神座(神座万象シリーズ)

登録日:2014/04/06 (日) 5:16:00
更新日:2023/05/06 Sat 20:16:47
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(∴)「どれも指先一つで潰せる雑魚だがなあ」 Dies irae Dies irae PANTHEON PARADISE LOST すべての想いに巡り来る祝福を チート ネタバレ項目 世界法則 主神 事象地平戦線アーディティヤ 二元論 修羅道至高天 修羅道黄金至高天 八百万 唯一神 地獄 堕天の園 堕天奈落 堕天無慙楽土 多元宇宙 天国 天照坐皇大御神 天魔・夜刀 太極 女神 宇宙 平行世界 所要時間30分以上の項目 新世界へ語れ超越の物語 明けの明星 明星悲想天 最強 最高神 根源 正田崇 水銀の蛇 永劫回帰 永劫水銀回帰 波旬 波旬大欲界天狗道 流出 混沌より溢れよ怒りの日 渇望 無間刹那大紅蓮地獄 無間大紅蓮地獄 特異点 生と死の刹那に未知の結末を見る 男神 真我 神なる座に列し伝わる救世主 神咒神威神楽 神座 神座万象シリーズ 神格 絶対神 至高天 覇道 覇道神 観測者 超越者・超越存在 輪廻転生 黄昏 黄昏の女神 黄昏輪廻転生 黄金 黄金の獣 黒白のアヴェスター



※この項目は神座万象シリーズの根本に関わるネタバレが含まれます※








概要

正田崇の既存作品の中で神座万象シリーズと名付けられた世界観は作品ごとに違う世界法則に従って世界が成り立っている。
つまり神座世界は統治する絶対神が存在し、神の属性によって住人の在り様が決まっているということ。
神によって思考が染められているため、法下の人間にとってはごく自然でも外から見るとかなり気持ち悪い世界もある。
明確に設定が提示されたのは『Dies Irae』からだが、『PARADISE LOST』もその枠組みに入っている。



その名は神座。又の名を太極座・王冠・ジュデッカ・頂点・底
世界を我で染め上げることを可能にする機構であり、宇宙を支配する神の坐する場所である。





神座世界における神とは


神座世界では己の渇望を極限まで高めた存在は神格へと変性。
渇望の種類によって世界全てを己で塗り潰す覇道神と、己のみを真実永遠の個と化す求道神の二種類に分けられる。
覇道神はその誕生と同時に祈りの性質に関わらず己の渇望で世界を塗り潰すのだが、前述の通りその宇宙には既に別の覇道神が己の渇望で世界を満たしている。

故にこの世界は新たな覇道神が誕生する度に既存の覇道神と新たな覇道神は覇権をかけて争い合い、勝った側がこの座を手にし(あるいは保持し続け)、負けた側が消滅するという神の交代劇を繰り返しているのだ。
そのため必然的に覇道神は同時代に一柱しか存在できない。

また現役の覇道神を超えるためには挑戦者がそれ以上の力量であることが前提なので、代を重ねるごとに座の覇道神は強大になる傾向がある(稀に例外在り)。



【歴代の座と覇道神】



私が正しいとは、絶対に言わない


第零神座 事象地平戦線アーディティヤ



すべては人の心が織りなす綾模様。
だからこそ不完全で儚くて、尊く、そして美しい。
もしもこれがただの■■に堕すというなら――
そんなことは許せぬだろうと、我らは思った。


『事象地平戦線アーディティヤ』の舞台になった世界。神座が作られる以前の零の時代。
人類は極限まで発達した科学文明のもと、広大な宇宙にまで版図を広げていた。
そのためこの時代に魔術や超能力のような幻想は存在しなかったのだが、『すべての始まりとなった座標』の観測に成功した結果、既存の科学では解明できない特殊能力を持つ者らが激増する。
それにより、『始まりの地』を巡る争奪戦が勃発。
宇宙全土を舞台にした戦いは、四つの勢力と六人の若者らに収束していく。

過去の作品でも断片的に語られていた『神座』という機構が発生する前の世界。
立場の異なる六人の若者たち――ミトラ、ヴァルナ、アリヤ、サーヴィー、シャクラ、ヴィヴァス――は、争いながらも友情を結び、『始まりの地』へ到達。
しかし、そこで何があったのか神座の力を得たのはミトラ独りで、残る五人は歴史の闇へと消えた。

