愚地独歩

登録日:2014/07/22 Tue 19:53:24
更新日:2024/04/12 Fri 23:08:06
所要時間:約 13 分で読めます





「なァーつええッッ」

「夏恵ェッ 見てっかッッッ」

「今度は遊ばねェからなァァッ」

「ちゃ~~~~んと見てんだぞォッッ」

「夏恵の~~だ~~いすきなスーパードッポちゃんがァ」

「ビッシィーーーッとキメるぜェッッ」

愚地独歩(おろち どっぽ)は、板垣恵介の漫画作品・バキシリーズを代表するキャラクターの一人。
スピンオフの『バキ外伝 拳刃』では主役を務めている。

CV:飯塚昭三(OVA)、麦人(テレビアニメ第1作)、菅生隆之(テレビアニメ第2作以降)

●目次

【概要】

バキシリーズの第一作『グラップラー刃牙』、その第一話から登場しており、主人公と並ぶ最古参キャラクター。
日本最大のフルコンタクト系空手集団神心会会長*1で、元祖愚地流空手十段。

モデルは極真空手の生みの親、大山倍達*2だが、ファイトスタイルは異なる。

「世界一の空手家・最強の空手家・最強空手の神髄・古武道も使う」と設定されている。(2015年3月の刃牙道5巻の帯・2013年8月の独歩のTシャツ・2013年6月の独歩の重版解説より)

伝説の空手家であり、「武神」「虎殺し」「人食いオロチ」等二つ名は多い。
特に「虎殺し」は独歩の代名詞で、神心会の看板にも描かれている。「誰も信じちゃくれねェ」と当人は自嘲気味に語っていたが、本作がティラノサウルス武器火薬・果てはアメリカ軍とも戦う異次元バトル漫画化して以降はずいぶんとささやかな設定になってしまった…(なお、このシベリアトラとの戦いについては前述のスピンオフ作品で描写されている)
じっちゃん!読者は一切疑わずに信じてるから!

地下闘技場ではOB…だったが、勇次郎戦以降はメーン・イベンターとして復帰している。


【ファイトスタイル】

完全に正統派の空手家。その技術に対する信仰は絶大で、他の格闘技の技術は一切使用しない。
節操なくいろいろパクッたり色物化したりする輩とは違うのである。
また真剣勝負へのこだわりから、スポーツ空手とは一線を画した完全な武術空手であり、ほとんどの空手団体で禁止されている頭突きを使う他、古流武術に由来する暗技の数々も使いこなす(その内容も、頭蓋骨を断裂させる六波返し・生爪をむしる・恥骨を粉砕骨折させる等、えげつない物が多い)。
肉体そのものも頑丈だが、絶対防御の前羽の構えや火炎をも防いでしまう廻し受け等、受け技の高度な技術力を持つ。
また、素手で人体を破壊する危険過ぎて存在してはならない技術を使えるが、それを使うことは少ない。

また天才・奇人・変人・人外etc万国ビックリ人間ショー化しているバキ・シリーズには珍しく、天才ではない。彼の実力は、「基本技を五十年…毎日千本以上続けているんだよ…」という言葉に代表される、磨き抜かれた技術と鍛え抜かれた肉体とに裏付けられている努力の人である。
その実力は、バキを相手に「今からここを狙ってこの技を出す」と宣告し、その上で防御も回避も許さずヒットさせるほど。
続けてバキに語った、「それができる馬鹿なら誰だって今のような真似ができる」「たとえ相手が地下闘技場チャンピオンでもね」の台詞は、彼の象徴そのものである。

…ここまで書くとなんだか堅苦しいおっさんを想像しがちだが、実際の彼は根っからの江戸っ子気質で、飄々とした態度は剽軽そのもの。普段の顔はぶっちゃけ話のわかる気のいいおっちゃんである。だが、そういうキャラクターだからこそ、真剣勝負の際の底冷えがするような殺気が迫力を持ち、後述の「黒さ」も印象を残すのである。

