それいけ!アンパンマン キラキラ星の涙

登録日:2014/04/30 (水) 11:53:33
更新日:2023/10/25 Wed 05:48:13
所要時間:約 10 分で読めます





愛と夢のメッセンジャー

アンパンマンが映画館にやってくる!


『それいけ!アンパンマン キラキラ星の涙』は、『それいけ!アンパンマン』の記念すべき劇場版の1作目となる作品。1989年に上映された。
歴代の劇場版アンパンマンの中では最長のストーリー(70分以上)となっている。


テレビシリーズが始まってから半年も経っていない上、一番最初の劇場版ということもあり、
後の劇場版と比べると冒険活劇の面が強い上、登場人物や物語はテレビシリーズの延長線上のような構成となっている。

しかし、テレビシリーズを差し置いてこの作品で初登場し、後のテレビシリーズで大いに活躍する者達が多く存在し、
最近は続々登場する新陣営に隠れてほとんど登場する機会が少なくなった初期の人気物達が活躍する場面も多く、
後のアンパンマンに大いに影響を与えた作品であることは間違いない。

また、この作品はある意味で後の劇場版と比べて様々な部分が異色的とも言うべき特徴が多々ある……(後述)。



◆あらすじ
ある激しい嵐の日、いつものようにパトロールをしていたアンパンマンは不運にも雷に打たれてしまった。
そこに突然、宇宙船が現れ助けられたものの、その宇宙船も雷に打たれて森に墜落してしまう。
アンパンマンはすぐに救助へ向かい、バラバラになってしまったロボットをジャムおじさんに修理してもらうべく回収した。

しかし、宇宙船の乗組員はもう一人おり、それは「キラキラ星」からやってきた王女、ナンダ・ナンダー姫であった。
はぐれてしまったお供のロボット、マルデ・ヘンダーを探すナンダ姫は、UFOで散歩をしていたばいきんまんに騙されてバイキン城に幽閉されてしまう。

ジャムおじさんに修理されたロボット、マルデ・ヘンダーはアンパンマン達の星へ来訪した目的を話す。
平和であったキラキラ星に突如、宇宙の彼方から恐るべき暗黒の怪物、「ドロンコ魔王」が襲来し、
キラキラ星の秘宝の宝石「キラキラの涙」を奪われ、キラキラ星は壊滅寸前となってしまった。
ナンダ姫とマルデ・ヘンダーはキラキラの涙を取り戻すため、ドロンコ魔王を追ってアンパンマン達の星へと来たのだ。

アンパンマン達はばいきんまんに捕らわれたナンダ姫を救出し、彼女達の手助けをするべく行動を起こす。
果たして、アンパンマン達はキラキラの涙を取り戻すことができるのか。




◆主な登場人物

●仲間サイド
アンパンマン
ご存知、美味しいあんこがたっぷり詰まったみんなのヒーロー。
本作のオープニングはジャムおじさんがアンパンマンの新しい顔を作る所から始まる。
本作では全体的にアンパンマンが直接活躍する機会は少なめである。

ジャムおじさん、バタコさん、チーズ
アンパンマンを全面的にサポートする、お馴染みパン工場の面々。
本作ではあらゆる場面でピンチに陥ったアンパンマン達の救援に現れ、サポート以上の活躍を見せてくれるまさに救世主にふさわしい存在。

しょくぱんまんカレーパンマン
アンパンマンの頼れる仲間達。
今作のカレーパンマンは後の劇場版に比べて熱に弱いゆきおおかみを相手に立ち回るなど大活躍する。
逆にしょくぱんまんは氷の女王に氷漬けにされたり他の二人共々かびるんるんやどろんこ魔王にやられるなど、あまり良い活躍をしていない。

どんぶりまんトリオ(てんどんまん、かつどんまん、かまめしどん)
毎度お馴染みの賑やかなどんぶり三人組。
なお、てんどんまん以外の二人は映像作品ではこの劇場版が初登場である。
……が、彼らは全くと言って良いほど活躍はできず、専らばいきんまんの食事要員である。

○ひのたまこぞう
真っ赤に燃える炎の体を持つ少年。
氷の女王戦から参戦し、氷の女王配下のゆきおおかみをカレーパンマンと共に撃退した他、
さかさまんに捕らわれたアンパンマンを助けるなど己の特性を活かした活躍を見せる。

○おむすびまん
鼻が梅干でできた、三角おにぎりの顔を持つ正義の流浪人。岩をも斬り裂く仕込み刀の杖を持ち歩く。
登場するのは後半からであるが、ジャムおじさん達の危機を救い、ばいきんまんのロボットを手玉に取る活躍を見せた。

○ユキダルマン
温かい心を持つ雪だるまの妖精たち。テレビシリーズを差し置き、本作が初登場。
氷の国で遭難しかかったアンパンマン達を仲間と共にかまくらとなって救い、
氷の女王に苦戦するアンパンマン達の元へジャムおじさんを連れてきた。
ところが、強敵の氷の女王を倒すための代償となってしまい……

