ミストバーン(ダイの大冒険)

登録日:2011/05/05 Thu 06:23:21
更新日:2024/03/21 Thu 18:30:50
所要時間:約 9 分で読めます




……命令する。


……死ね。


お前たちには一片の存在価値もない。
大魔王バーン様の大望の花を汚す害虫だ…

降伏すら許さん…


死ね!


漫画「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」に登場するキャラクター。
CV:難波圭一(1991年版)/子安武人(2020年版)


【概要】

魔軍司令ハドラーが率いる魔王軍が誇る六大団長の一人。
肩書きは『魔影参謀』で、暗黒闘気の影響を受けたモンスターから構成される『魔影軍団』を指揮する。

大魔王バーンの側近中の側近であり、全身を覆い隠す水色のローブ(通称「闇の衣」)の中身を知るのはバーンのみ。
ふわふわと幽霊染みた風貌に反して腕力は異常に高く、強力な暗黒闘気の技も相まって登場するたびに勇者一行を苦しめる。
どこと無くイカっぽいシルエットはともかく、闇の奥で光る目はカッコいい。999の車掌さんやFFの黒魔導士とか言ってはいけない。

初登場時は足がなかったが、フレイザードの残骸を踏み潰す際にはどこからともなく出現していた。任意で闇の中に出し入れできるのだろうか。

バーンと袂を分かち、バーンの下を去っていった魔界の名工、ロン・ベルクとは浅からぬ因縁がある。
やがて人間側に付いた彼と再会したときには衝突し、剣を交えることに。
そして不死騎団長ヒュンケルにとっては暗黒闘気を用いた「闇の闘法」の師であり、ヒュンケルに扱えるものはミストバーンにも当然使用可能。
とはいっても、お互いに暖かい感情など持ち合わせていない。


【人物】

滅多に口を開かないので周囲との関係は希薄だが、本来の性格はクール系とは程遠い饒舌で感情豊か。
ハドラーが覚醒した中盤以降、軍団長があらかた居なくなったのもあるが結構口数が増えており非常に口達者。台詞の切れ味もなかなかのもの。
割と口を滑らせる場面もあるので「自分がお喋りなことを自覚して、秘密を漏らさぬように無口を装っているのでは?」と読者から疑惑をもたれている。

また、ダイとバーンの最終決戦時を除き、バーンとはテレパシーで常に意思疎通していた。
そもそも会話をする必要が無かったのも一因らしい。

そして独特の価値観を持ち、自身を磨いて戦士たろうとする者には、その実力や立場がどうであれ敬意を抱いている。
一方で自身の生まれやコンプレックスの関係から、禁呪法生命体などの非生物や人造生物に対しては相手の性格がどうあれ態度が露骨に塩対応化するのもミストバーンの大きな特徴。
フレイザードに対しても割と辛辣だったが、特に闘気に目覚めたヒムに対する態度が顕著。
「ヒムがハドラーの魂を受け継いだのではないか」という話を聞いただけでマジギレしており、当初はヒムが闘気を操ったことに激しいショックを受けただけでなく、最終的に普段のクールな仮面を投げ捨て

笑わせるなっ!!!

人形風情がハドラーの生まれ変わりのような顔をするのはっ…身のほどを知らぬにも限度があるっ…!!!
このミストバーンの渾身の力を込めて…粉々に打ち砕いてやるぞっ!!!

ヒムをボロクソに貶した上で感情任せにブチ殺そうとしていた。
冷静・冷酷・冷徹な印象が強いが、物静かを装っているだけで本性はけっこうな激情家。感情や個人的な好き嫌いに任せて振る舞っている部分も強い。
ハドラーへ温情をかけた一件からその素顔を知った親友のキルバーンは「…けっこう人情家なんだねぇ」と意外そうに評していた。


だが、そういった本人の性格・嗜好を無条件に超越した先にバーンへの忠誠心がある。


大魔王様のお言葉はすべてに優先する


この台詞が、ミストバーンの信念と思考回路を何よりも的確に示す。
「幾千年も1人でバーン様を守りぬいてきた」という自負がそのまま己への誇りと忠誠心に繋がっており、バーンが命じれば終盤のハドラーだろうと誰であろうと躊躇なく処断する。
そのため内心ではハドラーが率いた六大団長というシステムを見下しており、終盤では「本来私一人がいれば地上殲滅などたやすく済む事」「魔王軍などしょせんはこのわずか十数年のうたかたの夢」と吐き捨てている。
だが時にその忠誠故に暴走しやすく、キルバーンに止められることも。


