大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン

登録日:2011/07/10 Sun 16:49:38
更新日:2023/12/23 Sat 17:45:20
所要時間:約 5 分で読めます





大怪獣決闘

ガメラバルゴン


『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』は1966年4月17日に公開された大映の特撮映画である。
ガメラシリーズ第二作。
併映は『大魔神』。



【あらすじ】

飛行機パイロットの平田圭介は、独立の夢を叶えるため、兄の一郎が立てた特大オパールの密輸計画に一郎の知り合いの川尻、小野寺と共に参加した。

圭介、川尻、小野寺は一郎がオパールを隠したニューギニアへ向かい、ジャングルの奥の洞窟でそれを発見する。
しかし、川尻はサソリの毒で死に、小野寺は独占を目論んで圭介を洞窟に閉じ込め一人で帰国した。

神戸に帰港直前の船で小野寺が麻雀に興じる中、偶然オパールに水虫治療用の赤外線が照射される。
すると、そのオパールの中から怪獣バルゴンが誕生した…


【概要】

本作は『大怪獣ガメラ』のヒットにより製作が決定された作品で、ゴールデンウイーク用映画として通常の作品の倍のA級予算が投じられた。昭和ガメラシリーズ初のカラー作品である。
また、本作は大映東京が、併映の『大魔神』は大映京都が製作したことで、日本で唯一新作長編怪獣映画の2本立てを行った作品となった。

A級予算の作品ということで、本編監督には大映ベテランの田中重雄氏が起用され、特撮監督には移籍した築地米三郎氏に代わって湯浅憲明氏が担当した。

本作は高めの年齢層を意識してか、昭和ガメラで唯一子供が登場せず、全体のドラマを欲を剥き出しにした登場人物がいる、全体に夜のシーンが多い等、アダルトな雰囲気でまとめられている。
そのため東宝怪獣映画とはカラーが違う大映独自の怪獣映画に仕上がっている。

一方でアダルト路線を突き詰めすぎたか、「キチガイ」「放射線を浴びた奇形児」など現在では放送しにくいセリフもある。
そのため地上波放送される際にはそれらシーンが不自然に無音になったりすることもある。

本作は怪獣ブームも追い風となり、ヒットしたものの予算をかけすぎた関係で最終的には赤字となったらしい。
また、怪獣映画二本立ての割にドラマが長いせいか、子供が飽きてしまっていたため、湯浅監督を中心に対策が練られており、その成果は次作『ガメラ対ギャオス』で生かされる。


【登場人物】

◆平田圭介(演:本郷功次郎)

飛行機パイロットで、独立を目指すために兄の計画に乗りニューギニアに向かう。小野寺に洞窟に閉じ込められたが、島の人に助け出されバルゴンの事を知り、カレンと共に日本へ戻る。
ちなみに演者の本郷功次郎は『特捜最前線』の橘刑事役の人である。

◆カレン(演:江波杏子)

本作のヒロインでニューギニアの島民。日本人医者の助手をしているため日本語は堪能。平田にバルゴンの事を教え、対策のために日本に向かう。

◆小野寺

圭介達と共にニューギニアに行き、オパールの独り占めを狙った欲深い男。
そのためには殺人もいとわず、作中では四人(川尻、圭介、一朗夫妻)を手にかけ、圭介を除く三人を殺害している。
バルゴンが誕生してからも、バルゴン対策に使われた巨大ダイヤを自衛隊から奪って作戦を妨害し、ダイヤごとバルゴンに食われるという自業自得な最期をたどった。
おそらくガメラシリーズでももっとも邪悪な人間。それもその行動原理が物欲のみで、「人類の粛清のため」などという壮大さはまったく持ち合わせない点で「人間らしい邪悪さ」を発揮している。

◆平田一郎

圭介の兄で、戦時中ニューギニアでオパールを発見した。戦時中に足が負傷したため、代わりに圭介をニューギニアへ派遣した。
最期は小野寺に妻とともに殺害された。

◆天野教授

自衛隊のバルゴン対策に協力した科学者。誘導装置を作ったり圭介の案の裏付けを取る等活躍した。
が、本来の研究は殺人レーザーの開発と結構物騒である。

◆自衛隊

バルゴンに対して通常兵器で太刀打ち出来なかったが、圭介達の案を受け入れ、バルゴンの性質を利用した誘導作戦や、人口雨による足止め作戦、虹の反射作戦を行った。誘導作戦は小野寺のせいで失敗、虹反射はバルゴンが虹を出すのを止めたため失敗したが、どれもかなり効果的だった。


【登場怪獣】

◆ガメラ

前作でロケットで宇宙に追放されたが、たまたま隕石が当たって助かり、地球に戻り黒部ダムを襲い、火山に隠れた。

その後バルゴンの虹に反応して大阪に襲来、バルゴンと戦う。炎があまり効果がなく冷気を使うバルゴンとは相性最悪で、凍らされる。
しかし氷が溶け、虹反射作戦でダメージを負ったバルゴンの前に現れ、バルゴンを琵琶湖に沈めて勝利した。
バルゴンが話の軸で、ガメラは自衛隊とバルゴンの戦いに乱入する形であるため、ストーリーにはほとんど絡まない。
序盤の前作の場面は新撮も交えており、また黒部ダムの場面は非常に迫力がある。


