バラン(ダイの大冒険)

登録日:2009/07/23 Thu 17:13:48
更新日:2024/03/29 Fri 21:38:05
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…ひとつだけ…聞いていいかな…

……なんだ?

…おれの…おれの母さんってどんな人だったの…?

!!  …母…ソアラか…

…美しい娘だった そして優しい(ひと)だった…

ただそこにいるだけで皆が温かい気持ちになれる…

そんな不思議な輝きにあふれていた…

あれほど深く人を愛することは もうあるまい…

そっか…  行こう!トベルーラ!

(例外が唯一あるとすればそれはおそらく…お前だ… ダイ…)




バランは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の登場人物。
CV:石塚運昇(1991年版)/速水奨(2020年版)

目次

【概要】

魔王軍の幹部である六大団長の一人で肩書は竜騎将
ドラゴン系モンスターを中心とした超竜軍団の軍団長で、魔王軍においては軍団共々最強と言われていた。
また超竜軍団とは別に、直属の配下として陸戦騎ラーハルト海戦騎ボラホーン空戦騎ガルダンディーの三名がおり、彼らはバランに絶対の忠誠を誓っている。

実は最後の純血なる竜の騎士にして、主人公である勇者ダイの父親でもある。
外見上は人間と変わらず、壮年から中年期の男性のような風貌をしているが、物語中では竜の騎士である事が公になる以前から人間として扱われていなかった。


【人物】

誇り高く厳格な性格だが、それ故に頑固な面がある。
また、竜の騎士と言う群れを持たずに強者として生まれたが故の、気高く自死も辞さない精神性は、逆を言えば群れのために個を棄てて生きる弱者の価値観に疎く、無自覚な傲慢性も持っていると言える。
一方で、赤子だったダイを寝付かせるのが苦手だったりするなど父親らしい一面も持つ。

悲しい過去故に人を徹底的に憎み、邪魔立てする者には容赦はないが、一方で敵に対しては警告を優先し、邪魔立てしなければ無用な殺戮をすることはないし、女子供に手荒なマネをすることも避けている。
かつてソアラと出会った時も荒立てることを好まず、自ら死を覚悟で縄に着いたことから人間らしい優しさの心を持ち合わせていたこともうかがわせている。
それだけに、守るべき人間に愛する者の命を目の前で奪われたことによる怒りと悲しみ、そして憎悪が強かったのだろう。
ポップは自分の父と比較して「理知的」と評しているが、共闘する機会が得るまでの間のダイは理知的という評価には懐疑的で、むしろ竜魔人の凶暴さそのままの父という印象であった。

後述の通り戦闘能力は非常に高いのだが、その実力に裏付けされた竜の騎士としてのプライドの高さが災いして相手を見くびって舐めプしてしまう悪癖がある
指揮官としてはダイの奪還のためにあえて竜騎衆を呼び寄せる細心さも見せているが、単体戦になるとこれが顕著に出てしまう(自分のそういう癖まで踏まえて指揮をしているのかもしれないが)。
単体戦中心となった味方入りしてからの戦闘は全て最初は舐めプしておりフェンブレン戦ではそのためにうっかり死にかかりハドラー戦ではダイと口論になってダイが単独でハドラーと戦う事で認識を改めさせている。
そして実際に戦闘しなかったが、ミストバーンが黒の核晶を爆破しに来た際も実際に黒の核晶を爆破させるまでは完全に舐めていた。

しかし同時に敵と認識した相手に対するとにかく容赦のないファイトスタイルも顕著で、部位破壊や唐突に戦法を切り替えて致命傷を狙いに行くのは常。
後述のキルバーンが暗殺しに来た際は死神の笛による罠を看破した上に、「まだ体と剣の傷が癒えていない 可能性が高い 」という読みをあえて否定せず、暗殺者の虚を付いていきなり全力の剣撃で小細工をさせずに速攻でぶった斬るという当時判明しているキルバーンの性質を踏まえれば最適な倒し方をしている。
その殺意にあふれた戦い方と闘争心からか『殺気だけは誰にも真似できない』『魔獣のような殺気』大魔王バーンすらもバランのメンタリティに関して異常極まる殺気の恐ろしさを特筆して評している。
言ってしまえば舐めプくらいはしてくれないとあまりにも付け入る隙がないところは間違いなくある。
良くも悪くも「強者」というところであろうか。


【戦闘能力】


…竜の群れを束ねる軍団長がドラゴンより弱いとでも思ったか…?


柄に竜の意匠が施された専用の剣真魔剛竜剣(しんまごうりゅうけん)を武器として使用する。
左目には竜の牙(ドラゴンファング)という飾りを付けており、これを使用して竜の騎士の真の姿である『竜魔人』に姿を変えることができる。
竜の騎士としての力は本物で、その力量は大魔王バーンすらも警戒し「地上で唯一、余にさからいうる力を持っている」と評価していた正真正銘の剣の達人であり超人。

戦闘スタイルは魔法と剣技を使いこなすオーソドックスな勇者そのもの。
だが生粋の竜の騎士として歴代竜の騎士の戦闘経験値を有し、格闘技、剣技、魔法、竜闘気も自在に使いこなす文字通りの怪物。
ダイがそれまでの強敵を倒してきた時以上の技、竜の紋章の力を込めた完全版ライデインストラッシュですら全く通用しないほど*1
クロコダインですら対峙した恐怖感だけで身震いさせ、実際に戦えばクロコダインの攻撃を真っ向から撥ね退け、彼の圧倒的な怪力と防御力を純粋な体術のみで完膚なきまでに捻じ伏せてみせる。

それでもバーンは「竜魔人になったとしても自分が敗れる相手とは到底思えない」と評しているが、一方で予測不能な戦法を使う危険があるという点がバーンを警戒させたようだ。
つまり、『竜』としては最大で冥竜王ヴェルザーと同じレベルでも同格、『魔』としては自分を越えるとは考えられないが、『人』としては未知数でありそのすべてを兼ね備えるバランの実力を測りかねていたということである。実際にバランはバーンも直接対決を避けたヴェルザーを封印まで追い込んでいる。
ダイ大に何人かいる、ステータス数値では計算できないメンタルと発想と戦闘経験を戦力とするタイプの最右翼である。

◆装備

  • 真魔剛竜剣(しんまごうりゅうけん)
これこそ竜闘気(ドラゴニックオーラ)に耐えうる地上ただ一つの剣なのだッ!!!