◆人間関係

キルバーン

真逆の性格ながら不思議と気が合い、数少ない友人と認めている。
ちなみにキルバーンとは、
無口で寡黙 ⇄ 饒舌で冗談好き
主人への絶対的忠誠心 ⇄ 本来の主人すら舐めきり仮の主であるバーンにも軽口を叩く
敵であっても武人へは敬意を抱く ⇄ 敵の危険度は正確に評価するが敵に敬意を抱くことはない
理由がない限り敵でも無意味にいたぶることはない ⇄ 敵をいたぶるのが大好き
……と、あらゆる面が対照的である。

ハドラー

物語序盤はさほど思い入れもなかったが、中盤からとなったハドラーには態度が一変。
命すら顧みないハドラーの覚悟に感嘆し、超魔生物に生まれ変わるまでの時間稼ぎとして陽動役を快く請け負ったりもした。
バーンに処断される覚悟を決めたハドラーから「六団長で一番忠義を尽くしてくれた」「お前の衣の奥にある熱い心を感じずにはいられん」と感謝された際には思わず感動していた節もある。
以降はハドラーに対し安否を気にかけ続けるなど、義理堅い面がうかがえる。
ハドラーの方も漢になってからはミストバーンを強く信頼しており、良き同僚の関係になっていた。
この頃からハドラーへの好感情が露骨になり、ハドラーが窮地になる度内心とんでもなく動揺するようになる。そのせいで「ハドラーの事になると急に早口になる面倒臭いファン」だの「ハドラーの事になると語彙力が低下する男」とかいう酷い評価もされた
この事もあって、後に敵対する事になったハドラーの忠臣であるヒムからも「あんたを殴るのは少々気が引ける」と言われている。

クロコダインバラン

元同僚で敵に寝返った彼らに対しても、武人として敬意を表する点は変わらなかった。

ザボエラ

いつまでも他力本願なため冷遇し、バーンが埋め込んだハドラーの体内にあった黒の核晶の存在を把握しながらも黙認した上でハドラーを小馬鹿にするような言動をした際には「カスがっ!!おまえごときがハドラーを卑下する資格はない…!!」と怒り、最後にはあっさり見捨てる扱い。
まあザボエラのそれまでの行いが魔王軍にとっても悪かった上に、その時のザボエラの魂胆に気づいていたことと、切り札を出させる目論みがあったためなのだが。
ただし、ミストバーン自身もビーストくんを「自分」の盾に使う程度は(不本意そうであったが)している。
しかし、その際はミストバーン自身かなり追い詰められていた場面であり、味方を陥れるということはしないし、手柄の主張などもしない。
前述の通り強者には敬意を払っているところはザボエラとは異なる。

同じく敵を盾にする戦法だけを比較しても、
ザボエラはブラスじいさんの誘拐という下準備をして、クロコダインの意思に任せるとは言え事前に状況を利用して言葉巧みに弱気にさせておき、あとは放置して安全に手柄を主張する目論みだった。
ミストバーンからすると、卑怯なことをするにしても自分の盾にするなりして自分で戦えとか内心思っていただろう。
ザボエラは破邪呪文への対策ができるため、それでは物語がバッドエンドで終わりかねないが…

マキシマム

リスクを犯さずに手柄だけをさらおうとするので「掃除屋」と呼び露骨に見下していた。

フレイザード

協力はしているが、最後は助命の嘆願を無視して踏み潰してとどめを刺している。
こちらは「自らを磨く」よりも「目先の結果」を重視する性格に加え、デッドアーマーと言う「与えられる力で手っ取り早く強くなる事」に躊躇いもなく飛びついたせいか。
元々ダイの完成されたアバンストラッシュの威力を見るための当て馬として扱っている節があったようだし。
そうならざるを得ない生まれであるという点を差し引いたのかザボエラほど冷遇はしていなかったが、信頼もしていなかった。
とはいえ、フレイザードの方も助けてもらっておきながらミストバーンの寝首を掻く事を考えていたので、ミストバーンの対応も当然っちゃ当然ではある。

ヒュンケル

自分の抱える個人的諸事情の結果、己の今後の存在意義を維持できるか否かの命綱的存在でありつつも、成長を見守ることとなった最強級の戦士という、あまりにも近くに存在したが故の妬ましい存在でもあったと思われる。
ゆえに個人的感情に任せて自らの手で惨殺しようとし、それも一度ならずの事だった発言まであるが、同時に自分の所有物としての偏執的な執着を繰り返す。
つまり、理由のある、例外の中のさらなる例外的存在であった。*1でもミストのメンタルこわい
なお、ヘタレだったが覚醒した仲間を内心無茶苦茶推している」という点では実は師弟で一致していたりする。


