明日もこの部室(へや)で会いましょう

登録日:2014/05/09 Fri 19:14:24
更新日:2024/03/18 Mon 23:01:56
所要時間:約 12 分で読めます






キミの一瞬を、永遠に




『明日もこの部室(へや)で会いましょう』とは、2013年7月26日に発売されたアダルトゲームである。通称『部室』。
ブランドはミルクプリン。価格は9,240円(税込。当時の税制で5%)という安定のフルプライス。

そしてクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(以下KOTYe)2013大賞作品であると同時に、
毎月最低1本は選評が到着するという文字通りの大豊作だった2013年度の大賞を強奪した名も無き修羅であり、細菌兵器でもある。


ストーリー


主人公・樫尾光は二紺ヶ原学園写真部副部長でカメラ好きになってから5年目だった。
しかし未だに「これだ」と思えるような方向性が固まらず、半年ほどあまりいい写真を撮れていなかった。
そんなある日、写真部は学生会から廃部勧告を受けてしまう。以前から活動実績が乏しく人数も少ないのに、
倉庫や暗室などでスペースを取ってしまうことを他部から批判されていたが、写真部の事が学生会会議の場で話題に上がった事が原因だった。
もし来年1月までに実績を上げられなければ廃部になる。
実績を得るチャンスは毎年年末頃に締め切りのある「星雲写真展」の大学生以下の部で入賞するか、冬の学園祭で来場者投票上位入賞しかない。
部長のあずさは全部員ひとりひとりに事態解決のための「目標」を定めていくが、主人公だけは自分で目標を決めるようにと言った。
しかし顧問とあずさから撮るなら人物写真、それも女の子の写真を撮るようにと釘を刺されてしまう。
大人しい性格の主人公にはなかなか言い出すことが出来ず、緊張で失敗を重ねていた。
猶予は2ヶ月と少ししか残されていない。その途中で行われる合宿までに被写体を決め、緊張しない程度に仲良くならなければいけない。
しかしそれ以前に主人公は「目標」決定と魅力的に撮りたいと思える相手を見つけるというところからスタートしなければいけなかった…。
(公式サイトから引用・要約)


キャラクター


名前は、いずれも一部が実在のカメラメーカーのオマージュとなっている。

  • 主人公(公式サイトでは「樫尾光」)
本作主人公で写真部副部長。カメラ好きになって5年ほど経つが、現在スランプに陥っている。
女性恐怖症なのに、部の存続のために女の子を撮影するように顧問と部長に言われ四苦八苦することになる。

  • 織蓮(おりはす) 芳佳(よしか)
修学旅行直前にやってきた転校生。物怖じしない大胆な性格だが、普段は明るく人当たりのいい性格。元ティーンズ誌でモデルをしていたが現在休止中。
自分の可愛さを自覚しており、自分に振り向かない主人公への当て付けのように入部したが、今はカメラに興味が出てきている。
基本的にミーハーで話題を独占するのが大好き。

  • 曽爾崎(そにざき) あずさ
写真部部長。三度の飯より昼寝が大好きで、放課後の一時をだらだら過ごすのを何よりの至福としている。
普段は呑気さと適当さの塊だがカメラを持つと豹変する。
カメラそのものを写すのが大好きで、部員がカメラを買うとまず間違いなく飽きるまで延々写されるハメになる。

  • 菱熊(ひしぐま) 頼可(らいか)
主人公の幼なじみで親友であり、カメラマニアの父の経営するカメラ屋の娘。
幼い頃から英才教育と言わんばかりにカメラを押し付けられた事で大のカメラ嫌いになった。
しかし1年前の学園祭で主人公に撮られた写真を見たことがきっかけで現在は写真部に籍を置く。

  • 天宮(あまみや) 夏音(かのん)
写真部の後輩で、二眼レフとトイカメラを愛する。クールで頑固な性格だが、主人公の偶然のセクハラには何故かドキドキが止まらない。
撮るのは犬猫の写真ばかりで動物雑誌の投稿の常連で、センスも知識もなかなか豊富な一方で
カメラに関しては可愛らしさとマイナーさを優先してしまうマニアでもある。

