太平洋の嵐~戦艦大和、暁に出撃す!~

登録日:2014/05/03 (土) 21:28:41
更新日:2024/01/27 Sat 18:01:16
所要時間:約 12 分で読めます









新たな嵐が起こる時、大和の咆哮が太平洋に鳴響く!






概要

『太平洋の嵐~戦艦大和、暁に出撃す!~』とは、システムソフトアルファー(以下SSα)開発及び発売のPS3用の、
太平洋戦争をモチーフにした超ド級本格派戦略シミュレーション。

元々2007年にPCで「太平洋の嵐5」として発売され、その後2008年にPS2PSPに移植。
その後更にDSにも移植され、4機種目の発売である。

「既存の戦略ゲームで類を見ないほどのボリュームで、ファンの皆様に満足いただける製品となっております」と公式サイトでは謳われているが……




その実態はクソゲーオブザイヤー(以下KOTY)2012の大賞作品である。




システム面、UI面、グラフィック面、操作性等ざっと見渡してもありとあらゆる面で問題点しかなく
総評で「和洋のクソゲー大戦」と揶揄され混沌とした2012年度の大賞をもぎ取った、超ド級本格派クソゲーである。通称「ゲー霧」「嵐」

そもそも2007年発売当時のレビュー等で酷評が相次いでおり、
複雑難解すぎる新規プレイヤーを門前払いする気満々のシステム、低レベル過ぎるグラフィックなど、凄惨たる出来栄えだった。

その後移植先でも酷評が相次ぎ、各プラットフォームで圧倒的な低評価を得てきた問題作でもある。

今作はどうやらPS2版をそのままベタ移植したらしく、DL版インストール容量はたったの597MB、総容量でも617MBしかない
PS3に移植して7140円というフルプライスでパッケージ発売する必要があったのか甚だ疑問である。
いっそアーカイブ販売でいいじゃねえか……。

(補足するとPS2版も選評さえ届けばヨンパチショック後である2008年KOTY大賞に余裕で選ばれる出来栄えだった。
レビューによるとテストプレイしたかも疑わしい程ゲームバランスは滅茶苦茶で購入日中の売却報告もあった。
曰く「作った人は多分、一人でプレイするゲームだという前提に立ってない」「これ作った奴は明日にでも暁に没してもらいたいね」)
あまりのクソ要素の山積ぶりに、原稿用紙にして100枚以上という修論真っ青の目次付きレポートを叩きつけた猛者もいた程(なお、このレポートを著した猛者ですらも全クリは出来なかった)。


問題点

昨今のPS2からPS3への移植作品では何らかのシステム改善や追加コンテンツ等の追加要素は最低限あるものの、それすらない。というか劣化した

まず解説書という体裁の説明書は限定版(9240円)限定付属品でありながら、
内容はPC版攻略ページや体験版で十分補填できる内容であるためまず買う必要がない。

一応通常版にも説明書はあるにはあるのだが、前述したように複雑難解すぎるシステムなのにPC版の半分程度のページしか無い

オマケにその問題のシステムも、
20年以上前の過去作のシステムをほぼ流用している上に著しく劣化させた状態で移植しているという盤石の体制。
SSαはどこに向かいたいのだろうか……

DS版には一応チュートリアルはついていたのだが、PS3版にはない
何の説明もチュートリアルもないまま、説明書や解説書を読んでもわからないことだらけなのに、いきなり実戦にほっぽり出される。



公式サイトには



物資の輸送や、人員の起用・兵器の開発などの各画面レイアウトをより直感的にすることで、
初心者の方にも気軽にプレイを楽しんで頂けるよう、操作性の向上を実現しています。



と書いているのだが、出だしから初心者バイバイである。
その他には劣悪な操作性、度々UIの不便さが指摘されるSSαゲームでも1,2を争う劣悪なUI、充実のオプション、
残念極まりないAIの思考回路、仕様なのかバグなのかわからないシステム等問題が山積み。いい面を探すほうが苦痛かもしれない。
その為、スレにはこれからプレイする人向けの説明文が記載された。