○らーめんてんし
氷の女王から救出された一般市民達にパンを配るジャムおじさんと共に、ラーメンを提供した。
ナンダ姫はアンパンと共にラーメンも気に入った模様である。

○ナンダ・ナンダー姫
記念すべき初のゲスト。
アンパンマンワールドとは別の遠い星、「キラキラ星」からやってきたお姫様。
シリーズでは非常に珍しい高い頭身と完全な人型の容姿を持っている。
外見はあまりお姫様っぽくないが、これは恐らく外出用の服装。
実際、マルデ・ヘンダーをお供に外出していたおかげでドロンコ魔王の襲来から逃れることができた。
故郷を救うまでは絶対に泣かないと宣言し、ばいきんまんやドロンコ魔王に啖呵を切るなど気丈で強気な性格。
また、多少天然ボケの気があるようである。序盤のばいきんまんとの掛け合いは笑いを誘う。
キラキラの涙を取り戻すためにドロンコ魔王を追って来られたのは、キラキラの涙の魔力を感知することができるためである。
ただし、宇宙船が墜落した時の影響でその能力が極端に低下してしまったおかげで色々と苦労する破目に……

現在の所、劇場版4、6作目の併映作品のおまけムービーのゲストとしてのみ再登場している。


○マルデ・ヘンダー
ナンダ姫の侍従のロボット。テレビシリーズに登場するナンカ・ヘンダーは兄であるらしい。
ナンカ・ヘンダーと比べるとボディの色が微妙に違う。
腹部にはキラキラ星が救えるまでのタイムリミットのメーターが存在し、本作はある意味で時間との勝負という隠れた緊迫感が潜んでいる。


●敵サイド
ばいきんまん
みんな大好き、愛すべき正義の悪。
キラキラの涙を手に入れるため、あらゆる手段やバイキンメカを駆使してアンパンマン達を妨害する。
なお、後の劇場版では純粋な敵役、直接的なボスとなる機会が多いばいきんまん達であるが、
本作では後述のように多数ボス達が存在するため、どちらかと言えば第三勢力のような扱いになっている。

ドキンちゃん
キラキラの涙を手に入れようとするばいきんまんに協力はするが、あくまでも独り占めにするのが目的。
この頃はまだばいきんまんを尻に敷いている様子は無く、ばいきんまんにもはっきりと居候呼ばわりされている。
さらには口論の場面でもばいきんまんに手玉に取られるなど、今となってはかなり珍しい場面も。

○かびるんるん
ばいきんまんの古参の手下勢。大勢の仲間がいる。
ドキンちゃんの命でキラキラの涙の在り処を探るためにバイキン城から逃がしたナンダ姫に同行させたり、
バイキンUFOに潜んで情報を得たり、もぐりんから放たれてアンパンマン達を窮地に陥れたりと要所要所で陰ながら活躍している。

○氷の女王
氷の国に住まう悪のカリスマの一人。第一のボスにして本作が初登場。
「氷の涙」を所持する他、住民を氷の彫像に変えてコレクションにしたりしていた。
アンパンマン達を窮地に陥れるが、救援にやってきたジャムおじさんによって倒される。
なお、まだのび太声ではないために非常に怖い。

○ゆきおおかみ
氷の女王の手下。
後のテレビシリーズに比べて雪というより氷狼のような描写である。
アンパン達に襲い掛かる場面の描写はとても気合が入っており、テレビシリーズのような愛嬌もない。

○さかさまん
本作が初登場の蜘蛛の妖精。「光の涙」が隠されている虹の谷に潜んでいる。
テレビシリーズでは言うことが何でも逆さまになったりしていたが、本作では至って普通に喋る。

○すなおとこ
砂漠の支配者の魔人にして第二のボス。本作が初登場。
「砂の涙」を所持しておりラッパを吹いて砂嵐を巻き起こし、ナンダ姫とバタコさんを誘拐した。
砂の涙を強奪したばいきんまんを追って来るが……

○ドロンコ魔王
宇宙の彼方からやってきた一つ目に無数の触手を持つ暗黒の怪物。本作の最終ボス。ドロドロンというスライム状の手下が無数にいる。
キラキラの涙を奪い、ナンダ姫の故郷を滅亡寸前にまで陥れた上、アンパンマン達の星までも征服しようと企む。
支配域であるオソレ沼の侵食とその恐怖に怯え避難する住民達の場面はまさに恐怖の一言。
さらには魔王の名に恥じずかなりの博識であり、異星のアンパンマンとばいきんまん達の状況を知っていた。
ばいきんまんもあくまで征服する星の住人でしかないため、アンパンマン達と同士討ちをさせようとけしかけたりした。
後の劇場版で登場するボス敵はアンパンマンの手によって直接倒されるのがほとんどであるが、
このドロンコ魔王はアンパンマン達が総力戦を挑んでも全く歯が立たず終始圧倒され、直接倒すことさえできなかった。
はっきり言って、歴代アンパンマンの中でも最大最強クラスの敵である。