柄に竜の意匠が施された竜の騎士専用の剣。
神が作り、代々の竜の騎士が受け継いできたオリハルコン製の刃を持つ片刃の大剣で、自己修復能力を兼ね備える伝説の武具。
伝説の刀匠ロン・ベルク曰く「神が作ったといわれる地上最強の剣」
ロン・ベルクが憧れる武器であり、この剣に匹敵する武器を作ることが彼の最大の目標でもあった。

バランの技量と竜の騎士のフルパワーに完璧に対応できる凄まじい強度と切れ味に加え、竜闘気を込めれば更に威力が増す。
そして搭載された自己修復機能により刃毀れは愚か刀身がへし折れても時間さえあれば完全な状態に復元できるメンテナンスフリーな性質を持つ。
ただし自己修復にはある程度時間がかかるので完全無敵というわけではない。

なお武器としての特性は「めっちゃ固い」「すごく切れる」「切れ味が落ちない」だけであり、実は他に特にこれといった特殊能力の類はなかったりする。*2
要は竜の騎士の規格外の身体スペックと剣技に耐えることのみに特化した武器設計。
「誰が持っても強い剣」ではなく「竜の騎士のたぐいまれな身体能力と受け継がれ続けた剣技・魔法力が相まって初めて真価を発揮する剣」と言えようか。
正しくシンプルイズベストを体現する一振り。その威力はただの一振りで大地を真っ二つにに斬り開き、亀裂の規模が確認ができない程。

  • 竜の牙(ドラゴン・ファング)
バランの左目に取り付けられた装飾品。
竜の横顔のような形の片眼鏡といったデザインで、上下には翼状に鋭い飾りが伸びる鋭利な形状。
単なる身分の象徴ではなく竜の騎士が竜魔人に変身するためのキーアイテムとして機能する。
一応尖った部分を相手に向け、投げナイフのように投げつけて攻撃することもできるが、あくまでも儀礼用のアイテムとしての使い方が主目的。
変身に当たって握り潰してしまうが、後に復活していることから予備があるか、砕かれても再生できるものと思われる。

◆呪文

電撃呪文。
バランは上級呪文であるギガデインが使用可能のため、ライデインをメインの攻撃手段として使う事は無いが、牽制などの目的ではこの呪文を割と使っている。

  • ギガデイン
電撃系最大呪文。
周囲一帯の天候を支配して瞬時に雷雲を呼び寄せ、強力な雷撃を広範囲にぶつける呪文。
単純な魔法攻撃としても強力無比だが、真価は後述のギガブレイクへの派生といっても過言ではない。
ダイたちとの二度目の戦闘の際には仲間の捨て身の援護によりMPが足りず、ライデインを使う羽目になった。

真空呪文。
レオナに対して使用した。

  • 回復呪文
回復呪文。
ハドラーとの戦いの際にバランを庇ってダイが怪我をしたため、その治療のために使用した。
オリジナルファンブックによれば「ホイミ」であり、それ以上の回復呪文は習得していないらしい。

  • ラリホーマ
眠りを誘う呪文。
竜魔人となった姿をダイに見せないために使用した。
レベル50に達したダイ等、バランに近い域に達した強者相手には基本的に通用しない。

  • 竜闘気砲呪文(ドルオーラ)
一瞬でこの世から消してやる…!!
この形態(フォーム)でしか使えぬ竜の騎士の秘呪文…ドルオーラでな!!!

魔力で超圧縮した竜闘気を破壊光線のように放つ、竜の騎士最大の呪文攻撃。
竜魔人となって初めて使用可能となる奥の手で、呪文の名を冠しているが魔力による技ではないためマホカンタでも反射できないトンデモ奥義。
劇中ではアルキードの国の人々を国を大地ごと消滅させた。地図からアルキードが存在した陸地が完全に消える程の威力を持つ。
竜魔人となったバランが撃つ際には拳が竜の口を思わせるフォームとなるのが特徴。
欠点は魔力消耗が激しくバランでも3発は撃てないことと、肉体への反動が激しく竜魔人の姿でなければ自爆技になりかねないこと。


◆技

  • 紋章閃
竜の紋章に力を集中しビームのようにして相手に撃つ技。
全開で放てば山をも吹き飛ばすほどの威力を持つ。
新アニメ版ではダイに弾かれた紋章閃の一撃が流れていった結果、実際に山を吹き飛ばしたシーンが明確に描写された。

  • ギガブレイク
その闘気と勇気に免じて…見せてやろう!
真の竜の騎士が天をあやつった時の力がどれほどすさまじいかをなっ!!!

竜魔人や竜闘気砲呪文に並ぶバランの切り札にして代名詞たる竜の騎士秘伝の魔法剣。
真魔剛竜剣にギガデインの雷撃を落としてその魔力を剣先に圧縮。その後敵に向かって突進し渾身の力で思い切り振りかぶって相手に叩きつけ斬り捨てる。
魔法力の残量の問題でギガデインが使えない場合はライデインで代替することが可能だが、当然威力は落ちる。また、その場合でも特に技名はギガブレイクから変わらないようだ。
このライデインで代用した言うなればギガブレイクもどきですら、竜魔人形態においては威力だけなら竜闘気砲呪文を優に超える。
新アニメ版では「本来全体攻撃であるギガデインの全エネルギーを真魔剛竜剣に収束させて放つ」という形で演出されている。


◆固有能力

  • 竜闘気(ドラゴニックオーラ)
これぞ竜の騎士最強の秘密…竜闘気(ドラゴニックオーラ)!!!

竜の騎士の基本にして最大の能力。
紋章が光り輝くことで発動し、バランの全身は光り輝く生命エネルギーの気流に覆われる。
そもそも闘気とは生命エネルギーが力に転化された物を指すが、或いは魔に近いと評される人間の領域を逸脱した竜闘気はその中でも別格。
呪文・闘気技・物理攻撃問わず殆どあらゆる攻撃をはじき返す防御力と、素手で金属を握りつぶすほどの桁違いのパワーを発揮する。

闘気の一種なのでもちろんこれ自体をエネルギーとして外部に放出する事も可能。
バランは「全開にした竜闘気(ドラゴニックオーラ)の威力をもって戦えば地上のいかなる生物もたちうちできん」豪語する。