  • 藤沢(ふじさわ) 諒子(りょうこ)
写真部顧問の国語教師。「顧問となった部活は廃部になる」というジンクスがあり、写真部で7つ目。
顧問を引き継いで3年が経ち、廃部になりそうな気配をじわじわと感じながら日々怯える。性格は温和で泣き虫なヘタレ教師。
見る目だけはあり部員へのアドバイスは的確で、投稿や出展するコンテストへの勧めもかなり的確。
同僚が引くぐらいの大飯ぐらいだが頭にいかず全て胸に行っているという噂がある。



概要


当初、2013年度KOTYe大賞は
年の頭にスワンアイが発売したデモンズウォール『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』(通称:ずっぷ)と
Ex-itの年末の魔物『雛といっしょ』(通称:雛遺書)の一騎打ち、もしくは『ずっぷ』の逃げ切りかと思われていた。

が、年明け早々に事態は急変、総評に間に合わせようとしたのだろうか8本のエントリー及び選評到着という異常事態が発生し、
総評草案の事実上の破棄と相成っていた。*1そして、その8本の中に今作が紛れ込んでいたのだ

『部室』の存在自体は確認されていたのだが、
  • 公式サイトでのブランド名表記ミス(ミルクプリンなのに「ミクルプリン」と表記)
  • 少なすぎるサンプルCG(芳佳3枚、頼可2枚の計5枚)とサンプルボイス(各1種類もしくは0)、
  • 「2013年7月26日発売予定」から変わる様子のないトップページ(2018年3月現在でもまだ発売予定)
などのやる気の無さから、只の駄作としてスルーされていた。

しかし、スレ住人の誰かが気まぐれに手を付けた所、とんでもない細菌兵器ということが発覚、7月の発売以降、約半年に渡る潜伏期間を経て炸裂。
検索してもブログ等を含めたレビューが皆無という状態に対策班が出動。
それにより露見していくゲーム内容に、一層スレは混乱と狂騒に塗れたバイオハザードに陥った。


一見ではありふれたADVであり、山も谷もない平坦な日常を繰り返し、選択肢によってイベント挿入などがあり、
被写体のヒロインを選択するイベントで条件を満たしていないヒロインを選んでしまうと共通バッドエンドに直行。成功すると個別ルートに入る。
…が、この個別ルートに入るまでが非常に長い。凡そ9割方が共通ルートであり、残り1割をヒロイン5人で分割している為やたら薄っぺらい。
その上共通ルートの内容も先述したように山も谷もない平坦ぶりで、本当にどうでもいい雑談、ニッチすぎるカメラの話題等
「だからどうした」「だから何なんだ」としか言えないイベントばかりで起伏がない。

キャラを掘り下げようとしてもシナリオ内で設定などが掘り下げられることが一切なく、共通ルートは無味乾燥そのもの。
頼みのCGもやたら少なく、オマケにキャラやBGM等の音声調節ミス、更にはキャプションの誤植(明日もこの部「屋」(正しくは部室)で会いましょう)、
エロシーンまで侵食汚染している薄ら寒いパロディやメタ発言などもあり加速度的にやる気は削がれていく。
追い打ちを掛けるように原画は七瀬葵氏らしいが本当に描いたのか疑わしいCGや特典テレカ(グラフィック担当が複数人いるらしく、絵柄がばらばら)、
一部キャラの立ち絵は腰が異常に細い逆三角形という視覚の暴力まで襲い掛かる。
オマケに幼なじみ系ヒロインの父が営むカメラ屋は見渡す限りエロゲーで、今作の数少ない癒やし要素と言えなくもないが突っ込みどころは目に見えるだけでも満載。

しかも公式サイトにおける主人公の名前は樫尾光のはずなのに、画面に表記されているデフォルトネームは「勇次郎」となっている。
オマケに話を進めると「犬吠崎副部長」という謎の人物まで登場する。
スレ情報によると「勇次郎」は同ライターの別作品主人公の名前なのだが、
名前入力の場面で空欄にすると名無しの主人公が出来上がったり、どう名前を入力しようが「俺には主人公って名前が…」と言い出す。
システム面でもバックログ一括表示不可能、クイックセーブクイックロード未搭載等ポンコツ具合が半端ではなく、本当に販売する気はあったのか謎である。