【活躍】

《過去》

過去、アバンを殺そうとして川に落下した少年時代のヒュンケルを拾い、彼に暗黒闘気の使い方を教えた。

《フレイザード編》

不死騎団長ヒュンケルがダイに敗れた後、魔軍司令ハドラーの命令でパプニカ王国バルジ島でのダイ一党殲滅作戦に、ザボエラと共に参加しダイを追い詰める。
しかし助太刀にクロコダインが現れると、特に交戦せず一時撤退。

フレイザードがダイに核を破壊されて炎の体のみになった大ピンチの際に再び現れ、フレイザードに魔炎気になること・自分の部下になることを条件として魔影軍団最強の鎧「デッド・アーマー」を与える。
鎧を着たフレイザードがダイのアバンストラッシュに敗れたのを見届けると、砕け散ったフレイザードにトドメを刺し、ダイと交戦することなくその場を去った。
この時点ではまだ初登場から間もないのだが「バーンへの忠誠心が高い」「喋ったら驚かれるほど無口」という描写が既にある…にもかかわらず
フレイザードを切り裂いたダイのアバンストラッシュを見て「素晴らしい…」とバーンに逆らう人間達の中で最大戦力のダイを 讃えている。 しかも 独り言で。
敵であっても技と力を高めた強者は尊敬するというスタンスをこの時点で見せていることがわかる。

《鬼岩城・ダイの剣編》

バランがダイとの戦いを経て魔王軍を離れ、ハドラーもダイ襲撃に失敗した後、ハドラーを粛清しようと現れるが、
驕りを捨てたハドラーは余生も不死の魔族の体も捨てて超魔生物に改造中であり、まだ動けないハドラーから逆にその間、パプニカで主要国による対魔王軍サミットを叩き潰してほしいと懇願される。
ハドラーが驕りや慢心を捨てたことを理解したミストバーンはその申し出を受諾し、『鬼岩城』と魔影軍団でパプニカ王国の港を襲撃。

バーン様に盾突こうとするアリ共め…!!いぶりだし…踏み潰してくれるわ…!!!

魔影軍団の総力を挙げてその場にいた勇者一行と対決。最初は暗黒闘気によって戦力が補充される性質で有利に戦闘を進めていたがヒュンケルが参戦。
ヒュンケルは雑兵は愚かデッドアーマーをも蹴散らし、闇の師弟による因縁の戦いが始まった。
当初はヒュンケルの暗黒闘気が以前より弱まっていたため有利に戦いを進めており、闘魔傀儡掌で鬼岩城から地上に落とす。ヒュンケルはマァムによって助けられたが、闘魔滅砕陣でその場にいた一同全員を縛ることに成功。
ヒュンケルを「お前の暗黒の力でこの闘気の流れを打ち破ってみせろ」と煽るも、ヒュンケルはマァムの呼びかけによって暗黒闘気を捨て去る事を決意。無我夢中で「虚空閃」を繰り出したヒュンケルによって滅砕陣の一部をかき消され、更にはそれがローブの右頬を掠めたことにより「素顔」を見られかけるミスを犯してしまう。
今までの振る舞いが噓のように激昂しながらも一同を追い詰めるが、『ダイの剣』を得て駆けつけたダイによって滅砕陣を完全にかき消され、鬼岩城をも破壊される。
怒りと負い目のあまり闇の衣を脱ぎ捨ててヒュンケル達全員を抹殺しようとしたが、キルバーンに制止されて撤退を選択した。


《超魔生物ハドラー編》


…待たせたなミストバーン
今度はオレがおまえを助ける!!


…… ……ハドラー!!


死の大地まで追いかけてきたダイとポップとこう着状態になるが、超魔生物となったハドラーに助けられた。
その後、バーンの元へ、ダイの抹殺に失敗した責任を問われての死を覚悟で謁見に向かうハドラーから感謝の言葉を伝えられて感慨に耽っている。

その後はバラン+ダイvsハドラーの戦いの決着間際に出現するとバーンの命令を受け初めて他者の前で素顔を晒して黒の核晶起爆の役目に従事した。


《最終決戦》

バーンパレスの最終決戦でバーンは勇者ダイに、別の場所ではミストバーンも、ポップ達の仲間に加わったヒムに追い詰められていた。
持てる手段を尽くしても勝てず、遂にミストバーンは独自の判断で闇の衣を脱ぎ素顔を晒す。

…お許しくださいバーン様…!

はじめて…

あなた様のお言葉を聞かずしてこの姿を見せる私を…!!!

