ムスカ

登録日:2009/11/20 Fri 10:23:21
更新日:2024/04/19 Fri 14:19:35
所要時間:約 9 分で読める!読めるぞ!





ラピュタは滅びぬ、何度でも蘇るさ!

ラピュタの力こそ人類の夢だからだ!

ムスカとは、スタジオジブリの映画『天空の城ラピュタ』の登場人物であり、パズー、シータと並ぶ(ある意味)主人公。


:寺田農
英語版声優はルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミル。


◆概要

政府の情報機関に所属し、ラピュタの探索を指揮する男。階級は大佐。
年齢は28歳か32歳の説があるが、どちらにせよこの若さで大佐というのは物凄いエリート。

やや後退しかかった七三分けのヘアスタイルに、茶色のスーツと度付きグラサンをかけた紳士風の姿が特徴。

性格は冷静かつ理知的、判断力に長ける。
当初こそはシータにロボット兵を見せた際、パズーをダシに半ば脅迫めいた発言をしながらも「こんな危険なものが空にある以上放ってはおけない」と至極真っ当な理由で協力を仰ぎ、
パズーにも釈放した際には「君を(空賊の一味と)誤解していた」と一応謝った上で、
「これは僅かだが心ばかりのお礼だ。とっておきたまえ」
と、謝礼+迷惑料+口止め料として自身のポケットマネーで金貨を支払ったりと、器の大きい一面を見せていた。
この際にパズーにラピュタ探索から手を引くように言ったのも、ロボット兵のような危険なものがひしめくだろうラピュタに子供の身で行かせるのは危険過ぎると、こちらも正当と取れる理由であった。*1
また、序盤にシータを確保した際、拷問にかけるべきと言ったモウロ将軍を諌めたり、ロボット兵撃墜の際にもシータを傷つけないように砲弾から信管を抜くよう指示を出している。

この時点では、高慢とも取れる態度はありながらも、シータに対しては常に慇懃かつ紳士的な態度を見せており、「実は味方」とも取れる言動が多かった。
…が、目的に近付くにつれ、次第に冷酷で残忍な本性を露わにしていく。

強大な力を振るい城塞を破壊するロボット兵を目の前にして「素晴らしい」と逃げる様子すら見せない堂々たる風格を見せた。
しかし、本気でヤバい状況には四つん這いで逃げ出したり、情けない悲鳴をあげたり、手痛い目に遭った飛行石を触るのにちょっとビビったりと、ヘタレな一面も見せていた。


特技は射撃で、リボルバー拳銃にも拘わらず暗闇の中でシータのおさげを撃ち抜いた上、耳も撃つと自信満々に宣言する腕前。そして超速リロード。
なお、「3分間待ってやる」は相手に余裕を与えるためではなく、銃の弾を撃ち尽くしていたためリロードが必要だったからである(演出上かもしれないが、実際時間を計ると3分も待っていない)。
パズーのバズーカも、ドーラからもらった2発の弾丸を使い切っていたので、お互いそのことに気づいていたらどうなったことか。
ただし小説版では弾込め中もパズーに対して警戒を怠ってない心境が描写されている。

冒頭で少女のシータに後ろから殴られて気絶するみっともない有様を見せつけはしたが、こうした駆け引きを臆面もなく持ちかける辺り、実際にはかなり実戦慣れしていたことが窺える。
ちなみにパズーを殴り気絶させた際「彼の頭は私のより頑丈だよ」とシータに皮肉を込めた返しをするなど、自分の失敗と認める器の大きさも持っていた。

また必死に全力で逃げ回るシータに早歩きで余裕で追いつくほどの脚力も持つ。

博識で旧約聖書やラーマヤーナから引用してみせたが、確証はない為ただの知識自慢ともとれる。(小説版での内心描写では自己顕示欲があった模様)
ちなみに本当は「ラーマヤーナ」ではなく「ラーマーヤナ」の方が原音に近い。


基本的に善も悪もないキャラ作りをするジブリ作品の中では唯一と言っていいほどの純粋な悪役であり、
そのカリスマ性と名(迷)台詞から人気が高く、様々な場面でネタキャラとして愛されている。


ネタバレ


物語終盤。財宝などに見向きもせずに取り憑かれたように古代文の解読をするムスカを見て、シータは確信する。
「彼は、軍の命令でここに来たのではない」と。
そして、「真の名」を言われた時から感じてた疑問をぶつける。


あなたは、一体“誰”!?