「才能のない男が地道な鍛錬でただひたすら強くなる」「最強への飽くなき意志」「真剣勝負への真摯な態度」「空手という技術への絶対的な信仰」「超えるべき偉大なる父親像」等々、作者板垣恵介の夢と希望と好みがたっぷり詰まったキャラクターであり、読者人気も非常に高い。だが、そこは格闘ギャグ漫画とも評されるバキ・シリーズのこと、ただそれだけで済むはずはなかった。

まず第一に、擁護しようのないほどの卑怯者だということ(誉め言葉)。
「勝ってナンボの愚地流」の言葉通り、奇襲・不意打ち・死んだ振り・口三味線と何でもござれ。特に心理戦で言葉巧みに敵を追い詰めてゆく姿は老獪を通り越して狡猾ですらある。「きたないさすが独歩きたない」のコメントはある意味デフォ。
スピンオフでは盲目である事以外は全てに於いて己を上回る相手である空手家・繰神怜一に対してボロボロに追い詰められるも、一瞬の隙を狙って両目の点穴を突き強引に視力を与える事で、暗闇の世界で過ごして来たが故に初めて見る「光ある世界」にパニックを起こした相手から事実上の降参を受けるという、ぶっ飛んだ形で勝ちを掴み取った事も。

さらにバキではよくあることだがかませ犬的な扱いが多く、負け試合がかなり多い点。
ただし、後述するがこれはもちろん彼が「弱い」からではない。(読者)人気も実力も確かなため、新キャラ登場の際にはまず真っ先に彼が駆り出されるからである(ヤムチャでなくてべジータ的なかませ、といえば理解されるだろうか)。
実際のところ敵キャラに一方的にやられるという描写は(そんなに)なく、花山薫とともに作中屈指の名勝負製造機である。作中最強(公式)の範馬勇次郎の最初の本格的な被害者が彼であったこともそれを裏付けている。「負けに次ぐ負け」という戦績も、作者の裏返しのキャラ愛であると言えるだろう。

◆主な使用技

  • 空手の技
特に正拳突きや廻し受け等、攻守共にシンプルな基本技を使う事が多い。
だが上述の様に長年空手漬けの日々で磨きに磨き抜いた技巧から繰り出される威力と鋭さは最早常人の域では無く、まだあまりにも主人公補正が極端じゃなかった連載初期の頃とはいえ刃牙に対して予め打つ、蹴る所を宣言してから放ってるのに彼が防御も回避も出来なかった程(寸止めではあったが)。
防御技も対ドリアン戦にてドリアンがガソリンとライター、そして強靭な肺活量を使った火吹きすら動かす両腕が美しい真円を描く程の鋭い廻し受けを以て容易くかき消してみせた。

  • コツカケ
古流空手の防御技の一つで、腹筋の操作により急所の一つである金的を体内に隠して守る。
独歩曰く「古い空手家の常識」らしい。

  • 散眼
古代インド拳法が発祥とされる、カメレオンのごとく、左右の眼球を別々に動かすことにより、視界を広げる技。

  • 飛び足刀蹴り
主に奇襲で使用。相手の足の甲を攻撃する他、時には耳をそぎ落とすえげつない攻撃をする事も。

  • 虎口拳
人差し指と親指を広げた手の形を作り、その状態で相手の眉間を鋭く突く事で一瞬だが視力と判断力を奪わせる牽制技。
一見単なる目潰し技に見えるが、某公園最強の生物曰く「似て非なるもの」との事。

  • 風摩殺
相手の頬に掌打を浴びせ顎を外す。
ダメージ狙いと言うよりは人間が力を込める時に本能的に必ず行う動作である「歯を食い縛る」事を封じ、弱体化と動揺を誘うのが狙い。

