森林

登録日:2014/04/23 Wed 00:22:18
更新日:2023/07/31 Mon 14:00:59
所要時間:約 8 分で読めます





森林……

それは木々が織りなす至高の空間……


森林……

それは生命の聖域……


そんな森林に関して、この項目を読んで少しでも興味が持ってくれるととてもありがたい


概要

森林とは広範囲にわたって樹木が密集している場所である。
樹木だけでなく、そこに存在するそれ以外の生物および土壌を含めた総体を指す。

皆知っているだろうけど一応おさらいしておくと

森=天然林

林=人工林

である。

これはそれぞれ語源の
  • 神様が盛った木々→盛り→森
  • 人が生やした木々→生やし→林
から来ている。
ちなみに林業をやっている人や学んでいる人たちにとっては『森林=人工林』である。
これは天然林がとてもデリケートな存在で、人の手が少しでも入ると生態系が変わる恐れがあるので、必然的にに林業をやるのは人工林だけになるから。と考えてもらってさほど問題ではない。


さて、ここからは森林の性質について少し語ろう。


森林浴をした方ならわかるかもしれないが、森林の中は外とはかなり違った環境である。

森林というものはたくさんの木々が生え、それにより表面に木の葉の層ができるので、森林の中は暗くなる。
そして、枝葉の層で包まれることによって、森の中は、森の外とは異なった微気候の場となる。
おおよそ、
  • 最高気温は低い
  • 最低気温は高い
  • 湿度は一定の範囲内に保持された
穏やかな条件を維持する。

これにフィトンチッドとかいろんな要素が絡まりあって森林浴とか森林セラピーとか森林療法とかがあるわけだが、ここではそれに関しては語らないでおこう。
詳しくはググってくれ、ググるって単語便利ね。


また森林には層があり、高い順から『高木層』『亜高木層』『低木層』『草本層』『コケ層』。
後半の二つはシダ植物とコケだが森林を構成するうえで両方とも重要である。

続いては森林のでき方……について語りたいが、一次遷移とか二次遷移とか語りだすときりがないので興味を持った方が、適当な書物かWikipedia辺りで検索して調べてほしい。

照葉樹林とかの樹林の種類とかその辺も同じくググってほしい。
話すとかなり長くなるので。


【世界の森林事情】

近年の地球温暖化やら砂漠化なんやらで結構有名になっているところ。

東南アジアとかの熱帯林やロシアはシベリア地方のタイガなどは有名であろう。
これに関しても話すと長く(ry

ここからは主に環境破壊について語る。


もともと数千年前の地球上には現在砂漠化している地帯にも森林が覆われ、現在よりはるか多くの森林が存在していた。
ちなみに余談だが、地球温暖化は実は砂漠化を抑制する。
人間が住む場所が減るけどね(食糧問題はむしろ解決するかも)。

その現在よりもはるかに多い森林資源を利用してメソポタミア文明などは発展したのだ。
だが、森林伐採による環境破壊が促進したために結局滅んでしまった。

そして同じようなことがギリシャ、ローマ時代*1を経て中世、近世ヨーロッパでも見ることができる。人は過ちを繰り返す

近世ドイツでも産業革命時に自国の森林を伐採しまくり、森林を壊滅させた。
しかしドイツはその時点で独自に森林の再生を図り、その技術を学問として発展させ今日まで来ている。


その一方で近年増大する樹木の需要からアマゾンなどの熱帯雨林の森林は伐採。
さらに東南アジアなどではパーム油作成のためにその元となるアブラヤシ樹林……というかアブラヤシ畑のために森林が伐採されている。

後述するが、一種類しか樹木がない森林など森林としての機能はほとんど期待できないといっていい。

少し昔アブラヤシから取った油で洗濯用洗剤を作り「環境にやさしい植物原料」と宣伝していたCMがあったがNGOから大批判を受けた。

実際、大規模なプランテーション開発に森林を切り拓かなければいけない。
その結果、野生動物は住み処をなくし、森林の持つ多様な機能は失われるのだ。

また森がプランテーションに開発されると、熱帯のもともと少ない表土(所謂赤土)が流失したり、そのために水質が悪くなったり、地下水路の枯渇も考えられる(さらにいえば農薬や除草剤の被害もここにプラスされる)。