すべてを知るミトラは多くを語らず、かつての同胞を奈落迦と呼び、彼らを滅ぼすための壮大な計画を目論んでいる。



この世は善と悪に分かれている――
あなたの奇跡を教えてください

第一神座 善悪二元真我(アフラ・マズダ)


すべては人の心が織りなす綾模様。それを美しいと私は思った

主神:真我(しんが)
在任期間:2~3万年

神座世界における最初の法則にして『黒白のアヴェスター』の舞台になった世界。「二元論」「善悪二元」とも呼ばれる。
さて後に第一神座に至る女が生きた時代、人は座というシステムを生み出し、それを奪い合って戦乱が生じていた。
彼女はその戦乱の中で多くの者を殺し、築き上げた屍山血河に圧殺される恐怖(罪悪感)から逃れるために「己が殺した者は滅ぼされるべき悪であり、罪の意識など持っておらぬし持ってはならぬ。己は善である」と信じた。戦乱に疲弊し、故にこの戦乱はせめて正義と悪との戦いであってほしい、でなければ許容できるはずもないという弱き人の願い。
初代の愚かな独善性から流れ出した理は人類を善と悪に分け、両極が永劫争い続ける地獄を創り出した。

法則は「すべての生命が善と悪の二極に分けられ、争い合う世界」。
仮にどちらか一方を滅ぼしても次の瞬間に価値観が逆転し、昨日の善が今日の悪となるため戦いは終わらない。「正義の流転」という、神座世界の縮図とも言える理。
この世界において、善を名乗る者達は荒んで危うい存在だったという。
容姿は惨く汚れ、心根は憎悪と怨念に濡れ、総じて破滅的で敵も自分も破壊し尽くした後には呪いしか残さない。
逆に悪を名乗る者達は絢爛で綺麗な存在であり、眩いばかりの美男美女が優雅に微笑んで自儘に振るう。
数億の人間を虐殺しようが、星を喰らう星なんて魔物を生み出そうが彼らに邪気は微塵もなかった模様。
結果、この世界では悪党ほどよく笑い、正義の味方ほどよく怒るという強烈な皮肉を生み出すことになる。

正田氏によると「波旬でさえ一宗教のご本尊になるくらいには信者がいるけど、真我にはマジで一人たりとも支持者がおりません。第一神座の連中は善も悪も残らず無慙の萌え豚なんで。」という事らしい。


◆関連勢力
  • 聖王領域(ワフマン・ヤシュト)
第一神座における善側の勢力。
助けを求める民草の声を聞いてウル○ラマンを派遣する宇宙ヒーロー達の総本山。
正田氏曰く「M78星雲」
なお第2の神である無慙も一応こちらの陣営だった。帰ってくれウル○ラマン


  • 七大魔王
別名「黒の七王」
第一神座における悪側の勢力の頂点に君臨する七人。各々が眷属を有しており、七人全てが美男美女で絢爛無垢な悪人。
聖王領域から見た危険度での序列が付けられ、上位3人は星を複数滅ぼしているような奴等らしい。事実、破滅工房は序章の時点で既に五百の銀河を滅ぼしている。
文明的には中世時代レベルとされる第一神座世界のスケールをやたら大きくしている存在がいるらしく、ソイツが惑星移動装置などのアイテムや強大な怪物を創ってはばら撒くことで混乱に陥れている模様。曰く「暗黒ド○えもん」
正田氏によると戦闘力的には魔王達は夜都賀波岐の面々と同等クラスだとのこと。





開け(アクセス)――我が地獄(シン)
犯せ(アクセス)――我が原罪(シン)
貪れ(アクセス)――我が悪魔(シン)

目覚めろ――我が無慙無愧

第二神座 堕天無慙楽土(パラダイスロスト)


罪と罰を抱いて生きろ。それが人だ

主神:無慙(むざん)
在任期間:5千年

『PARADISE LOST』の舞台になった世界。「堕天奈落」「堕天の園(パラダイス ロスト)とも呼ばれる。
無慙は元々善悪二元真我(アフラ・マズダ)における善側の王であったが、それ故に悪を滅ぼせない自分に悲憤を抱いた。善は善であるがゆえに倫理的に取れない行動があり、ゆえに悪との戦いで常に不利を強いられていたのである。
「善でありながら民を守れず、悪を滅ぼせない。」この不条理に対する憤りから流れ出した理。その理は人々に原罪を埋め込んだ。
人間として自然な形の世界であり、善悪を綯い交ぜにした畜生道。二元論を白と黒の2色とするなら鮮血の赤、剥き出しの人間性と言ったところだろうか。
正田氏曰く「現実世界に最も近い世界」らしい。