  • 六波返し
五本の指全てで相手の頭頂部を包み込む様に突き、頭蓋骨の縫合を外してしまう危険技。
当然頭蓋骨という守りを失った脳が直接危険に晒される。

  • 菩薩の拳
独歩の奥義とも言える技。その正体は人間がこの世に生を受けた時、初めて作る手の形に拳を作って突きを放つというもの。
ある日「真の正拳とは何か」と考えながら自宅の縁側でウトウトしていた時に、飛んできた虫を反射的に潰した時の手の形を見て開眼に至った。
この技の最大の特徴としては本来あらゆる武術の技に多かれ少なかれの差はあれど、存在する筈の「殺気」が一切無いというとんでもない点。
故に対渋川戦にて初披露した際には彼をもってしても全く返す事が出来なかった。
なお、彼のモデルである大山倍達も、「正拳の握り方は本当にこれでいいのか」と悩んでいたことを自著で語っている。

  • 存在してはならぬ「技術(ワザ)
正式な技名は不明。
上述の菩薩の拳が独歩の「空手家」、つまり表の面の集大成ならばこちらは裏の面、即ち命のやり取りが常識の古流武術家としての集大成とも言えるべき危険技で、よほどの非常時でなければ使うことはない。
作中で自暴自棄のあまり連続通り魔を起こそうとした男を一喝して制止し、そのターゲットを自分に向けさせた時にカウンター気味に使用。一瞬かつ素手で男の肋骨と喉仏を引きちぎり、とどめに放った掌底で金的、膀胱、恥骨を纏めて砕くという、「刃と同等」と称される程の手足を全力で使いきればどうなるかという事をむざむざと見せ付けた。
その後流石に過剰防衛を疑われてお巡りさんの世話になり、迎えに来た克己に怒られたが。


【来歴】

◆地下闘技場編

登場時期は古く、グラップラー刃牙の序章・地下闘技場編から登場。というか、バキのスタートは範馬刃牙が神心会のトーナメントに挑戦するところから始まる。

突如乱入してきた範馬勇次郎に対し、既に地下闘技場チャンプだった刃牙を差し置いて対戦カードを組ませる。「親父には勝てない」(+金的蹴り)という刃牙に対し、その実力を見せ付けて力ずくで納得させる。

その時点では間違いなく作中最強カードだった独歩vs勇次郎戦は…まぁ、相手が勇次郎なので結果はお察し。

だが、試合自体はまだ勇次郎が人間やめていなかったのでかなりの善戦を見せる。
予告もなしに子泣き爺の真似をするいきなりの奇襲、さらに前羽の構えや散眼など空手や古武道の高等技術を駆使して追い詰めるも、本気を出した勇次郎にはかなわず、完全敗北(片目失明&一時心臓停止)。
しかし勇次郎に切り札の鬼の貌まで使わせたことを高く評価され、「武神の名に恥じぬ男…」と最上級の賛辞を受けることになる。
この試合は作中最序盤ながらも、いまだにバキ全編のベストバウトに掲げる読者は多い。

この時点で独歩は「ピークを維持できるのは今年で最後だろう」と言っているが、実際はこの後どんどんパワーアップしていくためあまり信憑性はない。
フィジカル面はともかく技術面はさらなる研鑽によってか明らかに上昇している。
というかピーク発言から現在まで一年程度しか経っていないので、どちらにしろその高い実力は健在。
っていうか刃牙道にて筋量が増大していることが刃牙の口から語られているので、もはや完全にピーク(笑)である。


◆最大トーナメント編

最大トーナメント編でも当然続投。下記の紹介分もトップバッターであり、気合いが入っている(刃牙以外でまるまる1ページ貰えたのは彼だけ)。
さらに勇次郎に負けたため、養子であり空手家の愚地克巳もトーナメントに推薦する。


「虎殺しは生きていた!!」
「更なる研鑽を積み人間凶器が甦った!!」
「武神!!」
「愚地独歩だァーー!!!」

初戦はバウンサーにして地球一のタフガイ(自称)、リチャード・フィルス。
(筆者註:バウンサーとは聞きなれないが、アメリカの酒場とかで酔った客とかを摘み出すために雇われる用心棒のことである)
タキシード姿で登場したフィルスに対抗してジャケット姿で登場し、「ジョン・ウェインがやるような西部劇の派手なブン殴り合い」が好きらしく、対戦相手のテレフォンパンチまで受けるファンサービスを披露するが、試合自体は喉への貫手一発で撃破、余裕の勝利…
かと思われたが、実際はかなりのダメージを負い、愛妻に泣かれてしまう。

