スパイ

登録日:2014/04/01 Tue 03:03:32
更新日:2024/02/01 Thu 21:15:48
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『スパイ』とは、敵対勢力などの情報を得るため、合法違法を問わずに敵の情報を入手したり、諜報活動などをする者の総称である。
名称は間諜(かんちょう)、密偵(みってい)、工作員(こうさくいん)、情報機関員(じょうほうきかんいん)など様々で、国や時代によって色々な呼称がある。
現在の日本では項目名通り“スパイ”という呼称がメジャーであるが、
諜報機関の中では敵側のそれのみを「スパイ」と呼び、味方側のそれは全く違う名称で呼ぶ例もある(インテリジェンスオフィサー、ケースオフィサーなど)。

◆もくじ

概要


そもそもスパイって?

個人や組織と競合する相手に対して、
「政治・経済・軍事機密・科学技術などの情報を、いち早く入手して味方に知らせつつ、敵の目的活動を阻害すること」が主な任務とされ、
戦略上において戦時・平時を問わず重要で特殊な活動が「スパイ行為」であり、スパイとはまさにそれを行う人のことを指す。

……平たく言えば「敵の情報を手に入れて、自分たちに有利になるよう利用する人のこと」である。
たとえばクラスのいじめっ子・タケシくんへ一矢報いるために、タケシくんが最近おねしょしたという秘密を入手し、
「この秘密をバラされたくなきゃあ、俺へのイジメをやめることだな。ヒヒヒヒヒ……」とタケシくんを脅したりすれば、
それはもう立派なスパイ行為となるのだ。その情報を他のいじめられている子と共有すれば尚良いかもしれない。

なお、スパイ活動の 7割は合法的に行われている
各種報道や文献、立ち入りが規制されていない場所での活動、外交官としての公の活動。
それらの普通に取得できる情報を積み重ね、分析するだけで、知りたいことの7割はわかるとされる。
故に各国大使館の最も重要な業務は合法的なスパイ活動である、とも言われている。

裏返せば残り3割の諜報は非合法に行われているということでもあるが。


スパイの歴史

スパイの存在はかなり古く、古代にまで遡ることができる。
かの有名な兵法書『孫子』にもスパイ活動についての記述が載っていて、スパイ活動のイロハはもちろん、
この時点で既に「相手スパイを寝返らせる手段」から「2重スパイとしての活用術」まで記されている。
さらに史実での存在はもちろん、神話でもスパイ活動は描かれており、ギリシャの英雄オデュッセウスの「トロイの木馬」はその最も有名な例だろう。

その後中世・近世と続いたあと、近代以降はその重要性がより強く注目され、
「各国でスパイ網を組織化・巨大化させ、諜報活動の展開が行われている」と言われている。
特に第二次世界大戦後の冷戦時代には、世界各地で激しいスパイ活動が行われ、多くのスパイ事件が発覚している。
さらにその状況は、「米ソ二極体制が終わった現在でも変わらない」と判断されている。
実際、公的にも知られる機関としてスパイの機関が運営されており、アメリカのCIAは今や知らない人はいないほどの知名度を持っている。

また、産業が発達してからは産業スパイの存在も大きくなってきており、それを専門に活動し、利益を得る人物も出てきている。


スパイとその活動の特徴

スパイという定義はかなり曖昧で、その存在も多種多様であるが、全てにおいて共通しているのは「相手には歓迎されないこと」だろう。

特に大きな組織のもとで活動するスパイというのは危険を伴う任務(業務)が多く、現代では敵に捕らわれれば犯罪者として刑務所の暮らしを余儀なくされたり、
戦時中だと死刑に成る事も有る。もちろん中には殺されたことすら公にされないままのケースもあり、中世・近世ではむしろ殺されることの方が多かった。
しかしそういった危険な活動内容に反し、給料や恩賞は得てして少ないようである。
また、現代のスパイでは基本的に国家公務員扱いで給料は固定(手当はあるようだが)。
内通者に至っては、報酬が偽札で支払われたりする事もあるらしい。
こういうふうにスパイの給料が少ないのは、成果を公にできないという、スパイ活動の特性に問題があると指摘するものもいる。
(日本の忍者なども同じくもらえる領地は少なかった)