なお竜闘気を全開にした状態で武器を振るうと、伝説の金属「オリハルコン」製の武具以外はその力に堪えられず自壊してしまう。
防御面でもメガンテ以外のあらゆる呪文を受け付けず、作中屈指のパワーを誇るクロコダイン*3の伝説の武具の真空の斧による首筋を狙った渾身の一撃さえ棒立ちで防ぐ、どころか斧そのものが破損してしまう鉄壁の防御力を誇る。
ただし防御力に関しては無条件で無敵という訳では無く、竜闘気の防御力を上回る力で攻撃されるとダメージを負ってしまう。
作中ではポップが全生命力を指先に込めたメガンテの指で貫かれてこめかみに指を刺されている上、メガンテの発動前に振り払う事ができたものの至近距離すぎたためにダメージを負っている。
また、竜闘気抜きの防御力や体力には特筆すべきものはなく、人間の通常呪文でも死ねるだろうという程度。このためアルビナスの不意打ち乱入時はかなり危なかったようである。
攻撃面でも闘気を強めていない時は鍔迫り合いでクロコダインにやや押され気味だった。

更には、後述のドルオーラを連発するような過剰な竜闘気を使用すると、一時的に回復呪文を受け付けなくさせる効果も現れる。
尤も、これはメリットとも言えない。
敵の再生や回復を阻む嫌らしくも有用な副次効果を狙えるかは不明で、むしろこれを高めた状態では自分にかけられた回復呪文が機能遅延してしまうことが明らかになっている。
その他、作中においてアストロンを強制解除した描写からして、呪文を跳ね除ける効果は回復魔法や補助魔法等の自分にプラスに働く呪文にすら適用されて、竜闘気を全開にして闘う間はそれらの恩恵に預かれない恐れがある。
そのためか、作中においてはダイが回復呪文を受けているのは非戦闘時や衰弱した一時戦線離脱時のみ。強敵相手に竜闘気を振り回している状態では呪文による即時回復が見込めないらしい。

新アニメ版では大幅に演出も作画も強化された結果、竜闘気を発動させた際はさながらドラゴンボールZの如き超高速格闘戦で描写された。


  • 闘いの遺伝子
歴代竜の騎士の経験を、我がことのように認識し扱える能力。
本人は初めて見る技であっても、歴代竜の騎士の誰かが経験していれば、そこから最適な対処法を瞬時に弾き出すことができ、身に着けるのに長い鍛錬が必要な技でも、歴代の誰かがマスターしていれば最初からたやすく操ることができる。
つまり、正統の竜の騎士は生まれながらにして百戦錬磨の経験を持つ超ベテランの戦士といえる。
よほど奇抜な技でもなければ初見殺しも通用せず、自らは初見殺し、搦め手を含めたあらゆる戦術を駆使できるのだから厄介極まりない。
「戦いの中で何をしでかすか分からない」という点で、バーンが最も警戒していたのは竜魔人でも魔法剣でもなくこの能力であった。

  • 竜の血
自らの血を死者に分け与えることで蘇生させ、なおかつパワーアップまでさせることができる。
ただし、誰にでも有効なわけではなく、強靭な精神力を持った者だけに限られる。
作中でこの恩恵に与れたのは、ポップラーハルトの二人のみ。
更に精神力やその他要素によって蘇生完了時間は変わってくるようで、ポップは血がかかって即座に心臓が動いて蘇生したのに対し、ラーハルトは蘇生にそれなりの時間を要している。
ボラホーンとガルダンディーにも同様の措置を行ったが彼らは復活できなかった。
また竜の血を使えばソアラを蘇生できたのではないかと指摘される事もあるが、試して失敗した可能性はあるので詮無きことであろう*4
ちなみにダイは、自分の血で仲間を強化できないかと考えたが、彼は人間の血の方が強いために不可能とされている。


竜魔人


…ならば…捨てよう!

この人の心と…身体を…!!!


バランの奥の手にして竜の騎士の最強戦闘形態(マックスバトルフォーム)
外見は背中に竜の翼を備え体表も赤い竜のように変質した竜人。加えて変身すると血が青く変色する。

ただでさえ強大だったバランの力は飛躍的に増大し、竜の力と魔族の魔力を備えた圧倒的な戦闘能力を獲得する正に切り札。
ただし竜の騎士の中の3つの力の内、『竜の力』と『魔族の力』が強く作用するため、魔族を思わせる残忍な性格へと変貌してしまう。
その為これまで残されていた良識や誇りある武人としての側面も鳴りを潜め、逃げる怪我人であろうと背後から容赦無く攻撃する冷酷な戦闘生物と化してしまう。
冷酷残忍で攻撃性が高いものの知性まで失っている訳ではなく、熟練の戦闘経験に基づいた戦術の組み立ては行える恐ろしさもある。

だが「この姿になると一度攻撃を受けただけでも目の前のものの動きが止まるまで八つ裂きにし続ける」と当人が言うように、破壊と殺戮の衝動に流され易く、本来の戦士としての判断力や理性が極端に損なわれ易くなる欠点もある*5
メタ的に言えばシナリオボスの第二形態。


【経歴】

◆幼少期

聖母竜マザードラゴンにより竜の騎士の証、竜の紋章を授かりこの世に降臨した。
誕生した地は恐らくは竜の騎士の伝説があるテラン。
歴代竜の騎士の例に漏れず、神子として崇められながらこの世界における成人と呼べる年齢まで育てられたと考えられる。

◆激闘、冥竜王!

当時の魔王、ハドラーが人間の世界を席巻していた時代。
バランは魔王ハドラーと、魔界にて大魔王バーンと勢力を二分しつつ地上の支配も目論みそのために動き出していた冥竜王ヴェルザーのどちらへの対処を優先するか検討していた。
当時のハドラーはヴェルザーに比べれば全くの小物ではあり、ヴェルザーの地上侵攻の準備が完了する前に仕掛けた方が得策である。さりとて今現在地上を脅かす脅威はハドラーであり、看過する訳にもいかなかった。
そんな折に、勇者アバンがハドラーの封印に成功したのを認め、地上戦力でも魔王に十分対応出来ることを見届けた後に、ヴェルザー討伐を優先すると決断。
そうして何年もの歳月を費してヴェルザー一族との死闘を繰り広げた。
ヴェルザーが黒の核晶(コア)を使用して自爆し魔界の大陸を一つ消滅させるといった紆余曲折を経て、天界の聖霊達の助力を得たバランは、死闘の果て辛くもヴェルザーに勝利するが、バランも致命傷を負ってしまう。
やがて彼は竜の騎士に代々伝わる回復の泉に向かうが、その目前にて意識を失った。

