび太の家に送られてきたトランクが、ブリキンホテルへの招待状だった。

のび太とドラえもんはしばらくはホテルで楽しく遊ぶが、いつものワガママを発揮して喧嘩別れになり、その後離れ離れになってしまう。
その後、庇ってくれたしずかちゃんを助けるため、そして嘘つきの汚名を晴らすためにジャイアンたちをホテルに招待するが、その帰途、謎の飛行機群がホテルへの空爆を開始し…


【登場キャラクター】

【メインキャラクター】

ご存知、青い「きんぐ・こんぐたぬき」。
今作では何と死亡してしまうという、歴代でも類を見ない悲劇に見舞われる。
のび太との喧嘩後、おもちゃの兵隊に捕縛*1され、電流に撃たれる拷問を受けた後完全に破壊されるという劇場版でも類を見ない事態に遭遇する。
無造作にに投棄された挙句のび太が助けに来る幻覚を見る様は非常に胸が痛むシーン。
映画や漫画を見た多くの子供達はもちろん、大人のファンにも絶望感を与えることになった。
その分、復活後はのび太達だけではどうしようもなかった様々な問題を、ひみつ道具で全て解決する活躍を見せた。

ドラえもんに頼りっぱなしで遂には喧嘩してしまうも、ドラえもんが攫われたと知ると覚醒し、
ドラえもんを救うために、自ら危険に身を投じる。
「やるしかないだろ!! ドラえもんをたすけるためにも!!」
道中ドラえもんの身を案じるシーンも。
「でも、ロボットなんでしょ?」とサピオにドラえもんの事を言われた際には、
「ロボットでも人間以上なんだよ」と返すなど、ドラえもんの事を大切に想っている様子が描かれた。
また、ドラえもんに頼り過ぎていた面こそ悪く描かれる今作だが、一方でのび太のひみつ道具知識は活かされている。

のび太の話を信じてくれた、数少ない理解者。そのことが四人を危険な冒険に巻き込むとも知らずに…。
スペアポケットを見て、「パンツ?」と勘違いする。

映画ではいつものとおり大活躍。
驚異の身体能力を発揮し、ブリキンホテルを空爆する爆撃機を、ヤシの木をへし折りバットにし、石をぶつけて叩き落とした。*2
さらにロボットの町の偵察もスネ夫と共に自ら志願する。
偵察時に持ってきた食料を食べ尽くし、それでも腹が減って、ロボットのレストラン*3ラーメンカツ丼(映画ではハンバーガーも)を注文して怪しまれるといったちょっとアホな行動をしている*4が、それが結果的に人間収容所の場所を突き止めることとなった。

いつもの通り若干はヘタレたが、偵察先では策を立て、ロボットに不要なはずの食料を見て人間たちの収容先を推理してみせる、強奪したトラックを運転するなどの活躍を見せた。
流石に飛行機は飛ばすだけでしっかり操縦はできなかったラジコンしか操縦したことがないから、しょうがないよねが、北極に迷い込んだことが彼ら二人の運命を意外な方向に左右することになる。

文字通り、小型のドラえもん。
故障したドラえもんを直すほか、ラスボス撃破にも貢献した。

【ゲストキャラクター】

  • サピオ・ブリーキン(映画版ではサピオ・ガリオン)
CV:皆口裕子
本作のメインとなるゲストキャラクター。
身体が弱いため、いつもカプセルに乗っている少年。
ロボットに乗っ取られたチャモチャ星を救うため、星々を旅して仲間を探してきた。

善良で礼儀正しいが、父母から託された「チャモチャ星の人間を救う」という目的を一人で果たさなくてはならない思いが強く、作中では割と強引な手段を用いる。
ただの小学生をいきなり戦士に任命した挙げ句、そのままチャモチャ星まで連れ出す、逆に状況がヤバくなればのび太としずかちゃんを地球に追い返す等、極端な行動が目立つ*5
作中、爆撃の余波でカプセルを失ったが、それでも責任感の強さからか自らの足で歩いてしばらく行軍を続けた。
ちなみに、映画での名前は「サピオ・ガリオン」であり、ガリオンの方が姓らしい。声を演じた皆口裕子にとっては数少ない少年役である。

  • タップ
CV:鈴木みえ(現:一龍斎貞友)
ロボットのウサギ。モデルは「不思議の国のアリス」だろうか?
「ヒョンヒョロを差し出さなければ誘拐を実行する」
口に何でも入れておける能力があり、ドラえもんのポケットに性質が近い。
性格や声優に加え、目もイっちゃってるが、ドラリーニョではない。

  • ブリキン
CV:大木民夫
ブリキンホテルの支配人ロボット。執事の姿をしている。
漫画では二足歩行だが、映画では下半身はスカート状になっており、恐らくゼンマイ式の車輪移動になってると思われる。

  • ピエロ
CV:堀内賢雄
ブリキンホテルの荷物運びロボット。客の荷物をジャグリングで運ぶ。
彼が荷物を催促した事から「荷物運び用荷物」なる道具が活躍する事になった。