…私も古い秘密の名前を持っているんだよ、『リュシータ』…。

私の名は『ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ』






その正体は、シータと同じ古代ラピュタ王家の末裔。

真の本名は『ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ』。
「ムスカ」とは表向きの名前である。

ただし「真」を意味するトエルがないため、間違いなく分家の子孫。
パロディーのパロ=「偽」の意味か?

もともとトエル家とパロ家はひとつの一族で当初はゴンドアの丘で共に暮らしていたのだったが、パロ家はラピュタへの帰還を諦めず、トエル家と意見が分かれ、パロ家はゴンドアの丘を去る。その際にトエル家は飛行石とそれに纏わる呪文を、パロ家は古文書をそれぞれ継承していく事となった。
以来、皮肉にもトエル家がただの農家としてどんどん廃れていく一方、パロ家は産業革命に乗じて大きくなり、権力的には完全に逆転してしまった。

反面、分家ゆえに元より全く受け継げなかったのか、それとも発展の過程で正確な資料を失ってしまったのか、ムスカの代には飛行石や呪いの言葉についての情報を一切持っていなかった。
そのためムスカは、受け継いできた古文書を中心として、先祖の伝承を研究することになる。おそらく、その過程で世界各地の伝承も調べ上げたのだろう。
実際に研究者としても優秀らしく、本家を訪れたこともないのに、自力でかなりの情報を調べ上げていた。
死語になっていたラピュタの言葉も解読してしゃべれるほど。

が、バルスについての知識がなかったことが運の尽きである。
皮肉にも、目的は違えどもラピュタを捜し求め、それに情熱を費やしていた点においてはパズーとは似た者同士であり、彼のifの姿とも言える。

正体を表した後は、無能のくせに威張り散らしていたモウロ将軍を見限り、古代ラピュタの兵器を操って暴走。将軍らを展望台の仕掛けを用いて雲より上のラピュタからに放り出し、ゴリアテは無数のロボット兵をけし掛け撃墜。しかし、隙を突かれてシータに飛行石を奪われてしまう。
シータから飛行石を奪い返そうとするが、駆け付けたパズーによって失敗。
最後は滅びの言葉「バルス」の強烈なで目が麻痺し、これまでの余裕たっぷりの威厳が消え去るほどの情けない悲鳴をあげながらラピュタの崩壊と共にゴミのように海へと落ちていった。
ラピュタが崩壊しているシーンでは一緒に落ちていく彼が確認できる。ラピュタを見るときは探してみるのもいいかもしれない。



◆日常生活でも使えるかもしれない台詞集

「食い止めろ、君は床に伏せていたまえ」

「制服さんの悪い癖だ。事を急ぐと元も子もなくしますよ、閣下」

「もちろん。私が政府の密命を受けていることもお忘れなく」

「流行りの服は嫌いですか?」

「こいつの体が金属なのか粘土なのか、それすら我々の科学力ではわからないんだ」

「脅えることはない、こいつは初めから死んでいる」

「君は、ラピュタを宝島か何かのように考えているのかね」

「私は手荒なことはしたくないが、あの少年の運命は君が握っているんだよ」

「君も男なら、聞き分けたまえ!」

「すばらしい…古文書にあった通りだ、この光こそ聖なる光だ!」

「飛ぶ気かっ!?」

「あの光のさす方向にラピュタがあるのだ」

「私はムスカ大佐だ。ロボットにより通信回路が破壊された。緊急事態につき私が臨時に指揮を執る。
ロボットは北の塔の少女を狙っている。姿を現した瞬間を仕留めろ。砲弾から信管を抜け、少女を傷つけるな」

「くそっ、ゴリアテ何をしている!」

「煙幕か!?」

「将軍に伝えろ、予定通りラピュタに出発すると」

「バカどもにはちょうどいい目くらましだ」

「これはこれは、王女様ではないか」

「上の城などガラクタに過ぎん、ラピュタの科学は全てここに結晶しているのだ」

「ここから先は、王族しか入れない聖域なのだよ」

「一段落したら全て焼き払ってやる」

「素晴らしい!700年もの間、王の帰りを待っていたのだ」

「君の一族は、そんなことも忘れてしまったのかね?」

「読める!読めるぞ!」

「私の名前は、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」

「お静かに」

「言葉を慎みたまえ、君はラピュタ王の前にいるのだ」

「見せてあげよう、ラピュタの雷を!」

「旧約聖書にある、ソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ。ラーマヤーナでは、インドラの矢とも言われているがね」