まあそんな感じで対価が少ないのでスパイは不満を持ちやすいという傾向も有り、脱落するものも少なくない。
さらに特殊な訓練を受ける過程で脱落したり、訓練後でも相応の人材が育つとも限らない状態にあって、現代の諜報機関は人員不足なのが現状らしい。
現にイギリスの諜報機関であるSISは、新聞広告などを使って募集を行っているし、積極的にスパイ向けの人員を探し出す「リクルーター」という役割もあるようだ。



現代のスパイ


スパイの分類

現代のスパイは「機関員」(インテリジェンスオフィサー)と「協力者」(エージェント)という2通りの人種が存在する。
映画などでは情報機関員を指して「エージェント」と呼ぶことも多いが、諜報の世界では「エージェント」といえばふつう協力者を指す。
前者の方は他にも「諜報員」や「工作員」など、様々な呼び方がある。

機関員は情報機関の要員であり、それぞれの組織が持つ訓練場(CIAなどではファーム(農場)などと呼ばれる)で特殊な訓練を受けた後、
多くは外交官や駐在武官として海外に赴任する。
外交官として赴任するのは、彼らは逮捕されない、中身を検閲されずに荷物が送れるといった外交特権を持っており、
また大使館の中は治外法権の為、安全に暮らせるだけでなく、暗号で情報を本国とやり取りするなど、諜報活動を行う上でとても便利な場所だからであり、
職務を通じて政治家や官僚といった工作対象に接触しやすいからである。
こうした機関員は「駐在員」と呼ばれ、スパイの中では出世街道を邁進していることの証拠でもあるようだ。

その一方でビジネスマン、ジャーナリスト、学者といった民間人に成りすまして(または本職の民間人が入国後に母国政府から所属機関を通じて指示されて)、
非公式に目標国に潜入する機関員もおり、この種のスパイは「イリーガル」(KGBでの呼び名)「ノンオフィシャルカバー」(CIAでの呼び名)などと呼ばれる。

最後に「協力者」である。彼らは主にスパイ活動対象国の情報に近づきやすい人間が選ばれる場合が多い。
そうして派遣された駐在員などの機関員が、「協力者」として有用な人物を、様々な手段を用い「協力者」として獲得する。
こうして獲得した人員を運営して対象国内にネットワークを構築し、対象国に関する情報収集や働きかけを行うのである。
中には協力者となっていることを自らが自覚していないケースもある。

協力者を獲得する方法は様々で、イデオロギーや民族意識に訴える方法から、相手の汚職などを利用した脅しまで、実に幅広い手段が用いられるようだ。
移民が多い国では、その移民のネットワークを利用する事もあり、イスラエル(ユダヤ人ネットワーク)や中国、インドなどがその最もたる例だろう。


創作物におけるスパイ

小説、映画の影響によって派手な活動が連想されがちであるが、実際のスパイは実に地味な活動をしていることが多い。
特に「007」や「ミッション:インポッシブル」などのイメージから、ドンパチしているような姿を想像しがちだが、
実際はスパイ人生の中で拳銃を使ったことは一度もないという人のほうが多い。
たとえば、戦地において工作活動や非合法の組織作りを担当するのは、往々にして軍の特務機関(アメリカのグリーンベレーやデルタフォースなど)である。

また、希に創作として描かれる“三重スパイ”は、実際にはほとんど存在しないと判断される。
なぜなら、スパイやその組織などは、自らの情報網を敵側に逆利用されない為にと、常に警戒を怠らないからである。


情報収集の手段

●ヒューミント
人間による情報収集。最もオーソドックスで昔ながらの手段。“協力者”の獲得・運用を含む。
ちなみに「ハニートラップ」もこの中の一つである。

●フォトミント
写真撮影による情報収集。

●イミント
フォトミントとは違い、偵察衛星や偵察機による写真偵察のことを指す。イマジントとも。

●シギント
電波や電子信号を傍受する事による情報収集。通信傍受や暗号解読など、近代以降、特に冷戦下で一気に重要性が増した手段だろう。

●マジント
対象の特徴を決定付ける情報。
核爆発やエンジンの周波数から得られる情報の収集や、化学物質の分析から得られる情報の収集などが主で、
簡単に言えば相手のステータスを分析する手段である。

