ア・バオア・クー(機動戦士ガンダム)

登録日:2011/12/31 Sat 11:21:13
更新日:2024/01/01 Mon 02:02:41
所要時間:約 5 分で読めます





「私は、ア・バオア・クーで指揮を執ります!
ま……勝って見せますよ。そのうえで、真のニュータイプの開花を待ちましょう……
ヒットラーの尻尾の戦いをご覧ください」




ア・バオア・クーとは、機動戦士ガンダムに登場するジオン軍の宇宙要塞である。
名前の由来は「千夜一夜物語」に登場する魔物「ア・バオア・クゥー」から。青葉区ではない。

アステロイド・ベルトに浮かんでいた小惑星を資源目的で地球圏へと運び、それを要塞に改装したという経歴を持つ。
傘ともキノコとも見て取れる外観が特徴で、要塞の上部と下部を構成する二つの小惑星を繋ぐ接続部が脆弱となっているが、言い方を変えればそこに向かう敵部隊に対して火線を集中させやすくもなっている。また、内部には工廠が存在し末期には生産拠点としても運用された。
立地的にはソロモン、グラナダと共にサイド3本国防衛ラインの一角であり、その中でも本国に一番近いが為に最重要拠点でもあった。

その為ジオンも強固な防衛体制を執っており、連邦軍は当初本要塞をスルーして直接サイド3に侵攻する予定だった。
しかし、連邦軍の集結地点ゲル・ドルバに撃ち込まれたコロニーレーザー「ソーラ・レイ」によって、連邦側の総大将レビル将軍諸共連邦艦隊の約30%以上が失われてしまう。
(この時、独断で連邦と和平交渉に向かっていたジオン公国公王デギン・ソド・ザビも艦やクルーもろとも同時に死亡)

これにより戦術の変更を余儀なくされた連邦艦隊は、急遽目先の脅威であるア・バオア・クーの攻略を決定。
時に宇宙世紀0079年12月31日08:10、こうして一年戦争最後の戦いの火蓋は切られるのであった……。



●連邦側戦力
戦艦18隻
巡洋艦98隻
MS約4800機(ボール等も含む)
輸送艦84隻
パブリク110隻

ソーラ・レイの打撃で大きく戦力を減じ、司令部も壊滅、切り札ソーラ・システムも失うなど、戦う前からかなりの被害を受けてしまう。
数においてはそれでも敵より互角以上だったが、要塞攻略戦である点を踏まえると必要十分とは言い難く(実際、作戦説明の際にミライが「いかにも戦力不足ね」とこぼしている)
主力のジム・シリーズとボールの性能はゲルググ等敵の新型よりも見劣りしてしまう上に、表記上でこそジオンのMS数を上回っているものの、ジムの数の不足をボールで埋めているありさまである(具体的にジムとボールが何割ぐらいなのかは不明)。
しかし教育型コンピュータの搭載によるパイロットへの負担軽減の他、兵士の大半がホワイトベースを筆頭にこれまでの戦闘を生き残ってきた歴戦の兵であり、その練度は高かった。
ジムもこの時期にはアップグレードが進められ、ジム改ジム・コマンド、ジムキャノンが少数ながら投入され、敵新鋭機への対抗馬となった。



●ジオン側戦力
戦艦数隻
空母2隻
巡洋艦41隻
MS3600機
MA10数機
ジッコ46隻

戦力はザクⅡリック・ドム等は勿論、性能で言えば連邦主力のジムを大きく上回るゲルググビグロ、ビグ・ラングなどが少数ながらも量産・配備され、数では連邦にやや劣るが、質面では上回った。
加えてソーラ・レイによる打撃、ギレン総帥の演説も加わり、兵士の戦意も絶好調に達する。
しかしこの時点では既にジオンは人的資源が尽きておりゲルググやリック・ドムなど新鋭MSパイロットは学徒などの新兵が中心、熟練兵の搭乗機体はジムに劣るザクⅡやザクⅠが中心であった。