良くも悪くも現実世界に近いが故にどこもかしこも程度の差はあれ弱肉強食の論理が横行しており、力のある強者は幸福を甘受しやすいものの、力なき弱者は基本的に搾取され踏みにじられがち。
弱者がその境遇から脱するには強者の慈悲を待つか、己も原罪を受け入れ強者となるしかないのが実情である。
そのため邪悪の根絶を望んでいた彼にとっては、悪と戦うために悪に身を落とさねばならないこの座の有り様は本末転倒に過ぎないものであろう。
だが彼の望みはいずれこの世界で生まれるであろう"何者か"にあり…?

法則は「すべての命が原罪という根源的な業を持つこと」
歯止めの利かない欲望は肥大を極め、文明の発達と比例して凶悪な犯罪が吹き荒れる混沌の時代と化す。悪を喰らう悪の楽園。
力こそすべてを決する大罪人たちの蠱毒は無慙無傀で、恥もなければ悔いもない。


◆関連勢力
  • 天使・堕天使(グリゴリ)
明星の生体兵器。前者は原罪がなく、後者は原罪の塊。

  • 大罪持ち
強力な原罪を宿してる人間。「アクセス我がシン」を言う奴ら。
無慙の談から察すると、彼らは無慙から直接力を引き出してその力を使っていた模様。






私と君は同じじゃない。
これは呪いなのか
祝福なのか

第三神座 明星悲想天(ツォアル)


白く、白く、塩の純白に染まれ

主神:明星(みょうじょう)
在任期間:2~3万年

『PARADISE LOST』の物語の末に生まれた世界。「悲想天」「天道悲想天」とも呼ばれる。
元となった渇望は「罪深き世を救済したい」。人の原罪を浄化し救済する理である。

法則は「すべての生命から罪業を拭い取り、浄化された世界」
完全なる善の世界を実現し、争いを消し去るため、人の個性というものを排除した群体的構造のディストピア。
強迫神経症めいた潔癖さと殺菌による塩の牢獄と化した世界。
感情・発生・過程・運命までもが神の手で完全に管理され、人々は誰もが持つはずの原罪を抜き取られ、罪を犯さず、善行を重ねながら、争いも悩みも苦しみもなく、永劫穏やかに日々を生きる。


一見すると恐ろしいが実は作者公認で歴代屈指の幸福な世界、天国そのもの。
謂わば人々にとって非常に理想的な管理社会。ノベルゲームで例えるなら主人公と結ばれなかったヒロインにも幸福な出会いとエンディングを約束してくれる世界と言ったところか。
…だがそれもこの世界の黎明期に限った話であり、時を経るにつれ明星は「真に争いなき世界」のため徐々に理を改良していく。
彼は「無知は罪の根源であり、わからないから人は恐れ過ちを犯す」「自分と他人は異なる存在であるから、他人の考えはわからない」「他人の考えがわからないから、人は他人を恐れ争う」という常識的な真理に基づいて、「自分と他人が同じになってしまえば他人に対する無知が消え、他人に対する恐れもなくなり、争いも消える」と結論。
完全なる善の世界を実現し、争いを消し去るため、段階的に個性というものを排除していき、最終的に人類から個体差というのを完全に消し、一つに統一した。
結果この宇宙では総ての人間が全く同じ存在であり、この宇宙が続いていれば人の定義は変わっていたと言われる。

なお一足飛びに個性を排除せず段階を踏んだのは、急激な改革に対する反動の懸念から。
明星は完璧主義者ではあったが、不都合に対してはアップデートにより一つ一つ改善する柔軟性も持ち合わせた神であったようだ。
明星悲想天(ツォアル)堕天無慙楽土(パラダイスロスト)の否定から生まれた理ではあるが、人の悪性を滅ぼし一切の争いを終結させた世界なので実は無慙の理想を引き継ぎ完成させた理である。

