ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒

登録日:2010/05/14 Fri 20:48:53
更新日:2024/04/16 Tue 15:54:09
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 ゜



 GIII 






1999年3月に公開された怪獣映画。平成ガメラシリーズの第3作目、前2作を受けての完結編として製作された。監督は前2作と同じ金子修介。
脚本は伊藤和典と金子修介の二人。

怪獣映画のタブーとも言える「正義の怪獣の戦いに人は巻き込まれていないのか?」「たとえ悪の怪獣を倒しても、そのための人の死は許されるのか?」という題材に踏み込んだハードすぎる演出が最大の特徴。
激闘の巻き添えを喰らい、容赦なく吹き飛ばされ、踏みつぶされていく人々の描写に背筋が凍る思いをした観客も少なくなかっただろう。
ここに、第一作から続く古代文明、第二作からのマナ理論に加え、古代日本や易教、少年少女の心中など、様々な要素を追加していったため、作風は第一作~第二作のそれと比較しても大きく変わっている。
しかし詰め込みすぎ・説明不足という問題もあり、冒頭の「ガメラの墓場」など登場したが回収されなかった伏線も結構多い。
ラストも、タイトルロゴの下側にしれっと書かれている「INCOMPLETE STRUGGLE」が示す通り、端的に言えば俺たちの戦いはこれからだEND。
このため、どうしてもシナリオを受け入れられないというファンもそれなりに存在する。
陰惨かつグロテスクな描写も多く、一般受けのする内容ではなかったこともあり、観客動員100万人、配給収入6億円と、成績では前作よりもやや低下してしまった。
四ヶ月前に公開された「モスラ3 キングギドラ来襲」の配給収入も8.5億と低下傾向にあったがそれにも及ばず、結果としてこの成績下降が決定打となりシリーズは打ち切りとなった。
(もし収入が10億円を超えていれば、4作から5作まで行けたらしい)

しかし、映像面のクオリティはとても制作費5憶円とは思えない素晴らしいもの
近畿上空戦などのCG、京都駅コンコースなどのミニチュアワーク、各シーンの合成などは、アナログ特撮の最高峰クラスといっても過言ではない。
シナリオ面も若干消化不良のケがあるとはいえ、決して駄作・迷作と断じられるほどの酷い出来ではなく、ハマる人はハマる。
総合的に見れば「国内特撮の最高傑作」と評価する声もあり、特撮ファンならば一見の価値ありな作品。

単品で観ても一応楽しめるが、従来作の総決算という面も大きいため、できれば第一作は観ておきたい所。



□ストーリー
1999年……赤道付近
鳥類学者の長峰真弓はジャングルの村を訪れていた。到着した長峰が見たのはギャオスの幼体の死体だった。

時を同じくして日本最南端、沖乃鳥島……
深海調査艇「しんかい」が海底調査を行っていた。
スタッフが海底の不思議な隆起に気付き、カメラの感度を上げるとそこには無数のガメラの骨が横たわっていた。スタッフの一人が呟く……

「ガメラの墓場……!」


4年前の東京でのガメラによって両親を亡くした少女、「比良坂 綾奈」と弟の悟は奈良県・南明日香村の親類に引き取られていた。
しかし、綾奈は来たり者としてイジメられていた。

ある日、綾奈は古くから伝わる社の洞窟から妖怪「柳星張」を封印したという石を取ってくるよう命令される。洞窟内で綾奈は亀の甲羅のような石を見つける。
まもなく社の管理人「守部家」の少年、「守部 龍成」が駆けつけるがすでに石は取られてしまっていた。
龍成は綾奈と共に石を戻しに洞窟に入るが、そこで封印の解かれた「卵」を見る。

