可変翼

登録日:2011/07/29 Fri 22:37:55
更新日:2021/12/30 Thu 19:31:10
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飛行機において主翼の翼平面形(主翼の形・アスペクト比※)を変化させる機構のことである。
VG翼とも呼ばれ、可変翼を有する機体は可変翼機・VG翼機と呼ばれる。
映画『トップガン』で雄姿を拝めるF-14(トムキャット)は代表的な可変翼機である。




○利点
何故翼を可変させるのか。様々な利点があり、空戦において有利に立てるからである。

  • どの速度でも空気抵抗が低くなる、かつ適切な揚力を得られる。
  • 低速時は直線翼、高速巡航時は後退翼、超音速時には三角(デルタ)翼の特性を一つの機体で実現できる
  • 高速の攻撃機や爆撃機でも低速で離着陸出来る
  • 航空母艦など狭い場所でもより多く艦載出来る
  • カッコいい!!!←これ一番大事





○主な可変翼機※
P.1101
ドイツ製。地上で後退角を30、40、45度の三段階に変更可能。ドイツ敗戦後、技術と機体はアメリカへ。

F-111
世界初の実用可変翼機。主翼の回転軸を機体の中心から胴体側面の張り出しに設ける事により実用化。

F-14(自動可変)
ナガセ氏によると「鳥の翼を思わせる可変翼と、無骨な双発エンジン。退役した機体ですが、美しさと逞しさを兼ね備えた、まるで…とても魅力的です。」とのこと。

トーネードADV(自動可変)
独、伊、英が共同開発したトーネードIDSをベースにイギリスが独自に開発した戦闘機。

MiG-23/MiG-27(手動可変)
ソ連の戦闘機。公開は1967年、実戦配備は1972年頃。STOL性を求めた結果可変翼を採用した機体。
発展途上国に輸出されたが、可変翼機構が複雑で整備が面倒なため、旧型のMiG-21に置き換えられる可哀想な娘。

B-1(自動可変)
B-52の後継機である超音速戦略爆撃機。主翼を閉じた状態ではステルス性が高く、レーダーでの発見率はB-52の約1%とされている。

X-02(自動可変)
基本任務記号がX(研究機)しかないが、2001年にシミュレーター上ではあるが初飛行を終えている。
前進翼と後退翼に可変できるため可変の前後では全く別の機体に見える。実機でのお目見えが期待される。

ビーチクラフト2000 スターシップ(前翼のみ自動可変)
ビジネス機つまり民間向けの機体だが、前翼が可変翼となっている。
カーボンファイバー製の機体、推進式プロペラ、エンテ翼、ダメ押しとばかりの可変翼…ロマンましまし全部入りのビジネス機。全然売れなかったけどな。

アーウィン
こちらに関しては基本任務番号すらなく、愛称のみである。こちらは1997年にシミュr(ry
小型だが宇宙空間での使用を考えてか、武装はエネルギー弾を発射する機銃と強力なボムが採用されている。実機でn(ry

可変戦闘機
全機種ではないがVF-0 フェニックスの時点で既に可変翼を搭載しており、後継機にも可変翼は多い。特にVF-19 エクスカリバーは前進翼なのに完全折り畳むことが可能。
……まあ翼だけじゃなくて機体m(ry




○どこへ行った可変翼…
F-14以降、F-15F/A-18F-16F-22などが開発されたが、どれも固定翼。
実は1980年以降可変翼は衰退していくのだがそれは以下の理由による。
  • マッハ2級の最高速度は実用上意味がないとされ、高速性能の不追求
(ほとんどの戦闘はマッハ1前後で行われる)
  • エンジンの発達による、十分な速度性能の獲得
  • フライ・バイ・ワイヤシステムやCCV※の開発と発達
  • カナード翼や推力偏向ノズルによるSTOL(短距離離着陸)技術の向上
  • ステルス性への悪影響
  • 可変機構の複雑さゆえの重量過多と低整備性、脆弱性、高コスト化
  • スパコンでの機体設計による可変翼並の性能の獲得

最近のトレンドは推力偏向ノズルとステルス性だろう。






○斜めでも飛べます
忘れちゃいけない斜め翼(ObliqueWing)
上で述べたのは両翼が可変する翼。こちらは片翼だけ。回転軸が一か所なので機構が簡易で重量減を図れる。片方が後退翼なら片方が前進翼となる。つまりはこう。

アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発したAD-1が実験機として飛んでいる。
「いびつな翼でも飛べるのさ」と教えてくれる一度見たら忘れない機体である。





○余談と補足と豆知識
  • ※翼幅(よくふく)と翼の前後長(=翼弦)との比率のこと。
blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。

ここでは翼だが、画面アスペクト比と言えば4:3(従来のテレビ)や16:9(ハイビジョン)等を指す。これが合っていないと縦や横に潰れた画像になる。

  • VG翼の「VG」とは「Variable(変更の、不定の) Geometry(幾何学)」の略である。幾何学的に翼平面形が変わるからだろうか。

  • ※他にもMiG-27、Su-17/20/22、Su-24、Tu-160、Tu-22Mなどがある。

  • ※「Control Configured Vehicle」のこと。
最新の戦闘機はコンピューターが統合的に制御することを前提に空力的に不安定な形状に設計することがある。その為の制御技術をCCVと言う。

  • 「可変後退翼」とも呼ばれるが、あくまでもアスペクト比を変更させるのが目的であり、後退角の変化はその為の手段なので誤解を招く表現である。

  • 民間機では超音速旅客機としてボーイング2707の開発で構想されていた。しかし、コストと重量とメンテナンス性がネックで1971年に計画は中止。

  • 川崎重工の哨戒機「P-1」は、スタッフ曰く「可変翼にしたかった」らしい。



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最終更新:2021年12月30日 19:31