その理の性質上、本来ならば住人が世界に対する不満や渇望を抱くことはなく、実際この治世の下で流出者は1人も出なかった。
だが、彼が流出する際に行った歴史改変によって生まれてしまった並行宇宙と神座世界が繋がってしまい、そこから謎の不純物(変態)が出現。
もはや何をしてもバグを改善できないと自覚した明星は、元々自分が創造主を無能と思いその不満から流出したこともあって「流出者を出した自分は無能だから、潔く交代すべき」と考え、あっさり消滅してしまったのだった。



◆関連勢力
  • シャマシュ
第三神座における知的生命体の総称。
すべてが同じ容姿、性格、意識を共有している“全にして一“の存在。
ゆえに自他の概念がなく、争いも死もない。
第二神座から続く色々と複雑な事情がある。

  • 翼種
明星の代行者。汚物は消毒マン。

  • 背教徒(ゴモラ)
明星の法則が狂いだしたことの象徴。
個体差のない第三神座において個性を獲得してしまった者達。






この刹那に愛を超越()えろ――

第四神座 永劫水銀回帰(オメガ・エイヴィヒカイト)


私に未知を見せてくれ

主神:水銀(すいぎん)
在任期間:不明(1周につき3~4万年を那由他単位でループ)

『Dies irae』の舞台となった世界。「永劫回帰」「牢獄(ゲットー)とも呼ばれる。
元となった渇望は「自分の望む結末以外は認めない」「こんな結末は嫌だ」「納得できる結末をよこせ」

法則は「すべての生命が無限ループする世界」
死後という概念を生み、時間軸にも干渉することで多元宇宙的な領域にまで支配を広げた、神座世界における中興の祖。

神座の交代劇は神の治世に不満を抱いた者が流出し、座にいる神に戦いを挑むのが通例だが、第四天は先代の法下ではなく並行宇宙から来訪した規格外の怪物である。
しかし、彼の出身である並行宇宙が発生してしまったのは第三天が流出のために行った歴史改変の結果なので、彼が生み出してしまったといっても過言ではないだろう。

水銀の理は彼の望まない結末に至った時に時間を巻き戻して最初からやり直させる特異な性質を持つ。
この時間の回帰は水銀本人だけでなく、法下にある全ての人々を巻き込んでおり、人々は唯一無二の己として、唯一無二の生を繰り返していた。
つまり、死ねば魂が過去へと引き戻され、母の子宮に回帰して、全く同じ人生を反復するというサイクルを永劫続けることになる。
だがほとんどの人間は既知感を有しないため、幸不幸の程度はあれ何百何千何億とループを繰り返しても特に不都合なく生活できる。
ただしその「普通」を外れて既知感を抱いてしまえば最後、その者にとってこの世界は地獄以外の何者でもない。
住民の幸福度という点においては先代に遠く及ばないが、座を存続させることに関しては歴代で最も優れた理であり、困難に行き詰まっても回帰によって何度でもやり直すことができる。


ちなみにこの理、既に流出者として座に君臨している水銀が何度も流出し直しているという本来起こり得ない異常事態である。
在任期間はぶっちぎりで歴代最長記録であり、今後もその記録が破られることはないであろう。
また明星から水銀へ引き継がれる際の出来事と、この天の理によって「多元宇宙」「死後も魂が消滅せずに残る」という新たな要素が生まれた。


修羅道黄金至高天(ドゥゾルスト・ディエスイレ)


私はすべてを愛している。ゆえにすべてを破壊する

神:黄金(おうごん)
第四神座の裏世界。「修羅道至高天」「修羅道(ヴァルハラ)」「至高天(グラズヘイム)とも呼ばれる。元となった渇望は「総てを愛したい」「全力を出したい」

その法則は「不死の戦奴が永遠に殺し合う世界」
異次元に存在する城、あるいは世界法則から切り離された異界そのものが黄金の城である。
そこは距離と座標の概念がないため資格のない者は入るどころか近づくことさえ出来ない。
逆に城に招かれれば世界中の何処からだろうと登城できる。
城に解けた者は黄金の眷属、死して尚生き返る不死英雄(エインフェリア)として永遠の闘争を続けなければならない。
一見すると恐ろしい地獄だがこの法則は総てを愛する黄金が死の恐怖に震える万民に示した黄金なりの回答であり、慈悲であり、祝福である。
更に見方を変えれば絶対的強者である黄金が触れれば壊れてしまう弱者を全力で(ハカイ)するための方便ともいえる。やっぱり地獄じゃないか