○防衛体制
ア・バオア・クーは、周辺宙域を4つのエリア(フィールド)に区切り防衛体制を敷いていた。

各フィールドを時計回りにN・E・W・Sとし、それぞれのフィールド間の対空砲の「穴」を埋める形でドロス級空母を配置していた。




W←●→E


  • Nフィールド
サイド3、本国を正面に臨むエリア。
それだけにジオン軍の防備も厚く、連邦軍も戦力の多くを投入した為に同攻防戦で一番の激戦区となった。

ジオン側はドロス級一番艦「ドロス」を筆頭に新鋭機ゲルググやMAビグロビグ・ラングなどを多数投入。
さらにエース部隊「キマイラ隊」をも配置し、万全の体勢で決戦に臨んだ。

対する連邦軍も、ソーラ・レイの被害を受けず無傷だった第2、第3大隊を中心とした艦隊主力でこれを攻め立てた。


  • Eフィールド
月の裏側、グラナダ方面を臨むフィールド。
そのため緊急時の撤退ルートとしても使用される。
IGLOOにてヨーツンヘイムが配置されたのはここ。

連邦軍は、ドロス級が配備されてない事もあり二線級のフィールドと見なし他のフィールド程戦力を投入していないためか、キシリアからの援軍艦隊がここから進入してきている。
それでも戦力比6:1とジオン側を圧倒していた。


ビグ・ラングなどの活躍もあり、戦闘終結と残存艦隊の撤退完了まで戦線が維持出来た唯一のフィールドでもある。


  • Wフィールド
描写が無いため一切の詳細不明

  • Sフィールド
地球を正面に臨むフィールドであり、ア・バオア・クーの「正面」ともなるフィールド。

主にソロモンから撤退してきた宇宙攻撃軍の部隊が多く配備されており、防空担当のドロス級二番艦「ドロワ」も元ドズル麾下である。
アナベル・ガトーも同フィールド防衛に就いていた。

また、エギーユ・デラーズ大佐率いる親衛隊が配備されていたのもここ。
シャア・アズナブルジオングが出撃していったのもここ。

一方の連邦側は、第1大隊の残存艦とホワイトベースをかき集めてこのフィールド攻撃に挑んだ。艦艇数は25隻らしい。



●戦闘
まず、連邦艦隊はミサイル攻撃でジオン側の斥候を撃破。ついでパブリク突撃艇の撹乱幕の展開が行われた。
しかしジオン側がミサイル主体での対空砲火で対処した事により、あまり効果は無かった。

連邦艦隊はやむを得ず、MS部隊を展開しつつN、Sフィールドに接近。
これに対しジオン側は、衛星ミサイルを軌道上にあるものから順次発射。接近中の連邦艦隊はこれにより、かなりの数の艦艇を失う。

戦闘開始当初は、要塞からの激しい対空砲火とドロス級空母を前面に立てたジオン側が優勢だった。
しかし、キシリアが総帥ギレン・ザビを殺害。それにより指揮系統に乱れが生じた。
(これに際して、Sフィールドを進軍中だったWBのブライトとミライが要塞の防衛力が不自然に低下したことを訝っており、さらに小説の密会ではこの混乱がなければWBと言えども要塞に接近できなかっただろうとまで言われている)

連邦軍はこの隙を突き空母ドロス、ドロワを立て続けに撃沈。
防衛線を突破して、要塞へのMS隊の上陸、艦隊の直接攻撃に成功し、橋頭保を確保、揚陸開始、と一気に戦いを優勢に進める。