◆ソアラとの出会い

たまたまお出かけしていたアルキード王国の王女、ソアラに助けられそのままお互い恋に落ちた。
ソアラの紹介で当初は国王にも快く受け入れられたが、見ず知らずの男に王座を奪われる事を危惧した家臣達の「バランは人間ではないらしい、魔王軍の残党かも知れない」という流言により追放されてしまう*6
改めて自分は竜の騎士という血塗られた獣と自覚して王国を後にするバラン。
しかしそこにソアラが駆け落ちの形でついてきて、自分が新しい命を身籠っている事を告白。

ソアラとの新婚生活ではディーノ(ダイ)の欲求が読めず、子守りに失敗しては彼女に叱られていた。
日常生活での子育てでは彼も人間の父親同様に「苦戦」していたようだ。
戦うことを運命付けられた「竜の騎士」も、家庭を持ち戦いから離れれば1人の「父親」であり、「夫」であった。
なお、「竜の騎士」は死期が迫れば聖母竜が宿す次代の騎士に竜の紋章を託し、生まれたその子は人間に育てられるという特殊な世代交代手段であったため、
経験の継承はされる竜の騎士と言えども、我が子を育てる経験そのものが代々遡っても皆無に等しかったとみられる。

しかし、幸せな生活もつかの間、「魔物に王女を取られたとあっては国の名折れ」と怒ったアルキード国王率いる軍勢に家を包囲されてしまう。
本気で戦えば妻子を連れて逃亡することは可能だったが、バランはあくまでも冷静を保ち、ソアラとディーノの安全を条件に投降した。

処刑される事となったバランは妻と子の安全と幸せを祈り、呪文を唱える兵士達を見据えた。

「放てっ……!」

王の命令で轟音をあげ数多の火球がバランを殺さんと牙を向いた。

竜闘気さえ使わなければあの程度で死ねるだろう。
彼が目を閉じ、死に甘んじようとしたその時……。

ソアラ……!?

……何故だ!何故私を庇った!

抱きしめるも、肌に感じる冷たくなる彼女の体。バランは知らぬがうちに叫んでいた。

父上達が…これ以上ひどいことをするのを…見ていられなかったの…
でも…人間をうらまないで…。みんなおくびょうなだけなのよ…。おねがい…ディーノをさがして…二人で…平和に……

親とは言え、愛する者を殺そうとし、そして自分を殺すこととなった人間を庇うソアラ。
しかし、処刑場に冷徹な父の言葉が響いた。

「お…愚か者めが…。魔物をかばって死ぬとは…恥をさらしおって…!!」

その言葉を口にした国王の表情には、娘を死なせた事への悲しみや後悔の念は見られず、ただ名誉を汚されたという身勝手な怒りの念しか無かった。

バランは今ここで初めて知った。

───人間の醜さを。

───この様な邪悪で醜悪な存在の為に自分は戦っていたことを。

…恥さらしだと…!!?


き…貴様ら…いったい…



何様のつもりだあぁ~ッ!!!!



人間がだと分かっていたのなら───


人間が、こんなクズどもだと知っておれば…


守ってやったりはしなかった…!!!


ソアラの願いも虚しく、憤怒に燃えるバランはアルキード王国を壊滅…どころかこの世から消滅させた

◆魔王軍時代

ソアラの遺言に従いディーノを連れ戻そうとしたが、ディーノを乗せた船が難破した事で妻に続いて息子をも失ったと思い込み絶望に落ち込んでいた。
そんな時、大魔王バーンの「人間を共に滅ぼさないか?」という誘いが来たため、人間を滅ぼす為に魔王軍に属することを決意。
強力なドラゴンを多数擁し、六大魔王軍でも最強と目される超竜軍団を率いる竜騎将となる。
上司となったハドラーに対しても顔を立てており地位に殊更異議を述べたりはしていないものの、魔王軍での覇権にも一定の関心はあったようだ。

魔王軍の地上侵攻作戦では北方の大国であり城塞王国と呼ばれたリンガイア王国を担当。
リンガイア王国の主力が同盟国だったオーザム王国の救援に向かい不在だった事もあり、リンガイア王国を極めて短期間で滅ぼした。
ダイたち勇者一行を抹殺すべくバルジ島に魔王軍の残る全勢力が結集した際には、ハドラーの命令でカール王国を攻撃。
カール王国の騎士団長であるホルキンスとの一騎打ちに勝利し、カールを僅か五日で滅ぼす。

バルジ島での戦いの結末をザボエラから聞いたバランは、勇者ダイの力に尋常ならざるものを感じるが、
次にザボエラから「ダイの額に竜の紋章が浮かび上がり、強大な力を発揮した」と聞かされて、
勇者ダイこそが生き別れた実の息子・ディーノであることを知る。ハドラーがダイを自分と鉢合わせないようにしていることに気付いたバランはテランに向かう。

バーンさまは世界の平和のために人間を滅ぼそうとなさっておられるのだ

悪いのは人間だっ!!

おまえも一刻も早く竜の騎士本来の使命に目覚め バーンさまにお力ぞえをするがいい!!

そして勇者ダイと遭遇。自分の部下になれと誘う。
当然拒否されるも、衝撃の事実を告げる…

その子は私の息子だ…名は…ディーノ!!

抵抗するダイの力に脅威を感じ、また敵として倒すのではなく自分の子供としてやり直すためにも、竜の紋章の共鳴によりダイの記憶を無理やり消して一時退散した*7
その後、自身の直属の部下である竜騎衆を引き連れテランを目指す。
道中、単身自分達を迎え撃つべく現れたポップに配下の多くをやられるも、後のことは3人に任せダイの元へ向かった。

クロコダイン達の時間稼ぎに遭い、そして竜騎衆を撃破したポップとヒュンケルとも対峙。
バランの過去竜騎衆の一人ラーハルトに聞いたヒュンケルに「お前も人間をかつて愛していた筈、人間の最も美しい部分と最も醜い部分を同時に見てしまったために、その矛盾に耐えきれず、人間全てを目の前から消そうと思った」と指摘される。

そしてヒュンケルの発言に対してバランは……

ならば捨てよう!この人の心と…身体を…!!