しかし、黄金の正体は自滅因子という神の自殺願望から生まれた神殺しである。
果て無き回帰に心を病んだ水銀が死を願ったため、自分を殺せる存在として黄金は生み出された。
彼ら二人は親子であり、親友であり、不倶戴天の関係ながら一蓮托生でもある。
水銀が持つ破滅願望の化身が黄金であるため、前者が死ねば後者も消える。
ゆえに黄金は、神でありながら神の座に就くことはできない。


◆関連勢力
ご存知、黒円卓。黄金が首領、水銀が副首領を務める。
当代の神である水銀が創始した複合魔術『永劫破壊(エイヴィヒカイト)』を修得した魔人の集団。厨二病患者の群れ。
構成員の殆どは第三帝国ことナチスドイツの軍人である。
その目的は既存法則である永劫回帰(ゲットー)を破壊し、新たに主君である黄金の修羅道(ヴァルハラ)で全宇宙を塗り潰すこと。
しかし、それを理解している団員は少なく、また生みの親といえる水銀の真意は別にある。






私は今世(イマ)を生きている。
私の家族はここにあるのだ。
来世など要らない

第五神座 黄昏輪廻転生(アニマ・エンテレケイア)


わたしがみんなを抱きしめるよ

主神:黄昏(たそがれ)
在任期間:1万年弱

『Dies irae』のマリィルート及び玲愛ルート後に生まれた世界。「輪廻転生」とも呼ばれる。
元となった渇望は「全てを抱きしめたい」

全ての人間に慈愛を振りまき抱きしめ、幸せを願う女神の理。
その法則は「すべての生命が生まれ変わり続ける世界」「全ての人間がいつか幸せになれるよう願うもの」
輪廻の中であらゆる生を体験することで、霊的に混血化を促すのが特徴。すなわち、人種や性差、貧富などから生じる差別意識の希薄化であり、緩やかな時間をかけて人の魂を成長させていく。
人の世に悲劇や争いは無くならない。
しかし、かといって異なるものを排斥すれば、過去の座がそうであったように必ず歪みが生じてしまう。
故に黄昏輪廻転生(アニマ・エンテレケイア)は善人も悪人も誰も彼も差別無く抱きしめ、どのような人間、どのような人生でも「諦めないで幸せになってほしい」と人の自由を尊重した上で語りかける。
今が辛くても、いつかきっと幸せな明日が来ると語るのがこの理である。

住民は常に女神の抱擁を受けているわけであり、理由はわからずともその温もりを感じて生きている。
そして仮に不幸な人生でも"来世で"幸せになって欲しいという願いの下、その魂はまた生まれ変わるのである。
住民は転生概念を自覚してはいないが、ただ同じ生き方を繰り返すだけではなく、転生を繰り返すごとに過去の歩みの分だけ成長を続けていく。

ただし、欠点としてこの理は邪悪を否定することができない。
「全ての人間の幸福を願う」というその方向性によって、黄昏の慈愛に意味を見出さない最低の下衆さえも内に抱え込んでしまうという甘さがあり、利他的なのは同じであれど一切の邪悪を罪として冷厳なまでに否定していた明星とは対照的である。
そのための抑止力としてか黄昏には「覇道神を共存させる」という固有の特性があり、外敵を滅ぼすために彼女を守護する3柱の覇道神が並び立っていた。
一応理にも許容量はあったようで、彼女ほどの器であっても覇道神は自身と水銀の蛇、黄金の獣、永遠の刹那の4柱で限界だった模様。
加えて作者によると、「新たな覇道神が誕生しても、まっとうな覇道神ならば黄昏を排除せず、共存する」とのこと。
もう一つの欠点として「来世の救いに重点を置いているため、今世での救いを求めている者たちを救うことができない」というもの、この欠点が転輪王の花輪という歪みを生んでしまった。


無間刹那大紅蓮地獄(アルゾ・シュプラーハ・ツァラトゥストラ)


時よ止まれ。君は誰よりも美しいから

神:刹那(せつな)

元は黄昏を神として成長させるため、水銀によって生み出された疑似生命体。
後に生まれの呪縛を超越し、神として覚醒するが、彼の法則は「宇宙のすべてを永遠の時間停止に落とす」というものだったため、自分は神の器に非ずと悟って黄昏に座を譲る。
以後、彼女の守護者として第五神座の盾となった。