現れたのは若々しい魔族の男。
予想外の優男であったことに拍子抜けしかけた一行だったが、あり得ないほどの戦力差に愕然とさせられる。
異常なほどの力もそうだが、何よりも攻撃が当たろうとも全く効かないからである。
闇の衣の中身は大魔王バーン本来の肉体
詳細はバーンの項目に譲るが、凍れる時間の秘法によって不滅となったそれに、「ミスト」という魔物が宿り動かしていたのが「ミストバーン」という人物の正体だった。
「ミスト」という特異な魔物はどんな運命のイタズラか、時間凍結したバーンの肉体に入り込み、そのパワーもほぼ全盛の状態で操作&行使できる性質があったのだ。
またこの身体もバーンであるため、本来術者(この場合はバーン)でなければ起爆できないはずの『黒の核晶』の起爆も可能。
ハドラーに『黒の核晶』が埋め込まれていると知ったとき、バーンから「おまえにあんな物騒なものはついていない」と言われていたが、要は自分の肉体に爆弾を埋め込むバカはいないということである。

命中すれば唯一状況を打破できるメドローアも弾き返してポップとビーストくんを消滅させ(アバンに助けられていたが)、一行を絶望させる中、別の場所でダイと戦っていたバーンの呼び声に応じてその肉体を返還するミストバーン。
その後に、ミストの本体が姿を現す。

その圧倒的なパワーでポップ達を追い詰めるも、ブロ…ビーストくんの活躍により思わぬ苦戦を強いられる。
『フェニックスウイング』を使ったことで辛くもポップとビーストくんを撃破し、バーンへ肉体を返した彼は一時的にマァムを乗っ取って戦い、最終的にヒュンケルへの侵入を果たす。
ミストは本来このために幼少のヒュンケルを拾い上げ、暗黒闘気の技を教え込んだのである。
バーンに肉体を返した後の究極のスぺアボディとして奪い取り、それを以て主に仕え続ける為に。
そして最凶の戦士に生まれ変わる―――はずだったのだが、それを予測し、魂に光の闘気を蓄積・集中させていたヒュンケルによって計画は瓦解。


し…しかし!これだけのパワー…一瞬で蓄えられるわけがない…!
最初から…私がおまえに乗りうつる事を知ってでもいない限りはっ…!!!
なぜっ… なぜそれに気付いたっ…!!?


……なぜか… そんな気がした………

…おまえは必ずオレを選ぶ…と…!


オオオオオッ!!!

ヒュンケル~~~ッ!!!!


そのまま内部に蓄積された光の闘気に耐え切れず、自分の理想の肉体であった筈のヒュンケルの体内で逆に消滅させられる事となった。
ヒュンケルの体は既にボロボロだったが、ミスト自身は痛みが伝わらないので問題ないとしている。
痛みを感じなくても身体が動いて、戦えるかどうかは別の話な気がするが、
光と闇の闘気やら作中でのヒュンケルの不死身っぷり(それだけでなく何故か戦えている)から多分いけるのだろう。


【形態】

真・ミストバーン


……そう…私はバーン様より強い…!!

私が魔王軍最強なのだ!!!


中の肉体を覆い隠す闇の衣を脱ぎ去ったミストバーンの形態。
外見はミストバーンが憑依した証である黒い小さなミストの顔がある以外は真・大魔王バーンと瓜二つ。
常に目を閉じ無機質な表情を浮かべているため、イケメン度は若干こっちのほうが上。
ただしミスト本人はこの姿を晒して戦うこと自体に強い忌諱感を抱いており、最終決戦時に独断で衣を脱ぎ去った際は「罪深い」「この姿で戦う事自体がすでに禁断の行為」と悔いていた。
因みに闇の衣を纏っている時とこの形態では、声帯もバーンの肉体のものを利用している。

「全盛期の大魔王バーンの肉体」という天地魔界において最強の肉体を借りているだけあり、
オリハルコンの体を持つヒムの腕を無造作にただ力任せでねじ切れる程の超怪力を持つ正真正銘の怪物。
単純なフィジカルの強さだけなら老人態のバーンを上回っており、パワーだけでなくスピード面もヒムとラーハルトの猛攻をいなし続けるなど一級品。
それどころか、時間凍結されたまま動いているため(メドローア以外の)あらゆる物理・呪文攻撃が無効。
おまけに只無効化するのではなく、捥げたヒムの腕を叩きつけると逆にヒムのオリハルコンの腕が粉々に砕けてしまう。物理無効に物理攻撃した結果反作用ダメージだけ食らったという事らしい。

事前知識があったブロキーナ老師はその無敵のカラクリを鋼鉄変化呪文(アストロン)がかかったまま襲いかかってくる敵」と喩え、
アバンも「不死身の肉体を持つ超戦士」と評し、ポップは「そんなやつがいたら絶対勝てねえ」と恐怖しきっていた。

これをチートと言わずして何という。

ミストバーンによると数百年間に何度かこの姿で戦ったことがあるらしい。
つまりロン・ベルクやヒム、ラーハルトと同等かそれ以上の手練れが何度か魔王軍の前に立ち塞がったようだ。
そりゃマキシマム程度じゃハイエナ戦法しかできんわな


ミスト


私はバーン様の真のお姿を覆いつくす黒い霧……!!