「これから嵐をやろうとしている人へ

 数多くあるシナリオだが、最初は資源・搭乗員ルールなしで、富嶽飛翔スシナリオをプレイしよう
これだけでは霧ゲーを味わうことは出来ないが、雰囲気(超作業ゲー感)だけでも味わうことが出来る。
資源なし&富嶽使い放題だから凄くクリアするのには(システム的に)簡単だ。雰囲気を掴んだら終わりにしても構わない。
 次に、資源ルールだけありにしてもう一度プレイしよう!
さっきのプレイがややこしくなるだけだからここで資源ルールの恐ろしさを学びつつ
チマチマセーブしながら進めると選評が届かない理由も学べるよ。
中断し、再び起動して、タイトル画面が見えた瞬間電源を切れるようになれば
君も立派な霧の中の迷子だ!売り飛ばしてきてもいいぞ!
もし霧ゲーを更に味わいたいなら太平洋の嵐シナリオ・資源ルールありでプレイしよう!
シナリオを開始出来るかが最大の壁だけど頑張ってクリアしてね。
クリアしたなら搭乗員ルールをありにして太平洋の嵐シナリオをプレイしよう!
ただ、これやると電源をいれる度に電源を切る癖がつきかねないからやめたほうがいい」


更に、総評や当時のKOTYスレに寄せられた問題点を抜き出すとこうなる。これでもまだ極々一部である。

  • 目立ったバグ報告はないが、どこまでが仕様でどこからがバグなのか訳が分からないのが主原因
  • BGMの初期音量がでかい。環境設定から小さくしても一回ゲームを終了するとリセットされるので、また開始時に爆音同然のBGMが響く。
  • プラットフォームは次世代機なのにグラフィックは初期PS1相当(下手をするとそれ以下)。歩兵はホバー走行し、後退させると戦闘シーンで見事な逆回しを見せられ、カメラワークもひどく、戦闘シーンの描画範囲も狭い。おまけにSEもチープ。
  • 地面に対し約70度の角度を向いている対空砲から地対空ミサイルが平然と地面と平行に飛んで行く。
  • 操作性が劣悪。例えば船の航路を決める時、勝手に根拠地に吸い付く左スティックと超高速で動く十字キーを交互に駆使する必要がある。コース設定した瞬間船が事故っていたり座礁しそうになっているのは日常茶飯事。
  • コース設定は繊細な操作が要求され、瀬戸内海等の狭い海域から外洋へ船を出すにも一苦労。
  • スタート時にアメリカ陣営か日本陣営かを選択できるが、アメリカ陣営を選ぶとイギリス領や中国領から日本領へ侵攻不可能(日本陣営なら陸戦でイギリス領や中国領にも侵攻出来る)。
  • 思考ルーチンのミスなのか、アメリカ陣営を選ぶとイギリスがやたら好戦的になる。どうやら連合国の強さは形勢依存らしく、アメリカに形勢が傾くシナリオ後半に差し掛かると一気にイギリスがチート化する。
  • 勝利条件が根拠地の占領数で決まるため、守りの薄い拠点だけを狙えばクリア可能という戦略も史実もへったくれもない仕様。
  • 上述の仕様のため、硫黄島決戦では硫黄島に上陸することなく勝利可能。時に暴走したイギリス軍が大貢献するという事も…
  • 敵地上部隊を0にしても上陸方法がわからず占領できない。
  • 敵の情報も味方の情報もわからない五里霧中状態でのプレイを強いられる。
  • プレイヤーが戦闘機の搭乗員まで一人一人決められるという設定がウリだが、司令官がそんな事をしていたら過労死確実。選評者からも「舌を噛み切りたくなる」という言も飛び出た。
  • 敵CPUの思考回路が理解不能(海戦で非武装の輸送船が迎撃に出るなど)。
  • たった10機の爆撃機隊で大和・武蔵・長門・伊勢を含む旧日本軍最強艦隊を殲滅可能。
  • 何の前触れもなく潜水艦やパイロットが消滅する。1人や1隻という生易しい数ではなく、時にはエース級が百人単位で消えることも…
  • 対空砲火で狙われる順番が「リストの上部から」という仕様のため、戦闘機の消耗がマッハ。時には対空砲火だけで戦闘機100機以上が撃墜されるという場面すらある。
  • 情報表記がそもそも間違っている。(例:睦月級駆逐艦 最大積載燃料:420(t) 燃費:1512(kg) 最大航続距離:7200(km))
  • 敵潜水艦が無限湧きする。どうやらマップ上のどこかに発生ポイントが設定されているらしい。
  • 戦艦2、重巡2の南雲艦隊をハワイに突撃させたら、1回の砲撃で停泊中の敵戦艦10隻ぐらいとその他多数を轟沈した。
  • 敵潜水艦を効率よく撃破出来ない。攻撃できるのは索敵中の爆装した機体のみで、しかも発見時に撃破しなければ行方をくらましてしまう。
  • 兵器一覧を見ていたらフリーズ発生(しかもPSボタンすら効かないタイプ)。
  • マップ上でどれだけ離れていても、陸路さえ確保していれば隣接する根拠地間の移動は1ターンで済む。
  • 嵐をプレイするという苦行を指して曰く、「そのゲームはさながらアルミホイル奥歯で噛み噛みの刑の様であった」