◆関連勢力
  • 転輪王の花輪(サンサーラ・ヴァルティン)
波旬を本尊に据える邪教団。後の第六神座では邪宗門とも呼ばれる。
「私は今を生きている。今ここにいる我々こそが、天地のすべてだ」
「来世なぞ知らんし、興味もない。私は今こそ幸せを得るために、持てる全霊を振り絞るのだ。邪魔はさせん。それが生きることだろう!」
という思想の元明確な反神座を掲げており、大導師(スヴァーハ)千眼帝(サハスラーラ)という二人のトップがいる。男性では黄昏を倒せないという理念のもと、構成員はほぼ例外なく女性。
自由を許す第五神座の中で「好きにやってもいいんだな?ぶっ壊してもいいんだな?」という考えに達した狂信者の群れ。
女神の統治下においてかなり歪な人生を送っていた不幸な者達であり、黄昏が運命を管理しないしわざと不幸を与えているわけでもないと分かっていながら反逆。
神座システムの完全破壊を成し遂げるための核爆弾的存在として意図的に波旬を生み出し、天狗道の発動を以て神座の歴史を終焉させようとしていた。
波旬は無事誕生するも結果として波旬によって教団は滅ぼされる結末を辿ったが、彼らにとって完全版天狗道の発動は失敗どころか寧ろ成功の部類だった模様。

  • 黄昏の騎士団(ヴィーンゴールヴ)
転輪王の花輪に敵対する唯一の組織。
首領は黄金の長子であるイザークの転生体、アイザック。
第四神座の転生者たちで構成されている。*1






この覇道(きずな)に、魂を懸けろ――


第六神座 波旬大欲界天狗道(マハーマーラ)


滅尽滅相――俺はただ一人になりたい

主神:波旬(はじゅん)
在任期間:約7~8千年

『神咒神威神楽』の舞台となった世界。「大欲界天狗道」とも呼ばれている。
元となった渇望は 「一人になりたい」「俺以外の者は全て消えてなくなれ」

その法則は「森羅万象滅尽滅相」「すべての生命が最後の一人となるまで殺し合う世界」
天上天下に「もっとも尊い存在は自分一人である」「この宇宙に存在するのは自分一人でいい」という自己愛が吹き荒れ、宇宙の生命全てが世界唯一の存在になるべく家族や恋人なども一切関係なく殺し合うようになる。
その滅尽滅相の徹底ぶりは人のみならず虫魚禽獣にまで及び、行き着く先では波旬との同調で強化された自由意志なき傀儡達が殺し合い消えてゆき、数日で宇宙は荒野と化す。
最後には神である波旬を除く全ての生命・未来・可能性の消滅した無明の暗黒、宇宙の滅びだけが残り、神座の歴史は途絶える。

救いようのない理だが、唯一の美点を上げるとすれば他者に煩わされず自分のみを愛することによる個人レベルにおける幸福感の高さくらいであろう。
なぜなら法下にある住人にとっては例え待ち受けているのが無であろうとも曲がりなりにも幸福を感じたまま悔いを残さず逝けるため、無念というものをほとんど味わずに済む。
そのため恐慌や悲哀、失意や自虐、無力感や絶望感といった負の情動とは無縁でいられるからだ。
故に邪神の理ではあるものの、皮肉にも幸福度という一点だけを見れば明星悲想天(ツォアル)に次ぐと言えるのである。

ただし総体からすればわずか塵芥の領域であるもう一つの覇道が残留し、鬩ぎ合いを続けているので完成には至っておらず、「あらゆる人間は自己のみを愛する」に留まっている。
彼の不屈の意思によってこの宇宙は辛うじて持続している。


◆関連勢力
  • 夜都賀波岐
神州の東半分、穢土に君臨する神の如き力を有した八柱の化外。
波旬に滅ぼされた第五神座の残党であり、大将は天魔・夜刀こと刹那。
西側に住まう民達からは上記の通り、化外として蔑視されているものの……その実、一度は波旬に敗れながらも尚屈せず、多元宇宙に住まう生きとし生けるもの総てを救わんと立ち上がった紛れもない英雄達、神州無間憂国烈士である。