これが本当に環境にやさしいのか、生まれた素材が環境に良くてもそれを作るのに環境破壊していいのか。
そういう面でも我々はよく考えなければならないだろう。
良く言われることだが、いろいろな方面から物事を見よう。


砂漠化に関してはおもに塩害が指摘される。

塩害とは用水中に含まれる塩化物により作物の生育が阻害される現象のこと(コンクリートの被害の一つの塩害とは少し違う)。

まず砂漠では農業なども含めて水が使用される。
なぜなら雨がほとんど降らないからだ。
しかし水をまき続けることにより、水中、地中に含まれるわずかな塩分が凝結し地表付近の塩分濃度が上昇してしまう。

加えて乾燥地では水分が浸透・蒸発しやすい。
そのため、安易な水分散布を行うと、地下深くに存在していた塩分が水に溶けて塩水になる。
この塩水が地表近くへ上り、水分が蒸発することで塩分が析出し、地表付近の塩分濃度が上昇して塩害が発生する。

このことが現在砂漠緑化の足枷となっている。

高吸水性高分子ポリマーなどの技術もできてきているが、未だにこれは大きな課題である。


日本の森林事情】

日本は森林大国である。
その森林面積は約2,500万ヘクタールだ。

カナダも森林大国と言われるが、カナダでは森林の比率は国土の45.3%。
それに対して日本は森林が国土の68.9%(66%)を占めている。
これはフィンランド、スウェーデンに次いで第三位である。

なぜここまで森林があるのかといえば理由は二つある。

一つは『日本の環境』

日本の自然環境は植物にとって非常にすばらしい環境である。

まず水が非常に豊富である。
我が国日本の年間平均降水量は「1700mm~1800mm」この量は世界平均の約二倍である。
無論地域によって数値は異なるものの少なくとも年間平均の降水量は800mmは超えるのが普通である。

続いて急斜面の山。
これにより山の上部と下部で違う樹木が育ったり、栄養がスムーズに循環できるようになる。
反面、台風などが来た場合一撃で沈められかねないが、きちんと手入れしていればそのリスクも減るし、その後の回復も早い。

他にも四季が存在するのも一つ。
これにより様々な環境が存在することになり、生物の多様性が維持されるほか、変化する気候が森林をより強く、よりたくましく成長させる。


この日本の自然環境は世界的に見てもかなりすごく。
仮に山の木々を伐採した後、そのまま日本人がいなくなった後でも森林はやがて再生できるとされるほどである。
世界の森林伐採による環境破壊のニュースを聞いていればこれがどれほどすごいことかわかるだろう。


二つ目の理由は『日本人が木を植えるのが好き』

江戸時代のころは諸事情で森林が大量に伐採され浮世絵や油絵信者画家による絵にあるようにはげ山が多かったものの、明治以降木を植えるようになっており、後に法律や制度などによって「木を伐ったら苗木を植え、育て、再び森林にする」という循環が確立され、ここ40年間では人工林が増えたものの総合的な森林の数は減っていない。

近年では学生などによる植林もされており、それが日本の森林を維持していると言えるだろう。

世界で森林伐採による環境破壊が問題になっているが、こと日本に関しては例外である。













まぁ、それですめば何の問題もないがね







日本は確かに世界有数の森林大国だが大きな問題がある。

それは……


木が育っても使わない

木を植えても森林の整備をほっとんどしない


以上、二つである。


これが結構重大な問題である。

なにせ日本は森林大国でありながら、自国の木はあんまり使わないのだ
木材供給の80%は輸入材。
一方で日本人の年間木材消費量は約1.1億㎥で一人当たりの年間木材消費量は約0.9㎥と世界でも多い方だ。