●テキント
技術的な情報収集を総称してテキントという。
テクニカル・インテリジェンスと略さない場合は、特に、外国軍の装備等を入手して調査することから得られる情報の収集のことを指す。
これを元に軍の作戦などが決定されるので、これが上手くいけばいくほど作戦を有利に進められるわけだが、
逆に偽情報を流されたりして相手に利用される可能性もある。

●オープン・ソース・インテリジェンス
一般的なメディアが公開している出版物や活字情報、放送内容の分析。
つまり一般の人でも観覧できるような新聞・テレビ・ラジオなどから情報を分析することで、言ってしまえば「つまらないデスクワーク」である。
映画や小説の影響で勘違いされやすいが、スパイの活動の中では一番多い業務と言われている。

●コリント
利害関係を同じくするインテリジェンス機関が相互に協力すること。つまりは情報の共有である。
たとえばアメリカのCIAがイギリスのSIS(MI6)やイスラエルのモサドに自分の情報を渡して協力することがこれに当たる。

●防諜
外国の諜報活動への対抗策。外国の諜報機関の情報収集。
自らの身を守るための活動であり、対外的な活動を主とする諜報機関においても欠かせない活動の一つである


主な諜報機関


アメリカ合衆国

CIA(中央情報局)
今や誰もが知ってる諜報機関の代表格。創作物での登場頻度も高く、「スパイと言えばCIA」という人もいるのではなかろうか?
原型となったのはWWⅡ中に設立されたOSS(戦略事務局)で、その後いくつかの改変を経て、1947年の国家安全保障法により改組され誕生した。
アメリカのインテリジェンスコミュニティー(様々な情報機関の集合体)では中央に位置する機関で、
CIAの長官は「中央情報長官」としてインテリジェンスコミュニティー全体の長官という位置づけでもある。
アメリカの情報機関の中ではヒューミントを得意とする機関で、対外的な活動が多いという性質上、創作劇に登場することが多い。

冷戦下で最も活動した諜報組織の一つで、ソ連のKGBとは浅からぬ間柄だった。
もちろん今でも活動中だが、ブッシュ政権下から力が衰え始めたようで、2005年までに総員の半数が5年以下の経験しか持たない組織になってしまった。
映画や小説での活躍っぷりが嘘のようである。

ちなみに軍部には属しておらず、機関としてはアメリカ合衆国大統領の直轄である。


●NSA(国家安全保障局)
上述したインテリジェンスコミュニティーの中核組織のひとつであり、ヒューミントを主としたCIAに対し、NSAではシギントを主として用いている。
その組織形態は不明な点が多く、盗聴やハッキングなど、かなり機密性の高い任務をしているのではないかと言われている。

近年エドワード・スノーデンの告発によって明らかになったネット監視プログラム・PRISMを運営しているのもここであり、
同じく監視などの情報収集に使われているシステムエシュロンもここが運営していると言われている。
ちなみにエシュロンに関連すると思しき施設は世界各国に点在していて、日本の青森県にもこのエシュロンに関連が疑われている施設が存在する。

●DIA(国防情報局)
アメリカ軍の情報機関。9.11を防げなかったCIAに代わり、近年重宝されているという。
この組織を参考に、日本では情報本部が設置された。

●FBI(連邦捜査局)
アメリカ全体をまとめあげる警察の延長的存在であるFBIだが、防諜やテロ対策に関するスパイ活動も積極的に行っている。
たまに「CIAとFBIの違いがわからない」という人もいるが、
これはCIAとFBIの一部の活動内容が被っているせいで、創作劇においてはライバル関係として描写されることも多いせいである。
(実際の活動においてもいがみ合うことは多いようだが)