本作の売りとして海上輸送にスポットライトを当てており、自軍の補給路の確立や、
いかに敵軍の通商破壊を効率よくするかが鍵となっているのだが、システムがやたら肥大化した上に煩雑化しており、

「どれだけ積載量が余っていても1隻の輸送船に2種類以上の貨物を載せるのは断固拒否される」
1ターン当たりの輸送量は人力計算

という仕様を初代から引きずってるせいでとんでもない事になった*1


例えば50tの燃料と50tのアルミ、100t積載可能な輸送船があったとする。
本来なら両方いっぺんに載せて出港といきたいが、異なる種類の貨物の同時積載は出来ない

この時点で燃料とアルミの為に2隻の輸送船が必要となるが、
これではそれぞれを積んだ船が片方撃沈されただけで一度に多数の兵力が無力化してしまう為、
リスク分散の為に小分けにする必要が出てくるので最低限度にすると25tずつの4隻と更に増え、さらに増えた分だけの護衛艦が必要になる。

これはあくまでもたとえであり、同じ趣旨のクイズが選評案の1つにて出題されているが、
終盤になると輸送船だけで100隻以上の大輸送船団を編成する必要があり
そこに「陸上部隊(戦闘部隊及び設営部隊)は1隻に載せる事ができる上限が船の積載量如何に関わらず設定されている」という追加攻撃が待っている。

それらの計算も人力のためコントローラーを置いて計算する時間がやたら増える。

このため当時のKOTYスレに書き込まれたプレイに最低限必要なものの中に「電卓、メモ、ペン、気力と時間」が含まれ、
さらにできれば用意するものに「優秀な参謀と管理能力」、
いらないものに「戦略を練る頭脳」が挙がるなど、戦略ゲームとしては常軌を逸したシロモノである。
まあぶっちゃけこの辺は初代からこーゆーゲームだったんだけど。

だがそんなこっちの苦悩と苦労をよそに、敵CPUはステルス輸送を連発、こちらの仕掛けた妨害工作や包囲も無効。
ガソリンと重油に至っては無限ストックである。
戦闘よりも兵站の確保&管理を重視するコンセプトとしたゲームでは絶対にやってはいけないことをしているが

この仕様のためアメリカ陣営を選択していると、日本軍がガソリン重油を無限ストックという史実とのとてつもない齟齬が発生する。
逆にこっちがどれだけ大輸送船団を頑張って送り届けようとしても敵のワープ部隊に叩かれる為どうしようもない。
さらに言えばこの手の戦争ゲームでは常套手段になるはずの兵站分断作戦がつかえないためさらにきつい戦いになる。