二戦目の相手は範馬勇次郎の推薦枠で参加した、アメリカ大統領のシークレットサービスの天内悠
対戦相手には「アウト・オブ・眼中」といった態度を取り(冒頭の台詞もこの時のもの)、勇次郎との再戦を約束する等、余裕綽々の態度。
天内の空中殺法を前羽の構えからの廻し受けや飛び蹴りで迎撃し、飛び下段足刀蹴りで封じると更に虎口拳など空手の禁術の数々(当人曰く「凶器攻撃」)を駆使して天内を追い詰めるが、油断した隙を突かれて天内の関節技を喰らう。その後どうにか脱出するも、膝を骨折。甚大な被害を負う。
その後、天内の態度が癇に障った勇次郎の乱入を受け、勝負中座。

審判団の判断(と作者愛)を受けて三戦目に参戦。対戦相手は渋川流柔術の達人、渋川剛気
この夢の達人対決(渋川剛気の初戦の際に独歩はスネていた)も、最大トーナメント編、もといバキ全編でも指折りの名勝負である。
あれ、膝骨折してたんじゃないの?

当初は渋川の合気術に翻弄されていたが、独歩の代名詞的な必殺技、無心で放つ菩薩の拳で逆転のきっかけを掴む。(それまで渋川老はほぼノーダメージで勝ち上がってきており、彼のアンタッチャブル神話を崩壊させた)
その後、またも反撃を喰らった後、両雄対峙。
このシーンの緊迫感の凄まじさは最高潮、まさにクライマックスである。解説役顔芸がネタに思えないほど)
その結果は…

「長生きした分、コンマ一ミリだけわしが上かな」

勝敗を分けたのはほんの僅かな差だった。
勝利した渋川からも、「敵というものに、空手家というものに心底恐怖した」「生まれた月日が逆だったら負けていたのは自分」と最大級の賛辞を贈られる。
だが、なおも真剣勝負の介錯を求める独歩に対し、「あと二十年現役でいる」と激励の言葉を受ける。

敗北後の「強くなりてェ…」の心からの呟きや、夫人の「おソバゆでたげる」という慰めまで含めて、印象深い一戦である。

また余談として、本大会には彼の息子も参戦するのだが、彼の登場の度に身内贔屓な発言を繰り返し、その態度は親バカそのもの。ただし結果がご覧の有様だったせいもあって、生暖かい眼で見られることが多い。



◆最強死刑囚編

最大トーナメントでの結果を受けて、神心会会長の座を克巳に譲り、修行の旅に出ていたが、対最強死刑囚の五人のメンバーに選ばれ、帰還。人気・実力も含めてこれは納得の人選。

敵五人のなかでは当初からドリアンに目をつけられる。「眼でワカったぜ」「あんた俺に惚れてる」とクサイ発言をして、邂逅直後から一戦おっぱじめる。彼はその前にと因縁もあったのだが、不意打ちをかけて横からかっさらう。
烈をも苦しめた火炎放射も廻し受けで防御するが、4ミクロンの繊維により左手首を切り落とされてしまう。だが、切られた方の腕で相手を殴りつけ、ドリアンに「ファンタスティック」とまで言わしめた。

その後徳川亭に侵入してきたドリアンを相手取り、余計な師匠を作った克巳に対して「空手」と「真剣勝負」の何たるかを説いた。

加藤負傷後は神心会総員を駆使してドリアンを遊園地まで追い詰め、やる気マンマンの克巳をまたも押しのけて本格交戦。

まずは失われたかと思われていた左手で先制攻撃。
実は最初のドリアン戦の後、旧友の「繋ぎ屋」梅澤医師による接合手術を受け、見事に完治していたのである。*3
余談だがこの梅澤医師は『バキ道』にて再登場するが、あのスーパードクター鎬紅葉が師と仰ぐ程の超スゴ腕外科医である。
その際は克巳の烈海王の右腕の接合手術を受け持ち、図らずも親子二代でお世話になった事になる。