「全世界は再びラピュタの元にひれ伏すことになるだろう」

「君のアホ面には心底うんざりさせられる」

「死ねえぇぇーーー!」

「私をあまり怒らせない方がいいぞ。
当分、二人っきりでここに住むのだからな

「ハッハッハ、さっさと逃げればいいものを」
「アッハッハ、私と戦うつもりか」

「最高のショーだとは思わんかね?おぉ……」
ハハ、見ろ!人がゴミのようだ!ハッハッハッハ!」
「何をする!」

「返したまえいい子だから、さあ!」

「ハハ、どこに行こうというのかね」


「その石を大事に持っていろ、小娘の命と引き換えだ!」

「立て。鬼ごっこは終わりだ!」

「終点が玉座の間とは上出来じゃないか」


「跪け!命乞いをしろ!小僧から石を取り戻せ!」

「3分間待ってやる」

「時間だ、答えを聞こう」

「あぁ、目が!目がぁぁぁ!」



◆余談

  • 声について
担当声優である寺田農の本職は俳優。
見た目での芝居がつけられない声のみでの演技に苦労する人もいる中、本職声優とも遜色ない好演を見せている。
2024年3月14日に寺田の死去が報じられた際、X(旧Twitter)で「ムスカ大佐」がトレンドワードに上がったことからもうかがえるだろう。

…のだが、寺田当人は収録から何十年もの長い間「ムスカは経歴から消してほしい」と思うほど嫌なストレスになっており、完成映像もずっと見ていなかったという。
これにはいくつか理由があり
  • 収録はたった2日間で行われており、短い期間の仕事だったため当時のことを聞かれても単純にあまり覚えていなかった
  • 初日の午前中までは絵がある状態で収録だったものの午後からは線画状態、さらには全く絵がない状態で尺だけ指定での収録となり『そんなのできねえよ』と宮崎監督と喧嘩になった
  • 寺田のインタビューで実写演技の際は細かい所作にも気を使う姿勢が見られ、「自分の演技として声しか感じてもらえない」状況を良く思えなかった*2
といった点が挙げられる。
裏を返せば線画や絵無しの状態でも見事に声だけでの芝居ができていたということであり、氏の声優技量の高さがうかがえるエピソードなのだが…

しかし2008年に東海大学の特任教授に就任した際にはあまりにも学生からのムスカの台詞の要望が多く、高成績のご褒美として曖昧なまま台詞をやってみたら学生にがっかりされたという。
さらに後の2016年にラピュタのフルオーケストラコンサートのゲストとして出演する際に「見てないから物語の流れが分からない」と話すと指揮者兼演出家の人に「他の人は分かってるから大丈夫です」と返され、この言葉を受けて放映から30年の時を経て初めてラピュタの映像を見るに至った。
その後はムスカの台詞も練習し、晩年にはいくつかできるようになっていたという。

ピン芸人のなだぎ武はムスカ大佐のモノマネを持ちネタとしており、自身のYouTubeでも多数のネタを公開している。
寺田とは『仮面ライダーW』の打ち上げの席で初めて顔を合わせ、「ムスカ大佐が好きです」と言うと照れ笑いをしたことが忘れられないと追悼のコメントを発表している。

  • 作品考察
シータに流行りの服を勧めたり、しばらく一緒に住むことを宣言したためロリコン疑惑を持たれている。
一応、遠縁の親戚の関係ではある為、最初は(現状)たった二人しかいないラピュタの子孫同士として、純粋に親愛の情を持っていたのだろう。
実際、「さっさと拷問しろ」と急かすモウロ将軍を後目に、シータへは説得と最低限の脅しだけで穏便に済ませていた。
パズーへも、彼に謝礼を渡して帰した後に、口封じに刺客を差し向けるような真似は一切していない。
「全てが終わったら自由にしてやる」と言ってたのも、この時点ではじゃなかったのだろう。
シータの飛行石を手にしたそして光を額に受けた瞬間から、彼の中で何かが壊れてしまったのかもしれない…。

パズーに渡した金貨3枚の価値は、現代の価値で50万円程度というファンの考察が存在する。
命懸けで要人の女の子を空賊から守ったにしては少し安いような気もしなくもないが、組織として正式に支払う報酬ではなく個人として気持ち代わりに、取引も兼ねて子供に押し付けるポケットマネーと考えれば絶妙かつ破格の額と言える。実際、パズーにとってはボーナス並の大金だった為、捨てるに捨てられず彼の言う通り一度は手を引いてしまった。

