トップをねらえ!

登録日:2014/02/15(土) 08:13:56
更新日:2024/03/05 Tue 13:00:18
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イナズマキィーック!



1988年に製作されたOVAシリーズ。全6話。
製作はGAINAXで、庵野秀明がアニメ初総監督を務めた記念すべき作品。

ジャンルとしては
炎の熱血友情ハードSF宇宙科学勇気根性努力
セクシー無敵ロボットスペクタル大河ロマン
「...なんやそれ?」と思うかもしれないが、全て見終わると何一つ間違っていないことがわかるだろう。

同社の前作「王立宇宙軍オネアミスの翼」の興行的失敗を埋めるために製作され、
いわゆるオタクに売るための「美少女」+「スポ根」+「SF」+「ロボット」をごった煮にした作風になっている。
今考えると、現在溢れているライトなSFアニメの元祖ともいうべき作品でもある。

ちなみに、タイトルの由来は「トップガン」+「エースをねらえ!」。
その名に違わず序盤は古典的スポ根・軍隊モノのパロディが展開され、
ロボットがランニングするなどの戯画的な演出が多用されていたが、
後半になるにしたがって作品特有のSF世界観や「ウラシマ効果」を主体とした物理理論、
圧倒的な強さを誇るロボットの戦闘シーン等、ハードなSFアニメとしての側面が強調され、
最終的には王道SF作品として高い評価を得た。

また、監督の趣味のためか東宝や円谷プロの昭和特撮映画・ドラマのオマージュがそこかしこに散りばめられており、
(劇中・主人公の部屋に『惑星大戦争』のポスターまである)
そこも知っているとニヤリと楽しめる仕様となっている。

ちなみに最終回は(一部を覗き)全編モノクロで構成されているが、別にこれは色を塗るのが面倒で手抜きをしたわけではなく、
あくまでも昭和特撮映画を意識した意図的な演出。
むしろ時間も予算も余計にかかっており、セル画に使う塗料やフィルムを調達するのに悪戦苦闘した逸話はファンによく知られている。

当時のOVAとしては比較的低予算で作られた作品であり、田中公平氏が手掛けた音楽も予算を抑えるための工夫が至るところに施されている。
にもかかわらず、その圧倒的な作画技術は多くのアニメファンを魅了した。


【ストーリー】
21世紀初頭、人類は宇宙に進出するようになったが同時に外宇宙の生命体「宇宙怪獣」の攻撃を受け徐々に追い詰められていった。
そんな中、宇宙怪獣の攻撃で全滅した艦隊の提督の娘・タカヤノリコは、父と再会する日を夢見てパイロットを志し、
沖縄のパイロット養成学校・沖縄女子宇宙高校に通っていた。
しかしノリコの操縦技術はてんでダメ。同級生にはバカにされる日々を過ごしていた。
ある日、沖女に新しいコーチ・オオタが赴任しノリコは彼から厳しい訓練を受ける。
そして、パイロットの士官候補生「トップ」が発表された。
一人は学園の「バラの女王」と呼ばれるノリコの憧れの「お姉さま」・アマノカズミ。
そしてもう一人はノリコだった。
それ以来、ノリコは大きな苦難に直面していく。
嫉妬によるいじめ、厳しい特訓、仲間の死、父の乗っていた艦との遭遇…。
数多くの苦難を乗り越え、ノリコはカズミと絆を深め一人前のパイロットとして成長していく。
その一方、ウラシマ効果によって生じる地球の友人たちとの間の時間の隔たり、
そこからくる価値観の齟齬は戦いを続ける毎に大きく開いていく。
人類を守るために命懸けで戦う決意を強める一方で、時の流れに独り取り残されていくことに複雑な思いを抱くノリコ。

そして遂に最後の決戦の時が来る。



【登場人物】
●タカヤノリコ
CV:日髙のり子
主人公。地球帝国宇宙軍提督タカヤユウゾウの娘。
元気で明るい性格で、校庭50週を難なくやり抜くほどのずば抜けた体力とスタミナの持ち主だが、
マシーンの操縦技術がからっきしな落ちこぼれであり、そんな自分に劣等感を抱いている。
宇宙提督の娘という出自ゆえ周囲からは白い目で見られており、父が率いていた艦隊が全滅したことから
「全滅娘」という心ないあだ名で中傷されていた。
更に、落ちこぼれであるにもかかわらず突如としてトップ部隊に候補生としてスカウトされたことで周囲に妬まれて陰湿ないじめに遭うが、
彼女を候補生に選んだオオタコーチとの交流により努力と根性の大切さを知り、以後、訓練に励んで実力を身に着けていく。