菩薩の拳でドリアン得意の胃の中からの凶器を封じ、その後「武術が自分に全てを捧げた」と考えるドリアンを、「空手に全てを捧げた」独歩が凌駕。結果、圧倒的な実力差で、今までやられまくった弟子たちの鬱憤を晴らすかの如く相手を壊しにかかる。
特に、加藤はモロにひっかかった催眠術に対し、かかったそのまま完璧に反撃するシーンは圧巻の一言。
最後は重態の加藤まで呼び寄せて、「勝負ありッ!」。

…の、ハズだったのだが、病院から抜け出したドリアンの突然の夜襲を受けて妻が襲われたと思い怒りで冷静さを失ってた所を手首に内蔵していた爆弾で顔面に大火傷を負う。結局ドリアンはその後敗北するが、一番おいしいところを烈にとられてしまった。

その後、今度は全身に火傷を負わされたドイルに対し、よくわからんウソをつきながら言葉巧みに挑発。正拳突き一発で叩きのめす。
「空手家が空手を使って、何が悪いんでェ…」
←きたないさすが独歩きたな(ry



◆神の子アライ.Jr編

『バキ BAKI』終盤のマホメド・アライJr.の対戦相手として渋川剛気に次いで登場。

父親のマホメド・アライには思い入れがあったらしく、容姿やファイトスタイルも酷似する彼との対戦を心から楽しむ。
序盤は「スポーツでは勝てない」と押され気味だったものの、真剣勝負に変わってからは五分。だが、アライのベストショットのカウンターを喰らい、「地面から蟻が這い上がる」感触を抱きながら敗北。案の定かませ犬になった。

だが、渋川戦のダメージが残るアライと再戦。
いつも通り言葉巧みに挑発し、手・足を完全に破壊、真剣勝負の恐ろしさを叩き込む。
ただしこの戦いは、ボロボロのアライを狙って一方的に痛めつけているためファンから賛否両論ある。(逆なら格好良かったのだが・・・)
(試合後渋川と共にアライの成長を予感するが、結果は大ハズレであった。

その後、長足の進歩を遂げる刃牙に対し、いまさらながらに勝負をふっかけるも、刃牙にはフラれてしまう。その時の刃牙の回答もかなり有名。



◆範馬刃牙

米軍基地での"史上最大の夜這い"・"厚木同窓会"にも参加。だが、ピクルの対戦相手として選ばれたのは意外にも息子の愚地克巳のほうだった。

当初は口の建前こそ空手家だったがその実息子を心配する父親としての静止であり、同時に心の底で克巳を子供扱いする嘗めた態度を取っていたが、
決闘を申し込んでからの不意の喉への一撃で自分を斥けた克巳に対し、その化けっぷりを予感。息子の成長を心から喜ぶ。

ピクル戦の前には「父親によォ……ケツ拭かせるんじゃねェぞ」と息子を激励。だが、一番映えたのは決着後だろう。麻酔銃でピクルを狙撃させようとするご老公に対し、正拳をつきつけ、

「御老公よゥ……倅に恥ィかかせる気じゃねえだろうな…」
「銃を、下ろさせな」
「約束を…守るんだ…!」
「克巳がピクルと交わした不文律…他人に口を挟める問題じゃねえ」

このシーンはまさに、独歩の父親としての想い、真剣勝負への信念が見事に結実した名場面である。
そして、この行動が次なる名場面をも生み出す。

決闘後、克巳の成長は心から誇りとしているものの、敗北した結果もそうだが息子の成長を優先して空手家としての筋を通さなかった点については苦言を呈した。

その後の刃牙と勇次郎との親子喧嘩の際にも登場。勇次郎の話し相手になる、勇次郎の猛攻を教育と見破る、刃牙の姿を父親にじゃれつく姿に喩える等、父親としての側面が強く描かれている。

