ガメラ2 レギオン襲来

登録日:2010/01/11 Mon 16:55:45
更新日:2024/04/16 Tue 15:53:32
所要時間:約 10 分で読めます






G A M E R A 2


______
_______
_______
______
______
______



advent of legion



◇概要


1996年7月13日に東宝洋画系にて公開された日本の怪獣映画。
ガメラシリーズ平成三部作の第2作。
監督は前作と同じく金子修介。

前作で培った特撮技術を更に昇華させた傑作であり、1996年第17回日本SF大賞受賞、更に1997年第28回星雲賞映画演劇部門・メディア部門賞受賞作品。特に日本SF大賞は特撮映画として初の快挙であり、本作の科学的考察の高さを如実に示している。
日本テレビやNTT、サッポロビール、前作に続いて自衛隊の全面協力でリアリティ溢れる作風は健在。

今作からCGが本格的に導入され、飛び立つガメラやマザーレギオン、群がるソルジャーレギオンなどは全てCGで描写された。
軍事的な要素が満載で、主人公が自衛隊員、レギオン全体を「見えない軍隊」と称したり、核爆発を思わせるプラントの種子打ち上げなどは分かりやすいが、これは監督が本作をパニック映画、戦争映画にしたいと思ったから。
レギオンは聖書の悪霊から付けられた名前だが、オープニングで十字架が焼かれてガメラの「メ」になるなど聖書を意識している箇所もある。

主題歌はウルフルズの『そら』。
多大なる犠牲を払ってようやく平和を取り戻したエンディングでの「ありがとう」から始まる歌詞や、ガメラ復活の助力となった子ども達の歌声も挿入された名曲。

観客動員は120万人、配給収入は7億円。
前作の観客動員数90万・配給収入5.2億円を上回ることができた。
とはいえ当初の目標だった10億円には及ばず、またゴジラの後を継いだ同年公開の『モスラ』(配給収入11.5億)との差はやはり大きかった。
結果として、翌年の製作にはストップが掛かり、次回作の公開は三年後となった。


◇あらすじ


ガメラギャオスが戦ってから1年後の冬。

太平洋から北海道周辺にかけて無数の流星が降り注ぎ、その内の一つが支笏湖の南西約1キロ、恵庭岳近くに落下した。
直ちに陸上自衛隊が出動し、大宮化学学校からも渡良瀬二等陸佐や花谷一等陸尉たちが調査に向かった。

しかし隕石本体は発見できず、更にまるで制動がかかったような痕跡が発見される。

数日後、支笏湖方面に緑色のオーロラという異常現象が発生。
北海道青少年科学館学芸員の穂波と館長の野尻は支笏湖に調査に行くが電磁波によるエンジントラブルで車が立ち往生してしまい、近くにいた渡良瀬たちに助けてもらう。
隕石消滅に対し、穂波は「隕石は自分で移動したのでは?」と指摘。

三日後、ビール工場からビール瓶だけが消滅する怪事件が起こる。
ビール工場の警備員は「蟹や虫に似た化け物」を目撃したと言う。

そして怪事件の痕跡は次第に支笏湖方面から札幌市に近づいていた……


地下鉄に巣食う謎の異生物群、ビルを突き破る超巨大な植物の発芽、都市一帯全てを巻き込む電波障害、爆発的な酸素の発生…

それらが一つに繋がった時、人類そしてガメラの新たなる敵達が姿を現した。



◇登場人物


●主要人物

  • 渡良瀬 佑介(演:永島敏行)
本作の主人公。大宮化学学校二等陸佐。隕石の落下現場に派遣され、そのまま事件の調査をすることに。
温厚な人柄だが、独断で部下を招集して地下の調査を行う、酸素を爆発的に増加させるレギオンに対して殲滅戦を提唱するなど熱い人柄。
「タガが外れていようが腐っていようが、それを守るのが私たちの仕事です」