イギリス

●SIS(秘密情報部)
CIAと並ぶ、旧西側国家における諜報機関の代表的存在。SISのほかにMI6という呼称があり、むしろこちらのほうが有名な気がしないでもない。
国内を担当するMI5に対し、こちらでは国外における活動を担当する。CIAとは違い、外務省に属していて、外務副大臣の指揮下にある。
WWⅡから名前が知られ始め、冷戦下ではCIAなどと協力して東側国家と水面下で激しい諜報戦を行った。
かの有名なジェームズ・ボンドが所属しているのもここであり、彼を創出した小説家イアン・フレミングもここで活動し、
その経験を活かして『007』シリーズを生み出している。

●SS(保安局)
通称MI5。上述したようにこちらは国内担当の防諜機関である。
アメリカのFBIに相当する組織であるが、逮捕権は持っていないためスパイやテロリストの逮捕はスコットランドヤードと協力して行う。
MI6が有名すぎてあまり目立たない。


ロシア連邦(ソビエト連邦)

●KGB(ソ連国家保安委員会)
冷戦の水面下において西側諸国の諜報機関と激戦を繰り広げたソ連の諜報機関。
CIAと並ぶ冷戦下の代表的な組織で、CIAとは現実・創作の両方でライバル関係にあたるほどだったが、ソ連崩壊と共に解体されている。
略称のKGBは、ロシア語だと「カーゲーベー」、英語だと「ケージービー」と発音する。
対外活動はもちろん、国内の監視も行っていて、反社会主義の組織・個人を取り締まっていた。まさに社会主義国家ソ連を内外両面から支えた組織と言える。

ちなみに現ロシア大統領のウラジーミル・プーチンもKGB出身の元スパイである。
その後にもKGBの後継組織であるFSB(ロシア連邦保安庁)の長官になったりしている。
その影響からか、現在のFSBはかつてのKGBに戻りつつあるという声もある。


●GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)
ロシア帝国時代から存在する諜報機関で、旧ソ連を経て現在のロシア連邦においても存続している組織である。バットマンっぽいマークが特徴。
KGBに匹敵するほどの巨大組織で、諜報活動のほか、特殊部隊スペツナズの管轄も行っている。

現在の日本ではKGBの影に隠れて知名度は低いものの、
ゾルゲ事件で有名なリヒャルト・ゾルゲがいた組織と言えば、その恐ろしさが少なからずわかるだろうか。

創作物ではよくKGBといがみ合っているが、実際には組織間の軋轢はあまり無かったらしい。


イスラエル

●モサド(イスラエル諜報特務庁)
イスラエルが誇る諜報機関で、世界最強の呼び声も高い、世界有数の対外諜報機関である。
その複雑な対外関係から、その強力な情報網を身につけたといえる。
そのへんの事情はこのあたりの記事を読めば少なからずわかるかもしれない

局員の採用に時間をかける諜報機関の中でも、特に神経を使っていることで知られ、
採用の対象となった人物がスパイとして適格か否かを判断するまで平均3-4年という時間をかけると言われている。

諜報機関として、敵国の情報収集やテロリストの捜索、テロの抑止に務めるほか、
ユダヤ人国家という国家的背景から、逃亡している元ナチス戦犯の捜索も行っている。
また、CIAなどとも協力関係にある。


ドイツ

●ゲシュタポ(ゲハイメ・シュターツポリツァイ)
ナチス期のドイツにおける警察内部に置かれた秘密警察部門。
もとはプロイセン州警察の秘密警察部門に過ぎなかったが、後にヒトラーに掌握され、国家保安本部の中に改組された。

国内の監視を主とした保安・防諜機関であり、スパイの摘発や国内の暴力的監視、およびユダヤ人狩りを行い、
当時のヨーロッパを震撼させた、まさに強権国家ナチス・ドイツを象徴する組織である。

●シュタージ
東ドイツ国家保安省の通称。東ドイツ全土にコミニュケーター(協力者)を置き、国民を監視していた。
諜報機関の中でも特に恐怖の対象とされている。マブラヴの外伝『シュバルツェスマーケン』では、並行世界の東ドイツにおけるシュタージの恐ろしさが描写されている。