現在は神心会総帥の座も息子に譲り、戦いへの渇望を満たす為に町に繰り出して一般人(「タチが悪いにも程がある」)に喧嘩をふっかけたり殺人(未遂)犯を空手の闇技でぶっちめたりする日々を送っている。

が、当然の事ながら気が収まるどころかまともな喧嘩になるはずがなく、フラストレーションは溜まる一方のようだ。
渋川剛気も同じ事をやっていたり、この手の達人(喧嘩大好き)は本当にはた迷惑なおっちゃんである。



◆刃牙道

『刃牙道』ではいい年して滝浴びしているらしい。
剣豪・宮本武蔵が動き出し、独歩も他の闘士同様、その存在を知る。そして何やら息巻いていた本部を差し置いて、御老公の屋敷で武蔵と対峙する。デモンストレーションとして演武を披露する。
ちなみにさらなる研鑽を積んだ結果か、かつて独歩を驚かせた克己のビール瓶抉りを見せた。

愚地独歩です……

しかし、武蔵から武ではなく踊りと評され、キレるのだった。

なんだァ?てめェ・・・・・・

実際は踊りといったのはあくまで挑発で、後にお見事と賞賛されている。

そして遂に迎えた武術家対決。
武蔵の軽く仕掛けたイメージ斬りを3発抑えたものの、二刀流のイメージ斬りにより型を乱され「斬るまでもない」と顔面突きによりダウンを喫する。
その後帯刀した武蔵と再戦。武蔵の数々の挑発に乗って飛び蹴りを繰り出すものの、斬れぬよう手加減した一撃で一蹴されてしまう。
足刀自体は武蔵の頬に傷を付けており「あなたの手足は立派に刃だ」と賞賛されるも、結果的には圧倒的な力量差により完全敗北となった。
ただし、「バキや烈海王と並び戦国でもそこそこ名を成せる実力」「小次郎の実力は普通だが彼ら三人は普通ではない」と武蔵にはそれなりに認められている。

試合、喧嘩、武と日に3度敗北したのはいくら負け戦に慣れてるとはいえ流石に来るものがあるのか、己の武を見つめ直すためか「暫くは引き篭もりてぇ」と発言した。
最近は武蔵が思い出す強者リストからハブられていたりと、本人のいないところで扱いが悪い。
とは言え「道場も家の内」という屁理屈で猛稽古を続け、刃牙から見ても明らかにパワーアップした模様。ピークとは何だったのか…

ただ展開の都合上特に武蔵とは戦う事無く餃子に舌鼓を打っている。野菜多めにすると甘くて美味しいよね。

◆バキ道

「バキ道」では宿禰対策を話し合いに来た刃牙と試合を行い相撲についてレクチャーする。
その際、なんとゴキブリタックルを辛うじて受け止めて張り手(と言う名の掌底)で刃牙をKOした。空手より相撲のほうが向いてるんじゃないかこの人…?

地下闘技場VS相撲協会の団体戦にも選抜され、正規軍メンバーとして刃牙、渋川、克己、花山、宿禰と共に力士達と試合をすることになった。
最大トーナメント以降久々の正式試合である。

そして、二番手として「相撲博士」の異名を持つ関脇・猛剣(たけつるぎ)と対決する。
序盤から猛攻を仕掛け耳を切断するなど残虐技で優位に立つも、猛剣の人間離れした耐久力は独歩の拳ですら決定打に至らず、一瞬の隙を突かれて腕の靭帯をブチ切られてしまう。
その後渾身の頭突きをくらい転倒したところに、渾身の四股踏み攻撃を仕掛けられるも足払いで脱出。
逆に転倒しかけた猛剣を蹴り上げでKOし、勝利した。
予想外の苦戦を強いられたものの、無事正式試合における久々の白星を掴んだ。