  • 穂波 碧(演:水野美紀)
本作のヒロイン。札幌市青少年科学館学芸員。偶然出会った渡良瀬に隕石が動いた可能性を示唆し、それが縁となって共にレギオンの調査をする。
学芸員とは思えないほど生物学に詳しいが、多分館長の影響。
私室には前作のヒロインの著書『怪鳥と遭遇した日』が置いてある。酒の隠し場所はゲド戦記の裏。
「渡良瀬さん、ご無事で……」

  • 花谷(演:石橋 保)
大宮科学学校ニ等陸尉。イケメン。物事を神話等に例える癖があり、夥しい数の群体へ聖書の一節をなぞったところ、それがレギオンの命名に繋がった。渡良瀬とは軽口を叩きあう仲。帯津とは本州へ連れてくる時に仲良くなったらしく、死亡フラグを口にしたが…
「酒の神バッカスは、中身を飲まずしてガラスの科学分解をなさったようです」

  • 帯津(演:吹越 満)
NTT北海道のエンジニアで穂波の知り合い。成り行きで渡良瀬達に協力する。
大人しめな性格だが、防衛線では彼の機転がガメラを救った。
「『何か分かる』って……何……?」

  • 草薙 浅黄(演:藤谷文子)
前作でガメラと心を通わせた女子高生。友達とスキーに行った先で今回の事件に巻き込まれる。
ガメラと交信できなくなっているが心は通じ合っており、後半のキーパーソンとして活躍した。
「ガメラはレギオンを許さないから……!」

  • 大迫 力(演:螢 雪次朗)
前作は長崎県警の刑事。「死ぬほど恐ろしい目」に遭って辞職し、酪農家に憧れて北海道へ。
しかし、思いのほか酪農家はキツく結局ビール工場の警備員に……
とことん不運なオッサン。
「おいには分からん……わぁあぁぁぁっ!!!!!」

  • 野尻 明雄(演:川津祐介)
札幌市青少年科学館所長。緑色のオーロラの発生原因を考察したり日本書紀の記述を覚えていたりとやけに知識が優れてる。英語にも強いが、パソコンには弱かった。
今回は恐竜の卵は発見しない
「『私たちがガメラについて知っている二、三の事柄……』 あれっ!? ん!? おっ! おい!!??」


●自衛隊の皆さん

今作の主役といっても過言ではない、日本を守る人々。
彼らがいなければガメラは勝てなかった。

  • 坂東(演:辻 萬長)
防衛拠点・戦闘指揮所師団長。的確な判断で各所に指示を送る。当初はガメラに対し援護を拒むが、レギオンを止めようとするガメラに対して、遂に援護を決断した。
「火力をレギオンの頭部に集中し、ガメラを援護せよ!」

  • 大野(演:渡辺裕之)
防衛拠点・戦闘指揮所第三部長。前作からの続投。坂東の指示で飛行支援を要請した。
ガメラ援護の命令を受けた時の表情に注目してみよう。
「了解!」

  • 笹井(演:沖田浩之)
第11師団化学防護小隊・小隊長。落下した隕石の回収作業を得て渡良瀬に協力した。
「草体に花が咲きました」

  • 都築(演:小林昭二)
航空自衛隊・第3空団武器小隊の専任空曹。
たった1シーンのみの所謂モブ役。だが、圧倒的なインパクトと心に染みる言葉を残してくれた。
「昔、子供のわしらは火の中を逃げまわった……怖くて怖くて、今でも夢に見る。今度は絶対に守ろうや

  • 滝沢(演:高杉俊介)
戦車大隊・砲班長。レギオンとの闘いに向かう部下との会話は必見。
「怖いか?」
「…はい」
「いざとなったら、逃げればいい」
「…?」
なお演者はリアルに自衛隊OBだったりする。

●その他

  • NTT名崎送信所の職員(演:ラサール石井)
最終防衛ラインから一番近い送信所で夜勤勤務していた所、帯津から無茶振りされて散々な目に合う。
「バカヤロー! こんなこと命がいくつあっても足りねえよ!」