金曜日、長峰は政府の「巨大生物被害災害審議会」に参加していた。
審議会にて長峰は「朝倉 美都」という妖しげな女性に話しかけられる。


金曜の19:30、多くの人々溢れる渋谷。
突如、渋谷駅に焔に包まれたギャオスが落下、同時にガメラも飛来する。ガメラは人々を踏み潰しながらギャオスに迫り、人々もろとも焼き払う。
そこにもう一匹のギャオスが現れる。ガメラの無差別攻撃でギャオスは倒されるも渋谷中心部は焦土と化し、数万人もの犠牲者を出す大惨事となる。

同時に南明日香の洞窟で「邪神」が産声を上げた……


□主な人物
  • 長峰 真弓
4年前のギャオス発見からずっとその生態を追い続けている。
ギャオスの大量発生の謎を探る。

  • 草薙 浅黄
ガメラのことを知りたくてアメリカに留学していたが、再び日本へ帰ってきた。
割れてしまった勾玉を今も大事にしている。

  • 比良坂 綾奈
ガメラによって両親を殺された中学生の少女。その為ガメラに強い憎しみを持っている。
社の洞窟内で黒い勾玉を拾い、それを身に付けている

  • 比良坂 悟
綾奈の弟。戦場カメラマンだった父のカメラを大事に持っている。

  • 守部 龍成
「柳星張」の見張り番「守部家」の長男。綾奈とはクラスメートである。
密かに綾奈に恋心を抱いている。

  • 守部 美雪
龍成の妹。正義感が強くイジメのことを兄に伝えた。
ちなみに本編ではイリスによる村の壊滅後は登場しないが、未公開シーンでは警察からの調査に答えており、生存している。

  • 大迫 力
元長崎県警警部補であり、元サッポロビール工場警備員
怪獣に翻弄され続けた数奇なおっちゃん。今回は渋谷でホームレスになっていたところへ……

  • 朝倉 美都
内閣情報調査会所属で巨大生物被害災害審議会メンバーであり、日本の根幹に関わる位置にいると噂される女性。

  • 倉田 真也
推測統計学と風水をモチーフにしたゲームで一躍有名となったゲーム作家。現在行方不明。

  • 斉藤 雅昭
環境庁審議官で巨大生物被害災害審議会のメンバー。第一作以来の登場。
渋谷の惨劇で世間の流れがガメラ排除になるも、かつてとは違い疑問を持っている。
中盤ではせめてできる最大限の協力として、朝倉美都が比良坂綾奈を連れ去り怪しげな呪術をしていた場所を長峰真弓に伝えた。

  • 和美
  • 早苗
  • 夏子
綾奈の同級生であるJC3人組。
揃いも揃って典型的なイジメっ子であり、綾奈と悟がよそ者だからという理由だけで日頃からイジメを行なっていた。
しかし、その一方では龍成がイジメを止めに現われた時にはすぐに逃げ出す等、所詮は自分より弱い者にしか強がれない小悪党である。
ぶっちゃけイリスが誕生した元凶と言える。
実は彼女達の末路については直接描写されておらず、生死不明。
イリス襲撃時の被害者は「男性11・女性16の総計27人、集落の約半数に相当する」とのことで、生存者がいることは示されている。

  • キャンプ場のカップルの女
一瞬だけ登場するちょい役であり、イリスに体液を吸い取られミイラになった。
演じたのは若き日の仲間由紀恵。
因みに良く無名時代の出演と言われるが当時既にドラマやCMに出演、歌手としても活動しており、それなりに知名度があったため誤りである。 


□怪獣
よりシャープで戦闘的に進化し、もはやギャオスと戦うだけの生物兵器と化した。
G1にてギャオスとの交戦中、綾奈の両親を巻き添えにしていた…
しかし、綾奈と龍成を生き返らせた可能性がある(前作や前々作でも、人間の傷を一瞬で治したり、炭化しても生き返ったりしていた)。