団体戦後は101代目当麻蹴速との対決が決定。蹴速に「切れっ切れの」と例えられ、先日の怪我も癒えた様子で、若き有望力士との試合に挑む。
直近で勝利を掴み、更には新キャラの初戦の相手。挙げ句その対戦相手は勇次郎も一目置くかなりの強者…と普通に考えたら噛ませ犬フラグでしか無い展開だが………
(というか似たような展開で過去に大苦戦を強いられた苦い思い出が…)

試合開始直後、蹴速の四股に対して四股返しで挑発。そして繰り出された右足刀蹴りを右正拳突きで迎撃し、なんと一撃で蹴速の踵の骨を粉砕。
いきなり予想外の展開でなんかもうこの時点で既に趨勢は決した感があるが、蹴速の闘志は衰えず両者空中において飛び蹴りで相踏みとなる。
その後、独歩のギプアップを進める発言に激怒し立ち向かってきた蹴速に正拳のつるべ打ちを叩き込み肋骨を粉砕。最後は飛び三角締めを決め悪あがきをする蹴速の両耳を削ぐというえげつない殺法でとどめを刺し武神のまま勝利を収めたのだった。
その後仕切り直しと称して性懲りもなく満身創痍のまま挑んできた蹴速に対して、鼻の穴に指を突っ込んでぶん投げ再び完全勝利した。

◆刃牙らへん

ジャックとの対戦を控えた鎬昂昇に請われ、本部道場で練習試合を行った。



【バキ外伝 拳刃】

作者自らが原作を担当した公式スピンオフ作品。
宮谷拳豪が作画を担当しており、原作構成として板垣恵介が参加し浦秀光が原作協力をしている。
若き日の独歩が主役を務めており、本編の前日譚的な内容になっている。
時系列は愚地独歩が神心館を作る前の時代なので、範馬勇一郎など出てくる登場人物から推測して戦後10年経った位と思われる。

【交友関係】

武術家としての高い実力とその飄々とした性格も相俟って、交友関係は非常に広い。
さらに、「世界中のファイターから尊敬を集める」の表現どおり、バキ世界内の多数の格闘家から尊敬を受けている。それも強キャラほど多いのが特徴。

  • 愚地夏恵
妻。
奥さんとの関係も良好。というか、物凄いオシドリ夫婦であり、作中のベストカップル。妻のことを溺愛しており、彼女の前ではイイカッコをしたいが、逆に彼女にしか本音も弱音も洩らせない。末永くお幸せに♪

養子。彼の実父と独歩は友人同士であり、事故で実父を亡くしたために独歩に引き取られた。
「自分より強い(←ウソデス)」と当初よりその実力を過大評価し、彼の勝利や成長を心から願うなど、可愛くて仕方がない様子。
これらの様子から「甘やかしている」という批判も受けるが、当人は「愚地独歩がそんな甘ちゃんだったら、俺もずいぶん楽できたろうに…」と苦笑するなど、厳しいところは厳しいらしい。
息子のほうも、普段は高ビーな彼には珍しく「勝てる気がしない」「この人の前を歩けない」と素直な述懐をもらすほど。彼にとって独歩は、刃牙にとってのオーガと同様に、尊敬してやまない超えるべき父親そのものである。
ピクル戦以降は完全に実力が逆転し、独歩からも「かなわねぇ」と評されているが、克己本人は父こそ世界一の空手家であると発言している。

直弟子。
神心会の会長をやっていたので、他にも多数の弟子がおり、文字通り神の如く崇められ、また慕われている。
かませ犬となった現在でも彼らは師の勝利を信じて疑わない。

当初は見下した態度を取っていたが、手こずらせた後は評価を変える。その後も不甲斐ない息子を持つ親同士として気が合うらしく、何度か一緒に酒を飲んでいる。
強いんだ星人ではないストライダムより共感する部分が多いのだろうか
余談だが勇次郎はその時のバーが気に入ったのか、後に武蔵を招いて酒を奢っていた。