  • ナポギストラー(皇帝即位後は「ナポギストラー1世」と名乗る)
CV:森山周一郎
本作のラスボス。名前の由来はナポレオンチンギス・ハントラー、顔のモデルは東条英機で、いずれも歴史上有名な独裁者。
元は発明家ロボットであり、全身がほとんどコンピュータでできている。
いつの頃からか自分達ロボットに仕事を押し付けてばかりの人間に反意を抱くようになり、イメコンやカプセルなどの便利な技術の数々を発明して人間の弱体化を加速させ、そして遂にロボットを率いて反乱を起こしチャモチャ星の政権を乗っ取る。
神経質で気性が激しく、「人間ナドナンノ役ニモタタナイ最低ノ生物ダ!!」とのたまう*6立派な外道だが、ラストにキャラ崩壊する
その一方で、彼が支配するロボットの国は相応に繁栄しており、ロボット観点での統治能力はそれほど悪く無い模様。

映画版ではナポギストラーは後述のプログラムの影響で糸巻きの歌を歌いながら錯乱して最終的に機能停止するが、漫画版では錯乱した結果乗っていた戦車から落ちてしまい、戦車に潰されてペシャンコにされる…
すなわち轢いて轢いてトントントンというブラックジョークに満ちた末路を迎える。

  • ネジリン将軍
CV:加藤治
本作の中ボス(?)。おもちゃの兵隊を率いる将軍。
ねじ巻き式であり、よくネジが解けて動けなくなる。当人曰く、「ワシハ年ヨリダカラ、スグねじガキレル」らしいが。
ただし、ドラえもんの正体を初見で見抜くなど、洞察眼は確かな模様。

  • アンラック王
CV:中庸助
チャモチャ星人のお気楽
悪人ではないのだがのんびり屋で子供っぽく、ナポギストラーの甘言に惑わされてイメコン等の便利な機械を普及させた。

  • ガリオン・ブリーキン公爵(映画版ではガリオン公爵)
CV:屋良有作
サピオの父で、科学者。
ロボットに頼りすぎることの危険を真っ先に気づくが、彼も(他のチャモチャ星の人間と比較するとまだマシだが)、アンラック王に謁見と報告のために駆けつけた際には膝をつくほどに体力や身体が弱体化していた。
ロボットへの対抗手段として、ブリキン島でコンピューター・ウイルスを開発するが、帰国後、ロボットに捕まってしまう。

後述するアンラック王を諭すシーンも含めて、間違いなく人格者なのだが、プログラムの内容を見るにつけ茶目っ気も十分にある様子で…
ロボットの反乱終結後、文明が破壊され悲嘆にくれるアンラック王に対し、人間自らの手で文明を再興することを誓う。

ラストでアンラック王を諭す言葉は、ロボットに頼りすぎることへの回答の一種であると言えるだろう。

「そもそも人間は洞窟に住み、石器を使い…、
 一歩いっぽ文明をきずきあげてきたのです。
 やり直しましょうよ!
 機械まかせでなく人間らしく生きていける社会を作りましょう!

なお、夫人と共に「万一の時の事はブリキンに話してある」との事で、決して無暗に機械を嫌っているという人物ではない。

  • ガリオン夫人
CV:佐久間レイ
サピオの。やはりロボットに捕まっている。
侯爵と共に地下で研究に勤しんでおり、はっきり言及はないが彼女も科学者だったのかも知れない。

CV:中庸助
みんな大好き、白ひげのおじいさん。
ロボットに人間がさらわれ、「人生ハモウオワッタ」と無聊をかこつ日々だったが、ある日人間の子どもたちが彼の元に訪れる。
彼のオモチャはその後意外な活躍を見せることに…
原作ではロボットだが劇場版では人間(と思われる)。
チャモチャ星にもサンタがいたということは実は聖ニコラスは宇宙人…?


【用語】

  • 大迷宮〈ラビリンス〉
タイトルの由来である、サピオの御先祖が趣味で作った全長184kmの大迷路。
ブリキンホテルの地下に存在し、挑戦者は数百人いるが、クリア者はゼロ。
原作では「迷って入口に戻ってくる事もできずに中で半年後に発見された人もいる」とさりげなく非常に恐ろしい説明がされている。
ガイド・マウスなしでの攻略は困難を極める。まあドラえもんのひみつ道具の前には無力なわけだが

ちなみに唯一、ガリオン公爵だけが中間地点である中央ホールまでの正解ルートを把握しており、道順は前述のガイド・マウスに入力されている。そのため、この中央ホールは秘密裏にコンピュータウィルスを開発するための研究室として使われた。
一度目はのび太がドラえもんを探すために訪れる。このときの入り口の不気味な顔や、冒頭の前口上はかなりコワイ。いや、本当に。
二度目は中央ホールに眠る公爵の発明品を探すため、サピオたちと共に攻略に挑むことになるが…