自身の心の傷に触れられた怒りから竜の騎士の最強戦闘形態「竜魔人」に変身。
圧倒的な力でポップたちを蹂躙。そして紋章の力に引き寄せられたダイを連れ去ろうとするも、ポップがメガンテを放ったことがきっかけでダイの記憶がよみがえったため失敗に終わる。
そして再びダイの記憶を消去しようとするものの、紋章の支配から脱するために額から右手に無理やり紋章を移し(人の心によって成し得た奇跡)、ダイと地上最大の戦いを展開。
竜魔人と言えども相手が息子ということで当初は手加減をしていた。だがダイの猛攻によって闘争本能により、愛する息子が相手故に精神の均衡がとれない状態であるものの加減を解いた。
だが紋章を右手に移したダイはその状態のバランに対抗できるほどの力を発揮、最後のぶつかり合いの時に死んでいる筈のポップの不意打ちに動揺。
その一瞬の隙を突いたダイの力とアバンの技にヒュンケルの剣、ポップの心が一つとなった全てを込めた一撃に敗北。
そして、死して尚ダイを助けようとしたポップの友を想う心に驚嘆。

皮肉な話だ。竜のパワーと魔族の魔力と人の心。竜の騎士に与えられた3つの力のうち、
最もくだらぬと思って捨てた"人の心"にこれほど強くうちのめされようとはな

竜の血の力でポップを蘇生させ、以後魔王軍とは袂を分かつ。

◆父として

…こうまで醜いものだとはな。強者が弱者をいたぶる光景というものが…

他人がしているのを見てはじめて、判る…

以降はダイとの戦いで折れた真魔剛竜剣が再生するまで身を隠していたが、
自分を暗殺するために来た死神キルバーンから、大魔王バーンが人間だけでなく地上そのものを滅ぼそうとしている事を聞かされ、
竜の騎士の使命に従い、バーンを討つべく単独で行動を開始。

キルバーンを一刀の元に切り伏せ、フェンブレンチウを嬲っていたところを気紛れで助けた時にパーティと再会。
ヒュンケルの決死の行動もあり、ダイ達と行動を共にする。
リベンジに燃えるフェンブレンを撃破し魔宮の門をダイと共に破壊した後は、バーンパレスに侵入し超魔生物と化したハドラーと相対する。
かつてはさしてたる脅威でなかったためにハドラーを軽視していたが、今では心身ともに大幅に強化した難敵であることを目の当たりにして認識をすぐさま改めた。
ハドラーの体内に魔界の超兵器、黒の核晶が埋め込まれていた事に気付き、全力を出せないまま劣勢を強いられ、バランを庇い重傷を負ったダイに体力回復を口実にしてラリホーマで眠らせる。
かつてあやそうとした我が子に泣かれたことを思い出しながら…

…子供がどう願っても、親とは常にこうしてしまうものなのだ。

おまえも大人になればいつかきっと判る…。

“ダイ”

…とてもいい名前だ。

だが私とソアラがつけた名前も心の片隅で憶えておいてくれ…。

“ディーノ”

アルキード王国の言葉で「強き竜」という意味があるらしい…。



相変わらず寝かしつけるのが下手だな……

そして、かつてダイと骨肉の死闘を演じた竜魔人に変身。
ハドラーの強化は竜魔人を目標としてなされたもの。得物もお互いにオリハルコン製の剣である。
数千年に渡る交戦経験を積んできたミストバーンの見立てでも、本来ならばその実力にそこまでの差はないはずであった。
だが、バランの腹部に突き立てられた必殺武器の地獄の爪がバランの皮膚さえ破ることができず、ハドラーは一方的にダメージを受け続ける。
かつて息子相手に精神が不安定なまま暴れた時と異なり、我が子を守ろうとする愛情と、子に深手を負わせた相手に対する怒りをそのまま反映した為、バランの戦闘力は遥かに増していたのである。

バランはハドラーの体内に拳の一撃を入れて黒の核晶を取り出し、無力化を試みる。
少々とはいえバーンの送った魔力すら弾き、その試みは成功するかに思われた。
が、真の姿を見せたミストバーンが魔力を打ち込んだことにより黒の核晶が爆発。
その衝撃からダイ達を守るために全竜闘気(ドラゴニックオーラ)を使い果たして爆発を抑えこみ、死亡した…。


…泣くな…ダイ…

強く……強く…

生……き……ろ……


ダイが初めて大きな声で「父さあああぁぁんっ!!!」と呼べたのは、バランが事切れた直後のことであった…。

◆死後

死亡した後もブラス、アバンと共にダイの心の支えとして残り続ける。
そして物語終盤、代々受け継がれていく竜の紋章が闘いの遺伝子と共に継承される。竜の騎士最大の必殺技、竜闘気砲呪文(ドルオーラ)と共に…

我々はもう離れることはない…つねにひとつだ!!

その存在感から死した後でも度々彼の名が出され、息子の内の中で彼を支え続けた。
そして、バーンとの最終決戦。
ダイの窮地に太陽の光と共に現れたのはバランの愛刀、真魔剛竜剣だった。

竜の騎士の正統たる武器!

今こそおまえがこの剣を手にする時が来たのだ!

おまえの母、ソアラは太陽のような女性だった…!!

今こそおまえも 太陽になるのだ! 仲間たちを、地上を輝き照らす太陽に…!!

ダイは父の剣に自身の全てをこめて、父の魂と共にバーンとの最後の勝負に臨むのだった。


【主な人間関係】

  • 聖母竜マザードラゴン
母親。
竜の騎士が寿命を終えようとした時に降臨し、身に宿した新たな命に竜の紋章を引き継ぎ、次の時代の騎士を生み落とす母なる竜。
バランの死を感知し、ダイがバーンとの初戦で倒された時に現われる。
ダイに「いいえ あなたは 死にました」と語りかけつつ、自身も邪悪な力によって蝕まれ、新たな竜の騎士を生みだす力が残っていない事を告げる。
さらに、バーンの力は神をも上回るとし、覇を唱えるものを征伐する「神々の使い」として作られた竜の騎士のシステムこそが悪の力を増大させたと考え、竜の騎士の歴史を終わらせようとしていた。
しかし、バランがダイならバーンを倒せると説得したことで、自分の生命力をダイに受け渡し姿を消した。

  • ソアラ
アルキード王国の王女でバランの妻。ダイを出産した当時は19歳。
瀕死の状態だったバランを救った事が縁で、彼をアルキード王国へと招きいれた張本人。
後にバランの子を宿し、彼と共に駆け落ちしている。テラン国内でダイを出産して、親子水入らずで穏やかに暮らしていたが、家臣による進言もあって実父であるアルキード王に夫と子供が捕縛され、家族は離れ離れになってしまう。
王女誘拐の罪で*8バランは処刑される事になったが、バランが王に提示した降伏条件を呑む事で彼女は捕縛されなかった。
バランは妻子のために死ぬつもりで抵抗しなかったが、処刑の直前にソアラが割って入り、放たれた呪文をまともに受けた事で命を落としている。
バランは「いるだけで皆が温かい気持ちになれる、そんな不思議な輝きにあふれている、太陽のような女性だった」と彼女を形容しており、バランが生涯唯一愛した女性でもあった。なお、育児は彼女の方が上手だったようである。
一人の女性としての生き方を貫いたとも言えるが、王女としては問題行為が多く、彼女が王女だった事が話をこじらせる原因となり、前述の悲劇を引き起こす結果となった。
メタ的な名の由来は太陽(solar)。「太陽のような女性」というバランの評に相応しい名前である。