◆バルゴン

本作の悪役怪獣。モチーフはトカゲ。
ニューギニアの虹の谷に1000年に一度現れると島民に伝えられてきた怪獣。オパールに似た卵から誕生する。
本来、生まれたばかりの個体はまだ小さく、本編に出てきた大きさになるには十年近い年月が必要らしいのだが、卵に赤外線が当たった事で異常な発育をしたらしい。

宝石を食べ、水に極端に弱いという特徴があり、ニューギニアではダイヤを使って湖に誘導し、湖に沈めて倒してきた。
攻撃は伸びる舌からの強力な冷凍液と背中から出す異常な射程の虹色の光線。

本作の序盤で船の中で赤外線を浴びて誕生し巨大化、神戸へ上陸した。血液は紫で、上陸前は神戸港を紫に染めた。神戸を蹂躙した後は大阪へ到達、大阪城を中心に氷漬けにし、ガメラも凍らせた。

その後は誘導作戦にかかり、琵琶湖畔まで行くが小野寺が誘導作戦に使用したダイヤを強奪し、そのまま小野寺ごとダイヤを食べた。


平成ガメラシリーズ2作目の敵怪獣候補には当初、本作より大型の個体として登場が予定されていた。

ぬいぐるみは高山良策によって造型され、エキス・プロダクションが細部の仕上げを行った。バルゴンのまぶたは横方向に開くが、これは当時の撮影所所長をモデルにしたものだった。湯浅監督によると、この所長は実際にそういうイメージの顔をしていたそうである。またバルゴンの頭が大きいのは人間体型を出来るだけ隠すためで、撮影では足元を写さないよう気をつけたという。湯浅監督は「バルゴンは見栄えよりも動きを優先させて作った」とコメントしている。

高山良策の怪獣造形は、「動きやすさ」を重視して作られ、非常に軽いぶん傷みやすかった。撮影でも痛みが激しく、連日補修が欠かせなかったという。ラストの琵琶湖に沈むシーンではぬいぐるみがなかなか沈まず、ハサミで腹を切り裂いて水を入れ、最後はほぼ頭だけの状態にしてようやく目的を達した。これには見学に来ていた子供たちも大笑いしたという。

ぬいぐるみと同サイズで、垂れ目気味で上半身だけの、舌が伸びるギミック入りのギニョールも高山によって作られた。舌を伸ばす仕掛けは、3人がかりで行うものだった。長い舌を伸ばしての冷凍液の噴霧には消火器が使われたが、舌を長く伸ばすのは、噴霧を拡散させて遠方まで冷凍液を飛ばしているように見せるためだった。

3尺サイズのギニョール人形も、同サイズのガメラと併せて琵琶湖セットでの撮影に使用された。卵から生まれる幼体のバルゴンはギニョール人形を使い、下から手を入れて動かしている。ギニョール制作はエキスプロ。孵化シーンで漂う煙には煙草が使われ、幼体バルゴンを覆うねばねばした粘液は、アメリカ製の特注素材を使っている。この「バルゴンの孵化シーン」は、湯浅監督が「本作で最も気に入っているシーン」だそうである。


【余談】

本作と同年の怪獣映画は夏に『サンダ対ガイラ』、冬に『南海の大決闘』とまとまった休みには怪獣映画が公開されていた。
また、この年の作品はガイラ、エビラと人を食べた怪獣が登場している作品である。

ガメラ対宇宙怪獣バイラス』で脳波コントロール受信機を付けられ、バイラス星人に操られたガメラは本作の映像を流用しているため、暴れるシーンに受信機がなく、本作の使い回し映像で黒部ダムを破壊する。

宇宙怪獣ガメラ』で洗脳装置を取り付けられ、ギルゲに操られたガメラは「地球を破壊せよ!」という具体性の無い命令で使い回し映像で黒部ダムを破壊する。

2000年代に本作を下敷きにしたコミック『大怪獣激闘 ガメラ対バルゴン』が発売された。
世界観は平成ガメラ3部作がベースで時期的には2と3の間である。
また、バルゴンはデザインが大幅にアレンジされている。

『熱帯出身の冷凍怪獣』という稀有な個性のバルゴンだが、コオリミミズという「真水に弱いが氷は平気」生態の生物は実在するのでもしかするとバルゴンもそういった体質なのかもしれない。
上記コミックでは水が弱点という設定はないが、本作ラストの展開から水面を凍らせて這い上がり最終決戦を迎えている。




オパールとダイヤを独り占めしてバルゴンに食べられたい方は追記・修正をお願いします。

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最終更新:2023年12月23日 17:45