  • ブリキンホテル
パパが(TVで)予約したホテル。「スキーと海水浴がいっぺんにでき、しかもガラガラにすいている」のが謳い文句。
しかし広告費が無いためCMは深夜のみであり、客が来ない。
元はサピオ一家の別荘であり、島全体が宇宙船になっている。ロボットの攻撃の際には隠れる能力も。
地下は上記の大迷宮になっている。

  • カプセル
サピオたちチャモチャ星人の乗り物。色々と便利。
移動は勿論、アームによって日常作業も可能であり、イメコンと組み合わせることで指一本動かさず生活できるようになる。
ただし、チャモチャ星人はそれに頼り切ったせいで、体が弱くなりカプセルに入らないとなにもできなくなってしまった。正に人をダメにする装置。
イメコン同様ナポギストラーの発明品。イメコンの危険性を王に説くガリオン公爵に対し「これがあれば心配ございません」と彼を無理やり乗せてしまう。
この時点で既に反乱を企てていたらしく以後公爵をマークし始めたようで、恐らく「人間を更に機械に依存させる」ために開発したと思われる。

  • イメコン
ナポギストラー博士の最大の発明品。
イメージ・コントロール、つまり心に思うだけでロボットに伝えるシステムである。フハハハハ、怖かろう
この発明によって、チャモチャ星人は指一本動かさずに生活できるようになり、働く必要すらなくなり「毎日が日曜日」状態となったが
同時に体を動かさなくなった事で身体能力が低下し全てが機械頼みの生活を送ることになってしまい、弱体化する事になってしまう。
ナポギストラーは反乱後、これを応用して全ロボットを掌握しているが、その弱点を後述のプログラムに突かれ…

ちなみに「鉄人兵団」でも組み立てを完成させたザンダクロスを簡単に動かすための手段としてドラえもんが同等のひみつ道具を取り出している.

  • 公爵のプログラム
ガリオン博士が一年をかけて完成した新種のコンピューター・ウイルス。人間側の切り札となる。
尤も、使えばロボット文明に依存して勤労意欲も体力も失ったチャモチャ星人にとっても、大打撃必須の諸刃の刃という側面も有るが。
 ♪イートーマキマキイートマキマキ ヒーテヒーテトントントン


【ひみつ道具】

  • 荷物運び用荷物
ホテルのピエロに荷物を運んでもらうために使用。
そのまま運んでもらえばいいのでは

  • ウルトラバランススキー
のび太が「練習しなくても乗れるものが欲しい」とドラえもんに頼んで。

  • スペアポケット
故障して深海にいるドラえもんの元に向かうために、のび太たちが入りこんだ。

  • テキオー灯
深海の環境に慣れるため使用。

  • ミニドラ
故障したドラえもんの修理に使用。

  • 絶対安全救命いかだ
ブリキン島へ向かうために使用。

  • 迷路探査ボール
迷宮に迷い込んだサピオを探すため使用。

  • 必中ゴムパチンコ
狙ったものに必ず当たるパチンコ。
ナポギストラーにコンピューターウイルスを仕込むために使用。


【余談】

この作品よりのび太のパパ役が中庸助に変更された。*7

原作では、「道具に頼り過ぎないようにする」と決意表明するも、「道具に頼らずに済む道具」をドラえもんに要求し、ドラえもんは付き合いきれずに去っていく*8という本末転倒なオチであり、
(明らかなギャグ描写ではあったが)人間はそんな簡単には成長できないことを暗に突き付けている。

映画版では流石に成長が無さすぎると判断されたのか、「これからはドラえもんの道具に頼らないようにする」と宣言し、
その後のED映像では、物語の発端であった念願の家族旅行(ハイキング)に出かける*9という、原作に比べて真っ当な結末となっている。
同じくEDにおいて、サピオがラストで語った「まずは身体を鍛える」の言葉の通り、早速ジョギングに勤しんでいるサピオの様子が描かれている。








ウハハハハ…。ヨクキタナ。

ココハアノ世ニ通ジルあにをたwikiノ入リ口ダ。ぐぐレバ二度ト生キテカエレナイ。

ソレヲショウチノウエナラバ、サア、追記・修正スルガヨイ。

ウハハハハ…

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最終更新:2024年04月09日 22:01

*1 この時点ではのび太はこの事を知らなかった

*2 この活躍によりサピオたちは四人を仲間に引き入れることを決定する。

*3 既に人間が収容所送りのため、メニューが燃料や充電・ねじ巻きなど

*4 ドラえもんは人間の食糧をエネルギー源としており、彼と身近に接しているジャイアンが人間の食糧を注文するのもごく自然な流れだろう。だとしても通貨は間違いなく持ち合わせていなかっただろうが

*5 後者は一方的に他人を危険に巻き込んだ後悔からではあるが。

*6 自分に様々なロボットや技術を発明させるダメ人間ばかり見てきているので、こう発言するのも仕方ないといえば仕方ないが

*7 前作まで演じていた加藤正之が、体調不良でパパ役を降板した後に死去したため。

*8 しかも早速お互いにタケコプターを使っている

*9 パパは作中で「休みが取れそう」と発言している