即ちミストバーンだっ!!!

CV:古川登志夫(2020年版)

大魔王バーンの肉体を返却した後に残ったミストバーン本来の姿。
その真の正体は、魔界に溜まった戦いの思念や暗黒闘気の集合体。
戦い続ける魔族や竜族の残留闘気や残留思念が、流れ、集まってガストのようなガス生命体に近い生き物として独立を得た存在である。
魔王軍の中でも一際異質な存在だったミストバーンが、回り回ってついに明かした真の姿が、
シャドーや怪しい影のような実体を持たないモンスター達で構成された『魔影軍団の長』として、
この上なくストレートで真っ当な存在だというのが何とも皮肉が効いている。

実体が無いために痛みを感じることもなければ物理攻撃も意味をなさず、さらに他者に侵入して肉体を乗っ取る能力を持つ。
このため迂闊に近接戦を仕掛ければたちまち相手は肉体を乗っ取られてしまい、ミストは肉体が壊れるのも厭わずにその肉体の力を極限まで引き出すので普段の本人より強くなってしまう。
バーンの肉体に憑依していた頃の方が強そうなイメージの強いミストバーンだが、この真の形態も大概反則的な特性を持つ恐るべき化け物である。


しかし強者の身体を奪って強くなることには何ら達成感を味わえず、生まれてよりずっと自身を嫌悪し続けてきた。*2
冒頭の自らを鍛える戦士に抱く敬意は、肉体を持たない自分には決して出来ないことへの、憧れと羨望(或いは嫉妬)の裏返しであり、肉体を持ちながらそれを鍛えようとしないものには侮蔑の念すら向ける。
強くあろうとする者たちの残留思念が集まって生まれたのに、自らを鍛えることが叶わない身体しか持てなかったのだから、無理もない話である。
ヒムに対する態度も、ハドラーの生まれ変わりを気取ることへのおこがましさを感じている以外に、自分が求めてやまなかった「成長することができる自分自身の肉体」を手に入れたことへの妬みがあったのかもしれない…

ミストが自身の存在意義を獲得するのは、バーンという主の出会いによる。
バーンはミストの能力を、ミストは自らの価値を認めてくれる主を欲した。
この2人の出会いから、現在の『ミストバーン』が生まれたのだった。


この忌しい身体のおかげでバーン様に出会えた!

バーン様は言われた!『おまえは余に仕える天命をもって生まれてきた』と!!

バーン様には私の能力が!私にはバーン様のような偉大な主が必要だったのだ!

私はまだまだバーン様のために働かねばならん……!!


バーンへの忠誠が最早狂信の域に達していたのはこのような経歴があってのこと。*3

基本的に無口だったのは、声から秘密に感づかれる危険を避けるためである。*4
その為、ヒュンケルからは実は老人のバーンは影武者で、ミストバーンの方が本物の大魔王バーンなのではないか、と推理された。
バランもハドラーに埋め込まれた黒の核晶をミストバーンが起爆した事に何かを感づいていたが、おそらくヒュンケルと同じ認識だったと思われる。

読者の間でも同様の予想はあったようだが、それだけだとバーンに対する忠誠心の強さやシャドーを「我が分身」と呼んだことの説明がつかないという問題があった。


【戦闘能力】


…にわか仕込みの槍などで私の必殺の一撃には太刀打ちできんぞ…!!

自分から戦闘に直接赴く機会は少な目。目先の勝利より「己の正体」が露見するリスクを下げるためか。
指を棘や刃に変形させての直接攻撃と高度な暗黒闘気の操作技術で敵の動きを封じる技を得意とするが、戦法はかなり力押し。極端に言えば脳筋。
闇の衣を解放せずとも、クロコダインに勝るとも劣らぬらしき怪力*5だけでなく、後述の通り魔界随一の剣士ロンベルクと互角の剣戟戦を繰り広げたり魔法の雨を素手で器用に弾いたり、技巧や身体能力も卓越している。
ただし、借りている肉体のスペックが凄まじすぎるからか、特に闇の衣を解放した後には技巧に頼らないパワーファイターみたいな戦法が目立つようになる。
全力で身体能力を使うと正体がバレかねない上にミストの特性上敗死の可能性が低いため、戦法も隠蔽を優先しているのかもしれない。