  • 東征軍
夜都賀波岐を滅ぼすため組織された、葦原中津国の遠征軍。大将は久雅竜胆鈴鹿。
神州西側の中でも選りすぐりの益荒男達が参加している。
夜刀のおかげで影響が薄まっているものの、彼らは波旬の細胞であり、天狗道の住民であるため、将の竜胆以外は重度の自己愛性人格障害者しかいない。
しかし中核の者たちは東征の中で絆に目覚め、魂を奮わせ、快男児・益荒男というべき者へと成長して行った。
作者曰く「ヤンキー更生物語」。






その日、すべての神々が集う

第七神座 曙光八百万(アマテラス)

主神:曙光(しょこう)

『神咒神威神楽』の物語の末に生まれた世界。六柱の求道神によって守護されている。
元となった渇望は「化外を生まない」

法則は「初代から六代目までの世界を擬似再現し、在るべきところに魂を導く」
その具体的な在り方を言うと、現世についてはほぼ不干渉。現世でどのような生を送ったかにより、死後の処遇が決定する。
  • その生においてあまりにも進歩がなかったら、戒めや成長を願う意味で永劫水銀回帰(オメガ・エイヴィヒカイト)
  • 生涯を善に生き、善を全うした者なら明星悲想天(ツォアル)
  • 逆に悪に染まり、悪を生き抜いた者なら堕天無慙楽土(パラダイスロスト)
  • 報われないまま生を終えた者なら、来世において幸せを得られるように黄昏輪廻転生(アニマ・エンテレケイア)
人々の多様な価値観を尊重し、各々に見合った死後を与える理だが、自ら消滅を選ぶ魂も存在する。

また理に割り振られるそれぞれの魂はほとんどが勝手に己の行く先を決定、もしくは気質や過去の傾向によって自分の在るべき場所に自然に流れ着く。
この性質は修羅道黄金至高天(ドゥゾルスト・ディエスイレ)に類似している。

だがそれでも極稀にどの理にも当てはまらず己の行く先を見出だせない者や往くべき理をすでに失ってしまった者が現れ、その者の魂は死後どこにも向かうことができず放っておくと消滅してしまうため、守護者の一人が死後裁判を行い導くことで可能な限り欠点を補っている。
というか、彼以外の求道神に明確な役割は存在しないので、各々有事の際は駆けつけるものの平時は悠々自適に過ごしているそうな。


統治している神は覇吐と竜胆の娘である曙光。
ただし現在曙光は心身共に未熟で、自分の力と立場を理解しておらず「なんとなく凄くて偉い」としか認識していない。
この座が上手く回っているのは有能な保護者達のサポートがあるためだとか。


◆関連勢力
  • 曙光曼荼羅
主神である曙光とその守護者。
波旬を討ち果たした勇者たちにして、亡き黄昏を継ぐ者たちによって結成された。
組織ではあるが支配や利害ではなく絆で繋がれた対等な同盟関係である。





治世の種類

神の治世には大まかに分けて管理型と自由型が存在する。
前者は個々人の出生や人格、人生、いわゆる運命を神座が管理し、ある程度定められた道の上を歩ませるというもの。 対して後者は人の自由意志を尊重し、その成長を見守りながら、時に救いの手や罰の炎を与えるというものである。
善悪二元真我、明星悲想天、永劫水銀回帰、修羅道黄金至高天、無間刹那大紅蓮地獄、波旬大欲界天狗道は管理型。
堕天無慙楽土、黄昏輪廻転生、曙光八百万は自由型に分類される。

それぞれ長短はあり、一概にどちらが優れているとは言えない。ただ、そもそも単一の色で染め上げる座というシステムを踏まえれば管理型こそ正道と言える。
単一で染め上げながら多様性を認める自由型は内部矛盾が生じやすく、短命になりやすい傾向がある。ほぼ全ての民が賛同し、神々さえも守護を誓った黄昏輪廻転生にしても、自由型故の「短命」という欠陥は背負っていた。
ただ管理型に属する波旬大欲界天狗道は完成と共に速攻で消滅に向かい、自由型に属する曙光八百万は現世不干渉の歪みが起こりにくい理なので一概には断定できない。



神座への挑戦


先に述べた通り覇道神は発生と同時に座を治めている覇道神との闘争に移行する。
この流れの正確な順序は、両者の異なる覇道がぶつかり合うことで法と法の鬩ぎ合いが起こり、世界そのものがその圧に耐え切れず、「穴」を生じさせる。
この穴を特異点と称し、過去存在したあらゆる法則が混ざり合い同時にあらゆる法則に属さない無色の空間である。