が、今作のクソ要素は更に加速する。
まず設定の矛盾。設定の矛盾等はよくある話だが、『部室』の矛盾は半端ではない。
例えば主人公は設定上女の子が極度の苦手で「触れ合うのはおろか名前を呼ぶのも無理、写真部以外の女の子は声を掛けるのすら無理」という女性恐怖症…。



なのだが…



煽られると学校内で写真部の女子に対するエロ妄想を声に出して垂れ流す
ヒロインと昼間の屋上でエロシーンを繰り広げた挙句「俺専用の穴」呼ばわり、
「親しくなるためには相手を名前で呼ばないといけない」と言われると抵抗なくあっさり名前で呼び始める、
体、頭、心のいずれかを鍛えるという3択でどれを選んでもエロ本片手に自家発電など枚挙に暇がない。

この矛盾はヒロインにも及んでおり、スレ住民が公式サイトや通販サイトの説明文で矛盾する部分を塗りつぶした結果
機密文書のようなまっくろくろすけになってしまった。
ストーリーは12行中3行しか残らず、説明文約10行中3行程度しか矛盾していない設定が残らなかったヒロインも…。


更にシナリオ攻略にもクソ要素は潜む。
セオリー通りに目当てのヒロインに毎日会っていると、上述の被写体選択シーンでバッドエンドに直行する。
原因は特定の日に「ヒロインに会ったら個別ルートフラグが折れる」イベントが仕込まれている為だが、ノーヒントではまず気付けない。
更にそのイベントを見た後も何事も無く日常風景を垂れ流すので回避必須イベントとは分かる筈もないので何回もバッドエンドを見るハメになる。
しかもその個別ルートが折れるイベント内容はヒロインが他の男といるのを目撃するだけで、その内容も、


ヒロインがチャラ男から飯に誘われているのを目撃
ヒロインがモブに告白されて断るのを目撃
ヒロインが兄弟或いは許嫁と車に乗っているのを目撃


というもので、これを見ただけでバッドエンドは確定する。
その問題のバッドエンド内容も「主人公は満足な被写体を見つけられず良い写真を撮れなかったものの写真部は存続。
主人公は写真部から浮いた存在となってしまい、卒業式の日に部室から身投げ」というもの。

サブヒロインにあたる頼可、諒子に関しては上記のイベントがなく、ストレートにEDが見れるといえばそれまでだが
初回特典のテレカはおろかサンプルCGにこの二人のものがないのを鑑みて
「完成間際あるいは販売直前に入れたヒロインなのでは」という説がある。

バッドエンドをなんとか回避したとしても、その先にあるのは無味無臭のエロシーン。
短い尺で無理くりどうにかした結果、次から次へと場面が移ろうため味わう暇もない。
もう理不尽とクソ要素で体調を崩しかねないが、残り1割を占める個別ルートは名状し難い異界である


無味無臭のエロシーン詰め合わせが終わるといきなり数年後に飛んでEDとなるのだが、
スキップすると5秒でコンプ可能(ボイスを聞いても15分)、主題であるはずの写真部のその後がごく一部の後日談でしかわからない。
5ルートの内写真部に言及されるのは諒子ルートと芳佳ルートのみ。それ以外のルートは写真部のその後をほっぽり出して終了という有り様である
(諒子ルートは教師として写真部の顧問を務めている。どこの写真部かは分からないが)。

その代わりなのか頼可ルート及び芳佳ルートで主人公はダメな方向に成長しており、何故か裸族に覚醒している
頼可ルートでは彼女と同棲しているのだが、家の中では全裸でいることを強要しており、「ある意味DV」と呆れられている(頼可は受け入れている模様)。
呆れたいのはこっちだ。