この状態は暗黒闘気ガスの身体で「中身」を覆っている状態であり、体表面にミストが現れている(衣の間に見える闇の部分)ので光に近い闘気で暗黒闘気を吹き散らせば弱体化できる。ヒムが打撃と同時に打ち込む光の闘気で体を削られていた。だが、中身を開放した際にはその体内にミストが入り込んでしまう為、天地魔界に最強の肉体の芯に闘気を届かせないと効果がない。無理ゲー。

額にあるミストの顔は表情も変化しており、ミスト本体がこの部位のみ露出して弱点になっているとも解釈出来るが、これについては作中において明言はされていない*6

◆装備

  • 闇の衣
自身が借り受けている大魔王バーンの肉体を覆い隠し、ミストバーンとして行動するための外装…と思われていたが実際は上述の通りミストがバーンの肉体を操るための術。
バーンの命令無くては解除することは許されない。
ただし、元々直情的気味な性格だったためか、怒りに任せて衣を捨て去ろうとしてしまうことも度々あった。

◆技

ミストバーンの技にはいずれも強力な暗黒闘気が篭っているため、血肉を持つ生物は回復呪文では治癒せず、一部の魔族のような再生力でもない限りは自然治癒を待つ他に回復の術は無い。
また、素材が一切不明な彼の指は、切断されようとも瞬く間に幾度でも再生する。

  • ビュートデストリンガー
バカめ!!この技は左右の指を問わぬのだっ!!

腕を覆う手甲から、ロンベルク製の鎧すら貫く高硬度のを一瞬で伸ばし敵を刺し貫く。
よく判らないなら某13kmをイメージ。
間合いは広く、両手のどの指でも使用可能な上に柔軟性もあり、地中を掘り進ませて奇襲をしたり敵を縛って握り潰すといった使い方もできる。

  • デストリンガー・ブレード
このミストバーンの渾身の力を込めて…粉々に打ち砕いてやるぞっ!!!

ビュートデストリンガーの応用。
手刀のように揃えた五指から爪を伸ばして固定し、剣として振るう。
硬度はかなりの物であり、これを振るって魔界でも屈指の剣士であるロン・ベルクと互角に戦った。

  • 闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)
…壊れた玩具(おもちゃ)はこうなるのが運命だ…

手から放った暗黒闘気の糸で対象を縛り操る。
ミストバーンの力量であれば対象の手指を操り細かい魔法円を作図させるなど、精緻な遠隔操作も造作もない。
片手でこれを使って敵の動きを封じつつ、他の技で仕留めるのが常套手段*7
一旦捕まると、暗黒闘気に長けるか強い光の闘気を持つ者しか抜け出せない。

  • 闘魔滅砕陣(とうまめっさいじん)
愚かな虫共は網にかかったことすら気付かぬと見えるわ!!

闘魔傀儡掌の上位版で、複数・広範囲の敵に有効。
自身を中心に蜘蛛の巣じみた闘魔傀儡掌の陣が広がり、そこに踏み込むとアウト。
この技の回避は至極困難で、作中随一のスピードと反応速度を誇るラーハルトですら、ミストバーンから数十メートル離れた場所に居たにも拘わらず捕捉されてしまった。
ゴメちゃんのように空中に浮かぶ対象も捕捉するので、空中に避難するにしてもかなりの高度を稼がないといけない模様。
傀儡掌を重ねたりさらに力を高めることで、対象の体をねじ切って殺傷することも可能。
これを限界まで受けた時のヒュンケルは血管から血が噴き出て目玉は飛び出し、結構グロかった

  • 闘魔最終掌(とうまさいしゅうしょう)
回避は不能!!!粉々に握りつぶしてくれる!!!

ヒムに追い詰められて使用した闇の衣を纏っている時のミストバーンの最大技。
全暗黒闘気を左手に集中・凝縮し巨大な暗黒闘気の手を具現化、桁違いの威力の掌圧で敵を粉々に削るように握り潰す豪快な技。
最高の強度を誇る金属・オリハルコンが光の闘気で補強された状態であっても粉砕する。

  • 呪文反射
暗黒闘気の応用らしい、原理不明な技。
マントの奥で本体を覆う魔影の体で呪文を受け止めて、吸収するようなエフェクトと共に魔法を増幅した上で敵目掛けて放つ。
下位呪文程度であれば素手で軽々叩き落せるミストが一度だけ披露し、その際にはポップのベギラマをベギラゴンに近い威力にまで増幅してポップ達を蹴散らした。