現在の所、テレビシリーズや映画での再登場は無いが絵本にはちょい役で登場している。

2017年10月6日放送のアンパンマン1375話「アンパンマンとどろんこ魔王」に28年という年月を経てついに登場
ばいきんまんの操縦するばいきんロボ(だだんだん)を一方的に拘束した挙句、アンパンマンの顔も泥水で汚してパワーダウンさせ
カレーパンマン、しょくぱんまん、さらにはドキンちゃんも加勢するも全く歯が立たないと大暴れする。
アンパンマンがやられそうになるも、辛くも脱出したばいきんまんが
「アンパンマンを倒すのは俺様だー!」と立ち向かう熱い展開もあるも、吹き飛ばされてばいばいき~ん。
さらに通常なら逆転勝利フラグである「新しい顔よ!」からのトリプルパンチですら
泥んこボディは即座に回復してしまって通用しない…と、初代劇場版ラスボスの名に恥じない大活躍をしてくれた。



◆重要アイテム、メカニックなど

○キラキラ星
ナンダ姫の故郷にしてアンパンマンの星から遥か遠くにある星。
とても平和で美しい星であったが、ドロンコ魔王の襲来によって見るも無惨に変わり果てた荒廃した星になってしまう。
下手をすればアンパンマン達の星も同じように征服され、滅亡していたかもしれない。
なお、エンドロールではキラキラの涙を取り戻したことによる復興の様子が描かれている。

○キラキラの涙
ナンダ姫の故郷、キラキラ星に伝わる王家の印である秘宝の宝石。
正しい心を持つ者が持てば世界は命で満ち溢れ平和をもたらし、悪い心を持つ者が手にすれば悪の魔力は無限の力を与えるという。
ドロンコ魔王に奪われたことでキラキラ星は滅亡寸前となり、逆にドロンコ魔王はより一層強大な魔王となってしまう。
普段は緑色に美しく光を放つが、悪の魔力を発揮している時は不気味に赤く光る。

本作には他にも本物の涙が集まり結晶化した「氷の涙」
虹の谷の色と光を封じ込めていた「光の涙」
砂漠の水とオアシスを封じ込めていた「砂漠の涙」が登場する。

○氷の宮殿
氷の女王が住まう居城。
内部には氷の女王のコレクションとして氷の彫像となった住民や集められた様々な宝石が存在する。

○虹の谷
光の涙が隠された洞窟がある場所で当初はモノクロの風景であり、
アンパンマンやばいきんまん、UFOまでもがモノクロになってしまった。
光の涙の封印をといたおかげで美しい虹色の谷へと変わった。

○砂男の城
砂漠の中にそびえ立つ巻貝のような形の城。
城の近辺には砂男の顔を模した岩が無数に点在している。
砂の涙の封印を解いてオアシスが復活したことで崩壊してしまった。

○オソレ沼
ドロンコ魔王がアンパンマン達の星を征服する足掛かりとして森や町を泥で侵食し飲み込んで作り上げたテリトリー。
外部は山のように大きく広がっており、夜になると奪ったキラキラの涙の光が光りだす。
内部はライトの光も役に立たないほどの闇に包まれ、深部は古代の植物が生い茂る極めて不気味な領域と化している。

アンパンマン号
パン職人、ジャムおじさんご自慢の自家用車。
ノーズパンチ、火炎放射機など数々の武装を備えるなどもはや兵器・戦車に等しい存在である。
本作では窮地に陥ったアンパンマンを何度も救う大活躍を見せている。

○もぐりん
ばいきんまんお気に入りのモグラ型地底戦車。
砂男の城内では追ってきたアンパンマン達をもぐりんの特性を活かして罠に嵌めた。
アンパンマン号とのカーチェイスシーンは本作の見所である。

○バイキンロボット
もぐりんを改造して作った二足歩行ロボット。後にだだんだんと呼ばれるようになる存在だが、本家と比べると色々と異なる。
オソレ沼へ向かうアンパンマン達を追跡し、ばいきんまんもドロンコ魔王も踏み潰してやろうと意気込んでいたが、さすがに相手が悪かった……
頭部のアンテナが弱点。



◆本作の特徴

本作は後の劇場版と比較してみてもあらゆる面で異色作とも言うべき特徴がある。
まず第一に……。

トラウマ

この一言に尽きる。

アンパンマンはあくまでも子供向けのアニメであり、子供を楽しませるための配慮演出が用いられている。
しかし、本作だけは別格で演出や描写、雰囲気は全体的にはっきり言って幼児向けとは思えないほどに不気味かつ怖く、トラウマ要素が満載である。
特に出てくるアニメを間違えたのではと思うくらいに禍々しいドロンコ魔王や、オソレ沼の描写は極めておどろおどろしい。
後にも先にも、ここまで露骨に恐怖要素の多い劇場版アンパンマンはこの作品のみである。



決めたんだ。追記・修正をするまでは、何があっても泣かないって



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最終更新:2023年10月25日 05:48