日本

●特別高等警察(特高警察、特高)
第二次世界大戦前の日本において、主要な府県の警察部に設置された秘密警察である。
未だ強権的な側面の強かった当時の日本において徹底した国内監視を行っており、スパイはもちろん国民の監視も重要な任務としていた。
各都道府県警察のトップではなく、内務省警保局に直属していたとされる。

日本人らしくかなり緻密な活動をしていたことから、こと戦時中は「銭湯の冗談も筒抜けになる」とまで言われるほどだった。

●陸軍中野学校
戦前に存在した日本軍の諜報員育成機関。
敵性言語である英語も積極的に奨励され、天皇制の是非も議論されていたなど、大戦中に最も自由な空気を体現していたとされる。
出身者は様々な工作を担当し、戦後は公安警察の養成にも関与した。

公安警察
戦後、GHQにより廃止された特高警察のノウハウを受け継ぐために設立された組織。
だが、“公安警察”という呼称はあくまでも俗称であり、
警察庁警備局を筆頭に、警視庁公安部・道府県警察本部警備部・所轄警察署警備課などといった複数の組織から成り立っている複合組織である。

こと海外の諜報活動を防ぐ防諜組織としての任務は外事課が担当しており、テロ抑止や不正輸出や外国人の不法滞在なども取り締まっている。

●サクラ/チヨダ/ゼロ
警察庁警備局警備企画課に属する協力者運営本部の俗称。
オウム事件まではチヨダをコードネームとする極秘組織だったが、週刊誌にすっぱ抜かれ、「存在しない組織であれ」という理念の下「ゼロ」を名乗るようになった。突然、警察庁の名簿から消えるキャリアが秘密裏に"裏理事官"として就任し、ゼロの指揮官として活動する。
最近、『名探偵コナン』にも登場した。

●内閣情報調査室
日本の情報機関における筆頭で、内閣官房の内部組織。米CIAのカウンターパートでもある。
トップの内閣情報官は警察キャリア官僚であり、上述の公安警察の影響力も強い。
基本的には内勤で、実際に工作を担当することはないようだ。

●公安調査庁
法務省の外局。破壊活動防止法の規定に基づき、諜報活動に従事する。
公安警察と違い、逮捕権はないものの、法務省の資金力を使って多くのスパイを金で獲得している。
そのため、公安警察とは縄張りが被り、非常に仲が悪い。しかし、公調は元々内務省調査局を母体としており、皮肉にも公安警察とは源流が同じである。

●防衛省情報本部
日本最大の情報機関。かつては防衛庁情報本部。
冷戦期、極秘に設置された陸幕2課別室を起源とし、米国のDIAを手本に創設された。

忍者
実は忍者も立派なスパイの一つである。代表的な忍者衆は伊賀衆・甲賀衆など。
もともとは農業などで生きていけなかった僻地の土豪などが、生き残りのために諜謀略などを身につけたことが始まりだと言われている。

実際の忍者の任務は、一般的な現代日本人が想像するような城への侵入・暗殺から、戦場での諸工作。
さらには敵組織・軍への潜入、および城下などの視察(城下の様子から敵将の動向を読み取る)が主な内容だったようである。
今で言うスパイと特殊部隊の両方の能力を有していたことになる。
余談だが、忍者の代表的武器「くない」は、単なる武器としてではなく、
壁を登るために使ったり、壁や地面に穴を掘るスコップとして使ったりと、現代のサバイバルナイフに近い武器であった。

こと戦国時代での忍者は様々な武将たちに重用されていたようで、中には戦国武将が当時保護していた能楽や茶道を学び、
その繋がりを利用して諜報活動を行う忍者も多かったようである。実際、能芸者の代表格である世阿弥は「先祖は服部氏」と自称していたらしい。

アニメや漫画で有名なくノ一は、現代に描かれる創作物の中のように男と同じ活動をしていたわけではなく、
けして目立たぬよう、下女や女中として送り込まれ、働きながら普段見聞きする情報を収集したり、
歩き巫女のように巫女に扮し各国を歩き回って情報を仕入れていたようだ。

戦乱の世が終わってからも一部の忍者は生き残ったが、徳川幕府で役人として雇われた伊賀の忍者なども、次第に活躍の場が失われ、
最終的には町のまわり番などの「忍者としてのアイデンティティ」を活かせない仕事に回されていったようである。
そうして明治維新を機に、忍者という役職は歴史から消えることになった。