たとえ敵のワープ部隊をやり過ごせたとしても、
航路で発生した台風や濃霧といった天候という不確定要素に船団が一網打尽にされてしまう恐怖がつきまとう。



以上のあまりの酷さ故に、酷さを端的に表現したヨハネスブルグのガイドラインの改変版まで作成される始末。
  • 戦艦10隻なら大丈夫だろうと思っていたら、非武装の輸送船20隻に襲われた
  • 停泊地から半日の海上なのに駆逐艦が燃料不足で自沈していた
  • 艦底に何かがぶつかったので調べてみると、地底から湧いた潜水艦だった
  • 海上封鎖で閉じ込めた敵部隊がいつの間にから消え去り、ワープで味方拠点を攻撃していた
  • 波状攻撃をかけられ疲れた、というか抵抗できなくなった大部隊を一人に陥落させられた
  • フェニックスからメキシコシティ(直線距離2000km)の間を陸路で移動するのに半日。
  • 開戦日に真珠湾が艦砲射撃を受け、艦船・航空機・陸上部隊、施設さえも撃破された
  • 航空機ならより安全だろうと真珠湾に奇襲攻撃を掛けたら、機体の損害が増えただけで逆効果だった
  • 被撃墜の8割が対空砲火。リストの上部から狙っていく仕様のため「戦闘機ほど危ない」
  • 「そんな危険なわけがない」といって出撃したエース・パイロットが一人も帰って来なかった
  • 「何も持たなければ襲われるわけがない」と手ぶらで出てきたCPUの輸送船を撃沈したら、攻撃に使った燃料の分だけこちらが損をしていた
  • 最近流行っている破壊工作は「積載1」物資を1だけ積めば輸送船の自由を奪えるため
  • 海上拠点から半径1000km以内に潜水艦が湧き出る確率が150%。2つめの湧きポイントがある確立が50%の意味
  • SSαのクソゲーによる被害者は1日平均12人、うち約10人がフルプライスで購入

このゲームが大賞を取る決定打になったのはクソ要素の多さと語り難さであり、「言葉で捉えようとしても霧のように散り消えてしまう」というのは総評の談。

笑い飛ばすことも許されないほどのクソさ故に、検証と選評完成には60日という地獄の遠征が強いられたという。
ある者は選評が書き上がったと言い残して失踪、あるクソゲーハンターは「ストレスで禿げる」と言い残して嵐を封印。
こういった遭難者が続出した原因をまとめたテンプレが存在する。


太平洋を起動する。(50%)
  →SSαのロゴに狼狽し電源を切る(50%)
   →シナリオを開始する(10%)
    →序盤の輸送設定のだるさを思い出し電源を切る(90%)
    →戦闘の無常観に打ちひしがれ、電源を切る(9%)
    →敵潜水艦にやる気を通商破壊され降伏
    →資源を管理する作業から得た勝利の快感に浸る(1%)
     →AIから勝利したのに悲しみ、虚しさが残り、やる気が崩壊。セーブし電源を切る         
   →セーブデータを読み込む(90%)
    →セーブした所までの苦労を振り返り、電源を切る(30%)
    →将来する作業に憂鬱になり電源を切る。(70%)
上のルートを繰り返してプレイが進まないことがこの霧ゲーにはよくあること



その結果、総評でクソゲーの海に現れた伝説のリヴァイアサンとまで言われてしまった。


余談

よりによって嵐の誕生日はかの四八(仮)と同じ11/22。
SSαのKOTYノミネート作品は今作で累計8本目(据え置き機だと4本目)。

しかもその内大賞受賞作が今作で累計3本目(戦極姫PS2版及びPSP版、今作)という
タカラトミーを凌ぐ王者となってしまった(タカラトミー自体は家庭機ゲーム業界から完全撤退している)。

次作である太平洋の嵐6も発売されており、
公式サイトで「今までの使いにくかった操作性を改善」と今作の操作性が劣悪であった事を公言しているような状態。

今作の公式サイトでも「操作性を改善」と過去の移植作品から品質向上したことをアピールしているが、
どこをどう改善したのか説明してほしい。オマケにグラフィック面も相変わらず残念な出来で、もはや見えてる地雷。

そして『大戦略PERFECT~戦場の覇者~』が累計10回、
2年3ヶ月の延期を経て2014年度据え置き機KOTYにノミネートされ、合算9作目のノミネートが達成された。
「クオリティアップのため」と延期しながらも全体的にお粗末な出来であり、選評執筆者曰く「手持ちのGB版より劣るUI」な時点でお察しである。



フルプライスもしくは限定版を買ってしまった方、きちんとクリア出来た方、追記修正お願いします。



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最終更新:2024年01月27日 18:01

*1 ちなみに初代は1987年発売。パソコンのメモリがようやく640kbに届くかという時代であり、ハードの限界でシステム的に様々な制約が課されるのはやむを得ない時代であった。が、それから20年経ってもそのままというのは……