特異点が開くことで当事者は「底」に向かって落下する。
そして落下の果てに辿り着く穴の底、それが当代の神の座である。
また「穴」の深さはその代における座の神格の強度に応じたものとなる。参考までに第四天水銀の蛇が座を握っていた時の深さは、せいぜい常人が呼吸を止めていられる時間で到達可能な深さだった(1分程度だろうか?)。
そして、第六天波旬が座す底の深度は天魔夜刀が7~8千年という途方もない年月をかけ鬩ぎ合い落ち続けて、なお辿り着けない超深奥である。
作中で唯一示された深度の比較だが、片方が桁違いすぎて全く参考にならない。何倍強いとかそういうレベルの話じゃない。


座には歴代の神の理が記録されており、座に坐する覇道神はそれらの理を自分の力として行使できる。
覇道神本人の格だけでなくこの要素も代を跨ぐごとに戦力がインフレしていく一端である。
劇中で描写があったのは波旬が使ったものだけだが、彼の場合は歴代の神に対する敬意と理解が全く足りないために、威力はとにかく中身のない木偶の剣と化している。
また水銀はそもそも自分の代で座を魔改造しすぎたため、前任者達との相性が悪く、この力は使えなかったらしい。

逆に黄昏や曙光はそれらの行使を得意とし、特に黄昏は歴代の中で最も使いこなせていたそうだ。
もっとも、黄昏はその在り方故に相手を排するためにその力を使うことはまずないだろう。
そして仮に使ったとしても、あの怪物が相手では焼け石に水にもならなかったはずだ。





挑戦者が覇道神でない場合


覇道神だけでなく求道神も神座に赴き、座を握る覇道神と戦うことは可能である。
ただし、覇道神と違い自然体で世界に影響を及ぼさない存在なので、2人以上の鬩ぎ合いを行い特異点を開く必要がある。

そして、通常いくら強固でも単一の魂しか持たない求道神では全宇宙の魂を保有する覇道神には量の差で勝てない。
座の神と挑戦者で勝負が成立するのは覇道神が他者の魂を取り込んで己の力に変える機能を持つためであり、互いの持つ魂の奪い合いになるからである。
一つの宇宙を殺し尽したマグサリオンや、覇吐や竜胆といった求道神も最弱の覇道神にすら及ばない。

それぞれの全盛期(座の総軍など込み)の強さ順はこんな感じらしい。
波旬>>>>>夜刀>水銀>黄昏=天照>蓮=黄金=明星>第二天>第一天>覇吐=夜行=竜胆>宗二郎=紫織>龍水

また、座の神が自滅因子に討滅され、両者が共倒れになった時も同じく座は空席になる。
誰かしら覇道神が座に存在しなければ新たな命が生まれることがなくなるため緩やかに世界が死んでゆくが、この場合は即座に消滅してしまう。
そのため神座のシステムそのものにセーフティが設定されそのような事態を未然に防いでいるらしい。
あとは神格以外が座に至ろうとした時もそれを消し飛ばす機構が備わっている。

逆に言えば強力な覇道神であればどんなに悪質な理であろうと流出できてしまうというシステム上の欠陥があるのだが、第三天→第四天と第五天→第六天における興亡劇においてその欠陥が露呈されていることから、このままでいいのか?と曙光の守護者たちの間で議論が行われている。



観測者


神座の最深部に潜み、システムと同化した「神座を存続させようとする意志」。
その正体はまだ神座ができる前の時代、後の第一神座となるミトラと共に戦った、彼女の副官であり恋人に近い立場だったヴァルナという男。
神座の興亡期には必ず彼の代行者が表舞台に現れ、古き覇道と新たな覇道の衝突を促す。





余談

よく勘違いされるが、神座の正史は『Dies irae』の玲愛ルートであり、第六天波旬、第七天天照(『神咒神威神楽』)はifの世界である。
しかし、神座の根幹に関わる話を作る場合はifから続くことになるらしい。なぜなら隔絶した力量と天眼を持つ覇道神・波旬抜きでは神座の真実の一端を暴き出すことができない(もしくは何代かかるかわからない)ためである。微妙にややこしい。












追記修正は覇道の太極位に至った方にお願いします。

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最終更新:2023年05月06日 20:16

*1 この時代における観測者はこの組織に属しており、転輪王の花輪を異端認定し粛清弾圧することで彼女らの狂気を加速させ神座交代を進めていた