作中では明言こそされていないが実は大のアニメ・特撮オタクで、部屋にはポスターでいっぱい。
ラジオドラマなどの派生作品ではバストのサイズをイジられたりしている事が多いが、ぶっちゃけ、どう考えてもグラマーな体型である。

搭乗機:RX-7ナウシカ、バスターマシン1号

●アマノカズミ
CV:佐久間レイ
沖女1のエースパイロット。
「バラの女王」の異名をとるほど優秀な技術を持っており、ノリコら後輩からは「お姉さま」と呼ばれている。
その操縦スキルから学園中の羨望の的だが、実はフィジカルは必ずしも完璧ではなく、
スタミナやパワーを補うために常に妥協なき鍛錬を続ける大の努力家である。(鉄下駄でランニングとか)
ノリコのことを当初から好意的に受け容れるも、内心では頼りないと思っていたが、次第に互いを信頼し合えるパートナーとなっていく。
オオタコーチとは、両親が彼と同級生だった縁から幼少時より知遇があり*1、コーチに想いを寄せている。
しかし、コーチが不治の病に侵されていることを知っており、彼を地上に残したまま宇宙に上がることで時間の隔たりに取り残されたまま、
彼に先立たれてしまうことを何よりも恐れている。

搭乗機:RX-7ジゼル、バスターマシン2号

●オオタコウイチロウ
CV:若本規夫
沖女に新しく赴任してきたコーチ。
グラサンを常に装備した鬼コーチであり、他人にも自分にも厳しい性格だが、生徒のいい所を伸ばせる名指導者でもある。
いじめに遭い孤立していたノリコに、足りないものは「努力と根性」であると諭し、
厳しく指導して一人前のパイロットに鍛え上げていく。

実はノリコの父が率いていたるくしおん艦隊の数少ない生き残りの1人。
不治の病である宇宙放射線病を患っており、提督に救われた命の残りをかけて
対宇宙怪獣殲滅兵器ガンバスターの開発を手掛けると共に、パイロット育成に努めている。
提督を守れなかったことを悔いており、ノリコに対しそのことを申し訳ないと思ってもいた。
そのため、周囲からはノリコをパイロット候補生へのスカウトしたのは提督の娘という立場からの
コネではないのかと疑われることもあったが、本人はきっぱりと否定。
ノリコの中に眠る確かな素質を見出すと共に、それに全てを賭けている。

●ユング・フロイト
CV:川村万梨阿
ソ連出身の士官候補生。宇宙戦闘の天才と称されている*2
勝ち気で負けず嫌いな性格で、ノリコやカズミにライバル意識を燃やしている。
感情の起伏が激しい質で、戦闘や訓練から離れたところでは二重人格レベルでフレンドリーな一面を露わにする。
一方、ラジオドラマではテンプレ的なイヤミ&ツンデレキャラが定着してしまっていた。
惜し気もなく晒せるほどのうらやまけしからんボディの持ち主。
本人曰く、重力下と非重力下では体への影響が違ってくるらしい。

搭乗機:RX-7ミーシャ、シズラー黒

●ヒグチキミコ
CV:渕崎ゆり子
沖女時代のノリコの親友。
落ちこぼれ扱いされていたノリコを励まし、支え続けていた。
しかし、ノリコが宇宙に上がってからは、ウラシマ効果の関係で彼女だけが普通に歳を重ねることとなったため、
結婚して一人娘を設けるなど、徐々に置かれた立場が変わっていってしまう…。

●カシハラレイコ
CV:勝生真沙子
沖女の生徒で、カズミと肩を並べるほどの優等生。
だが士官候補に選ばれなかったことで誰よりもノリコに嫉妬し、嫌がらせを続け、しまいには彼女に一対一の決闘を申し込むに至る。
決闘では半狂乱になってノリコを痛めつけるも惜敗し、我に返って彼女を認めた。
卒業後は沖女の教官に赴任し、のちに校長となった。

●スミス・トーレン
CV:矢尾一樹
アメリカ出身の宇宙パイロット。
ノリコの父に憧れてパイロットとなったため、娘のノリコを気遣っている。
カズミにコンビ解消を言い渡されて意気消沈していた彼女を励まし、新たにコンビを組むことを持ちかける。
ボーイフレンドとしてちょっといい雰囲気になりかけるも、共に挑んだ初の戦いで、気後れして何もできずにいるノリコを残したまま消息不明となり、
未帰還となってしまう。

彼の死はノリコの心に深い傷を残し、戦場への恐怖心を植え付けてしまう。


●タシロタツミ
CV:大木民夫
ヱクセリヲンの艦長。
優れた戦術と部下を思いやる心を持つ名指揮官。
口癖は「なんてこった!」

●副長
CV:西村知道
エクセリヲンの副長でタシロの片腕的存在。
名前すら設定されていないにもかかわらずレギュラーキャラとして安定して出番があり、要所要所で確かな存在感を見せる。
後年、「フクチヨウ」といういかにも取って付けたような本名が新たに設定された。



