果てしなき渇き

登録日:2014/06/08 (日) 11:14:13
更新日:2024/02/25 Sun 10:01:46
所要時間:約 3 分で読めます





俺の娘をどこにやった!!

答え次第じゃ全員ぶち殺してやる!!


果てしなき渇き』は、深町秋生作の推理小説にして『このミステリーがすごい!』大賞第3回受賞作。

2014年に中島哲也監督によって『渇き。』として役所広司主演で実写映画化される。コミカライズもされたが、こちらはストーリー展開がかなり異なる。

◆あらすじ(公式より)
元刑事・藤島秋弘のもとに、失踪した娘の加奈子を捜してほしいと、別れた妻から連絡があった。家族とよりを戻したいと願う藤島は一人、捜査に乗り出す。
一方、三年前。中学生である瀬岡尚人は手酷いイジメにあっていた。自殺さえも考えていたところを藤島加奈子に救われる。彼は彼女に恋をし、以前、彼女がつきあっていた緒方のようになりたいと願うようになるが…。
二つの物語が交錯し、探るほどに深くなる加奈子の謎、次第に浮き彫りになる藤島の心の闇。用意された驚愕の結末とは――?


その内容は、ジェイムズ・エルロイや馳星周の陰惨な作風・作劇をベースに、漫画やアニメを彷彿とさせる非現実的なまでにグロテスクな描写や強烈なキャラクター達を盛り込んだノワール小説である。
選考委員の一人である吉野仁からは「似非ノワールの典型」という手厳しい批評もあったが、他の選考委員たちから「ギリシャ神話も真っ青の因果応報家族内悲劇を描く力量に感服」という絶賛の声も上がっていた。

映画版では凄惨な内容をほぼそのまんま映画化したどころか登場人物達のキャラ描写をより極悪に改変した結果、
倫理を無視しまくったバイオレンスムービーとなり、劇場の観客ほぼ全員にトラウマを植え付ける問題作となった。公開後、中島監督が公式HPで「暴力的過ぎてすみません」と異例の謝罪を表明するまでになった。ていうかこれをR15+で全国公開したギャガ、マジパねえ……。
……とはいえ実際には、暴力的なように見えて、暴力シーンそのものが直接映ることは殆どない。殴るシーンがあったとしたら、殴る人・殴られる人の影、音、血しぶきだけで間接的に表現されていて、殴打そのものは見えないため、映倫の自主規制基準をばっちり通過する内容である。
なので、スプラッター映画のようなガチの暴力描写を予想していると、肩透かしを喰らうかもしれない。


【以下、ネタバレにつきご注意ください】





◆主な登場人物
()内は映画版での名称

  • 藤島秋弘(藤島昭和)
元刑事のうらぶれた警備員。
係長をつとめたこともあるくらいだから優秀な刑事なのだろうが性格は破綻しきっており、刑事をやめたのも妻の不倫相手に暴力を振るったことから。
アル中であり、酒ばかりか物語中盤ではドラッグにもはまっていき、女を強姦し、拳銃をぶっぱなし、最終的にはヤクザとつるんだりともう滅茶苦茶……。
しかし内心では、失ってしまった「家族愛」というものへの渇望があり、それを決定的に壊した自分のある「非道」には心が拒絶する一面を見せる。

演じているのは役所広司。ヤクザのような派手なシャツ、白いスーツでかなり怖い。加奈子に対して「ぶっ殺す」など愛情と裏返しの殺意をたびたび吐く。
娘への暴行も「父親に『愛してる』と囁いて誘いをかけられるが拒絶して殺しかける」というシーンのみで表現され、性的暴行かどうかはわからなくなっている。

原作では、物語が進むにつれて異常な面が明らかになっていくが、映画では最初から異常な人である。

  • 藤島加奈子
物語のもう一人の主人公。
容姿端麗で成績優秀で人並み外れた勇気を持つ。
それなんてエロゲ?