彼がリボルバー銃のリロードに使った時間はたったの3秒。
つまり弾一つを装填するのに僅か0.5秒、しかも中折れ式の銃なので、弾装填自体に掛かっている時間はそれよりも更に短い計算になる。
ちなみに使ってる銃は帝国華撃団タチバナさんと同種。

  • 裏設定
「ジブリロマンアルバム 天空の城ラピュタ」で語られた裏設定では、未来少年コナンに出てきた悪役・レプカはムスカの子孫。
つまりは妻子持ちだったのである。*3
もともとラピュタが未来少年コナン2を想定されていた頃の設定の名残。
「ラピュタは滅びぬさ」という言葉通り、トエル家同様にパロ家も滅びなかったのである。
もっとも、これが本当であるならばラピュタが無くとも人類は恐るべき力を持て余して滅亡一歩手前まで行き、彼の血も絶えたであろう道を辿っているわけだが…。

アニメージュ・ゲーム文庫より刊行されたゲームブック『天界の迷宮』でも基本的な役どころは原作と同じだが、
プレイヤーの行動次第では最後まで生存、ラピュタの財宝を抱えて脱出したパズーたちにそのまま放置されるという結末を迎えることも。
この際の文章では「ムスカもあそこで生活してれば丸くなるだろう」という旨の、映像作品ではあり得なかった彼の改心の可能性が示唆されている。




♪  ___、
   ,'    '\
  / ,rイ|/'゛ 、 i
  t,i,-、_,=、| |
   i`‾! `‾'`リ'  ♪
    !f二フ イ'
    '=、,=`-"
♪ (( ( つ ヽ
    〉とノ )))
    (_ノ(_)




※大佐注意




ムスカは滅びぬ、何度でも蘇るさ
   _____
  /     )\
  /    彡ノノ 丶丶
 |  _ノ   | |
 | _(  _   |ノ
  ヒ(6" ̄(_)^イ ̄)
  |Y   _厂|
  ||  __ /
  | \   ̄ /
  /\ 丶__ノ
_/|\ ̄ ̄\/〉
  丶_三三フハ\



死ねぇぇぇぇぇーー!!

  / ̄ ̄ ̄ミ\_
 /     ミ  ミ
`/      ノ/丶 ミ
(   // / | ソ_
| _/≧z-彳ノニ ハ/
丶|ナ(=・=)^(=・=)|\
/ 丶  ̄  |  ̄Y /
L_ |   ^^  /|  ̄/
`/ 丶 丶ニニフ / | /
|  丶___ノ ノ /○
|\  /⌒Y ̄ ̄ ̄ ̄\
| _/⌒L_ノ \_ ̄丶//
ム/ L_ノ   _) //
/Lノ丶_>―′  /
Lノ二/○ 丶_/ ○

見せてあげよう。アニヲタの追記・修正を

この項目が面白かったなら……\目が!目がぁぁぁ!/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 天空の城ラピュタ
  • ジブリ
  • ムスカ
  • ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
  • 寺田農
  • ラスボス
  • 見ろ!人がゴミのようだ!
  • 目が!目がぁぁぁ!
  • ネタキャラ
  • 七三分け
  • グラサン
  • 大佐
  • ヘタレ
  • ロリコン
  • せっかち
  • ロリごっこは終わりだ
  • 3分間舞ってやる!
  • ラピュタ王誕生!
  • アニヲタTOP画
  • 悪役
  • 名言しか言わない男
  • 名言の宝庫
  • 名言製造機
  • 名悪役
  • MAD素材
  • マーク・ハミル
  • 濃すぎるキャラクター性
  • みんな大好き
  • 愛すべき悪役
  • 愛されキャラ
  • 愛すべきネタキャラ
  • 悪のカリスマ
  • ヴィラン
  • なだぎ武
  • 愛すべき外道

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月19日 14:19

*1 実際、パズーはラピュタ到着後はムスカ関係なしに何度も死にそうな危険な目に遭っている。

*2 他にも洋画吹き替えについても映像に合わせる難しさと達成感の少なさを語っている。

*3 恐らくは、本編時点ではまだ子供は誕生してなかったのかもしれない。