【登場機体】
◆マシーン兵器・RX-7
一人乗りの怪獣対戦用大型人型機動兵器。いわゆる量産機である。
ロッドや槍などが主な武器(プラズマ・ビアンキという呼称がある)。
大抵のパイロットはこれを操縦できなければならない。
宇宙怪獣への主力対抗兵器として開発されたものの、想像以上に強大な宇宙怪獣との圧倒的戦力際に大敗を喫し、
トップ部隊全滅という惨状を経てバスターシリーズに主力の座を明け渡すこととなった。

ちなみにノリコ機は「ナウシカ」と命名されているが、まさかこの時はノリコの中の人や庵野監督がジブリ映画でメインキャストに選ばれたり、庵野監督がナウシカのスピンオフ作品を制作することになるとは思わなかっただろう。


◆バスターマシン1号・2号
ヱクセリヲン内で建造されていた高機動宇宙戦艦。
RX-7に代わる対宇宙怪獣戦の主戦力として開発されていた。
二体が合体して人型兵器『ガンバスター』となる。
詳しくは『バスターマシン』の項目を参照。

◆シズラー
ガンバスターの量産型。黒・白・銀の三種類が存在する。



【登場戦艦】
◆るくしおん
タカヤ提督が搭乗していた戦艦。人類初の光速航行が可能。
宇宙怪獣の攻撃を受け轟沈し、放棄された後亜光速で無人のまま飛行している。

◆ヱクセリヲン
全長7㎞にも及ぶ超弩級戦艦。
対宇宙怪獣用に作られ、武装も充実している。
巨大な分、乗組員の居住スペースも充実しており、中には電車や娯楽施設すらあるほど。
最終的には、熾烈な戦闘を経てボロボロになってしまった&既に旧式化していたことからブラックホール爆弾の素体に選ばれ、本懐を遂げて宇宙の塵と消えた。
なお、最終話では「スーパーヱクセリヲン」なる後継機が名前だけ言及されているが、それでも歯が立たないほど宇宙怪獣は強力化してしまっていたらしい。

◆ヱルトリウム
最終話に登場。地球脱出用に建造された全長70㎞の超大型宇宙船。
銀河中心殴り込み艦隊の旗艦として活躍した。


【用語集】
●縮退炉
重力崩壊を利用した動力機関。
これによりワープ航行や人工重力・慣性制御が可能になった。

●エーテル理論
高次元空間理論により「宇宙空間は真空ではなく、エーテルで満たされている」とする考え方。
これにより宇宙空間でも流体力学の法則が成り立ち、アニメ的演出でも違和感がなくなる。

●イナーシャルキャンセラー
慣性消去システム。ワープ航行直後の衝撃をなくすために用いられる。
ガンバスターはこれを利用し宇宙怪獣を止めた。

●宇宙怪獣
銀河系の中心に巣食っている人類の天敵たる生命体。
深海魚やクトゥルフ神話に出てくる化け物のような見た目をしており、特撮ヒーロー番組に出てくるような“怪獣”っぽい姿はしていない(ラジオドラマに出てきたギドドンガスやドレコング等はその限りではないのかもしれないが)。
恒星に卵を産み付け文明を徹底的に破壊し侵攻を続けている。
人類の文明そのものの破壊を目的としており、いわば人類と言うバクテリアを駆除する銀河系の免疫抗体と称されている。

●バスターマシン
対宇宙怪獣用の決戦兵器。縮退炉を動力源としている。

●銀河中心殴り込み艦隊
宇宙怪獣殲滅戦「カルネアデス計画」で中心となる特別艦隊。
旗艦はヱルトリウム、他ヱクセリヲン級で構成される。

●ウラシマ効果
「浦島太郎」が語源となった、光速航行をする物体の時間の経ち方は周囲に比べ遅くなるという現象。
これにより、ヱクセリヲンで1年間活動してから地球に戻ると現地では10年の月日が経過していることになる。













最後の決戦で、超巨大ブラックホール爆弾「バスターマシン3号」を作動させるために内部へと潜航するガンバスター。

それはもう今の仲間たちと同じ時間を過ごせない事を意味していた。

それでもノリコとカズミは行く。必ず帰るため。



…じゃあね、ユング

さよならは言わないわ。行ってきます



行ってらっしゃい、ノリコ、カズミ…




帰ってきたら…

「おかえりなさい」って言ってあげるわ…















そして1万2千年後―――













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最終更新:2024年03月05日 13:00

*1 小説「トップをねらえ!魂」より

*2 余談だが、彼女はスーパーロボット大戦シリーズで「天才」の特殊技能を初めて付与されたキャラでもある。