実は「自分の父親である秋弘に強姦され、自殺しようとたところ助けてくれた恋人の緒方も不良グループに売り飛ばされ強姦され自殺した」という凄惨すぎる過去を持つ。
そのことからどこか頭のネジが狂ってしまったのか、自分の恋人を死に追いやった不良グループとパトロンの金持ちであるチョウに取り入り、薬の売人として大勢の少年少女達にドラッグを与え、児童売春させるというとんでもない方法でグループ内の権力を増大させていく。
そしてすべての準備が整ったことから、不良グループとチョウに対して凄惨な復讐を行う。

原作では彼女の視点で物語が進むことはないが、映画公開に際して、ストーリーブックに、彼女を主人公としたサイドストーリーが書き下ろされている。

映画版では復讐者というよりバケモノとしての側面が強く、動機も単純な復讐とは言い切れないものであり、より異常な存在としての側面が強まっている。そもそもキャラクターとして成り立っていないとかは言っちゃダメ。
演じているのはモデルで映画初出演の小松菜奈。

  • 桐子
加奈子の母親で藤島秋弘の元妻で金持ちのお嬢様。別の男に入れあげている時に秋弘に男をボコボコにされる。
向き合えなかったとはいえ内心では娘を愛していることは秋弘と変わらず、秋弘に娘を探させるために覚醒剤を使ったセックスにも応じてしまう。

映画版では黒沢あすかが演じている。

  • 瀬岡尚人(ボク)
藤島加奈子に憧れるヘタレ男子。元野球部員。
部を勝手にやめたというくだらない理由で同じ野球部員の島津とその腰巾着達にいじめを受け、助けてくれた加奈子に好意を持つようになった。
しかし加奈子にパーティーに誘われて薬漬けにされ、チョウに強姦されるという最悪の悲劇に……。

原作では、秋宏と彼がそれぞれ加奈子を追う様子が交互に描かれて物語が進行する。

映画版では清水尋也が演じている。原作とは異なり、加奈子に一目ぼれして彼女を追うのに夢中になって野球部をやめ、半ばストーカーの一歩手前になっていた。

  • 浅井
大宮署の刑事で、藤島の元部下。
生真面目な人物に見えるが、どこか藤島を利用して物事をうまく処理しようとする一面が見える。

映画版で演じているのは妻夫木聡。原作とは違い明確に悪意を持ったキャラクターに改変されている。

  • 小山内(愛川)
大宮署の刑事。痩せていておとなしい雰囲気の男。
実はチョウに雇われて殺し屋を副業にしている。殺人で得た多額の金は、病気がちの息子の治療費に使っていた。

映画版ではオダギリジョーが演じている。潔癖症で理想的な家庭を殺しで築き上げたという側面が強調されている。
また、原作以上に殺人に快楽を覚える異常者として描かれている。

  • 緒方誠一
いじめられっ子の美少年。不良グループに売り飛ばされてチョウに強姦され自殺してしまう。
映画化に合わせて発売されたシナリオブックに掲載された短編に、加奈子との馴れ初めが書かれている。
それによると加奈子と出会った時には既に犯されていて、見つけ出したチョウのホテルで凌辱されているところを加奈子に見られてしまった
ことが自殺の原因だったという(つまり、彼の死の引き金を引いたのは加奈子だった)。

映画版では彼の死について「もっと好きになりたいから私が殺した」と表現している。
この台詞を単純に解釈すると、加奈子が重度のサディストないしはネクロフィリアということになるが、上記に準じた裏設定があるのかはわからない。

  • 棟方泰博(松永泰博)
不良グループ「アポカリプス」のリーダー。
顔中ピアスだらけだが端正な顔立ちの美少年。
中学生時代はクールで理知的だが、高校生になって服装がDQNっぽくなった。
瀬岡同様加奈子に惚れる中二病患者純情な一面も。
父親に虐待された過去があるなど、家庭環境はかなり悪い。