  • フェニックスウィング
……奴の健闘は尊敬に値するものだったよ
この私にフェニックスウィングまでも使わせたのだからな……

闇の衣を解放して初めて扱える技。
超高速の掌圧によってメドローアを含めたあらゆる呪文を弾き返す究極のガード。
極端に言えば力技で行い物理防御も兼ねるマホカンタ。空気との摩擦で手に炎が伴う様からこの名が付いている。
本来は大魔王バーンの得意技でありながら虎の威を借るが如く自分が使ってしまうことへの後ろめたさと、正体が露見する危険性があることから使用を避けており、ミストバーンは「禁断のこの技」と嘯く。
後述の本家の使用シーンと比較すると余裕のある状況だったため、見事にまっすぐ弾き返している。


【考察】

ミストバーンという存在自体は結局最後まで倒されることがなかったとも言える。
凍れる時間の秘法に対しては作中でメドローア以外に対抗手段が示されておらず、そのメドローアにさえ自前で防御手段を持っている。
作中で明言されている限りでは、理論上竜魔人となったバランやダイですらもミストバーンを倒す術はない、ということになる。
このため本人の弁の通り、作中の最強キャラはミストバーンとの声もある。

だがシナリオ・戦闘の両面で圧倒的な存在感を見せつけながらも、最期は意外と呆気なく終わってしまった。
その最期もあって小物化とも言われることもあるが、彼自身が認めるコンプレックスが故に大魔王に至る最大の壁・大魔王の腹心であり続けたという筋の通った彼独特の人間性のあるキャラクターであったと言えよう。
実際、最後まで敵であった彼であるが、生まれの哀れもあって、中々憎みきれないところがある。

……そうだ 他人の身体を奪えば簡単に強くなれる私にはできない事…

自らを鍛え強くなる事…!

それができる者は皆尊敬に値した!!

………………

……うらやましかった……

何よりも消滅して以後、バーンから1度も労いの言葉が無いことが不憫でならない。
そのせいでただでさえ敗因がマキシマムと大体同じなのに「ミストバーンもまた、マキシマムと同様にバーンに一番買われていると思い上がっているに過ぎなかった」と見る事も出来てしまうのがまた何とも言えない。*8
ただ作中でヒムが語るように、自ら鍛え上げた理想の身体で最期を迎えられたことだけは本望だったのかもしれない。
ヒュンケルを道具と言い切り、ヒュンケルもまた因縁と語る、そこに嘘は無かっただろうが、ヒュンケルも最後に自分がミストの標的となることを予測していたことに闇の師弟としてのつながりはあったと見ることもできる。
前述の強者への敬意の元である独白を踏まえれば多少異なる解釈を垣間見ることも出来るのではないだろうか。

なお、バーンの肉体に入った姿を見た者は生かして返さないと言いつつ、
ハドラーだけは姿を見て生き延びたにもかかわらず、その後は見逃している*9これは描写や状況の問題ではない。
ハドラーを切り捨てた後もザボエラがハドラーを嘲笑しただけでブチギレるなど彼への敬意や情をみせるシーンはあり、本心では積極的ではなかった表れだと思われる。
己の感情自身に揺らぎが無いうえで

大魔王さまのお言葉はすべてに優先する…!!

なのだ。
ハドラーもまた信頼していたミストバーンのバーンを最優先する態度に落胆しつつも「それがお前の答えか…」とある意味納得もしている。
しかし、バーンがハドラーの中にある黒の核晶を起爆させると決めた時は驚いており、
またハドラーに「すべてに優先する」と告げる直前にハドラーから「お前にとっても…オレはやはり駒に過ぎなかったのかッ!?」と問い詰められた際は黒一色の背景の中で悲しげに俯く一コマが挟まっている。
天秤の片方がバーンでさえなければそれこそ躊躇なくハドラーを救っていたのは間違いなく、ミストバーンとしてもこう言うしかなかったのだろう。

逆に、ミストバーンのザボエラに対する評価の低さは、皮肉にもザボエラの理想である「自分の肉体は一切傷つかずに思い通り動かせてなおかつ一方的に敵をいたぶれる能力」をミストバーンが持っていることに由来するのだろう。
形は違えど他人に寄生して生き延びようとする在り方も一致しているため、ミストバーンがザボエラがあそこまで嫌ったのはザボエラの性格もさることながらザボエラの在り方に自己嫌悪を深めたためかもしれない。
しかし、そんな自分の在り方に自己嫌悪していたミストバーンにハドラーは事情は知らずとも「お前は熱い心を持ち忠義を尽くす漢」と能力ではなくその人格を何より絶賛してくれたのである。
ミストバーンがハドラーに絆されたのも当然と言えよう。