  • アルキード王
ソアラの父親でバランにとっては義父に当たるが、バランが人を強く憎む引き金となり、魔王軍に身を落とした元凶になった人物。
とはいえハドラー率いる旧魔王軍の地上侵略から数年しか経っていない当時の情勢で、素性不明の誰とも知れない男を警戒し、そんな男と駆け落ちした王女を連れ戻すのは、父親としても国王としても当然の行動と言える*9
ダイの処遇に関しては「魔物の子とはいえ自分の孫である」として国外追放に止めている。
バランやソアラに余計な抵抗をされるよりは、要求を呑んで大人しく処刑されてもらった方が無難と判断した面もあると思われるが、ダイを隠した上で始末するという対策を取らず曲がりなりにも船で国外に出している*10ことから、最低限の憐憫の情はあったと思われる。
だが彼が、実の娘の死を悲しみもせずに侮辱した行為が決定打となり、バランは人間を憎むようになった。

私は真の騎士ではない……力も…魔力もあったが…心が無かった…おまえにはそれがある

息子。ダイの意志を尊重して普段は「ダイ」と呼んでいるが、ダイが瀕死になった時には思わず「ディーノ」と呼んでいる。
また、二度と竜魔人化を行わない気でいた事からも、竜魔人化してダイを殺そうとした事を強く悔いていた事がわかる。
敵対していた時は殺そうとしたこともあったが共闘時はこれでもかというほどの父親振りを発揮しており、言葉には出さなかったが、自分に残された人生の全てをダイの為に使うという覚悟が行動に現れている。
なお、ラーハルトに残した遺言状によれば、バランはダイに討たれるか、ダイの為に戦って死ぬ事を望んでいた模様。

  • ブラス
息子であるディーノ(ダイ)の養父。
作中では顔を会わせることは無かったが、バランは
「おまえをここまで育ててくれた怪物(ブラス)というのは、わたしなどよりも遥かに正しい…人の心を持っていたのだろうな…」
「わたしの死などで泣くことは無い…おまえにとってはそのお方こそが本当の父親なのだ…」
とブラスが正しい心を以って息子を育ててくれた事に心から感謝していた。
ちなみにダイという名前は揺り籠に付いていた名札から読み取れる部分が「D」だけだったため、ブラスが『せめて頭文字だけでも同じように…』と名付けたもの。
これは原作ではバランには知る由もないことだったが、新アニメではこのくだりについてラリホーマをかけたダイとの会話で話す形にアレンジされ、バランもブラスの心遣いを知ることとなった。

  • 冥竜王ヴェルザー
大魔王バーンと魔界を二分する竜族の王。
地上をも我が物にせんと地上侵攻に着手するも、バランに敗れた。
不死身の魂を持っており、肉体は滅びても時が経てば以前よりも強靭な肉体を持って復活する特異な体質を有していたが、魂が抜け出たところを天界の精霊達にすかさず封印され、現在は魔界で石像と化している。
ヴェルザーも自分を打ち倒した男としてバランには思う所があるようで、フヌけたダイを見た際には「父には遠く及ばぬわ」と評している。
バーンとしてはこの時点のダイの強さは既にバランを遥かに凌いでいるとし、ヴェルザーの負け惜しみにしか感じられなかったが、敵に対する殺気という点においてはヴェルザーの言うとおりだと認めている。
なお、ヴェルザーは後にバーンが鬼眼の力を解放しようとしている事を知った際に「それほどの相手なのか」とダイへの評価を改めている。

  • ホルキンス
カール王国騎士団の騎士団長。マァムの父である戦士ロカの何代か後の後任に当たる。
超竜軍団がカール王国に攻め入った際にバランと一騎打ちを演じるも、ホルキンスを手強いと見たバランは竜の紋章を発動。額から放たれた紋章閃に心臓を貫かれ敗れた。
死後、ホルキンスの弟の願いを聞いたヒュンケルによって葬られるが、その鎧には竜の紋章の形の跡が残っており、ヒュンケルがダイとバランの関係に気づく切っ掛けとなった。
カール王国最強の剣士であり、大魔王バーンを除けば、当時は世界最強と言っても過言ではないバランと剣だけとはいえ互角の勝負を繰り広げた事からも、相当な剣豪であったのは間違いない。
またこのエピソードとカール王国が滅亡した時の映写から、二つの強国を短時間で滅ぼしたバランの戦術がドラゴンを撃退できる人材を自身と竜騎衆で早期にピンポイントで仕留め、抵抗力を失った国をそのまま制圧力の高いドラゴンに任せて壊滅させる」というものであった事が推測される。
読者からは「バランは本気ではなかったのでは」との見方が強かったが、原作者によると「ホルキンスはかなり強く、バランはホルキンスの剣技を認めたため紋章閃で攻撃した」のは事実とのこと。

魔王軍時代の同僚。
実直かつ武人肌なところを気に入っていたのか、バランは軍団長の中で彼のことを一番買っていたらしい*11
憎むべき人間の味方となってからは実力差で容赦なく圧倒するが、魔王軍を裏切ったことに対しては軽蔑よりもむしろダイがクロコダインほどの男の心を動かしたことに驚いていた様子。
作中では何かとやられ役・引き立て役になる事の多いクロコダインはバラン戦でも同様に攻撃を受けて耐えてやられる役ではあったが、
ギガブレイク2発を耐えるシーンはクロコダイン屈指の見せ場であり、この粘りが後にダイの助けとなった。
ギガブレイクはバーンパレスでのハドラーとの戦いで言及されたように、超魔生物したハドラーでさえも「オレの首ごときを撥ねられん訳が無い」と断言し、この時までは 2発食らって生きていた者はいない とバランが驚く程の威力。
それを、(レオナのベホマの支援を受けながらとは言え)2発も直撃してもまだ立ち続けて喋るだけの生命力を残している。
バランはこのベホマ戦法に気付いた時点でレオナに対して「動いたら殺す」と脅迫して回復を止めさせようとしており、
非力な女性かつ直接バランを攻撃しようとしないレオナを殺すことは不本意だったらしいのだが、
前述の通り竜闘気を使った攻撃は 回復呪文を阻害する のでそちらに切り替えればよかったのだが頭に血が上っていたのだろうか。