  • 子どもたち
仙台市で仮死状態のガメラを見に来ていた地元の子達。
その中で泣いていたのは前田亜季だったりする。


◇怪獣


地球の守護獣。前作よりもスマートにいかつくなった。場面毎に目玉を変えているため、表情の機微が豊か。
今回は飛行時に手をヒレ状にする高機動形態を習得している。
休眠期間を経て大幅にパワーアップしているものの、圧倒的なレギオンの繁殖サイクルの前には連戦連敗、一度は仮死状態にまで追い込まれる。
しかし、何度倒れても立ち上がりレギオンを止めようとするその姿は、自衛隊の心を動かすに至った。

隕石に乗って宇宙から来たシリコン装甲の巨大怪獣。突起だらけの禍々しくも完成された姿は未だに評価が高い。
ガメラを圧倒する巨体を持ち、高出力マイクロ波ビームで周囲を薙ぎ払い、鋭い腕にガメラを軽々と引き倒す怪力を有する。
更にソルジャーレギオンを生産・操作する能力で小回りも完備。
外骨格はとてつもなく堅く、マイクロ波のバリアを張ってミサイルの軌道を狂わせ、ガメラ必殺のプラズマ火球すら中和・無効化してしまう。
多数の武器と鉄壁の守りの要塞のような印象を受ける、ガメラシリーズでも最強クラスの大怪獣。

  • ソルジャーレギオン
マザーから産み出される人ぐらいの大きさのレギオン。
初登場時にかなりの人に地下鉄に対するトラウマを植え付けた。
所謂働きアリなのだが、圧倒的な数で包囲・攻撃してガメラすら倒す数の暴力で人類を恐怖に陥れる。
高速で飛行することもできるので隙がない。

  • 草体
レギオンと共生している巨大な植物生命体。ホウセンカのように種を飛ばすが規模が桁違い。
一発の発射で半径数キロを完全に吹き飛ばし、クレーターにする。
しかも、成長時に酸素を大量に放出し大気の酸素濃度すら変えてしまうため、放って置けば地球の生態系を破滅させる超危険生物。



◇余談


DVDのパケなどでは「assault of the legion」表記になっている。

本作公開から3か月後にスタートした『水曜どうでしょう』の出演者が登場している。
鈴井貴之が札幌市職員役で、鈴井が営む芸能事務所「CREATIVE OFFICE CUE」所属の大泉洋が地下鉄乗客役・安田顕が隕石落下の急報を伝える自衛隊員役でそれぞれ出演している。

ただし大泉は、鈴井のミスによってエンドロールに名前がない。また地下鉄の乗客の為殺害された可能性も高い。

「水曜どうでしょう」の予告はこの作品の予告映像のオマージュである。一度は見てほしい*1


また「内閣官房長官」役で徳間書店&大映トップの徳間康快が、日テレとのタイアップで『ズームイン!!朝!』司会者等が出演し、エキストラクレジットには石川英郎の名も記されている。

前作でヒロインの長峰真弓を演じた中山忍は、本作の製作を聞き監督である金子氏に出演への熱い思いを込めた長文の手紙を送った。
金子氏はその手紙に感動したそうだが、「レギオンは宇宙怪獣なので鳥類学者を出演させる理由がない」として本格的な出演は見送られ、
長峰の著書『怪鳥と遭遇した日』に掲載された長峰の写真という形で出演している。


実は当初2作目の制作で、対戦怪獣として候補に挙がっていたのは初めてガメラと戦ったバルゴンや包丁頭こと「大悪獣・ギロン」だった。


撮影には陸上自衛隊が全面協力した。


VHSは(当然だが)公開後全国のビデオ屋でレンタルされていたのだが、本編前のビデオCMが怪奇ドラマ「アメリカン・ゴシック」、血みどろ描写もあるサイコスリラー「女彫刻家」とお子様はもちろん人によってはソルジャーレギオンどころのトラウマじゃない内容となっている。
本作が子供のみをターゲットした内容ではないとはいえどうしてこうなったのか...。(なお次回作の「ガメラ3」のVHSではさらに拍車がかかっており...)