レギオンを倒す為にガメラが大量のマナ(地球自体の持つ秩序維持力みたいなもの)を使ったため大量発生した。体色が紫に変化した。

かつて「柳星張」と呼ばれた魔物。4本の触手を持つ。
怪獣特撮史上屈指の外道怪獣。

  • トラウマガメラ
比良坂綾奈の夢の中で、繰り返し現れては家族を殺していたガメラ……の幻影。
最初は爆煙の向こう側にいて姿が見えなかったが、終盤で守部龍成の剣が顔をかすめた際に真相に気付き始めた彼女がイリスに取り込まれたあとに見たその姿は、目が白濁化して腐乱死体のようになった、現実のガメラとは似ても似つかない姿だった。
もともとのガメラの憎悪に加えてイリスによる精神干渉の結果、非現実的なほどに憎悪した結果の産物だという(綾奈はイリスと融合しかけた際、脳の海馬体を肥大化させられている)。
ちなみに造形物は第二作のガメラの改造品とのこと。

  • ギャオス
上記のギャオスハイパーではなく、第一作に登場したギャオス。
トラウマガメラを本当に視た直後の綾奈が振り向いた先にいた怪物。ずっとガメラだけを見ていた彼女には、周囲でなにが起こっていたのか気付いていなかったのだ。
トラウマガメラとは逆に、第一作の映像そのもので登場しており、現実ではなかったトラウマガメラに対してギャオスこそが真実であることを示した。



□余談
  • 第1作目の時点で、ガメラとギャオスのデザインには古代中国の文化が活かされていたが、今作で四神の伝承が登場した事で中国文化に根付いた怪獣とも言えるだろうか。

  • 本作は『劇場版デジモンアドベンチャー』と同日に公開されたが、本作のプロデューサーは細田守監督による同作を高く評価しつつ、樋口監督に「このような映画を作らなきゃダメだ」と述べていた様子。

  • 初期の脚本では「綾奈と龍成の恋愛にガメラが関わる」という程度ものだったらしい。

  • 実際には京都駅には大きさ的にガメラとイリスは収まらず、よくファンの間でネタにされている。
    • ちなみに本作とタイアップしたビル経営ゲーム『The TowerⅡ』のプラグインマップ「京都駅ビル GⅢ」ではちゃんと双方の設定に準じたサイズ(つまり2匹揃って天井をぶち抜いて死闘を繰り広げる)で描写されている。保険に入っていれば保険金がおり、修理も可能。『空想法律読本』の出張版でゴジラ・ガメラレベルの怪獣災害だと逆に保険金おりないんじゃないかって考察されてたけどね!

  • 当初の脚本では陸上自衛隊の一個連隊(約1万人)がイリス一体に壊滅させられるというものだったが、陸自側が「相手が怪獣とはいえこの戦力で負けるというのはちょっと……」という意見が出たために打ち合わせをしたところ、「一個小隊(約30人)だったら負けても仕方ないかな」という方向で話がまとまった。それはそれで戦力の逐次投入というやつでは?

  • メイキングビデオ『GAMERA1999』が庵野秀明氏により制作されている。見る限り、スタッフ内でもドラマ重視派と特撮重視派の内紛があったらしい。

  • 京都は5年ほど前にもゴジラの襲撃を受けている
    ただ、当時はあの特徴的な駅ビルがなく(1997年完成のため)、それもあってかゴジラは京都駅を微妙に素通りしていた。
    逆に、5年前のゴジラは京都タワーを破壊していったが、本作では京都タワーは無視されている。

  • 公開後VHSがリリース、レンタルの開始がされたのがこのビデオ、本編前のCMが『リング2』、『死国』、『富江』、『ノストラダムス滅亡録』とホラー4連発となっており、視聴者達を本編以上に怖がらせるものとなっている。怪獣が好きなだけで借りたちびっ子なんかはトラウマ不可避である。
    当時はJホラーブームが到来していたことや本作の怪奇色・視聴層によるものなのだろうが……(一方で「ノストラダムス滅亡録」のCMには当時のガメラファンの誰もが「あれ?」となったはず。)





 ANIOTA 1999 

The Absolute Editor of The Universe.




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最終更新:2024年04月16日 15:54