魔王軍時代の同僚。
クロコダインと共にバランに評価されていた軍団長。
魔王軍時代は自分と同じく人間を憎んでいる部分を気に入っていたらしい。
だが、お互いが魔王軍を離れてからは再び関係性が変化。
魔王軍との無謀な戦いに向かうバランに対し、ダイに自分と同じ父を失う哀しみを味わわせないため捨て身のカウンター戦法による足止めを試みる。
突如二人を強襲したアルビナスに標的を変更したためバランの攻撃を無防備で受け重傷を負ってしまったが、その覚悟にバランは深く感銘を受けた。

魔王軍時代の同僚。
情動の激しい彼をバランがいなしたり横目で冷静に観察する描写が多く、引き立て役っぽい。
実際フレイザードは魔王軍の切り込み隊長と言われながらも、人格の歴史が浅く功を焦っていた。
魔王軍の最大戦力と言われる男とは風格や余裕の差があっても無理はないだろう。

魔王軍時代の同僚。
強者に取り入る性格ゆえか、同僚でありながらバランに敬語で接している。
とはいえバランと超竜軍団が強すぎた故か、いつもの悪辣な策謀を献策することもないままバランは魔王軍を去ったため、さほど深い関係はない。
会話自体はあるのだがバランがザボエラ個人に対して特にコメントや印象を語ったことも皆無で、なんというかお互い人格的な接点その物が薄い。
ただ、ハドラーが失態続きで落ち目になってきた頃、超竜軍団のカール王国侵攻に同行し、そこでバランにダイの紋章の情報を漏らしている*12
このことがハドラーをさらに追い詰め、魔王軍の存亡をも大きく左右することになった。
ちなみに彼が研究していた超魔生物の最終目標は、竜魔人にも匹敵する力を得る事とされている。

魔王軍時代の同僚。
影の男と言われてきただけあって他の軍団長よりも関わりが希薄だったが、最終的には彼が黒の核晶を起爆したことで引導を渡される。
そのことからミストバーンの正体に気付いたようであった*13が、爆発を抑え込むために闘気を使い果たし、間もなく最期が訪れたため誰にも伝えることができなかった。

魔王軍時代の上司。
上司として一応顔を立てているが、実力差や当時のハドラーが保身中心の思考であったため内心軽く見ており、影では呼び捨てにしている。
ハドラーの方も実力的には遙か上をいくバランを、自分の地位を脅かす者として警戒していたようである。
超魔ハドラー戦でも当初はプライドもあって2対1で戦うというダイの提案に反対したが、その力の片鱗を見てからは「恐るべき男になった」とすぐに認識を改めている。

ミストバーンと共にバーンの側近を務める仮面の男。
超竜軍団の戦力を借りてベンガーナの街を襲撃した際、強すぎる力ゆえ人間からの疎外感を感じ始めたダイの不安をより煽り、暗に魔王軍へ寝返るよう誘導した。
この時のバランにとっては願ってもない話(と同時にハドラーにとっては悪夢のような状況)だっただろう。
バランが魔王軍から離反した後はバーンの指示で暗殺に赴くも、圧倒的な実力差で胴切りにされる。
しかしこの状態でもキルバーンは死んでおらず、彼のマグマの血で剣の切れ味が落ちたことが超魔ハドラー戦で響くことになる。

魔王軍時代の主君。
戦力バランスを揺るがしかねないバランを自ら軍団長としてスカウトした過去を持つ。
バランがダイを味方に引き入れようとした際には、もし成功したらバランを魔軍司令にすると宣言し、ハドラーを動揺させた。
退屈凌ぎの余興を好み、超魔ハドラーすらどこか軽く見ていたバーンが直接戦闘を避け、いざとなると黒の核晶で抹殺しにかかるほど警戒していた。
これによりダイ一行とバーンとの決戦にバランが生きて同行することは叶わず、あまつさえ遺体をメラで火葬されてしまった。
ちなみにバーンが六大団長の忠誠心を試すため「暴魔のメダル」を炎の中にかざした際、原作と旧アニメ版ではバランですら炎の勢いに怯んだが、新アニメ版ではミストバーン共々内心興味なさげに手をかざしている*14
彼の場合、その気になれば竜闘気であの程度の炎は防御できると思われることと、実質別格扱いに近い立場上そこまで忠誠心を示す必要がなさそうな点を考慮されたのかもしれない。

直接の面識はないが、バランとアバンはある意味対となる存在である。
同時期に片やハドラー、片やヴェルザーと人間を脅かす巨大な存在を倒しており、力の差はあれど両者とも勇者と呼ばれるにふさわしい人物であった。
両者とも次世代であるダイを守るために動きを封じ、その命を投げ出している。
『強大な才能を疎まれて国を追われた』という点も共通しているが、両者の大きな違いは本人の知名度と、追われた際の対応である。
アバンは魔王を倒した勇者として広く知れ渡っており、さらに処世術を弁えていたために自らおどけて振舞い国を去り勇者の家庭教師となることで事態を受け流したが、人知れず活動していたバランは魔物という誤解を受けた上に、処世術を持たず一線を越えてしまったために最悪の結末へと向かってしまった。

◆竜騎衆

集え!!!三界の覇者たちよ!!
今こそ超竜軍団決戦の時…!!

バランの親衛隊である三人の屈強な竜使い(ドラゴンライダー)
特定の場所から三色の篝火を点らせると馳せ参じる。
各々が魔族、獣人族の中から選りすぐった一騎当千の実力者であり、ドラゴンの力が加われば、軍団長に匹敵すると言われている。
だがドラゴンと連携しての戦いを見せたのはガルダンディーのみ。
三人とも実力者ではあるがバランが強すぎる余り表立って目立つことは少なく、3人が同時に集まること自体余りない。
バランが魔王軍に所属していた事から、作中では魔王軍の一部隊として行動しているものの、竜騎衆は飽くまでも「竜の騎士に忠誠を誓う者たち」である為、厳密には魔王軍ではない。
クロコダインは彼らのことを知っていたが、ヒュンケルは「どこのどいつかは知らんが」と、全く知らなかった様子。
因みにソアラと出会ったときバランは一人だった事から、ヴェルザーとはバラン一人で戦っていたか、もしくはヴェルザーとの戦いで先代の竜騎衆は全滅したと思われる。