この連邦の猛攻に対し、ジオンは団結どころか、デラーズ大佐率いる親衛隊やそれに便乗した部隊が離脱するなど積年の内紛を引き起こし、防衛戦力は更に低下。
さらにキシリアが学徒動員を正確に把握しないままMS部隊を前面に出したため防衛網の乱れが悪化し次々と壊滅する部隊も続出。
ついにはジオングをはじめとした新鋭MS隊も壊滅し、Nフィールド・Sフィールドともに喪失。
しかも、もとから乏しかった予備兵力まで枯渇して戦線の立て直しが利かなくなり、ついにア・バオア・クーの司令部は指揮能力を喪失。作戦参加の全艦艇に「戦闘を中止し各個の判断にて行動せよ」と命令し各隊に独自に撤退命令が下る。

キシリアもシャアの手で死亡し、要塞も弾薬庫及びミサイル工場から出火。ジオンの最後の頼みの綱であった要塞も断末魔を上げながら陥落した。


最終的に両軍共に戦力を大幅に損耗。


特に連邦はMSを4000機を喪失、戦艦・巡洋艦も大半が大破し、現在保有の戦力で一応戦力が残っている突撃機動軍拠点のグラナダ、ドロス級三番艦ミドロ擁する本国サイド3を攻略することは不可能となった。
ただし、この時点でもジム・ボールなどは8000機が実働可能であり(ほとんどは世界各地に分散していたにしても)、さらに4000機以上が生産中だった。


いっぽうジオン側には、まだ、ア・バオア・クー戦を生き残った兵士達や、地球や他サイドといった各地の部隊、グラナダとサイド3の戦力、更にミドロがあり、連邦の疲弊した連合艦隊を撃ち破れる戦力は残っていた。
しかし指導者層が全滅&ザビ家の崩壊でこれ以上戦争をする理由が無くなったこと、デギン公王が生前からダルシア首相に講和工作を行わせていたこと、兵士を始めとする人的資源の枯渇で、連邦艦隊の撃破とア・バオア・クーの奪還はともかくジャブローやルナツー等の大規模拠点の攻略はもはや不可能なこと、
ア・バオア・クーの陥落でジオン本国サイド3が無防備となったこと、
そしてなにより今なら五十億人虐殺やらコロニー落としやら核ミサイル使用やら条約違反やらの戦争犯罪やその責任、その他もろもろを一切合切全部ザビ家に押し付けられる(しかも相手は「唯一の生き残りも赤子or死人で口なし」)ことから、ジオン側が講和を提案して、連邦もそれを承諾。


一年戦争は終結した。

なお、「ジオン共和国」を「連邦の傀儡」として認めなかった将兵の多くはドズル・ザビ中将の忘れ形見であるミネバ・ラオ・ザビを擁して、マハラジャ・カーン(ハマーン・カーンの父)が統治する小惑星アクシズへと逃亡。これに紛れる形でキシリア暗殺後のシャアも離脱している。

そして、途中で離脱したデラーズ艦隊やそれに便乗した部隊、一部の残存艦隊を中心とするジオン残党組織「デラーズ・フリート」
彼らが地球圏に混乱をもたらす事になるのは、3年後の話……。



なお、ア・バオア・クーは戦後もジオン共和国に管理され、
グリプス戦役ではティターンズの要塞「ゼダンの門」として使用された。
またMS工廠としても使用されており、ヤザン・ゲーブルらが登場したことで有名なMSハンブラビはゼダンの門で開発されている。
しかし戦役終盤、ハマーン・カーンがアクシズを衝突させたことにより崩壊し、歴史から退場していった。



「ごめんよ、僕にはまだ追記・修正出来る項目があるんだ……。こんなに嬉しい事はない……」

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 機動戦士ガンダム
  • ガンダム
  • 一年戦争
  • 光芒のア・バオア・クー
  • 宇宙要塞
  • 要塞
  • 最終決戦
  • ラスボス
  • 青葉区
  • 読みはアーバオア・クー
  • 飲んだらQooって言っちゃう
  • 青葉クゥ
  • ジオン
  • ア・バオア・クー
  • ゼダンの門
  • 終わりの始まり
  • ガンダム施設項目

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月01日 02:02