要は自国に豊富な森林資源があるのに自分のは使わずに他国のを使っている状況なのだ。

これが何が問題って、世界の森林破壊以前に日本の森林がただの飾りになりかねないのだ。
下手したら邪魔なゴミ

天然林はまだいい。
天然更新ができるし、基本的に人の手はいらないから。

しかし人工林は人の手がないと維持できないのだ。
しかもすこぶる成長が悪い。

それなのに日本の人工林の約8割が未整備状態であるとされているのだ。
オイオイ


先ほど生物多様性についてちょろっと語ったが、これに関しては簡単なようでかなり奥深い内容なので軽くスルーする。
要はたくさんの種類の生物がいる……とここでは考えてもらって問題はない。

生物の多様性が維持されていればそれだけたくさんの生物が活動し、自然のサイクルがスムーズに循環する。
ここまでくれば人間の手が入らなくても天然更新で自然の森林が生まれてくる(しかも自然災害も減る)。

だが、しかし人工林のほとんどは針葉樹
しかもそれだけ。
スギ林とか代表格。
天然林の蓄積の72%は広葉樹が占めており、多様な樹種構成となっているのと比べればその差は歴然。

更に問題があり、この人工林に使われているのは主に杉だが、こいつ意外と今生えている場所に適性がない
このまま放っておけばいずれ枯れ果てて、長い年月を経てブナ林というか落葉広葉樹に変わるだろうと言われるくらい。

他にも天然のものと違い人工林においては杉が過密に植えられた後、十分な間伐をせずに放置されたものも多い。
この場合、密に広がった樹冠で太陽光が遮られてしまい、林床にはほとんどの植物が生存できなくなる。
林床に存在する植物のことを下層植生というが、これらが整備不十分で生えなくなり生物多様性に乏しくなるのだ。

このような森林は遠目には緑に覆われているものの、実態は生物多様性に乏しいことから「緑の砂漠」などと呼ばれたりする。
聞きました奥さん「緑の砂漠」ですよ?
あんだけ木が沢山があって砂漠と同等の扱いですよ?

さらに下層植生がないことで土がむき出しになり、雨滴による土壌侵食を受けやすく、土砂災害の原因となってしまう。
本末転倒

おまけにスギは風媒花で多量の花粉を飛ばすため、開花期にはあの花粉症の原因となる。
本来なら伐採→植林のサイクルが出来ていれば花粉を飛ばす前に杉を材にできるため花粉の量を減らせるのだが、それができてない状況なのだ。
植えてほっぽいたらこれだよ!


こんな状態なので日本人は「植えるのは好きだけど、その後がダメ」と言われる所以である。


そしてこの後には……
  • 整備しないのでせっかく育った樹木が木材に適さない
  • 森林面積は変わらないのに森林蓄積は増える一方、だが使わない
  • 使わないことでさらに整備の旨味が減り(コストや労働的な意味で)、さらに木材の質が落ちる
  • だが木材の需要はあるので海外から輸入……(以下無限ループ)


森林は日本が持つほぼ唯一の資源であり、かつ持続可能なものだ。
今でこそ森林大国といえるほど森林があるが、そろそろ行動を移さないと次世代には多分残せないだろう。


別にこの項目を見た人たちに林業をやれと言っているわけではない。
ただ純粋に現状を知ってほしいのだ
主に日本での間伐の大切さとか(海外の森林伐採のせいでものっそい勘違いされている部分)。

ついでに余裕があれば木材買って経済回してほしいところだけど


追記・修正は森林浴をしてからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 森林
  • 樹海
  • 樹木
  • 森林伐採
  • 環境破壊
  • 日本
  • 世界
  • 熱帯雨林
  • 話すの長くなるので(ry
  • ドイツの科学は世界一ィィィ
  • 森林浴
  • 植林
  • スギ
  • 花粉
  • 森ガール

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年07月31日 14:00

*1 イングランドの花粉分析で帝政初期のローマは萌芽更新という木を完全に殺さないように燃料用の薪炭を継続的に採取する森林管理技術を確立していた事が分かっているが、『国家予算は全て軍事費』と言い出すような軍人皇帝の時代に資源管理や社会福祉予算が打ち切られた事で台無しにしてしまった