映画版で演じているのは呉島光実/仮面ライダー龍玄の高杉真宙。
原作では加奈子に裏切られて半ば逆ギレ気味に加奈子を追っていたが、
映画では自ら加奈子に裁かれるために共犯者になったという設定に改変されている。


  • 遠藤那美
不良グループ「アポカリプス」のメンバー。
可愛い系の容姿をしているが典型的なDQN女で言動はかなり感じが悪い。
その性格は小心者で孤独になることを恐れる一面が垣間見え、ある意味瀬岡と変わらない境遇だった。

映画版では二階堂ふみが演じている。

  • 小山順平
不良グループ「アポカリプス」のOB。棟方の先輩。
メンバーの中では珍しいオタク系の青年で、カメラでの撮影が趣味だった。
加奈子の復讐によって起こった内部抗争の犠牲となり、藤島が彼の死を目撃するところから物語が始まる。

  • 金髪の男
不良グループ「アポカリプス」のメンバー。
描写はないが、おそらく高校生以上の年齢と思われる。
瀬岡に薬を盛って昏倒させた張本人。

原作では過去のパーティーのシーン以外登場しないが、
映画版では現在の時間軸で石丸組の組員として松永を追っていたことがわかる。

  • 島津
野球部の部員。かつて瀬岡とはライバルでありともに切磋琢磨する仲間であった。
瀬岡がやめたせいで自分より素質があるニ年にレギュラーを取られたことが悔しくてイジメを行う。
その後加奈子と不良グループに拉致され悲惨なことに……。
(映画ではリンチされただけで済んでいる)

  • いじめグループ
島津とつるんで瀬岡をいじめるしょうもないバカども。
不良気取りのA(田村)、柔道部のB(大場)、腰巾着の卓球部員C(本名不明)。
加奈子に操られた不良グループに脅されていじめをやめる。


映画版ではAが女装して不良グループのパーティーに参加したり、Cが女子になっていたりする。
原作でも映画でもBは空気。


  • 松下恵美(森下)
加奈子の高校時代の友達で、不良グループと関わりがあった長野を匿っている。
モデル体型で気丈な性格の少女。
途中まで藤島と行動を共にしている。
犯罪者とキチガイだらけの本作で、ほぼ唯一最後までマトモだった人。

映画版で演じているのは橋本愛。

  • 長野智子
加奈子の高校時代の友達で、不良グループと関わりがあり売春の当事者だった少女。
壊れそうなほど華奢で小柄な体格で髪の毛も少年のようなショートヘア。
加奈子についての重要な「鍵」を手渡すが、その矢先に何者かに殺害される。

映画版で演じているのは森川葵。

  • 神永朱美
加奈子の中学校時代の同級生。
死んだ瀬岡のことが気になっていたようで、加奈子にはいい思い出がない模様。
映画ではなぜか友達とケラケラ騒ぐバカ女になっていた。

  • 辻村
加奈子を診察していた精神科医。
加奈子の誘いで少女も買っていたエロオヤジ。

映画版で演じているのは國村隼。

  • 咲山
暴力団石丸組の若頭。「アポカリプス」とも関係があった。
冷酷なヤクザだが、義理人情に弱い一面を持つ。

映画版で演じているのは青木崇高。

  • チョウ
大宮一帯を仕切る実業家。この物語の全ての元凶。
売春サークルで地元の大物や警察官僚を買収して事業を拡大しようとしていた。
本人もホモでロリで金の亡者という最悪の人種。殺され方も呆気無く情けない。

映画版で演じているのは色々なブームの仕掛け人である康芳夫。なお、こちらでは台詞もないまま愛川に殺される。

  • 東里恵
加奈子の元担任教師。
「姉御」とか「アマゾネス」とか言われる男前系女教師。
生徒のいじめや非行に言葉をはぐらかすなど、教師として多少アレなのかも知れない。
娘をとても愛していたが、物語のラストである残酷な結末が……。

映画版で演じているのは中谷美紀。前作で中島哲也監督と一悶着あったのに……。



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