一応全部が全部怖いCMというわけではなく、「ガメラ2」の特典付きLDBOXのCMもあるのだが、こっちはこっちで別の意味で酷い
誤解無きよう断っておくが、別にLDBOXそのものが商品として酷いワケではない。
LDは当時の家庭用メディアでは文句なしの最高画質であるし、特典も金子修介・樋口真嗣両監督のオーディオコメンタリーやガメラが写っている映画用35ミリフィルムの一部など豪華絢爛。
では何が酷いのかと言うと、本編前のCMだというのにCMの内容が本編の名シーンの繋ぎ合わせで、ネタバレしまくっていることである
終盤のガメラのとどめの必殺技のシーンから始まる上に、なんとラストシーンまで入っている有様。
CMは「ガメラ2 レギオン襲来……ここに極まる」という売り文句で〆られるが、たかだか30秒のCMで極まらせてんじゃねぇとツッコみたくなること請け合いである


本作の印象的なシーンの一つである仙台の街が爆発に巻き込まれていくカットだが、1999年にリリースされた同じ大映の低予算のSFホラービデオ映画である「ノストラダムス滅亡録 遺伝子の新世紀」のラストで核戦争によって都市が壊滅するシーンにその仙台爆発のカットがほぼそのまま使用されている。(もちろんエンドクレジットにも映像提供として「ガメラ2」のタイトルが記されている)「ガメラ3」のVHSに予告が入っていたので当時レンタルしてデジャヴを感じた人は結構いたのではないだろうか。ちなみにその「ノストラダムス滅亡録」には本作で札幌の現地レポーターを演じた小松みゆきが主演で出ていたり「ガメラ3」で美術助手を務めた大庭勇人が美術を担当していたりする。


本作では仙台が消滅したが、その場所の選定までには紆余曲折あったらしい。
というのも、レギオンが北海道から関東方面に向かうという流れがあり、その間に東北のどこかでガメラと一戦を交える…という展開が計画されていたのだが、当初予定では山形のスキー場だった*2
スキー場のロープウェイを使った撮影になるはずが、特技監督の樋口真嗣氏が幼い頃スキーで骨折してトラウマがあった為撮影上問題が発生すると判断した為ボツに。
続いて会津は鶴ヶ城をぶっ壊すことにしようと視察に訪れたのだが、思ったより城がショb…小さk……もとい、特撮映画には適さなかったのでボツに。
最終的に寄った仙台をスタッフが笹かまの看板出して適当に街並み作ればそれっぽくなるから大都会で壊しがいがあるからといたく気に入り、トントン拍子で決まった…とのこと。






______
______
______
______
______
______



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 日本SF大賞
  • 傑作
  • すすきの
  • 隕石
  • 戦争映画
  • 共闘
  • トラウマ
  • 地下鉄
  • ありがとう
  • そら
  • ウルフルズ
  • ガメラ
  • レギオン
  • 怪獣
  • 映画
  • 特撮
  • 軍事
  • ガメラ2 レギオン襲来
  • 星雲賞
  • 金子修介
  • 樋口真嗣
  • 水曜どうでしょう
  • 地下鉄
  • 地球外生物
  • 強敵
  • 電磁波
  • 最終防衛線
  • 殲滅戦
  • 生態系破壊
  • 侵略
  • 自衛隊がかっこいい映画
  • 敬礼(`・ω・´ゞ
  • 北海道
  • 宮城県
  • 仙台消滅
  • 栃木県
  • 群馬県
  • 埼玉県
  • 怪獣映画
  • 名作
  • 自衛隊の本気
  • 伊藤和典
  • 巨影都市
  • ガメラシリーズ
  • 神BGM

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月16日 15:53

*1 ちなみにレギュラー放送時・再放送版は本当にガメラ映画で使われたBGMを流用していたが、2008年以降のDVD版や2010年以降の新作ではオリ曲に変更されている。

*2 脚本の伊藤和典氏が山形出身の為だとか