竜騎衆筆頭格。
魔族と人間の混血児で、その生い立ちから人間から迫害されてきた過去を持つ。
そのまま迫害によって母親と死別した後にバランと出会い拾われた過去からバランに良くも悪くも絶対の忠誠を誓っている。
通常のドラゴンにまたがる。
バランの方も人間から理不尽な迫害を受けたという境遇の一致から心を許しており、後にラーハルトに残した遺書の中で「もう一人の息子」と綴るなど親子に近い関係だった模様。

鳥人族系のモンスターで、空中戦やスカイドラゴン・ルードと連携した戦闘が得意。
竜騎衆の中でも一際残忍かつ好戦的な性格。
相棒のルードを親友とする一方で人間を「ドブくせぇ生き物」と見下し、バランの待機命令を無視して遊び感覚でベンガーナを火の海にし虐殺を実行する問題児。
しかし、バラン自身も「開戦の狼煙にはちょうど良いかもしれん」で済ませたことから彼の人間に対する憎悪と冷酷さが分かる。
また、バランは蘇生した場合の遺書をちゃんとガルダンディーにも用意はしていたらしい。

巨大な牙が特徴のトドマンで、「海の王者」らしいが後のバランのような水中戦をする場面はない。
またがるのはガメゴンロード。
天下無双の怪力が武器と豪語するが、その怪力は人間のヒュンケルに負ける程度。
そしてそのヒュンケルから「お前の倍は強い奴がいる(クロコダインのこと)」と酷評された。
実際は単純な力押しよりも慎重な戦い方が持ち味。
不意打ちや人質など手段を選ばないなど卑怯ではあるが、同僚の2人よりも仕事に関してはちゃんとやってた。
また、バランは蘇生した場合の遺書をちゃんとボラホーンにも用意はしていたらしい。


【余談】

  • コンビニ用に再編されたコミック本巻末にて、
    「このバラン戦の後はそのまま大魔王バーン戦に突入するのが当初の予定で、その前哨戦となる予定だった。しかし人気により連載が延長されることになった」
    という事情が述べられている。
    バラン戦では後のダイに見られるスタミナ切れの問題が全く無かったのもそうした大人の事情に原因がある模様。

  • 前述の通り真魔剛竜剣に宿ってダイと共に戦うのだが、激戦の最中に割とすぐに剣はバラバラになってしまいその場面では驚愕した表情のバランが描かれている
    神々の作り上げた真魔剛竜剣には勝てた(そして全ての力と想いが乗ったダイの剣には勝てなかった)という表現で
    なおかつ親子の力を合わせてもなお敵わないバーンという強敵を表したシーンであるのだが、余りにも迫真過ぎる表情のせいかシリアスな笑いシーンとなっている。

  • 作中でバランが消滅させたアルキード王国だが、一国が壊滅するほどの大事件が起きたに関わらずこの事件の存在は世界には殆ど知られていないのか、ラーハルトの口から説明されるまで本編では全く触れられていなかった。
    アルキード王国がどこにあるのかは不明だが、瀕死の時にテランの湖に向かっていたバランをお忍びで遊びにきていたソアラが発見し連れ帰っている事から、テランの近くではあると思われる。
    テランならば「竜の騎士のしたこと」ならば受け入れて外部に喧伝しない可能性は高いが、作中で何度か登場している世界地図ではテランはベンガーナ王国の割とすぐ近くなので、アルキードもベンガーナに近いという事になる。ベンガーナが気づけば噂にならないはずもない。
    ただ、ダイの年齢からしてアルキード王国が消えたのは12年以上前なので、一般人も知っていても切っ掛けが無ければ話題にならなかっただけなのかも知れない。
    もしくは余りにも壮絶ゆえに、実際に一国が滅ぶ様を見てしまった者のトラウマやタブーになっており、話題にしにくいのかもしれない。




…いまさら追記・修正をやめられん

…アニヲタとは そういうものだ…


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最終更新:2024年03月29日 21:38

*1 それまでの強敵との戦いでは「技が不完全だった」「紋章の力を使っていなかった」「武器が破損していた」等の事情があり、正真正銘ダイ史上最強の攻撃だったことがバランの絶望的な強さを引き立たせている

*2 もっとも、本作に登場する剣でそういう特殊能力を備えたものは実のところほとんどないが。

*3 片腕で軍艦を陸まで持って行き投げるブロック並み

*4 ただし、ソアラの心が弱いというわけではなく、後述の通り彼女は愛する者を庇って死ぬ事ができるだけの勇気を持ち合わせている

*5 トラウマを刺激されたとは言え、まだ敵対する前の記憶喪失の息子がそばに居ることすら忘れて、地面にドルオーラを放って息子諸共国を消し去ろうとしたり。そもそもダイを殺す気になった時点で、真魔剛竜剣を回収してギガブレイク等で攻めれば危なげなく勝てていたにもかかわらず、回避困難な代わりにギガブレイク以下の威力でバラン自身も極度に消耗する、屋外での対個人戦向けではないドルオーラを連発する愚を犯したり。闘いの遺伝子に裏打ちされた歴戦の戦士にあるまじき判断ミスが目立っている

*6 この家臣たちが時代的に魔族の可能性を危惧した上でのことか保身から言ったのかは不明である。ただし、バランが人間ではないというのは当たっていたが。

*7 1991年版アニメでは打ち切りの都合によりこの場面が最終話に相当し、ダイの強い抵抗にあって記憶消去に失敗、反撃を受けて退散している

*8 ただし、ソアラは自分の意志でバランと駆け落ちした事実が無視されている事や、処刑の際に『魔物の手下』というデマによる罵声が飛んでいる事からかなり一方的にあることないことを罪が着せられている事がうかがえる。これには一国の王女の駆け落ちしたという事実を隠蔽したい王側の工作があったと思われる。

*9 警戒以前に素性不明の者を王宮に入れたり地位をあげたり、家臣の進言を安易に鵜呑みにする行為は国王として問題とも言えるが

*10 船が難破したのは事故に過ぎない

*11 対決時のセリフからしても物凄く推している。

*12 ザボエラもこの時はダイが竜の騎士であると察知してはいなかった。情報を伝えたのは策謀でなく同僚故の情報提供からバランが悟ったに過ぎない。

*13 と言っても、これだけで凍れる時間の秘法の存在にまで思い至ったかは怪しく、後のヒュンケルと同様に「ミストバーンこそが本物のバーン」か、「黒の核晶を作ったのはミストバーン」という認識であった可能性が高い。

*14 怯む反応は代わりにザボエラが担当