バーンの誘いを蹴飛ばしたロン・ベルクの粛清には、バーンへの忠誠心はもちろんだが、それ以外の背景を読み取ることもできる。
バーンはロンの態度に憤慨するミストを制止し、
「ロンを是非とも部下にしたい、今は断られても将来は変心の見込みがあるから好意的な関係を維持して送り出せ」という
充分に合理的な理由を付して命令を出している のだが「バーンの言葉は全てに優先」を信念としていながら 作中ではこの時に限って 真っ向からそれに反している。
単に忠誠心だけが原因ならむしろ手出しはできないはずである。
この時のロンは、バーンから「お前の作った光魔の杖は最高の武器だ」という評価をされたことに対して「傑作でもない武器にこんな評価をされては自分が腐る」と反感を抱いて魔王軍を去った。
ミストは自己嫌悪の対象であった能力を評価されたことでバーンに絶対の忠誠を抱いた。
両者の対応は見事なまでに対極であり、ミストの対応はロンのこうした価値観が理解不能なものに映ったのかもしれない。
または、向上しようにもできないミストにとってバーンの誘いすら断るほどのロンの向上心に嫉妬心を抱いた…とも取れる。そうまで言って出ていったロンがその後やる気を無くして飲んだくれてたのを、ミストは知っていたのだろうか?


【余談】

顔が隠れるほどのフードから二つの光る眼が覗かせるという外見の為表情はわかりにくい。
…と思いきや感情が高ぶると目の光も大きくなり、逆に躊躇したりすると目の光が小さくなるなどよく観察すると意外と表情がコロコロ変わっている
他にもバーンの発言にいちいち「!!」とか「!?」とか返したり、躊躇を感じる際は無言の一コマが挟まっていたりと、わかりにくい表情なのにわかりやすい感情と言う特異な書き方がなされている。

コンビニコミックスのおまけコーナーでは、「もしミストがマァム以外のメンバーの体を借りていたら?」という予想コーナーがあったが、
ヒュンケルやハドラー、ゴメちゃん(!)を高く評価していた一方で、ポップの体を借りた際はそのスケベ心にミスト自身も振り回されてしまったという、なんとも情けない(そして人間くさい)姿を見せていた。
だがこれは、逆に言えば強い精神力を持ってすれば、ミストの精神支配からは逃れられるという事にも他ならない。
もしも彼に、強い精神力を持ち、時折肉体を借りて共に戦えるような「友」と出会えていたなら…。
そう言った心を許せる「友」に出会うことが出来なかった、あるいは心から信頼していたキルバーンやハドラーのような友と出会えたのがバーンに忠義を誓った後だった事が、彼の最大の不幸だったのかもしれない…。
しかしハドラーと友になるにはまずハドラーがヘタレる必要があるので、順番が逆だと絶対に友になれないであろう皮肉

最後に一つ。
マァムがミストに乗っ取られる際にあげる苦悶の声と表情、また乗っ取られた後の悪堕ちしたかの様な姿は、

非 常 に エ ロ い

という事を挙げておく。





フッフッフッフ、

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最終更新:2024年03月21日 18:30

*1 三条氏設定において、光の闘気と暗黒闘気の両方を使いこなす生体は、種族的な縛りなどもあって極めてレアである模様。

*2 それでも能力を貶されるのは嫌なようでヒムに「寄生虫ヤロー」と言われた時には怒りをあらわにした。

*3 とはいえ、捨て駒にされたハドラーの扱いについては内心思うところもあったようだが。

*4 つまり普段出している声はバーン本来の声であり、ミストとは声が違うということである。これはミストの正体が開陳された時にヒュンケルが気づいた。

*5 鬼岩城戦頃のクロコダインはレベル34で力156、バーンパレス39のマァムはレベル39で力140。同レベル帯では大差はない膂力になっているのだが、ビュートストリンガーを応用してマァムを縛り上げた際には、マァムが脱出出来ないどころか千切り殺すのも容易い程の尋常ならざる怪力で締め上げてのけた。

*6 作中やコンビニコミックにも、額部分のみ肉体からミストが飛び出ているかのような図解が掲載されている

*7 かつてヒュンケルも多用し、必勝パターンにしていた

*8 状況上、言ってやる暇がなかっただけかもしれないが。

*9 後々わかる事だが、ハドラーはかつて凍れる時間の秘法をその身に受けた事があるので実はミストバーンの秘密に肉薄していた。実際ミストバーンの秘密を明かしたのはハドラーにかつて凍れる時間の秘法を仕掛けた側のアバンとブロキーナである。