だが大問題なのは残る芳佳ルートである。
頼可ルートもぶっ飛んでいたが、こちらは明後日の方向にぶっ飛んでいる。

芳佳ルートでは2回のエロシーンの後、地の文で
「寝る間も忘れて肌を重ね、夜を摩擦し続けて。気がつくと数年が経っていた――。」と展開したと思いきや、
主人公と芳佳が5年分の食料と燃料と水が備蓄された山奥の洋館に引き篭っており、2年間に渡って裸族スタイルを貫きH三昧の日々を送っていたのである
部の皆を洋館に招待しようと芳佳は提案するが、「そうなると裸族でいられない」と主人公は悩んだ挙句
家の中では全裸でいなければならない」というトンデモハウスルールの交付を提案する。

寝れそうな位に退屈だったシナリオが一気にクロックアップ
あまりの超展開にプレイヤーはもれなく置いてけぼりになるがそれでもまだ止まらない。
学園祭の招待状が届いたから2年ぶりに外出しよう、という話題になるのだが…―



芳佳「なんか最近テロみたいなのが起きてて、都心部は大変なんだって。
   なんでも大怪我した人とか、死にかけた人が狂犬病みたいなのにかかって―」


同時に「引き篭っている間に街でが発生し、街は壊滅状態に陥っている」事が伏線もなにもなく判明するのだ。
最早理解の範疇を越えてありとあらゆるがプレイヤーの脳内を交錯する最中
芳佳と主人公は「電車動くかな」「持ち物に弓矢は必須」「2年前の服のサイズ合うかな」と呑気な会話をしており、
そのまま「果たして、無事に明日、部室で会えるかどうかは、誰にもわからない」と強引にタイトルにつなげてエンディングとなる。
もはや「ほらエンディングだぞ、泣けよ。」と言わんばかりの終わり方を投げかけており
プレイヤーの頭には「!?」が浮かびっぱなしになるか、或いは腹を抱えて笑うか頭痛を抱えるのみ。



なんで裸族なんだ?

なんでバイオハザードが起きてるんだ?

なんでその状況下で郵政は機能しているんだ?

なんでその状況で学園祭をやってるんだ?

なんで家族や同級生の安否より真っ先に服のサイズを気にするんだ?



これら以外の様々な疑問や設定、物語すら全力で投棄しているのである。
















一言で言えばまるで意味がわからんぞ!のオンパレードである。





















しかしまだ今作が大賞に確定するに至った要素がある。
主人公の名前変更時、文字数の上限を突破して255バイト分まで入力できるバグが発見されたのだ。
主人公名が長いと本来のセリフは次のページへ追いやられるという特徴は、即座に『部室』に蹂躙された住人たちの玩具となってしまい
本編そっちのけで「パロディやAAを入力してネタ画像を作る」という遊びと癒やしを提供し、様々な疑問や伏線をぶん投げ、
単調で薄っぺらく尚且つ最後で巻き起こる電波シナリオを引っさげ、化石UI、誤植、設定詐欺、理不尽、ネタツールとしての有用性の満艦飾を誇り、
総評曰く「クソさと笑いの大パノラマを内包している」「クソゲーとしての雄大さ」を鑑みて大賞受賞と相成った。


【余談】
次点作である『雛といっしょ』はメーカー対応のグダグダっぷりと内容のゲー無を超えるスカスカ具合のダブルパンチで次点入りとなったが、
今作はシナリオのぶっ飛び具合とクソ要素がオーバーフローを起こして発生したネタ性、更に嘘だらけの公式サイトというおつりまでついてきた。
そんな数え役満のお陰か、総評案が最終合成稿案含め9本(内1本は本人辞退)投稿された中、2013年度のデモンズウォールとなった『ずっぷ』こと『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』が満場一致で次点
『部室』が同じく満場一致で大賞という謎の快挙を成し遂げた。





追記・修正は裸族になってからお願いします。



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最終更新:2024年03月18日 23:01

*1 そもそもKOTYeスレの1月は所謂予備期間であり、平時ならば総評完成までまったりしているか、或いは前年がそうであったように新年度KOTYeのデモンズウォールの襲撃に遭っている時期であり異例の事態だった