架空の諜報機関

●公安9課(『攻殻機動隊』)
草薙素子らが在籍する公安9課も、広義での諜報機関に入る。公安警察機関として存在しているため、防諜も任務の一つに入るからである。
多くの武器や電子戦装備を有することから、ある意味では『攻殻機動隊』世界観の中での忍者とも言えるかもしれない。
ちなみに国外担当の公安6課も存在。9課とはその方針の都合上敵対してばかり。

●警視庁公安部公安第5課(『SPEC』)
主人公、当麻沙綾が所属する部署。表のSPECホルダー担当。
超能力者であるSPECホルダー絡みの事件を担当。上記の9課とは関係ない。また、やっていることは公安部というよりは刑事部に似ている。

●警視庁公安部公安0課(『SPEC』)
公安部の秘密部隊。裏のSPECホルダー担当。通称"アグレッサー"。
陸軍中野学校の継承組織で、国会議事堂に本部を置く真の公安。課長は代々同じ顔の人物(パブリック・ドメイン)が就く究極の公務員。
5課と違い、こちらは諜報機関らしく様々な工作を行っている。

●THIRD-i(『BLOODY MONDAY』)
公安調査庁の秘密組織。現実に存在しない調査第三部にあたる。
秘密裏に運営されており、シギント活動だけでなく特殊部隊も擁しているなど、対テロ作戦を想定している。

●防衛庁情報局(福井晴敏の作品)
上述の情報本部を隠れ蓑に運営される諜報機関。Defence Agency Information Serviceの頭文字からDAIS。
防衛庁本庁舎の地下にあることから「市ヶ谷」とも呼ばれる。
福井作品の殆ど全てに登場し、暗躍している。『人類資金』からは「防衛省情報局」に名称が変わった。

●組織名不明(『ニキータ』。2010年開始の米ドラマ版での名称は「ディヴィジョン」)
主人公・ニキータが半強制的にリクルートされる組織。
原作であるリュック・ベッソン監督の映画では名言されていないが、任務内容と後のドラマ版から察するに、
フランスの暗殺任務も担う秘密警察組織と思われる。
2010年米ドラマ版では舞台がアメリカとなっていて、組織名も「ディヴィジョン」に変更されているが、こちらも基本的に任務内容には変わりない。

●アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊(『虐殺器官』)
主人公クラヴィス・シェパードらが所属する機関。
情報軍とは、アメリカ軍は9.11テロの影響から陸軍、海軍、空軍、海兵隊についで設立された軍隊であり、
“i分遣隊”は特殊作戦コマンドの指揮下にある。
特殊作戦任務のみならず諜報活動などの作戦にも投入され、クラヴィス曰く「スパイと特殊部隊のハイブリッド」。
作中ではCIAなどの失態から設立された部隊と書かれており、軍内部でも特に先進的な装備に身を包んでいるようだ。

サイファーポールONE PIECE
主人公チームの敵対組織である世界政府直属の諜報機関。作中では主に「CP」という略称で呼ばれる。
表向きにはCP0から8までの9つの部署に分けられているが、影の組織としてCP9が存在する。
政府に有益な情報の収集や情報操作、海賊革命軍などの反政府勢力の弱体化などが主な仕事。


実在した著名なスパイ

●ウォルフガング・ロッツ
故人。かつてモサドで活躍した伝説的スパイで、後に自らのスパイ活動について記した本を出版しベストセラーとなっている。
冷戦下のイスラエルという複雑な国際情勢を見せる当時のモサドで功績をあげた猛者で、
実際に自らのスパイ活動が遠因となって妻を亡くしているが、出版本における語り口は実に軽妙。
金のために本を書いたことを書内で公言するなど、なかなかユーモラスな内容の本となっている。

●エドワード・スノーデン
元CIA、NSAの局員で、PRISMという検閲システムによる情報収集を告発したことで話題となった。
米司法当局により逮捕命令が出されているが、今のところはロシアに亡命しているようである。


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