腕試しを挑んで以降、実力の差が開いた現在でもなお尊敬している。

上記の達人対決以降、酒を酌み交わす仲。

空手の強さなど歯牙にもかけない彼にとっても、独歩だけは別格の様子。*4
「歴史の数少ない例外」として認め、日本で暮らすようになってからは日本での師として尊敬するようになった。
武の達人を挙げる際にも自身の師と共にわざわざ「武神の名を冠する、あの愚地独歩」と引き合いに出したほど。
武蔵に敗北した際も、「愚地氏が不覚を・・・?」とかなり驚いていた様子。
独歩が不覚をとるのは今に始まったことではないはずだが・・・

ご存知公園最強の生物。
古くから独歩とも親交があったらしく、勇次郎戦が決まった際にも独歩の勝利を信じて疑わなかった。
ちなみに独歩に対して放った「今の貴様なら一分で殺せる」という世迷い言は、最近になって異様な信ぴょう性を帯びつつある。
(私服ならおそらく大量の武器を携行していると考えられるため)

武術の大先輩にして、天下無双の大剣豪。
モデルの大山倍達と同じく宮本武蔵の大ファンで著書である『五輪の書』は彼の愛読書。
流石の武神も、天下無双の前には分が悪かった。
とはいえ、独歩の実力は戦国の世においても高水準と評している。(が、それ以降は存在を忘れられているフシがある。何故だ・・・)

  • 徳川光成
地下闘技場のオーナーで、おそらく作者の分身に最も近いキャラ
彼からも、「御老公のアイドル」として熱烈なラブコールを贈られている。

…なんという愛されキャラッッッ



【余談】

  • 武蔵戦での「愚地独歩です・・・」「武というよりは舞、舞踊だな」「なんだァ?てめェ・・・・・・」のやりとり以降、ネタキャラとしての地位もゲットしたが、
    ネット界隈では「舞神」だの「ハゲダンサー」だの散々なあだ名で呼ばれている(武蔵は武だって言ってたじゃんッッッ!!)
    • ちなみにこのシーン、コラ素材に使われたり公式でTシャツにされたりと、本部以蔵に次いでやたらフィーチャーされている。

  • 彼のお風呂ポスターがチャンピオンREDの付録になったことがある。
    若き日の独歩の滝浴びシーンで、真冬の氷水を浴びて修行していた。

  • 『龍が如くONLINE』でのコラボでは、神室町に頻繁に出入りしているようで「この街にゃおいらを知らない喧嘩っ早い奴が多くて喧嘩相手には事欠かねェ」とのこと。あの街の住人はムービー銃と本当の異常事態以外に対しては非常に頑丈なのでそりゃそうだろう
    また、春日達に対し自分の直弟子志願者達を相手に掛り稽古をさせる最中で秋山の足技を「我流だが精錬されている」と称賛し、「喧嘩に型もなにもない、勝てばいい」という春日とは「滅茶苦茶だな。我武者羅で型ってもんがまるでねェ」と呆れながらも意気投合していた。
    スルーされたミツェ




「めェーいでええんッッ」
「冥殿ッ 見てっかッッッ」
「今度は遊ばねェからなァァッ」
「ちゃ~~~~んと見てんだぞォッッ」
「冥殿の~~だ~~いすきなスーパーwiki籠りちゃんがァ」
「ビッシィーーーッと追記・修正するぜェッッ」




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最終更新:2024年04月12日 23:08

*1 神心会の会長は最大トーナメント編での敗北で辞任した

*2 古参のアニヲタなら梶原一騎の『空手バカ一代』の人だが、板垣作品では『餓狼伝』の松尾象山のほうが通りがいい

*3 梅澤医師の診療所が偶然近くにあった事、繊維による切断面が綺麗だった事、独歩が直ぐに手首を氷漬けにしたなどの処置が完璧だったのが功を奏した。麻酔無しで行った為、地獄の痛みを味わう事にはなったが。

*4 どうやら、中国でも「武神」愚地独歩の名は知れ渡っていたらしい。